「サラリーマン転覆隊が行く!」というタイトルで
2002年頃本木監督が自ら企画したコメディ作品。
残念ながら映画化はされていない。
キネマ旬報2004年2月上旬号にて、カラー見開
き21頁に渡り「ドラッグストアガール」の特集が
組まれた。ちなみに表紙も裏表紙もドラッグストア
ガールというおまけ付。破格の扱いだった。
本木監督デビュー作。
「てなもんや商社 萬福貿易会社(1998年)」で
主人公のOL。小林聡美が演じた。
公開は1998年5月16日
「釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!(2002年)」
で、杉山直樹は、マドンナ・桐山桂(鈴木京香)の父役で
少しばかりとぼけた東京の町医者(桐山医院)という設定
だった
「天切り松闇語り」関西TV2時間ドラマ。中村勘九郎主演
「釣りバカ日誌シリーズ」を手がけた
栗山富夫監督から本木監督に、次回作
の「釣りバカ日誌11」でバトンタッ
チする時に苦肉の策で考えた企画。
「釣りバカ日誌ターボ」「釣りバカ日
誌オーパ」は海外ロケの釣りアクショ
ンで、アマゾンや中国に釣りに行くと
言う企画だったが結局はボツになった。
秒間24コマ撮影が可能な高解像度デジタルフォーマット対応
のビデオカメラ。CG処理の必要なシーンで多用される
「ラブ・レター」浅田次郎原作の同盟小説を映画化
森崎東監督、主演は中井貴一の松竹作品
1998年5月23日全国松竹系公開作品
「この世の外へ クラブ進駐軍」
2003年、坂本順治監督作品
2004年2月7日より松竹系で全国公開
fjmovie.com
関連リンク
ドラッグストアガール公式サイト
松竹株式会社


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『ドラッグストア・ガール』本木克英監督インタビュー



2004年2月7日(土)から松竹系で公開される『ドラッグストアガール』。
人気と実力を兼ね備えた女優・田中麗奈がコメディに初挑戦。バラエティや舞台で活躍する柄本明、三宅裕司、伊武雅刀、六平直政、徳井優、杉浦直樹など個性派オジさん俳優らが脇を固めて、ポップでキュートな魅力が全快の作品ができあがった。脚本には、ヒットメーカーで知られる宮藤官九郎(「ピンポン」「GO」)が担当、「てなもんや商社」で日本喜劇映画界に新風を吹き込んだ松竹期待のホープ・本木克英が監督としてメガホンを取る。個性豊かな俳優・女優陣と斬新な撮影陣がタッグを組み、今まで誰も観たことのないような新鮮でありながらも爽やか・・・とても不思議で強烈なインパクトにあふれた軽快なコメディ映画に仕上がった。

あらすじ...。
大林恵子(田中麗奈)は薬科大学の三年生。大学ではラクロス部で活躍する元気な女の子。
同棲中の彼氏ともラブラブ・・・のはずだったが、ある日突然破局が訪れる。二股かけられていた!!
大ショック!!大泣きしながら電車に飛び乗り、辿り着いたのは、聞いたことも無い郊外の街・摩挟尾(まさお)。
さびれた商店街の先にある、一軒のドラッグストア、おかまの兄弟薬剤師がとっても親身に失恋話を聞いてくれて、何故かなりゆきでバイトすることに・・・
そんな恵子の前に、商店街の怪しい中年オヤジたちが現れて・・・!?
2004年2月7日(土)より全国公開中!

本木克英監督から皆さんにメッセージがあります
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監督:本木克英(もとき かつひで)
1963年、富山県生まれ。東京世田谷在住。早稲田大学卒業後、1987年に松竹入社。森崎東監督、木下恵介監督、勅使河原宏監督など師事し助監督やプロデューサーとして活躍。1年間の米国留学を経て1997年『てなもんや商社 萬福貿易会社』で監督デビュー、この作品で第18回藤本賞新人賞を受賞。1999年に栗山富夫監督よりバトンタッチし松竹看板シリーズ『釣りバカ日誌イレブン』『釣りバカ日誌12 史上最大の有給休暇』『釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!』などを手がけた。
て、『釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!』以来、約1年半ぶりの新作。完全オリジナルの本木喜劇ではデビュー作『てなもんや商社 萬福貿易会社』以来、実に6年ぶりの新作となった本木克英 監督の『ドラッグソトア・ガール』。田中麗奈さんが初のコメディに挑戦し、人気脚本家の宮藤官九郎(クドカン)さんを迎えた、この話題作について、本木監督にインタビューを行ないました。
筆者(左)と本木監督(右)
収録:2004年2月4日

取材構成:平井敬也
日本映画街スタッフ
にこにこ山田村


なんと取材のアポは前日の深夜、翌日の昼にすぐさまインタビューへとなだれ込み・・・松竹のホープと言われる本木監督だけに、とてつもない監督の起動力を垣間見た、そんな対談形式のインタビューになりました。
FJMOVIEらしく、少しばかりマニアックな内容となっていますが、分りにくいと思われる点にはできるだけ注釈も付記しております。お楽しみください。



アクティブなオジさん達のオリジナル集団コメディを作りたかった

―― 『ドラッグストアガール』を演出されるきっかけについて伺います

本木:ちょうど2003年8月に僕の前作の『釣りバカ日誌13』が公開されたんですが、その直後に、松竹のテレビ部のあるプロデューサから「田中麗奈さんでコメディをやらないか?」という話があったんですよ。本人がとてもコメディをやりたがっていると言う話で、それで「条件は何でしょうか?」と聞くと、ドラッグストア協会が協賛します―――と。で、ドラッグストアを舞台にすることと、田中麗奈を主演にする、そして、ちょっと過激なところがあっても良いコメディにして欲しいということだったんですよ。
その話を持ってきたプロデューサは、外部の人とも何人かでいらっしゃったんですけど、『てなもんや商社』の感じが凄く良かったんで、あれに過激な味を加えたコメディにして欲しいと言う依頼だったんですよ。
これは作り手からすると非常にありがたい出発点だったんですね。主演も条件も決まっているし・・・。

―― そうすると最初からアクティブな喜劇作品の構想だったんですね。

本木:そう、ちょっとアクティブにしようかなと思ったんですよ。釣りバカとか、それまでやってきた4作品のコメディとは全く異なり、ちょっと味付けを変えて、アクティブな場面があって、感傷的なところをなるべく廃した感じのコメディにしようかな、と思ったんですよ。
それで、オリジナルで作って良いという話だったし、ドラッグストアを舞台にするという条件だけだったので、それじゃあ脚本はどうしましょうという話で・・・。

―― それで宮藤官九郎さん?

