
「山田洋次の軌跡」連載第12回
第12話「ハナ肇の一発大冒険」
<概要>
山田洋次の初期14作品は後期作品と違い、実に試行錯誤の繰り返しの中で、後期の「家族」「息子」では観られない側面を見せてくれるのだ。
この「一発大冒険」はなんと、ナンセンスコメディアクション映画なのである。
<ストーリー>
肉屋の主人である社長(ハナ肇)の元にフランスからの手紙が届いた。それを見た社長は、いそいそと旅行代理店に行き、フランスへ行きたいと告げた。
店員が理由を尋ねると、社長は数ヶ月前に起きたある出来事を話し出した。
ある時、社長が外回りのついでに、気ばらしに高速をとばしてあるレストランで食事をしていた。
すると美しい娘(倍賞千恵子)が相席を申し出て、社長のテーブルに座った。意気投合した二人は木更津までドライブをする。ところが、娘は何者かに狙われているというのだ。娘が泊まるという横浜までフェリーに乗って付いていく。
ところが怪しい二人組と出会ってしまう。
横浜のホテルに着くと、娘は旅の理由を説明をした。なんとフランス人の老人から、ある人にダイヤの詰まった袋を渡すように頼まれたのだ。娘は社長にダイヤの袋を入れたバッグをたくす。社長がホテルのバーで飲んでいると、あの二人組と再会する。二人組がダイヤを狙っているとも知らず、社長は一緒に飲んでいたが、その隙にダイヤを盗まれてしまう。
翌日、盗まれた事でショックをうけた社長だったが、実はダイヤは偽物だったのだ。怒った社長だったが、娘が泣いてわびるのを見て、無事にダイヤが渡せるまで娘に付いていくことにしたのだった。
途中、登山をやっている真田という青年と三人で旅をすることになる。
静岡から、行き先の富山まで汽車で行こうとしたが、列車事故のため、アルプス越えを決める。
山を目指してると、警察の検問が見えた。もしやダイヤのことがばれたのかと咄嗟に車からダイヤを川に投げ出してしまう。ところが検問は殺人事件が起きて犯人を探していたのだ。一行は再び川に戻ってダイヤを探しているうちに日が暮れてしまう。
日が暮れた上に、車は山道で脱輪してしまったので三人は歩いて山越えをすることにした。吹雪の中、ようやく山小屋にたどり着く。
山小屋には先客がいたが、実はそれが殺人事件の犯人だったのだ。
夜が明けて、殺人犯の隙を見て真田はおとりになって二人を逃がすが、真田は犯人に撃たれて死んでしまう。
二人は必死に山の中を歩き続けるが、吹雪は全くやまない。力尽きた娘を抱えて歩き続ける社長。
翌日ついに山を越えて、富山にたどり着いた二人。そして目的のダイヤを渡すことが出来た。二人は日本海を見ながら別れをするのだった。
という話をしたが、店員は信じられない顔である。社長は話をしたことで満足し、フランスに行くのを止めた。
そして数ヶ月たったある日、またあの日のように気晴らしに車を走らせ、あのレストランで食事をしていると、またしても美しい美女が社長の前に現われるのであった。
<解説のような感想>
カーチェイスあり、銃撃戦あり、アクションあり、山岳シーンあり、倍賞千恵子の入浴シーンあり、キスシーンあり....。と書くとなにやら007映画のようであるが、さすがにハナ肇主演で監督が山田監督である以上、そうはならない。
実にあっけらかんとしたコメディなのだ。
ストーリーを読んでいただければわかるが、リアリティとか社会性などというものはこの作品には無い。ただひたすらに軽快にストーリーを進めていくことに演出の力が注がれているのだ。それが実にすがすがしく感じるのだ。
この作品は89分という山田作品の中でも特に短く、淀みがない。
またナンセンス性という点でも、後期の作品では見られないはちゃめちゃぶりである。私はこれを見ながら、岡本喜八監督の「殺人狂時代」を思い出してしまった。あの作品も実にナンセンスなアクションコメディであった。
このような作品が後には作られなくなってしまうが、やはりこういう作品はある若さが必要なのであろうか。エッセンスとしては「釣りバカ日誌」のドタバタぶりに通ずるものがあると思うが。
出来ればこのような作品があと数作あっても良かったかも、と感じた佳品である。
<おまけ>
さて、この作品にはもう一人の倍賞さん、倍賞美津子さんが出演しているが、これはクスッと笑えるので、是非ご自分の目で確かめていただきたい。
次回、第13話「吹けば飛ぶよな男だが」に続く。
P.S. ありゃあ、結局隔月連載みたいになってしまった。(^^;;;;)
次回は....だんだん狼少年になってるので期待しないでね。(^^;;;;;;;;)
98/01/07(水) 00:42 KIYO(YRG02560)