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肌の隙間

5月28日(土)よりユーロスペースにてレイトロードショー

2004年/カラー/ビスタサイズ/77分/R-18
イントロダクション
 母ゆきこを殺害した引きこもりの少年・秀則。一緒に住んでいた自閉症の叔母・妙子は彼を連れて逃亡する。初めて世界を知ったふたりはいつしか関係を結び、性愛の日々が続く。しかし、どこにも行き場のない妙子と秀則の心は互いにすれ違い、無為に傷つけあう。やがてふたりの前に訪れるのは痛切な悲劇か、愛の奇跡か……。
 『DOG STAR』『MOON CHILD』など、最近は一般映画のフィールドでも活躍する瀬々敬久が、「映画芸術」誌2004年度ベストワンに輝いた『ユダ』に続いて放つ最新作。行き場のない男女の逃避行というシチュエーションは、瀬々の作品でたびたび描かれてきたものだが、近作の圧倒的な描写力には目を奪われる。殺人、近親相姦、暴力……。痛ましい物語が展開されるが、そこには不思議と透明感あふれる印象を受ける。主人公のふたりはこの猥雑な世界に投げ出されたアダムとイヴであり、ヘンゼルとグレーテルであるようだ。プリミティブな生と性を生きる彼らの眼に、世界はどんな風に映るのか。いわばこの映画は、世界とその認識についての愛の寓話なのだ。
 スーパー16mmからのブローアップ、全編同時録音、現実音のみで一切の映画音楽なし。饒舌な映画が氾濫する昨今のシーンにおいて、シンプルすぎるほどに簡素化されたこの映画作りのスタイルは異彩を放つが、極限まで贅肉を削ぎ落としたソリッドな映画文体から繰り出される映像のパワーと繊細さは圧巻だ。説明的な描写は避けられ、観客は想像力を刺激されつつ、主人公と一体になってさすらいに同行することになる。それはまるでワンショット、ワンシーンごとに生起するダイナミズムや役者の息遣いが克明に記録されていく過程を見るかのようで、ある種のドキュメンタリーにも似た興奮を覚える。そこには『トーキョー×エロティカ』『DOG STAR』など瀬々と名パートナーである斉藤幸一の撮影による美しい映像が、作品の強度に大きく貢献している。脚本は『ユダ』に続き、新鋭・佐藤有記。20代の新しい才能が放つ脚本を得て、瀬々敬久の映画は新たなステージに突入した。
 主演は『花と蛇2』の不二子。自閉症で甥と近親相姦に陥るという難しい役柄を体当たりで熱演。相手役には今回がまったくのデビューとなる小谷健仁が扮し、新人らしからぬ堂々たる演技力と個性が光る。ヒロインの母親に『にっぽん昆虫記』『死に花』のベテラン・吉村実子が扮し、圧倒的な存在感を見せている。『ユダ』『きょうのできごと』の三浦誠己、『血と骨』の飯島大介、『刑務所の中』『花と蛇2』の伊藤洋三郎ら個性派のキャストが脇を固めている。
 本作は2004年12月に同タイトルでピンク映画として公開されているが、その完成度の高さが評判を呼び、このたび単館でのロードショーが決定した。
スタッフ
キャスト
監督:瀬々敬久
企画:朝倉大介
脚本:佐藤有記
撮影:斉藤幸一
編集:酒井正次
録音:山口勉
助監督:坂本礼
現像:東映ラボテック
製作:国映/新東宝/Vシアター135/インターフィルム
妙子:不二子
秀則:小谷健仁
アイスクリーム売り:伊藤洋三郎
浮浪者の男:飯島大介
祖母:吉村実子
ガソリンスタンドの店員:三浦誠己

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