本木:極めていい加減に・・・(笑)ですね、やたら目に付いていた売れっ子の宮藤官九郎さんでどうだろう?―――と言ったら、彼は以前から田中麗奈さんとじっ懇の間柄ということもあって、忙しいスケジュールをぬってもらって(宮藤さんと)下北沢で会ったんですね。そうしたら、クドカンさんは「僕は昔から田中麗奈さんファンだった」と。

―― クドカンさんとの打ち合わせのお話をもう少し詳しく教えてください。

本木:クドカンさんの話によると、「実は「GO」「ピンポン」という作品には原作があった、自分はオリジナルでやりたいんだ。オリジナルを映画で書いていないので、とにかくオリジナルができるのなら頑張ります」・・・と言うお返事だったんで、じゃあ(一緒に)やりましょうか、と言うことで始まったんですね。
それで、打ち合わせの時に、その時、僕(本木監督)がやりたかったのは、田中麗奈さん主演なんだけれども、実は「てなもんや商社」の直後にやりたかった別の企画(「サラリーマン転覆隊が行く!」リストラされたオジさんたちが無謀にもカヌーで川くだりするという喜劇)があって、どうしても中高年の無謀な行動というのを描きたかったんですよ、なぜか(笑)。
集団コメディ ※注※というのをまだ実現していないわけですからね。

―― その別の企画『サラリーマン転覆隊が行く』という企画は無謀な話しと言うよりも、リストラされた中年サラリーマン達が「何だ!」ということで、スカッとするようなことをしようじゃないかと、一念発起してカヌーで川くだりするというお話でしたよね。

本木:そうそう、簡単に言うと、行き詰まった中高年たちが再生するような話をやりたかったんですよ。
で、それを組み合わせられれば良いな、と提案をしたら、宮藤さんも「実は自分は若者ばかり描いてきたけれども、本当はオジさんたちに興味があるんです」と・・・(笑)・・・話を合わせてくれたというか、言って下さったので、それじゃあ、田中麗奈は ドラッグストアでバイトする事になった女子大生という設定にしましょう・・・と。薬科大の学生ということにしましょうと。
で、その周りを、何故かオジさんたち集団で取り囲みましょう。そこから、この話を進めることになったんですね。
それで、どんなオジさんたちが良いかと、まずはキャラクター出しから始まりました。


子供の頃から何十年も付き合いが変わらない・・・そんなオジさんキャラクター

―― キャラクターは本木さんのアイデアですか?

本木:僕がやってみたかったのは、ガキの頃の小学校をあがる前から、変わらない付き合いをしている、五十歳過ぎてもまだ、そいつらなんかと付き合っているような、男の友情というか・・・若い頃の青春時代は都会に出て行って、何か挑戦してやろう、一旗挙げようなんて思ったこともあっただろうけども、全員が挫折して帰ってきて・・・

―― アメリカのマイホームタウンというやつ?

本木:あ、そうそうそう(笑)。ホームタウンに戻ってきて、で、結局、その時代のガキ大将がいて、パシリがいて、それから金持ちのバカがいて・・・それで、つるんでいる場所も、子供の頃遊んでいたところと変わらない。神社とか、小学校の校庭とか、シャッターの閉まった商店街の裏とか、窮めて、こいつらは四十年以上も関係が変わらないんだな・・・なんて言うような設定にしたかったんです。僕がやりたかったのはそれだけだったんで、じゃあ、宮藤さんの方からキャラクターを色々と出していきましょうという話になったんですね。


普通人のカリカチュア。恵子(田中麗奈)もそんな宝島的な「理系の女」

―― 田中麗奈の演じるキャラクターは?

本木:ストーリーの前に、彼女はどんな女なのか? そこで思いついたのが、とにかく皆、変な感じのキャラにしたかったんですよ。僕が思っているのは、普通の人と言うか常識的な人ほど、おかしなところがたくさんある人が多いんで、それをどんどんデフォルメしていって合わせる。でも、実社会であり得ることじゃないか(笑)と思ってね。
その時に思いついたのは、確か「理系の男」なんて言うタイトルの本が昔、宝島なんかから出版されていてね。

―― 宝島のムック本で白い表紙のね(笑)

本木:そうそうそう、理系の人は・・・なんて事が書いてある(一同爆笑)。
男女関係においては、理系の男はすごい分析したがるし、なんて書いてあって、ま、面白がっていたんですね。ちょっと蔑視に近いような、からかうような、理系の男の生態が綴ってあったりする。
それじゃあ、理系の女はどうなんだろう? というのが無いから・・・彼女(大林恵子)は薬科大だから当然、薬学部は理系だと。感情より先に論理が優先する、うーん、例えば自分がSEXしたときに、感じて気持ちが良いと思う前に「何が起ったんだろう?」と「どういう理由で私は気持ちがよいのだろう?」と考えてしまうような女。感情より理論が先に来るような女性にしようと。だけど身体は体育会系、きっと体育会系のサークルに入っているような女の子にしよう、と宮藤さんに言ったら、面白がって「理系!理系!」という一つのキーワードを彼女のキャラクターに与えたんです。

―― 宮藤さんの方は?

本木:柄本明さんが演じている鍋島っていうのは宮藤さんのアイデアで、60年代〜70年代のロックをまだ捨てきれないオヤジで、髪の毛がロカビリー。そいつをガキ大将にしようということになって、それじゃあ後は、使いパシリの男を一人出して欲しいと言い出したんですね。結局、三宅裕司さんが演じていただいたんですけども、彼は、パシリなんだけど重要な決断は、ついそいつがやってしまう。指示を待っているようで、実はそいつがいつも彼(鍋島)の行動を決めてしまう・・・そんな男ということで三宅裕司さんの役が決まった。
それから、僕の知り合いにベンツとBMWを乗っている坊さんがいるんだけれども、毎日毎日、表参道とか銀座とかの高級フランス料理店や寿司屋で飯を食っているとんでもない坊主がいたんで。

―― 結構羽振りの良い坊さんっていますよね(笑)

本木:羽振りのいい(笑)、そう結構面白いんでね、この人は良いなぁと思ったんですね。それを六平さんに演ってもらってね。
あとはヤブ医者を出したいと言ったんですよ。意味もなく行けば注射を2〜3本打つような医者が昔いたんですよ。町医者にね。これをなんと杉浦直樹さんが演じていただいたんですけど。

―― じゃあ、釣りバカ13の時※注※もそんな感じでしたよね。ちょっとトボけたところのある町医者。ま、彼は真面目な医者でしたけどね。

本木:そうです(笑)。であと、どうしても僕が出したかったキャラクターというのは、山田という役で、伊武雅刀さんが演ったんだけども、全共闘崩れで、より良き日本を考えて無謀にも革命を信じてやっていたんだけれど挫折した人・・・というのはどうしても出したかったんですよ。イメージとしてヘルメットとゲバ棒みたいな人はね。で、これだけを宮藤さんに伝えたんです。
それに宮藤さんが、ホームレスのジェロニモという不思議なオジさんを出してね。
ま、要は、懐かしいような、昔あったような、そんな商店街を中心にしたコミュニティというかね。サザエさんなんかに出てくる町内会みたいな雰囲気を出したいなと言って。ジェロニモとかオカマの兄弟とかホームレスとか・・・こういう風変わりな頭のおかしな人とか、昔は、町で受け入れていたんですよね。隔離せずに、皆なで面白がってたというか、普通に彼らと対等に付き合っていたんですよね。
で、他には、何故か薬科大学の先輩で理系の男が荒川良々。そういうキャラクター作りから始めた訳です。

―― 話の中心のオジさんたちは5人だけですよね(伊武、柄本、三宅、六平、徳井)

本木:描けるのはせいぜい5人くらいだけだろう・・・という事で、物語上そのヒロインにプラス5人の集団・・・ということなんですね。


女子ラクロスは、オジさん達を<喪失感>と<郷愁>にいざなう(笑)

―― ラクロスというのは?

