山田洋次の軌跡 by KIYO

「山田洋次の軌跡」連載第4回

第4話「いいかげん馬鹿」
<概要>
「馬鹿まるだし」の成功の後、山田洋次は続けてハナ肇主演の作品を2作、いわゆる「馬鹿」シリーズを撮る。その第2作目がこの「いいかげん馬鹿」である。

<ストーリー>
昭和19年、瀬戸内海の小さな漁村の島に、弓子が母親に連れられて疎開してきた。弓子はなかなか友達もできなかったし、疎開してからすぐ母親も亡くなってしまう。そんな弓子に優しくしてくれたのが乱暴者の安吉であった。安吉は孤児であったのを、漁師の源吉(花沢徳衛)にひろわれて育てられていた。
安吉は弓子を船に乗せ、海の中の世界を見せてやる。ところがその間に船が流されて大騒ぎになり、安吉は責任を感じ島を去ってしまう。
十数年後、弓子は美しい娘になり(岩下志摩)岡山の大学に合格した。
ある時、あの安(ハナ肇)が帰ってきた。しかもジャズバンドの興行師として。ところがそのジャズバンドは三流で、バンドマスターは宿代を踏み倒して逃げてしまい。安は宿で働かされることになった。
源吉の弟がブラジルで成功し、島に帰ってきた。安吉もブラジルに行くことを決意するが、孤児であった安は戸籍がない。安は密航をするがあっという間に捕まる。しかもその船は釜山行きであった。
数年後、また安が帰ってきた。今度は著名な作家だという男(松村達雄)をつれて。みんなは村をあげて作家を歓迎する。なぜなら人気のラジオドラマの作家だからである。ところがその作家にも疑いがかかり、その作家の宿代を払うためにまたまた安は宿で働かされる。
ラジオドラマの放送を聴くと、なんと島のことを紹介しているではないか。
あの作家は本物だったのだ。それから島ではドラマが映画化され一躍有名になり、観光地へと発展していく。ホテルなども建設されて島は活気出すが、弓子は島の変わり様が気に入らない。
安は弓子が気に入ってくれるよう水中観光船を作る。昔弓子に水中の世界を見せたことを思い出したからだ。ところがその船が沈んでしまい、安は責任をとって警察に捕まる。
それから数年がたち、島は観光地となり、弓子は島の学校の教師となる。
源吉は安のことを心配しながら死んでしまう。
弓子が修学旅行で大阪に行くと街で懐かしい声が聞こえてきた。そこには香具師となった安吉がいたのだ。

<解説のような感想>
今回の作品を観て、「馬鹿まるだし」よりも牧歌的な印象を受けた。何故だろうか?
ハナ肇の性格設定は前作と同じとはいえ、今回はあくまで「ふるさと」のために何とかしたい、島のみんなが喜んでくれることをしたい、と思って騒動を起こすのである。この設定はより「男はつらいよ」に近い。島の人間も困ったやつだと思いながらも見捨てるわけではない。こういった点が「馬鹿まるだし」よりマイルドな感じを与えるのかもしれない。
しかしながら喜劇とはいえ、この作品で描かれる島の生活はほぼリアルなものである。漁村としては生活が成り立たず、観光に活路を見いだそうとするのは現実にあることであり、ましてやドラマのロケ地として紹介してもらえれば観光の目玉になる、というのは後年「男はつらいよ」で本当に起きたのである。何という皮肉であろう。
この作品は1964年の作品だが、今ではもっと切実な問題なのである。
山田洋次の社会を見る目がそれだけ鋭いものであったということだが、あまりに悲しい現実ではある。
だがこの作品が湿っぽい社会派作品になっていないのは、何といってもハナ肇を主演とした喜劇映画だからである。
「下町の太陽」がリアルな設定の元に、倍賞千恵子を主演にしたとはいえ理想を語る倍賞に共感を感じることは出来なかった。ところがハナ肇という破天荒なキャラクターが登場することでそのドタバタの中に大事な問題を語らせることが出来る。まさしく「笑顔の中に真実がある」という山田喜劇とも言うべきものがここに芽生えてきており、「男はつらいよ」の到達へとなっていくのであろう。

<おまけ>
○岩下志摩のセーラー服姿は必見です。(ほかにあるのかな?)

○ジャズバンドのスターの名前が「サリー松丘」!
(おや?どっかで聞いたなあ。(^_^;))

次回、第5話「馬鹿が戦車でやって来る」に続く。
(あなたの人生変わる、のかな?(^^;))

97/04/30(水) 01:01 KIYO(YRG02560)


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