日の当らない渥美清劇場

『かあちゃんと11人の子ども』 1966年 松竹大船/昭和41年度芸術祭参加作品


コメント(98.07.30)
主役の左幸子、左時枝姉妹は当たり役。渥美清の脇役作品では一番のお薦め作品と断言しよう!
 個人的な評価.................98点 絶対観るべき名作!
 渥美目立ち度.................脇役! 珍しい老け役の渥美清と静かなる演技

監  督..........五所平之助
脚  本..........堀江英雄
原  作..........吉田とら(光文社・カッパブックス)

出演
  左幸子  (吉田とら・母ちゃん)
  渥美清  (吉田貞治・父ちゃん)

  久我美子 (成子・長女(ナン姉) 高校教員)
  稲野和子 (旭子・次女(アンコ姉) 小学教員)
  内藤武敏 (聖 ・長男(聖 兄) 町役場勤務)
  近藤洋介 (将 ・次男(スー兄) 県庁職員)
  十朱幸代 (京子・三女(お京姉) 中学教員)
  倍賞千恵子(文子・四女(文子姉) 大学生)
  佐藤英夫 (厚 ・三男(アンポ兄) 建設会社勤務)
  工藤堅太郎(治 ・四男(オー兄) 大学生)
  田村正和 (俊 ・五男(ター兄) 大学生)
  藤岡弘  (耕 ・六男(ツー兄) 高校三年)
  左時枝  (都 ・五女(ミーコ) 三島北高校一年生)

  佐乃美子 (吉田 仙・長男(吉田聖)の嫁 小学教員)

  八木昌子 (せい・とらの姉)
  笠置シズ子(きく・とらの叔母)
  中村是好 (弥助・とらの仲人)
  大塚君代 (おしげ・とらの仲人)

  香山美子 (秋山先生・成子の学校の先生)

  竹脇無我 (吉田善作・貞治の弟 後に戦死)
  渡辺紀行 (吉田菊雄・貞治の弟)
  三津田健 (熊作・祖父(貞治の父) じいちゃん)
  田中筆子 (かつ・祖母(貞治の母) ばあちゃん)
  岡村文子 (まち・曾祖母(貞治の祖母) 子供たちの曾婆ちゃん)
  浦辺粂子 (産婆)
  三井弘次 (長さん・馬喰)
  殿山泰司 (松吉・農夫)
  柳沢真一 (役場の小使)

  高見孝三郎、高木信夫、加藤秀樹、今井健太郎
  小田草之介、石井富子、日本児童劇団

【ものがたり】・・・・しかし、特に物語の特徴はないのだ(^^;)
静岡県田方群土肥町大久保。農家で芝刈りに精を出す人達。肝っ魂母ちゃんと父ちゃん、そして11人の子供達である。
四女の文子は北海道の網走へ教員として就職する予定だが、父ちゃんと母ちゃんは遠くに赴任することを大反対していたのだ。しかし、夜の家族会議では全員が賛成。翌朝、早起きした末っ子の都は母ちゃんに昔話を聞いた。辛いと思ったことは何度かあったけど、損だと思ったことは一日とてなかった ―――と語り出す母ちゃん。
父ちゃんと共に労働に精をだし、母親として子育てに苦労してきた母ちゃん。戦争の折りには、まだ小さな子供たちを食べさせるためにとても苦労した。そして、時が経ち、次女、次男が結婚し初孫も誕生した。世の中には背負いきれない苦労があるだが、この赤ん坊の顔を見てるとそんなこと忘れてしまう―――と楽しそうに語る。
ある日、北海道で働く文子が急病で入院したと知らせが入る。危急の時に助け合う家族。兄弟姉妹と父ちゃんの看病でなんとか山を越す文子であった。昭和39年、末っ子の都の母ちゃんのことを書いた詩が、全国コンクールで総理大臣賞を獲得。壇上で詩を朗読する都の詩を聞きながら、涙する母ちゃんであった。

【感想】
実話の手記を原作に映画化した作品らしい。感想を一言で表現するなら、最期までドラマの無い作品・・・・だが、ほのぼの観れて幸せな気分100%!!
私の大好きな作品である。はっきり言って、渥美清の脇役作品としてはイチオシ作品だと断言しよう(^^)。
一番最初に感じたことは、なんて渥美清は演技が上手いのだろう・・・である。次に思ったことが、ここまでほのぼのしたホームドラマは見たことがない・・・であった(^^;)。ほのぼの度120%だ(^^;)。思わずリフレッシュ!!