本木:2〜3日してから宮藤さんから「ラクロスをやらせましょう!」と、それから「オジさんのウォーターボーイズみたいな雰囲気に後半して行きましょうか?」というメールが来て、ああ、面白いんじゃないかと返事をしたんですね。
ラクロスは電車でよく見かけるけど、華やかな女子大生がファッショナブルにやっているスポーツで、オジさんたちがそれを見ると、何だかそこはかとない<嫉妬>と<反感>を覚えるようなところもあるから、そりゃあ、素材としては面白いんじゃないでしょうか、と伝えて、宮藤さんはラクロスの方に、どんどんノっていって、本を書き進めていったんです。
実際に早稲田大学のラクロス部の練習風景を見に行ったんですけど、見た目のチャラさとはまったく違って、非常に激しいハードなスポーツなんですね。

―― 見学したラクロス部というのは女性のラクロス?

本木:女性と男性と別々にやっているんですけど、女子と男子とは全く違う雰囲気で、ま、格闘技に近いようなスポーツだったりするんですよ。それと同時に、やっぱり僕もオジさんですから、何か失った青春の輝きをそこに見たわけなんですね。走り回る女性を見て、飛び散る汗や・・・金網越しで(爆笑)・・・なんか物凄い<喪失感>と<郷愁>にとらわれて(笑)

―― ラクロスは使えるぞ!と?(笑)

本木:これはいいぞ(笑)と、もう、彼女たちが眩(まばゆ)かったんですよ。
同じ考えを宮藤さんも持って「 あんな事、もうできねぇよな俺達・・・ 」っていう、そういう所が、まあ何と言いますか、ドラッグストアガールの重要な基礎になったんですね。

ストーリーありきと言うよりは、キャラクターをどんどん決めていって、雰囲気は懐かしい町と商店街と駅前、みたいな雰囲気にして・・・。それは宮藤さんの昔の『木更津キャッツアイ』で、木更津という場所の選び方から、面白いなと思ってたんですよ。だから、そんな雰囲気のお父さん世代の話を書いてくれませんか? と伝え、分りましたと宮藤さんが(脚本を)書いて下さったわけです。

―― ラクロスに深い意味はあったんですか?

本木:いや、全然、深い意味は無くて、あんなの持たせたら面白いんじゃないかと思ったんです。何か持たせたい、うん、道具を持たせれば面白いかなと思ったんですよ。

―― ああ、なるほど、道具が必要なのね。電車の中とかでね。

本木:パッと見ただけで判るじゃないですか。で、町を歩くとこういう人がいるし、現代風ですしね(笑)

―― うん、電車の中とかで「あれは何を担いでいるんだろう?」とアイキャッチも良いですしね。

本木:うん、いいでしょ。そこはかとない反感も持つでしょ。持たないですか?

―― (苦笑)持つかもしれませんね。

本木:「じゃまだなぁ」なんてね(笑)。で、キャッキャ!っと話しているとね、自分たちが阻害されているような感覚を、勝手にオジさんたちが持つじゃないですか。

―― そうすると弓道の弓じゃダメなんですね。弓だとキャピキャピしないんですね

本木:そうそう、しない。弓じゃダメなんですよ。だから、オジさんが疎外感を感じる物を持たせたかった訳ですよ。構図は完全に、オジさんたちと若い娘ね。ま、設定はこっちで考えて、あとは、クドカンさんがラクロスでどうでしょう・・・と。

―― その時は、ラクロスのアクションのことはあまり考えていなかったんですか?(笑)

本木:アクションのことは余り考えてなったですね(笑)。
だから(撮影になって)大変だと思いましたよ。一番難しかったのは、キャスティングで、走れる運動のできる50歳台の役者を探すのが大変だったんですよ。実は。
必ず成人病や持病を抱えていますからね(笑)。舞台の役者の連中は体力もあるし、いや、良く走ってくれたと思いますよ。僕自身は、2分くらいゲームをやったら息が上がっちゃいましたけどね。

―― でもラクロスは面白い着眼点でしたね。マイナーですし。

本木:そうですかね。あまり意味はなかったんですけど・・・ま、必然性のない思い付きからどんどん広げて行く、ということをしていたという事ですかね(笑)。極めていい加減なアイデアですからね。

―― こういう作品を撮ると、マスメディアが「次はラクロス・ブームだ!」と取上げたりしますよね。狙っている訳ではないですか?

本木:狙っている訳じゃないですよ。ただ、マイナーなスポーツなので、日の光を当ててもいいかな、とは思ったんですけども。映像の中では、ラクロスは致命的な欠陥があるんですよ。
試合中にね、パスするときのボールの勢いが凄まじく速いんですよ。しかも、(ボールを)キャッチして網の中で、クレードルって言ってね、くるくると廻しながら走るんですけど、そうすると、ボールがどこにあるか、分からなくなっちゃうんですよ。
だから、これはテレビ中継はムリだな、と、常に矢印をボールを持っている選手の上に付けながらやらないと、もうアナウンサーも実況できないんじゃないかな、という感じがしましたね。

―― ラクロス試合のアクション演出では苦労されたんじゃないですか?

本木:苦労しましたよ。実際に撮ってみたら見えない。画にしたら見えないんですよ、速すぎて。
その点、24P(キャメラの種類 ※注※)でやったのは良かったですね。自由自在にスローのスピードを変えられたんで、動きが激しくボールになったらスローにせざるを得ないですよ。いったい誰から誰にパスが行ったのかが捉えられないので。
それから、悩んだのは試合に意味が無い・・・ということでね。オジさんが必死に何かをやっている様子から、何かを伝えなければいけない、つまり、この試合に勝ったらどうなる、ということが無い訳ですよ。

―― 試合の映像は20分くらいですよね。試合シーンの比重も結構あるようなアクション映画ですよね?なのに試合の意味は関係ない?これは、結構面白い(試み)ですよね。

本木:ま、意味はね(笑)。これは、要するに、意味はシュートを入れた人とデートをします・・・という事だけなんですよ。オジさんがデートしたいということだけ・・・(笑)


本木監督演出とトイレ・・・デビュー作との意外な類似点

―― 後は、本(ホン)は第何稿まで書いたんですか?

