ミハイルの寅さん鑑賞日誌

= 第26回 『男はつらいよ・寅次郎かもめ歌』 =
1999.3.22

筑波山の天狗伝説を悪用する悪者達を懲らしめる時代劇ヒーロー寅さん。
この夢のシーンは拍手喝采で故郷柴又に迎えられたいという寅さんの潜在意識の 現われだったのでしょうか。
主題歌の流れる堤防での騒動もいつもの事ながら、ボクサーがボクサーらしくな かったのもご愛嬌でした。
さっそうと自転車で登場するサクラ、倍賞さんって本当に自転車が似合うように なったんですね。
サクラとオバちゃんの会話でさらりとサクラ一家が家を購入したことを説明して しまうなんてさすがの演出、説明不足はありませんね。
国勢調査と寅さんを関連付けて、そこに寅さん登場という趣向も何か安心感を醸 し出すタイミングでお馴染みさんも初めての観客でも楽しめる工夫が」されてい ると感じました。
毎度の毎度の寅さんのお手軽お土産ですが、やはり持ちやすい紐のついた小さい 漬物のようでしたね、このシリーズの終わりの方ではこのお土産がどう変化して いるくのか、変化しないのか楽しみです。
サクラ一家の築3年の家ですが、狭いながらも楽しい我家ってやつでしょうか、 この家の隣人をつかった描写ってけっこう風刺が利いているように思えました。
多額の借金をしてローンに束縛される人生にたいする無言の「これでいいの?」 という問いかけがあるように思えました。(私が日本型持ち家指向に批判的だか らかしら?)
二階の空部屋を「お兄ちゃんの部屋」というサクラの言葉、雰囲気を盛り上げる 音楽、これだけで寅さんの感激が手に取るように分かります。
サクラの「欲しいものはお金」に応えて小金持ちの源ちゃんからお金を借用(?) するところは寅さんらしいところで、後でオバちゃんが源ちゃんがお財布の中身 を数えている所に小言を浴びせるシーンと合せて楽しめました。
さて、トラヤでの引越し祝の一件ですが、店を抵当に入れたオイちゃん、ローン の保証人になったタコ社長なるほどの援助です。
ただ、この時点で店を作り替えてサクラ一家と同居という選択をとらなかったオ イちゃんとオバちゃんの心境については興味を引かれました。
それはそうと、寅さんのお祝いに中身を確認せず、タコ社長の「2千円か?」に 2枚だから条件反射で「2千円」と応えた後で中身が2万円であたふたする博と サクラですが、これでは寅さんが怒るのは当たり前です。
寅さんの怒りに油を注ぐタコ社長の「偽札?」も最高の台詞で笑えました。
ここでの寅さんの「桐の箪笥」という時代とのズレを感じさせる台詞も利いてま した。
満男君もちゃんと寅次郎おじさんに挨拶しないとね、きっと家で博が寅次郎おじ さんの事を批判的に話している影響が満男君に出ているのでしょう。

荒海とカモメ.....絵になりますね。
民謡大会で営業の寅さんと思いきや、啖呵売はポンシュウに譲り見るからに寒そ うな寅さんでしたが、啖呵売って演じ手でこんなに差が出るとは驚きでした。
やはり渥美清は上手かったと再認識しました。
テキヤ仲間の死を聞き、墓参りを思い立つ寅さんですが北海道といえば望郷篇で のテキヤの親分の最期を思い出されました。
奥尻島で覗いた室内の遺影、これってひょっとして山田村オフ特別ゲストの五十 嵐助監督ではないかしら?(確証なし、単なる印象)
イカの加工場にテキヤ仲間の遺児水島スミエを訪ねる寅さん、さぁ登場の蘭ちゃ んでしたが、何か冴えない印象です、表情が現わさない演技なのかメーキャップ なのが、これではあき竹城の印象の方が強かったりして。
死んだ水島ツネ吉ノ墓参りで父娘の会話の不足を一挙に埋めてしまう寅さんの何 気ない話ですが説得力がありました。
旅館でくつろぐ寅さんを訪ねるスミエ、東京脱出のチャンス到来といったところ でしょうか、よくアメリカの映画で田舎の町から連れ出されることを願うオネイ サンが出てきますが、日本に置きかえるとスミエのようになるのでしょうか。
印象でいえば、スミエは函館で過ごした日々、旅館で寅さんにお酒をサービスす る手慣れたところ等から「奮闘篇」の花子とは明らかに違いますね。
寅さんにはその当りの認識があったかどうかは不明ですが。
「葛飾」、「帝釈天」これって「男はつらいよ」ファンでないとスミエ同様読むの に苦労するのではないでしょうが、まぁ葛飾はマンガの影響で読める人は多いか もしれませんが、書けと言われると少々厳しいものがありますね。

