原口智生










原口智生美術監督インタビュー

1999年10月22日・電話にて。
インタビュー・構成=白石雅彦


 『地獄』では美術監督を担当された原口智生氏は、ご存じの通り日本の特殊メークの第一人者で『ガメラ』3部作では怪獣スーツの造形を担当しています。
 現在、5本の映画を抱えているという原口智生氏ですが(そのうちの一本は北野武監督作品)お忙しいところを、電話でのインタビューに答えてくれました。ご協力に感謝します。



― まず『地獄』に関わったいきさつを教えて下さい。

原口 石井監督とは『無頼平野』『ねじ式』と2本一緒にやったんで、それで今回も声がかかったんです。

― 『無頼平野』にはどういったいきさつで。

原口 忘れちゃったなあ。確かプロダクションの方から、特殊メークがあるんでよろしくみたいな連絡があってだったと思うなあ。

― それ以前、石井監督とは面識があったんですか?

原口 いや。なかったよ。

― 今回は美術監督という立場なんですが、それもどのようないきさつで?

原口 はじめは特殊メークで呼ばれたのよ。でもなかなかスタッフがフィックスしなくって、突然監督から美術監督やってくれっていわれて。美術監督っていう名称も監督が付けたんですよ。そんで、セットとか色々やるようになったのよ。

― 予算的にはかなり厳しかったんじゃないかと思うんですが。

原口 厳しいなんてもんじゃないよ(笑う)まったくないんだもん。でもうちのスタッフは総出でしょう。特殊メイクの宋(理起也)でしょう、キャラクター造形の伊藤(成昭)でしょう、特殊造形の栄福(哲史)でしょう。一流のスタッフですよ。ガメラのメンバーフル可動だよ。その人件費だって大変なんだから(笑う)

― 鬼は最初から特殊メークじゃなくて顔出しと考えていたんですか?

原口 ウン、特殊メークはやめたんだ。変なもの(アプライエンス)顔にくっ付けたってしょがないじゃない。あれは薩摩さんなり高崎さんなりがやってることに意味があるわけでしょう。だからわざわざカツラ作って顔出しでやったんだ。結構よかったでしょう。

― あれはあれが正解だと思います。

原口 他の鬼はね。監督の指示じゃないんだ。監督的には他の鬼もカツラに角さえあればいいと思ってたみたいだけど、こういう作品だからさ、キャラクターがしっかりしてなきゃ駄目じゃない。まあ、うちには伊藤がいるから、それでこっちで作ることにしたんだ。監督と鬼しても、ほっといてもこっちで考えてやってるのをわかってくれたからね。

― ミニチュア撮影などもありましたが、あのチープさは狙ったものなんですか?

原口 狙うもなにもねえ。リアルなものは(予算的に)狙えないし、俺、地獄は『クレクレタコラ』の世界でいいと思ったわけよ。ファンタジーなんだって。だからパニーライト(舞台用の照明)使って、ホリゾントにめらめらとか、雲とか写しこんでさ。あれ、結構レンタル料するんだね(笑う)だからあれ使うところはまとめて撮ったんだよ。

― パニーライト使うというアイディアは、どこから出たものなんですか?

原口 『ガメラ3』でさ。林さん(照明技師)が使っててさ。
ガメラとイリスが京都で戦って、雲がバーと出てくるとこなんだけど、あれ、あとで埃とか何やら合成したんで、ホリゾントの映りよく見えなかったけど。でも今回は白壁のホリだし、効果的だろうと思ってさ。要するにファンタジーだからさ。舞台的な美術を狙ったのよ。

― 予算的に厳しいところはよくわかりましたが(笑う)それをアイディアでカバーするということですね。

原口 だってそれしかないじゃない。地獄のカポックの山だってさ。あれ実は『ウルトラマンガイア』のカポックの山もらってきたんだよ。ビルト(東宝ビルト)行って、2トントラック持って。丁度俺、ウルトラ終わるの聞いてたから、あれった後は捨てるだけのごみなっちゃうわけだから、美術の人に頼んでさ。そしたら円谷の制作の人がもっと持って行ってくれったいったんだけど、トラック一杯になっちゃたし、スタジオに置く場所もないからね。だったあれ、外注したら100万や200万するんだぜ。
 宮島の部屋のものなんか、スタッフの持ち寄りだし、でも丹波さんの場合はパーティ用のカツラかぶせるわけにはいかないから、山田カツラに頼んで新調してもらったし、(殺陣で)本身使ったからそれに合わせた竹光、高津(高津装飾)で作ってもらったし、あれ、珍しい刀だからありもんなくてさ。

― 『忘八武士道』はご覧になりましたか?

原口 見たよ。監督ビデオくれたから。面白かったね。やってることはちっともかわんないんだね。監督は。(笑う)


― 撮影はどんな感じでしたか?
原口 ワヤヤな感じ。(笑う)スタジオがほとんどサティアン状態(笑う)教祖が石井輝男。でも凄いよね。映画を作ることに対する強欲さとかさ。尊敬してるよ、俺。普通やんないよ。(オウムネタは)タブーなんだし、でもそれ社会派で撮ろうとしてないわけでしょう。下世話じゃない。俺、それがいいと思うんだよね。

― 『ゲンセン館主人』『無頼平野』『ねじ式』と3本原作ものが続いて、今回はオリジナルなんですが、監督結構力入れてたんじゃないですか?

原口 ウン、力入ってたみたいだね。結局、監督はオウム事件のところが本当にやりたかったところじゃないかな。俺、そう思ったよ。

― 撮影中、面白いエピソード何かありましたか?何となくエピソードだらけのような気がしますけど(笑う)

原口 まあね。(笑う)あのさ。焦熱地獄のところでさ。みんな夜中に「ワー!」とか「ギャー!」とか大声で悲鳴上げてワイワイ撮ってたわけよ。そしたら近所の人が怒鳴り込んできてさ。「真夜中に何やってるんだ!」とか「撮影やめちまえ!」とか。石井監督大ピンチ。俺、これで今日は終わりかなと思ったらさ。監督なんて言ったと思う。「じゃあ、声立てないでやりましょう」だって(笑う)それでみんな声上げないでやってんだよな。もうほとんどエド・ウッド状態。でも凄いよね。

― 完成した映画を見てどうでした?

原口 意外におとなしめだよね。監督の作品って、みんなに言われてるほどえげつなくないからねえ。結構まともでさ。でもうちの連中なんか楽しがってたみたい。世間じゃ『ゴジラ』だCGだ、ハリウッドだなんて言ってるけど、俺達なにやってんのかねえって。(笑う)60年代ころの感覚じゃない。だからかえって新鮮なんじゃないかな。

― 今日はお忙しいところ、どうも有り難うございました。


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