本木:宮藤さんが、まず第一稿を書いて、えーと、三稿までやったのかな? で第二稿までは宮藤さんがやって、後はいい加減になりますけどお任せしますんで、と言われて第三稿はね、僕が手を加えました。

―― 内容は第一稿から変わりましたか?

本木:当初はキネ旬※注※にも書いてありましたが、ミュージカルシーンなんてのがあったんですよ。また、冒頭に・・・。
で、それ(第一稿)を見たときに、これは絶対、今後一年以内に他の映画でミュージカルをやられるなと思ったんですよね。案の定、『釣りバカ14』とか『ゲロッパ』で(笑)。それに、映画のツカミとして、ちょっと冒頭では強烈過ぎるから、それを出しちゃって映画の観方をお客さんに決めさせてしまうのは嫌だったんで、なるべく最初は、リアルに「 何が起るんだろう? 」と思わせたところから始まった方が良いかな、と思ってね。

―― 風呂場のトイレですね。

本木:風呂場はね、宮藤さんも僕の作品を色々と観て「 『てなもんや商社』の本木さんとやりたい 」というような事をおっしゃっていたんでね。
アレ(てなもんや商社)もトイレから出てくる小林聡美から映画が始まるんですけど・・・。

―― そう言えば「ひかり ※注※」もトイレですね(笑)

本木:ははは(一同爆笑)。 だから観たスタッフが皆「観てんだな」と、アレも恐らく関係しているんだなと思うんじゃないかな(笑)。

―― 同棲している田中麗奈が「ただいまぁ〜」と帰って来て、ドタドタとトイレに飛び込んで行く、「ひとし〜」なんて言ってるとね、という衝撃的なシークエンスは宮藤さんのアイデアの中にあったのですか?

本木:いや、ツカミとしてはオリジナルで書きましたから・・・。だから初めは、「 田中麗奈扮する大林恵子という女の子が衝撃的な失恋をする 」と、それで自暴自棄になって、彼の家を飛び出して電車に飛び乗って、泣いているうちに眠りこけてしまう。はっと気付いたら、見知らぬ町に下り立っていたと・・・。それで、そのまま商店街をさまよっているうちに勢いでドラッグストアでバイトしちゃう事にする・・・と、そこは宮藤さんの運びですから、家は都内にあるんだけど、郊外に2時間以上かけて通うという設定が面白いんじゃないかということで(笑)。そこで、バイトしたところから物語は始まる。

―― それで色々と新しい喜劇発想があったと伺っていますが?

本木:はい。恵子が勢いでバイトすることになってみたものの、私は帰る場所が無い、と(バイトが)終わった後に、夜の町をさまよっているうちに、色んなオジさんたちが次々に出てくるという、そういうの展開なんですよ(笑)。一方でシャッター通り商店街に住んでいるオジさんたちだから、近くに大型ドラッグストアができることを快く思ってない訳ですね。それでいつもの様にツルんで、集会して、山田という元過激派が「殴りこみに行こう!暴動を起こそう!」と煽るんだけど、実際は気が引けて実行に至れない・・・と(笑)。一方で見つけた大林恵子に一目惚れして、ストーカーまがいの行為を経て、彼女がやっている変で怪しげな見たこともないスポーツを「自分たちもやってみよう!」とやって見せる事で彼女の気を引こうとする・・・という不思議な展開(笑)なんですよね。
こうしゃべっているとあり得ないような事ですし、若い女の子に(オジさん達が)惚れるというのはあると思うんですよ、でも、この後に、彼女のやっていることを調べ上げて、ラクロスを自分たちで形になるまでやろう!という発想が、やっぱり宮藤さんですよね。あり得ない(笑)。
僕らが今までオーソドックスな喜劇を作って来た中で、あり得ない発想なんですよ。だから、皆が面白いと思ったと同時に、戸惑いも覚えたんですね。
第一稿を読んで、常識的に考えて、今までのオーソドックスな喜劇的展開ではあり得ないような展開が幾つかあるんですよ。オジさんたちの極めてガキっぽい発想というか(笑)。オジさんたちが彼女の気を引こうと、やっているものは何だろうか?と、ラクロスの研究を色々とするんですけどね、ま、そういう辺が面白いところではあるんですけど、クドカン的ですよね。
そういう、クドカン的なあり得ない展開や行動原理に持っていくところが、色々とあるんですよ(笑)。
コーチをするとか、町興しで活気付くとか、チームの試合、テレビのインタビュー・・・私を捨てた男を見返したい、という行動原理だけで彼女は突き進んで行くんですが、考えとは裏腹に世の中進んで行くとか、ホームページのこととか・・・めちゃくちゃなんですね(一同爆笑)。・・・・(ここから話はネタバレと小1時間ほどの雑談に突入したので中略)


実はテーマは「オジさん活性化映画」

―― そうすると、この作品のテーマはオジさん?

本木:実はそうなんですよ。で、彼女側から見ると、傷ついた女性がどうやって失恋の憂さを晴らすか、という見方で観て行けるんですね。だから、傷ついた女性のある種の、こんな立ち直り方があってもいいんじゃない? という感じにもなるし、オジさん側からすると、ほとんど行き詰まって、もう新しい事をやろうという気も無いオジさんたちが、簡単に言うと元気を取り戻していくんですね。オジさん活性化映画なんですよ、実は。

―― 閉塞した時代のオジさんの応援歌ですね。

本木:そうオジさん応援歌ね。だけど、観た人の反応を見ると、オジさんはね、オジさん向けな映画ながら、1回観ると反感を持つ人がいるんですよ。五十歳以上の人が、ンなことある訳ねーだろ!と(一同爆笑)。
だけど、同じ人が2回目に観ると「傑作だ!」って言うんですよ。2回目観て全然反応が違うんですよ。これが面白いところなんですよ。

―― 今まで「釣りバカ」とかで、そういうことありましたか?

本木:ない!ないですよ。 これは別に、そうしろと宣伝文句で言っている訳ではないのですけど、撮影所の人なんかは1回目は「ハチャメチャじゃん、こんなの!」なんて言うんだけど、2回目観ると、割りとオジさん側に入って観れるんですね。

―― 複数回で感想が違うと言うのは意図して演出したんですか?

本木:いや、意図なんて全然してなかった。僕は中高年を励ますために、ちょっと過激に作ったんだけども、で、意外だったのは、女性の観客とか若い観客が非常に多くて、バカみたいに面白く動いているオジさんたちを見て、彼らが笑ってるんですよ。一番この映画を評価してくれているのが、だいたい同世代、40歳前後の男女。
ま、そういう変な面白い映画なんですね。試写なんかやると、半分以上が若い連中で、若い連中がオジさんのバカバカしさを見て笑っている構図とか、女性が恵子(田中麗奈)の側にたって「こんな風に、憂さ晴らしに付き合ってくれるオジさんがいると良いわね」っていう見方をするか。後は、だいたい同世代のオジさんたちは1回だけだとちょっと反感を持つが、だけど、同世代のオバサンたちは非常に喜んでいるんですよ。「こんな人が私らの町の近所にいたらいいわね」と。

―― 松竹調の人情というのはあるのですか?