久々の青山巡査、オバちゃんの「しばらくね〜」も気が利いた台詞でしたね。
婦女子誘拐犯の手配書の似顔絵も楽しい趣向でした、寅さんそのもののような顔 ですもの、寅さんかと心配するオバちゃんと「バカ、するわけないだろう」と寅 さんを信じるオイちゃん夫婦の対応の違いも興味深いものでした。
血の繋がりはもちろん、寅の幼い頃を知っていて、喧嘩はしながらも寅さんを信 頼しているオイちゃんと、「あの男がまともなら」と思わずにはいられないオバ ちゃんの違いを感じることができました。

これからは定時制高校の話になるわけですが、オイちゃんの台詞で語られる寅さ んは中学3年中退というこの26作の設定ですが、第2作における葛飾商業中退 の設定からの逸脱ですね。
まぁ、パラレルワールドってことかな(^^;)、それにしてもわざわざ設定を変え る必要もないように私は思いますが。
トラヤの人々の気前の良いボランティア精神って凄いですね、仕事の斡旋から勉 強の世話、下宿の提供(きっとお金を取ってないんじゃないかしら)等私にはと ても出来ない事ばかりです。
勉強のシーンではサクラの家での勉強に同伴したトラさんが室内で帽子を被って いたことが妙に気になりました。
サクラがスミエに英語を教えていたのは前々作でジョーダン君の世話をした時の 経験をいかしたのでしょうね....(^^;)
しかしお百度参りするオバちゃんってとても律義な人のために一肌脱いじゃう真 面目な女性なのですね。
試験当日の禁句ネタは理屈抜きに楽しめましたが、ビビるスミエを説得する寅さ んに年期と言うか心意気にょうなものを感じました。
葛飾高校での松村2代目オイちゃん扮する先生との遣り取りも楽しめました。
先生にお金を渡そうとする寅さん、てのも寅さんが普通の世界の人ではないこと を象徴していましたね。
無事入学して喜ぶスミレ、教科書無料ですか、今はどうなんでしょうね?
丹前(でしたっけ?)を着た寅さんと抱き合ってよろこばスミエ嬉しさが伝わっ てきました、抱き合う場所の設定がとても合っていたように思います。
その後のトラヤでの会話で寅さんが学校に押しかけていることを説明してしまう のも自然で分かりやすくて次のシーンへの興味を刺激してさすがですね。
松村先生の名調子もあり、授業シーンは素直に観ることができました。
学校に馴染んでしまう寅さんってのも楽しい趣向でした、授業中に掃除のおばち ゃんとお煎餅でお茶とは世慣れていますね。
トラヤにやって来たスミエ・ママとスミエの出会いも印象に残ります。反発する スミエと別れた後、電信柱での遣り取り、心憎い演出ですね、さりげなく幸せそ うな親子を配したり流石ですね。
スミエと大工の青年の再会も短い時間でしっかり決着を付けてしまうのも流石で す。
8時でそわそわする寅さんってのもカワイイが、この調子で面倒見られたら見ら れる方が耐えられなくなっちゃうでしょうね。
堂々と朝帰りのスミエ、スミエの結婚宣言に2階に行ってしまう寅さん、いつも の事ですが、はて寅さんは失恋でこのような行動をとったのではなく、自分の保 護がもはや不必要になったことをこのような形で知らせられたのが耐えられなか ったのか、保護者というか彼女を幸せにする役回りを他人に取られることが耐え られなかったのか....単なる失恋ではないでしょうこのケースは。
寅さんは思い込みが強く、その思い込みが現実の前に敗北した時、旅立つのかも しれません。
旅立ち際のスミエへの「幸せになるんだろうな、ならなかったらしょうちしない ぞ」がとても素直な発言のように感じました。

あき竹城との再会、一度だけの出会いでも彼女に強い印象を与えていたとは寅さ んもてますね。
この後の寅さんの運命が心配.......嬉しい女難だったりして でもね、こんな幕を下げたバスはいくら20年前でもなかったと思います。

当会議室で指摘されていましたが、この作品が「学校」シリーズの原点なのでし ょうね。
寅さんの学歴の設定については、私はこだわらない方なので、まぁこれはこれで 良いかなといった無責任な感想です。
この作品ですが、マドンナといって良いのかどうか判断に困るスミエですが、伊 藤蘭以外の女優さんだったら、どうかなと思ってしまいました。
描き方もあるのでしょうが、あまり魅力を感じませんでした。

この作品をビデオで観ていたところ、終わりの10分くらいを横で観ていた小3 の娘から「決着がついていない」という指摘がありました。
シリーズとして観ていると何の疑問もなく受け入れてしまう終わり方ですが、改 めて指摘されると「男はつらいよ」の不思議な魅力を意識しました。

ウェディング・シンガーを観て満男君と泉ちゃんを連想したミハイルでした。

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