渥美清は11人の子供たちの父親役。職業は酪農家だ。『男はつらいよ』シリーズでお馴染みの面々が娘役で出演するのが奇妙だが、そんなこと全然気にならない程、渥美清の演技が自然である。いやぁ、名演だ!
また、長女役の久我美子とその父の渥美清。実年齢からすると逆の筈なのだがこれも気にならない。渥美清の老け役がこんなにも似合っているとは驚いてしまう。
そして何よりも感心したのが、映像的な久我美子の美しさ―――他の女優達が庶民的なだけに白黒映画時代の名女優といわれる彼女の華というものが一目瞭然で確認できる映画でもあった。はっきり言うと彼女だけ浮いて見えたのだ。
こういう物語に特徴が無い(というかほとんど皆無に等しい)作品で、これだけ面白く見れたのは、映像美と左幸子や渥美清の自然な演技、そして、豪華出演メンバーあってこそだと思う。ワンダフル、ビューティフル(^^)。

・・・おおっと、ちょっと誉めすぎたかな(^^;)。

さて、物語を整理しましょう。物語の構成は 現在→過去→現在 と言うふうに進行し、常に母ちゃんこと左幸子が画面の中央に位置する。

〜〜〜〜 かあちゃんと11人の子ども 歴史年表 〜〜〜〜
大正14年、高等女学校二年の時に母ちゃんと父ちゃんは結婚。そして本祝言を境に最初の子供が生まれた。
昭和 4年、当時は蚕が収入源。そして次女が生まれる。
昭和 6年、満州事変など世の中が物騒になってくる頃、待望の男の子が生まれる。
昭和 8年、次男誕生。
昭和10年、マチ婆ちゃんが88歳で死去。五女、六女が生まれる。戦争、そして、召集令状が父ちゃん(貞治)の元へ。
昭和12年11月1日、父ちゃんの弟の善作が戦死。
昭和13年、前線の父ちゃんから軍事郵便が届く。「前線に出ることもあり、もとより死ぬ覚悟だ」。戦争の激化で次第に生活が苦しくなる。が、暫くして父ちゃんが無事凱旋。
昭和15年、三男誕生。
昭和17年、四男誕生。これで8人目。
昭和19年、サイパン島陥落し本土空襲。9人目誕生。
昭和20年、広島に原爆投下。父ちゃんに二度目の召集令状。「40歳を越えた年での招集で、いよいよ今度は帰れないものだと覚悟を決めていた」―――しんみりする家族。
同、8月15日。耐え難きを耐え、忍び難きを忍び・・・そして敗戦。
昭和21年、そして10人目、11人目を出産。
兄弟で唯一体の弱かった五男の俊も中学に進学するとマラソンをし始める。
次女の結婚、次男の結婚。三女・京子(十朱幸代)の結婚。「農家の長男に嫁は来ない」とぼやく長男は、文子(倍賞千恵子)の紹介で無事に結婚。そして初孫誕生。
文子の入院。
昭和39年、末っ子の都が「かあちゃん」と言う詩で総理大臣賞獲得(旺文社学生コンクール)。

戦争 → 召集令状 → 戦争に行く父ちゃん → 泣く妻と子供 という図式では、普通の作品だと何らかのドラマがあって然るべきだが、この作品が凄いのは父ちゃんが怪我一つせずに凱旋する。
そして、二度目の召集令状 → 40歳を超えて今度こそ帰れないと嘆く というしんみりしたシーンでは、いきなり次のシーンで終戦で戦争に行かずにすんでしまう父ちゃんの姿があるのだ。
また、最期の 詩を朗読する末っ子 → 体調を崩して寝込む母ちゃん(フラフラして足元が頼りない) → 詩を朗読する末っ子のアップ → 涙する母ちゃん といったカメラ割りが為され、「もしかして母ちゃんは死んでしまうのではドキドキ」と心配する我々観客をよそに、次のシーンで畑仕事に精を出す家族の姿が映し出されてハッピーエンドと来たもんだ(^^;)。
恐ろしいまでのドラマの無さ、そして、ほのぼの度の高さだ!!ここまですると素晴らしすぎて感動する。私はこういうのが大好きだ、うん。

左幸子さんの母ちゃん役は当たり役。泣き、笑いという喜怒哀楽の表情が色んなシーンで常に使われる。そして、素朴な母ちゃんの行動は、俊(田村正和)のマラソンシーンでは、時として喜劇の役割をも兼ねてしまう(^^)。
病気の家族を心配する兄弟(姉妹)愛とその結束の強さもところどころに見えて、非常に微笑ましいホームドラマであった。お薦め作品だ(^^)。


◆ひろぽん(^-^)/VYA01323◆
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