本木:ないですね。ま、ちょっと<しっとり>するところもあるんですけど。

―― あれはどうでしょう。松竹人情劇にありがちの恋、ほら、恵子の新たな恋の予感?匂わせて終わると言う(笑)

本木:ああ、それはね、荒川良々という大人計画の・・・。匂わせて終わると言うことなんですけど、そこをあんまりクローズアップさせないために、一貫してオジさんの再生映画にしたんです。彼女が憂さ晴らしして終わりました・・・というだけでは、救いようがないからね(笑)、なんか少しでもと思ったことと、それに、相手は二枚目役じゃないでしょ。ただボーッとしている男として見られていない少年ととの絡み。これは、相手を二枚目にしちゃうとね、出てきた瞬間にくっつくだろうと分っちゃうでしょ。

―― こういう展開は「釣りバカ日誌イレブン」に通じるものがありますね(笑)

本木:そうですね、どっちかと言うとアナーキーな感じが割りとするかもしれませんね(笑)


難しさは宮藤脚本のテンションと演出のテンポやリズムのバランス

―― 演出のテンポに気を使われたと伺いましたが?

本木:そうですね、いつもテンポに気を付けていますけど(笑)。難しかったのは、自分が持っているテンポ以上にクドカンさんの本を読むと、もっとスピーディに飛ばしていかないと、テンション高くやっていかないと、難しいかな、とも思ったのですが、ただ、それをやると、スベる危険性を非常に感じたんですよ。木更津などはあのぐらい若々しいエネルギーでばんばんと進んでいけば良いのだけれど、どうしても五十歳代以上のオジさんたちを主軸において来ると、割りと落ち着いた芝居を少しずつしていかないといけないなと思ったんで。

―― テンポが落ちると言いますよね

本木:そう、テンポが落ちると思うので、芝居はきっちりとやりつつ、脚本を地に足のついたものにしながら、テンポやリズムは早くしていく(笑)という風には思っていたんですけどね。
だから、この話の制作上の面白さと言うのは、アート系の映画で自然な演技で定評のあった田中麗奈が主役に来て、クドカンという脚本では先端を行っている脚本化が来て、それを本木組と言うオジさん向けの(笑)映画を作ってきたクルーで作ると言うことろの <化学反応>みたいなものが結構あるかな・・・と思うんですね。

―― マニアックな人からみるとそれが最大の見どころですね

本木:そうですね、マニアックな人から見るとそうですね。僕自信もそれが面白いと思っています。
ただ、結局これは、クドカン脚本なのか、田中麗奈主演なのか、あるいは、オジさんが主演なのか、どこにも偏らなく仕上がったかなという感じの映画ですかね(笑)

―― 見方がいっぱいあるんでしょうね。主人公がいっぱいいるという。だから2回目観たらもっと面白かったとなるのかもしれませんね。

本木:そうなんですね。だから、作るときにターゲット、ターゲットって言われるんですけど、ターゲットは幾つか設定しているんですね。ま、今回はそういうことですね。

―― 他の作品は?例えばデビュー作「てなもんや商社」は?

本木:デビュー作の時には、自分が同世代の30代前半くらいの働いている女性に向けて作ったつもりではあったんですよ。あまり他の客層を考えずにね。で、釣りバカは最初から中高年のオジさんとオバさん、自分たちの父ちゃん母ちゃん世代が楽しみにしているというのがあったので、それに、若い人も観てくれるように作ったんですよ。今回の『ドラッグストアガールは』今まででは一番若いということになりますね。


実に構想2年。松竹監督による独立系映画『ドラッグストア・ガール』

―― ロケハンで苦労されたそうですが、撮影現場の苦労話をお伺いします

本木:シャッター通り商店街という設定だったんで、これは僕が苦労したというよりは、制作進行と助監督がめちゃくちゃ苦労したのですけど、どこに行っても断られるんですね。ふざけるな!洒落にならない!と。
コメディで田中麗奈主演でも、やはり中身の台本で判断されるんですよ。その脚本を見て断られるんですね。言い方が難しくて、 寂れた商店街を探してましてここが気にいりました・・・じゃ誰も貸してくれませんよ。だから、味がある・・・とかね、風情のある商店街だ・・・とか言ってね(笑)、それで、交渉が上手くいきかけるんですけど、最後に台本を見せると、「駄目だ!洒落にならない!この間も、薬局の主人は首を吊ったんだと、近くにドラッグストアが出来て店をたたまなくてはならなくなっちゃって。こんなものをお笑いのタネにするなんてけしからん!」と言われて4ヶ月くらい断られつづけて、たまたま通りかかった、横須賀市の池之端商店街というところがあって、商店会の皆様方が非常に好意的で、「どうせアーケード壊すから、記念に撮っといてくれよ」と、神に会ったような感じで感謝してます。
池之端の商店街に出会うまでは、本当は三崎の商店街に決めてたんですよ。商店会って許可出すときに一つでも反対の店が出ると撮れないということで、その合意を取りつけるのが大変だったということですよね。
あとは、駅前の土地、コンビニが無いのがとか・・・。

―― あれ、半年に及ぶロケハンですよね。企画の最初はいつでしたっけ?

本木:2003年の初め・・・いや2002年の夏にこの企画を始めたんですよ。夏に宮藤さんと(早稲田大学で)ラクロスの試合を見に行ったから。だから2年越しですね、これ。恐ろしいなぁ。この話は「釣りバカ日誌13」を撮った直後ですから、公開前には次は「ドラッグストアガール」撮るって・・・。

―― 釣りバカ13は8月公開ですから、やはり2002年ですよね。僕が松竹で(本木監督)とお会いした時ですもん。で、その時にはカヌーの話があって、本木さんが「いや違うのを撮るんだよ」なんて隠すように話した時ですから(笑)・・・結局、おっ!話が似ているじゃないか、と(笑)

本木:(一同爆笑) あ、それだ! そうそう、去年の夏ってもう(ドラッグストアガールが)出来上がっているんだもんね。うーん、じゃあ、一昨年になるんですね。最初は・・・2年経ちますね、凄いな。


ロケハンでは苦労した。全国300箇所以上は探し回った

―― ロケハンはシナリオを粗書きを決めた後にすぐに?300箇所以上廻ったとか?

