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『イヌゴエ』山本浩司さんインタビュー

 2月18日より渋谷シネ・ラ・セットで公開、全国順次公開となる『イヌゴエ』は、不器用な青年と、関西弁のオッサン声で話すフレンチブルドッグのひとりと1匹を主人公にした、戌年にぴったりのハートウォーミング・コメディ。
 悪臭公害対策協会で働く不器用な青年・芹澤直喜を演じるのは、山下敦弘監督作品はじめ多くの作品に出演する日本映画界注目の若手俳優・山本浩司さん。そしてドスの利いた声で話すフレンチブルドッグ・ペスの声を演じるのはやはり日本映画界に欠かせない個性派俳優の遠藤憲一さん。山本さんと遠藤さんのユーモラスな掛け合いがこの映画の見所のひとつです。
 独特のキャラクターで直喜役を演じた山本さんに、映画の公開を前にお話をうかがいました。


山本浩司さんプロフィール
1974年福井県生まれ。大阪芸術大学在学中より映画制作を開始、俳優としても多くの作品に参加する。1999年、山下敦弘監督作品『どんてん生活』に主演しキネマ旬報の新人俳優賞4位に選ばれるなど注目を集める。その後も山下監督作『ばかのハコ船』(2002)、『リアリズムの宿』(2003)に主演のほか、『魁!!クロマティ高校 THE☆MOVIE』(2005)など出演作多数。レゲエ・バンド“湘南乃風”のビデオクリップ主演、マクドナルドのCM出演など、映画以外にも活動の場を広げている。

所属事務所・ディケイド公式サイト:http://www.decadeinc.com/


芹澤直喜というキャラクターにすごく共感して楽しめました

―― 久々の主演作となりますが、お話があったときはどう思われましたか?

山本:まず、犬の声が聞こえて、その声を遠藤憲一さんが担当するという話を聞いて、それだけで面白いなとツボにはまってしまいました。そのあと準備稿ができて見せていただいたんですけど、配役の芹澤直喜のところに注釈で「この役は山本浩司以外に考えられない」って書いてありましてですね、ほぼ当て書きと言うか、最初から決まっていましたね。

―― じゃあ、この映画は山本さんありきで始まった企画だったんですね。

山本:と思ってたんですが、聞いてみるとそうではなくて、まず犬ありきだったそうです(笑)。その犬の相手役が誰がいいかってことで、ぼくになったんじゃないですかね。

―― 準備稿を読まれた印象はいかがでしたか?

山本:やっぱり、犬の声が聞こえるっていうところも面白かったですし、芹澤直喜が臭気判定士っていう聞き慣れない職業なのにも興味を惹かれました。それから芹澤直喜というキャラクターのネガティブさというか、弱さという部分がすごく出ていて、端から見たらすごく滑稽に見えて面白いだろうなと思いました。そういう部分は自分にも通じるものがあったので、すごく共感して入り込んで楽しめましたね。

―― 映画の主人公としては珍しいタイプのキャラクターだと思いますが、山本さんは芹澤をどういう人間と捉えていましたか?

山本:簡単に言うと甘ったれ、子供ですね。たぶん、たまたま臭いが嗅ぎ分けられるってだけで仕事も決まったんだろうし、あんな可愛い彼女と付き合ってますけど、成り行きで付き合ってそうだし(笑)。

―― その一方で、老人のいる家に臭気判定に行ったときに毅然とした態度を見せるような多面性もあるかと思ったのですが。

山本:ぼくが思うに、ああいう部分も他人のためにはやっていない気がするんです。自分が気に食わないから腹を立てているんで、善意ではないと思うんですよ。結果的に正義の味方っぽい行動になりましたけど、他人を叱れるほど立派な人間でもないくせに自分のことを棚に上げて、自分に優しく他人に厳しいということなんだと思うんです。

―― なるほど。ある部分では実際に世の中にいそうなキャラクターですね。

山本:いるでしょうね。融通の利かない人は多そうだし、ぼく自身も近いと思うんです。昔の自分はこんな感じだったなとか思いますね。融通の利かない部分は意外と誰でも持っていて、どこかで気付かされて変えざるを得なくなっていくんだと思うんです。気付かなかった人はそのあと30歳とか40歳とかになってもそのまま行っちゃうと思うんですけど。だからこの映画は、はっきり前面には出していなくてさりげなく描いているんですけど、気付いて変わっていくという、そういう変化のきっかけの話なんですよ。




自由奔放な動きも撮影に取り入れていけた

―― ペス役の犬のブン太くんとの共演シーンが多いですが、動物相手で撮影に苦労はありませんでしたか?

山本:撮影に入る前に、動物ものって大変だよみたいな話をいろいろ聞いていたんです。シナリオで結構動きが限定されているシーンとかもあるので、ちゃんと動いてくれるのかなとか、犬がうまくいっても自分がNG出したらまた撮り直しだから時間はかかりそうだなとか。だから大変だろうなって覚悟はしていたので、思っていたよりは楽でしたね。

―― ペスとの会話シーンはどういう風に撮影されていたんでしょうか?

山本:犬のセリフの部分は、監督さんや助監督さんが横で読んでくれるんですよ。それで遠藤さんがどういう風に喋るのか想像しながらやっていたんですけども、完成版を観たら想像を遥かに越えたドスが利いていてビックリしました(笑)。遠藤さんのセリフがアドリブで増えたところもあります。犬が予定になかった動きをしたところがあるので、それによって遠藤さんのアドリブがエキサイトしたってところはあると思います。

―― 山本さんが現場でアドリブでお芝居を変えたことはあったんでしょうか?