本木:ええ、総合すると、300箇所以上を本当に廻りましたよ。一番北は、栃木県の小山市まで行って、西は静岡県富士市まで、北は秩父、熊谷まで行きましたね。だから、関東一円をくまなく見て、まずは商店街が借りられないという事。それから駅前、これが気に入った駅前が無いという事。どこまで行っても行っても再開発されている。あまり寂れすぎていてもダメで、町の臭いがあるけども山もあるなんて場所ね。
その商店街探し班と、駅前探し班と、ドラッグストア店内の撮影。これらの交渉隊と、それから小学校のグラウンドを貸してくれるところ、それと、お寺や遊び場を探す班。

―― それで最終的に(ロケ場所が)バラバラになっちゃったんですね。スケジュールなんて凄い大変ですね。

本木:撮影はね、だから、毎日毎日、朝だんだん早くなっていって、新宿を朝5時半に出発とかね。集合できない連中がいるんですよ。スケジュールは、これだけキャストを揃えると会う時間がすごい少ないんですよ。一日で撮影時間3時間とかしかないというような中で、2ヶ月足らずで撮影が終わった。だからテレビの仕事よりもきつかったですよ。正直言って、テレビドラマ※注※もやりましたけど、テレビのほうが全然落ち着いてできましたよ。横須賀で撮影してて、翌日は飯能に行って、その後は王子に行ったりね(笑)。

―― 横須賀市の池之端商店街ではどうでした?

本木:池之端商店街の連中は、この撮影で使用した竹ラクロス、これ一本2万円くらいしたんですけど、ほぼ皆さん持っています。協力ありがとうございます、と置いて来たんですよ。100本は作ったかな・・・。
それで、池之端商店街には、本当にご迷惑おかけしたんですよ。それで、スケジュールのしわ寄せが全部あそこの商店街に行ってしまったものだから、歯医者さんの駐車場に鍋島薬局っていう看板をはめ込みで取り付けたら、次に撮影に来るのは一週間後という状態だし、それまで、ずっと付けっぱなしになっている(笑)。バンブーロード商店街ってやった飾りも、ずっとそのまんま置いてあって・・・(笑)。一番迷惑をかけたし、それだけに感謝はしていますけどね。

―― 釣りバカ日誌の富山ロケの時のように地元のフィーバーはありましたか?

本木:盛り上がったのは飯能と厚木。クライマックスの運動場は厚木なんですよ。小学校や女子ラクロスとの試合は飯能でやったんですよ。ま、だから、厚木、飯能、横須賀、秩父の4箇所を組み合わせて一つの場面を撮影したと言いますか・・・なんか撮影場所が飛びすぎていますね(笑)。あとは日活の撮影所に5日間ね。
とにかく、ロケハンの車は、一日平均300キロは走ってたんじゃないかな。


松竹大船調に代わるまったく新しい喜劇映画。その名も『松竹築地調』

―― 松竹のチラシにはハートフルコメディと書かれていますが、監督のイメージですと何喜劇と言うのが適当なのでしょうか?

本木:僕は群像コメディだと思ってますけどね。アクティブな群像コメディ。中高年群像アクションコメディ!・・・そんなジャンル無いか(笑)

―― 松竹は伝統的に大船調といわれるコメディを撮っていますが、大船撮影所が無くなった今、ドラッグストアガールという新しいジャンルの喜劇が出来たことで、大船調じゃなくて新らしい名称が必要かもしれませんね(笑)

本木:築地調でどうですか? あれは、松竹築地調の映画、よく分からなかったけど面白かったよ・・・なんてね(一同爆笑)


コメディにノリに乗った女優・田中麗奈さんの喜劇初出演!

―― そうそう田中麗奈さん、初コメディの主演ですけどどうでしたか?

本木:田中麗奈とも企画の相談してましたから、またやりたい・・・なんて言ってましたよ。
田中麗奈は予想以上にやりますよ。女優と言うのはもっとね、あれ出来ません、これ出来ません、なんてばっかり言ってるんじゃなくて、身体を投げ出して表現するもんじゃないですか。ね、本当は映像の中に私を見ろ・・・なんてね。それ結構やりましたね。彼女は想像している以上に思いっきりが良くて、それでいてさっぱりしているから、やり過ぎてもそれが嫌味には見えない。何よりもね可愛いく見えると。反感も持たれないところがね。後はね、緊張しないんですよ。あがらないんですよ、誰を相手にしても。だから、そういう意味では面白かったですね。
衣装合わせもね、最初は大物の田中麗奈だと思って、いろいろジャージでとか、足をあまり見せないように、とかしてたんだけど、バーンと見せブラと見せパンで来たりして、やりますよ彼女は。非常に男気を感じましたね。

―― 見せブラジャー?

本木:面白いエピソードでね、「見えてるよ」って言ったの、そうしたら「コレ、わざとなんですぅ」って言われちゃって。見せブラとか見せパンって、ほら、下着をはみ出す。去年流行ったじゃないですか、それを僕が指摘してしまったんですよ。ちょっと見えてるよブラって言ったら、コレわざとなんですと言われてね・・・だから、コメディをもっとやればいいんじゃないですかね。
「メリーに首ったけ」が好きだって言ってたから、あそこまでまでやったって良いんだってね。
ま、コメディで、やって良い俳優とやっちゃダメな俳優っているじゃないですか、観客として許せる人と許せない人。そういうバランスは良く取れてたな。
ま、彼女は、上手く演ろうと思わずに、感性だけで演って行くと言う、それがハマる女優なんですよ。


架空の町<摩狭尾(まさお)> この寂れた町の産業は<竹>だった

―― 脚本の宮藤さんについてお伺いします。「竹」というアイデアはどちらが?

本木:竹は、商店街がかつては何かの産業で栄えていて、今は廃れてしまった・・・という風にしたいと、僕が言ったら、宮藤さんが、そうしたら竹にしましょう・・・と言ってきたんですね(笑)。

―― 「摩狭尾(まさお)」は東京の町と言う設定なんですよね。

本木:そう東京です。東京の地図の一番端っこにある架空の町ということなんですよ。だから、多摩と狭山と高尾を組み合わせて「摩狭尾(まさお)」。これは宮藤さんのアイデア。
シチュエーションはこっち(本木監督)で考えるんですよ。そうすると、それへのネーミングや具体性を与えるのが宮藤さんは凄い巧いというか面白くて独特なんですよ。


アイデアに現実感を持たせるのが大変なんですよ

―― 突飛なアイデアですよね。反応は?

本木:ただ、それ(突飛なアイデア)を見せられると、スタッフではキャメラの花田さん(本木組撮影監督花田三史氏)と、音楽の周防さん(音楽・周防義和氏)が「コレどうするの?面白いのかな?」と心配したような反応を(笑)。面白いと信じてやるしかないという・・・(笑)
とにかく、アイデアはいいんですけど、それに現実感を持たせて行くのが大変なんですよ(笑)

―― 確かにアイデア出しの段階で、ここまで突飛だと内輪受けの可能性も出てきますものね。

本木:そうそう突飛、突飛。ま、設定はそうじゃないんですけど、どんどん突飛になって行くんですよ。それが今までの(宮藤さんの)木更津キャッツアイなど、ある種の映像自体のノリとテンションの高さで運んでいくと言う感じだったんですけどね。
まず、僕が最初に言ったのは、「僕はあまりヒロイックな人間が好きじゃない」と「全員が、イケてない人にしたい」と言って、その通りにしようと(笑)。ドラッグストアの脚本を読んでプロデューサ(瀬島光雄氏(?))は、独り、うひゃうひゃ笑っていましたけどね。色んな見方があるんだな、と。

―― ジェロニモはかなりの冒険ですよね。

本木:極めて危ないギリギリだったんですけど。

―― カメラテストなんて結構念入りにしたんじゃないですか?

本木:カメラテストと言うよりも、衣装合わせが結構長くやりました。イメージをどうして行くのか・・・というのがあって、余り芸術家風にしてしまうとシラケるし、全体のイメージは、絶滅した鳥みたいなイメージだって言ったら、(ジェロニモ役の)徳井さんが一番ピンときて、下は履いてなくて裸足で、ってね。
ラクロスの上下白のユニホームというのは、衣装部の鳥野くん(鳥野圭子氏)のアイデアですよ。頭の豆絞りは私ですけど(笑)。頭にバンダナじゃなくて豆絞りを巻いているんですよ。
結局ね、このオジさんたちのやっているラクロスって、本当のラクロスとは似ても似つかないものになっているんですよ(笑)
上下白の衣装はチープ感を出したかった。まあ、造型面としては、常に<ダサカッコ良さ>というのか、そこを作って行ってくれって指示していたんで、皆、うひゃうひゃ言いながら面白がっていましたね。

―― うひゃうひゃ?(笑)

本木:いや、もちろん真剣にですよ(笑)。スタッフが皆、乗って仕事が出来たというか、乗せられて仕事をしていたというかね。

―― 本木組の撮影は、ピリピリとした雰囲気があまりないですよね。

本木:そうですね。山田組とか阿部組とか朝原組は似たようなピリピリとした緊張の中でやっている雰囲気なんですけども、私の場合はね、多少ね。

―― 孤高ですかね(笑)

本木:孤高を行っていると言うか・・・(笑)。ま、何かあの雰囲気は面白いことが出来る・・・という雰囲気でやってもらえるのが一番いいかなと思っていますね。

―― 役作り。役者側とのコミュニケーションはどうでした?

本木:もう隅々までやりました。役者の側からのアイデアは出してもらわなくても困るという事でやっていったんですけど、一番長かったのは杉浦さんですね。釣りバカの時も、2日間を5〜6時間で、のべ10時間以上をかけて話し合いましたよ。どんな医者にするかって言うことで、自分の知り合いにこんな医者がいるって、要するに、自分の中にあるイメージをお互いに語り合ってイメージを固めていくということですね。


試合の撮影ではプロラクロスチームと役者で本当に試合をしてもらった

―― アクションについて伺います。北米のプロ・ラクロスチームを召還したそうですね。

本木:召還したんですけど・・・4人しか来れなかったんですよ(笑)。最初は「来る来る」なんて言ってたんだけど、パスポートやビザなど、国外に出るのに色々と制約を受けるらしくね。ま、4人来ましたよ。もの凄い技術でしたね。
ラクロスは12人いなきゃいけないんで、だからインディアン・チーム4人にプラス8人。国内のタレント事務所から(笑)。

―― ラクロスってスポーツは技術も必要でしょうし撮影は大変ではなかったですか?

本木:大変でしたね。でも、プロの4人がいると試合が締まりますから「いいな」と思って、カット割りは試合シーンだけで毎日、百何十カットもやってたんです。結局、芝居だとあまり切実な顔が出ないから、思い余って、5分ハーフで試合してもらったんですよ。それを3キャメで誰かに狙いを定めて、カメラをまわしていくと言う方法を取ったんですよ。
普通に「真剣にやってくれ」とお願いしてやってもらったら、オジさんチームが先取点入れちゃったんですよ。北米インディアンチームにリードしちゃったんですよね。

―― え?ホントに?12対12で?

本木:本当に(笑)。役者チームの方が強かったんですよ(一同笑)。
相手は4人のプロがいる外国人混成チーム。こっちはオジさんの俳優チーム。12人対12人で試合やったら、オジさんチームが先取点を入れて、困っちゃってね。いや、使えるところだけ編集したんだけどね(笑)。
最初は、ボールをまず奪い取れないだろうと思ってたんだけど、だから、オジさんたちは凄い喜んでいましたよ。

―― 誰が入れたんですか?

本木:六平さん。もの凄い燃えるんですよ。あの人。
スタッフは気温4℃くらいと寒いし、皆、大変だったんですよ。でも俳優たちは極めてイキイキとしてましたね。相手は4人のプロがいる外国人混成チーム。こっちはオジさんの俳優チーム。12人対12人で試合やったら、オジさんチームが先取点を入れて、困っちゃってね。いや、使えるところだけ編集したんだけどね(笑)。
最初はだから、ボールをまず奪い取れないだろうと思ってたんだけど・・・。


喜劇映画で大切なのは<お客さんに笑いを強要しない>こと

―― 本木さんはこれまで喜劇ばかり5本目になりすが、喜劇を演出される上で注意されていることはありますか?

本木:注意しているのは<笑いを強要しない>ということですね。面白いだろうとか、笑わせようという意図は見せちゃいけないなということ。芝居している連中は、ただ、ひたすら真剣に演って欲しいと、それが可笑しくなるところまで、作って行くという事なんでしょうか。
やっぱり、滑った喜劇と言うのは見ていられないものになるので、コメディを志して滑っちゃっている、というのは一番悲惨な状態なのです。あくまでもスクリーンとお客さんとの間の関係で、喜劇と言うのは成立しているので、そこが断ち切られると言うモノほど悲惨なものはないという状態になります。だいたい失敗しているのは、作っている側だけが面白がちゃっているという、内輪受けね。
だから、避けたいのは、内輪受け、強要する事、あとは悪ノリのし過ぎですね。
意外と真面目にね、やり過ぎくらいやっても良いんですけど、どこまでやればお客さんが離れるか・・・とかね(笑)。やり過ぎて離れないギリギリのところで保つというかね(笑)

―― ちょうどラクロスのシーンでチャウ・シンチーばりのCGで(笑)

本木:ええCGね、確かに「少林サッカー」と「ロンゲストヤード」。あと何故か「スパイダーマン」も参考にしたりしてね。CGも今回24Pという高画質のビデオで撮ることが出来たんで、フィルムのように合成に手間がかかったり、ムダ使いを気にしたり、ということが無かったものですけど、今回は予め、最初からCGカットをたくさん決めていた訳なんです。
そうしたら、これだと膨大に時間と費用がかかると言うので、それじゃあ、アナログ的なCGに敢えてしようか・・・という風に開き直ってね(笑)。
別に、チャウ・シンチーばりのものなんか無いんですけど(笑)。ま、ちょっとアナログに近い、だけども安っぽくない、というか、可愛らしいCGみたいな・・・ね(笑)。

―― この間、僕が本木さんとお会いした時に「少林サッカー」にどこか本木喜劇に通じるものを感じたんで、チャウ・シンチー監督のそんなお話をしたんですけど・・・(笑)