山本:ありましたね。散歩するシーンで犬が立ち止まったりして、引っ張っても動かない。仕方ないからぼくが抱き上げて連れて行くとかありましたね。でも、その程度ですね。あとはツッコミが1個2個増えたくらいです。

―― では、犬の動きが予定と違ったら違ったでいい、というような柔軟な感じが現場にはあったんでしょうか?

山本:なんか変な期待を持ちながらやってたんではないですかね。基本的にシナリオに沿って作ろうとしたんですけど、あわよくば妙な面白い動きをしてくれないかなという期待も混じりつつ撮影していました。散歩するシーンで急に立ち止まって動かなくなったりとかがあっても、それもペスのキャラクターのガンコな一面として全然OKだし、そういう自由奔放な動きも撮影に取り入れていけたんで、すごく良かったんじゃないですかね。

―― 共演者のみなさんについてもお聞きしたいと思います。馬渕英里何さんが恋人役で、宮下ともみさんが憧れの女性という役どころですね。これほど女優さんと恋愛関係になる役柄は珍しいのでは?

山本:珍しいですね。彼女が馬渕英里何さんですからねえ、不思議ですよね(笑)。相当に変な腐れ縁がない限り付き合ってないですよね(笑)。

―― 女優さんとのシーンで苦労した部分などはありましたか?

山本:宮下さんと土手でフリスビーを投げるところの撮影の日に雨が降ってきて、それが大変でしたね。撮影はできたんですけど、イメージとしてはもうちょっとカラッと晴れていたら良かったですね。宮下さんとふたりで土手に座って肩にもたれかかられるシーンは、あとで見て我ながら面白かったです。挙動不審で(笑)。

―― 友人役の村上淳さんとは初共演ですか?

山本:3度目ですね。事務所の先輩なんです。すごく「一緒にやろう!」みたいな感じで、ノリノリでやってもらえたのがすごく嬉しかったですね。ぼくもそれにつられてテンション上がってしまって、いつもより何割か増しに動きが大きくなってます。職場でペスがオシッコしちゃってゴチャゴチャになるところは、やっていて楽しかったですね。すごくテンポのいいコントをやっているようでした。




芝居で語り合ったみたいな感じがした

―― ここ数年多くの作品に出演されていますが、いろいろな監督さんが山本さんを起用するのはなぜだと思います?

山本:顔ですかね(笑)。たぶん、すごく異質なものを感じてもらっているんだと思います。自分でもそれが強みだなと思いますし、その中でもっと別のものを見たいという興味を持ってくださる監督さんも現われはじめて、今、すごく面白い状況ですね。

―― いろいろな役を演じた中で、特に面白かった役や山本さんご自身にとって大きな発見があった役はありますか?

山本:大概、ダメ男の役が多いんですけどね(笑)。最近、舞台をやらせていただいたのと、瀬々(敬久)監督の作品に出たんですけど、それは今までにないテンションの高い役で、半ばやけっぱちになりながら無理やり自分の中にキャラクターを作っていくわけですよ。その中で気持ち良い瞬間もあったりして、こういうところも極めていければもっと面白いなあと思いますね。

―― 役柄によって撮影に臨まれるときのテンションの入れ方は違いますか?

山本:違いますね。監督さんとか現場によっても違いますし、共演者の方と打ち解けられる場合もあれば、自分の中で閉じこもったまま終わる現場もありますし、様々ですね。

―― 今回の『イヌゴエ』は、テンションという点ではいかがでした?

山本:結構フラットでしたね。ただ、撮影の期間が短いこともあって、ほかの出演者の方と普段の会話もそんなにできる時間もなかったんです。だから、本番とかリハーサルの段階で相手役の方とやって初めて面白味が出てくるという感じで、カッコ良く言うと芝居で語り合ったみたいな感じはすごくしましたね。この役者さんはこういうやり方をするのかとか。

―― 主演ということでほかの作品との違いはありましたか?

山本:期間が長いですからね。やりながら見つけていくっていう感じがあるので、逆に1日だけの撮影とかの方が難しいですね。

―― 元々、監督として自主映画をお作りになられていて、最近でも脚本や編集などを手がけた作品もありますが、そういう作り手としての活動の予定はいかがでしょうか?

山本:監督はやりたいです。でも役者が本業なので、まずはそれをしっかりやらないことには次に行けないなと思います。それに、映画監督ってほんとに大変な仕事だと思っていて、自分がやりたいと思うものが見つかって、それを最後まで責任持って完成させて人に見せるまで持続する愛情が持てない限りは、片手間でやるわけにはいかないなと思います。

―― 最後になりますが、『イヌゴエ』という作品は今まで山本さんがご出演になった作品の中でも間口が広い作品だと思います。それをどうご覧になった方に受け止めていただきたいかをお願いします。

山本:やはり犬パワーで(笑)、わかりやすくて説明しやすい映画ですから、たくさんの人に観てもらえるのではないかという期待があります。まずは、このブン太の憎たらしいけど可愛らしい様子を楽しんでいただいて、そしてその周りで振り回されつつ助けられる人間たちを、おかしみを含めて楽しんでいただけたらと思います。

(2005年12月28日/バイオタイドにて収録)


イヌゴエ
2月18日(土)、渋谷シネ・ラ・セットにて戌年ロードショー
全国順次公開決定
監督:横井健司
出演:山本浩司、村上淳、馬渕英里何、宮下ともみ、遠藤憲一 ほか


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