本木:チャウ・シンチーにあこがれ未満な・・・という感じね(笑)。映画好きな人は、きっと「ニヤッ」とするかもしれませんね。

―― チャウ・シンチー監督が、喜劇は崩すところと現実とのバランスが難しい、なんてお話されていましたね、あとテンポと・・・。本木さんだと「釣りバカ日誌イレブン」がそうだな・・・とね思い浮かんだ訳です(笑)

本木:それもその通りですね。今、僕が言ったのもバランス、近いものがあるのかもしれないですね。
そうね、(釣りバカ日誌)イレブンがね、そうですね。あれも結構、笑わせるところだけを繋げて行ってもコメディにはならないので、あくまでも、現実に一回戻したりしながらやっていくと言いますか、そのリズムだと思いますよ。まさしくバランス。
で、CGに関しても多用したかったのですけど、色々な事情があって、あれもやりたい、これもやりたい、って言っていると、CGのデザイナーの方から「少林サッカーは2年ポスプロに掛けられたんですよ。でも、この映画は3ヶ月です」とね。言われましたね(笑)。
釣りバカなんかでも、雷が落ちるとか、凄い日本海だな、というところとか細かいところでCG使っているんですが、あれ結構お金かかるんですよ。


「ドラッグストア・ガール」の企画があったので釣りバカ日誌を続けなかった

―― 今度の釣りバカ14は朝原監督に代わりましたね。釣りバカを続けなかったのは?

本木:結局、釣りバカ・シリーズを3本撮って、その後に釣りバカの続編の企画が出る前に「ドラッグストア・ガール」の話が来たんですね。富山篇の「釣りバカ日誌13」というのは、割りと「色々と制約がある中で、自分が出来ることをやったな・・・」という感慨があったんですよ。
色んな見方をする人がいるんですよ、イレブンが一番良かった、と言う人もいれば、12の情緒・文芸的なところが最高だった、とかね、で、13が最高傑作だなんて人もいるし、ま、良いんですけど、シリーズ3本と言うのは、「三本締め(さんぼんじめ)」なんて言葉もあるしキリが良かったからね(笑)

―― そうですか、本木さんの出身地が富山県ということで、釣りバカ日誌13の富山ロケが故郷に錦を飾って釣りバカ監督の最期だったのかな・・・なんて思ってました。

本木:いや、ま、その気持ちはちょっとはありました。でも最初から3本でお終いだって話ではなかったのでね。
実は、次の釣りバカを中国でやりたかったんですよ。釣りバカは、自分の地元の富山篇であれだけ盛り上がっちゃったので、例えどんなキャストを持って来ても自分はもうこれ以上の数字を上げられない、と思ってね。だから、もし次やるなら、上海を拠点に、例えば揚子江で、ハマちゃんが向こうの太公望と釣り対決する・・・みたいな話にするなんて話をしてね。

―― 海外ロケの釣りバカというと、イレブンの頃からそう言う企画があったと聞いていますが?何でしたっけ、えーと「釣りバカ日誌 オーパ」でしたっけ?

本木:そう(笑)。「釣りバカ・オーパ」と「釣りバカ・ターボ」 ※注※とかね(笑)。ま、そういう話はずっとあるんですよ。海外ロケしかないと、本当に思ったのですよ。それで、あのシリーズには自分なりに、ある種の決着をつけたいなとは思っていたのだけれど、諸般の事情でまた国内だということもあったしね。

―― ハマちゃんは普通のサラリーマンですし、今の時代、海外旅行に行くといってもおかしくはないですよね。

本木:そう(笑)。海外でロケすると同じ予算で大掛かりなこともできるし、スタジオも大きいし、いいなと思ってたんですよ。ま、諸般の事情があってできなかったのもあって、これも良い機会だから、田中麗奈ちゃんの心意気に賭けようかなということで、「ドラッグストア・ガール」やろうと言うことにね。
それで、まずは田中麗奈のコメディを作ろうということで、色々と準備をやりだしたら、結構、釣りバカのスタッフがどんどん合流するようになってね。これはインディーズだから、もしかすると松竹もお金出さないかもしれないし、手伝わなくてもいいよいいよ、なんて色々とやってた訳ですよ。

―― なるほど、いつも苦労してますね。イレブンもある種かなり冒険してましたし(笑)

本木:そうですね、内容的にはかなりね(笑)。でもね、釣りバカはやっぱり安心して出来るんですよ。それを離れると、色々と逆風は吹いていましたね。


実は公開が危うかったオリジナル作品『ドラッグストア・ガール』

―― ドラッグストア・ガールの初号はいつ頃でしたか?

本木:去年の5月に終わってたんで、1年近く経ちますね。正直なところ「よく公開してくれたな」と言うところなんですよ。当初は、単館上映系になるかもしれないと思ったこともありましたし。(作品を)見せていくと変わって行きましたね。

―― 「てなもんや商社」も単館でしたね。

本木:単館2週間でしたね。「ラブ・レター」 ※注※が待っていた。
今回も「この世の外へ」 ※注※が全国公開でね。

―― 「てなもんや商社」はあれ?いつ上映してたんだ・・・なんて東京で1館だけでしたよね(笑)

本木:松竹セントラル2という、数ヶ月後には取り壊される劇場でやって、でも、あれは宣伝も舞台挨拶もしなかったんですが、3日目か4日目くらいには「立ち見が出た」なんて伝説になった・・・と言われただけで、結局は2週間で打ち切られましたけどね(笑)。


田中麗奈と宮藤官九郎と本木組の融合により新しい喜劇が生まれた

―― 最後に見どころを教えてください。

本木:今まで違うところにいた田中麗奈とクドカンと本木組が融合して、全く新しい喜劇映画ができた、ということと・・・。

―― 松竹築地調ね(笑)

本木:そう、松竹築地調が出来た(笑)。後は、ラクロスと言う珍しいスポーツ、オジさんの職人芸、そしてオジさんにどれだけ攻められてもひるまない田中麗奈みたいな・・・というのが面白いかな。田中麗奈は今までの映画と全く違う攻めの芝居をしていますからね。

(2004年2月4日FJMOVIE.comオフィスにて収録)
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ドラッグストア ガール
(DRUG STORE GIRL)

ヒットメーカー宮藤官九郎脚本×田中麗奈主演 / 本木克英監督
CAST
大林恵子:田中麗奈
鍋島浩次:柄本明
沼田:三宅祐司
山田:伊武雅刀
済念:六平直政
ジェロニモ:徳井優
向井秀子:余貴美子
信次:荒川良々
富江:藤田弓子
山田の妻:根岸季衣
小松兄弟:篠井英介・山咲トオル
竹之内:杉浦直樹
社長:三田佳子
STAFF
監督:本木克英
プロデューサー:高橋康夫
脚本:宮藤官九郎
撮影:花田三史
美術:太田喜久男
音楽:周防和義
照明:松岡泰彦
録音:岸田和美
編集:川瀬功
助監督:伊藤匡史








2003年2月7日より全国ロードショー / 上映時間105分 /配給:松竹
©2003「ドラッグストア・ガール」製作委員会(テンカラット/電通/製作推進プロジェクト)

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