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『窓辺のほんきーとんく』吉沢明歩さんインタビュー

吉沢明歩さん写真 会社が突然つぶれてしまい無職となった青年・晃のもとにやって来たのは、大学の映研の先輩・村崎。いきなり自主映画を撮ると言い出した村崎を手伝うことになった晃は、オーディションで選ばれたヒロイン役の眞名水(まなみ)と次第に惹かれあっていく。ところが、村崎が考えついたのは、映画の中で眞名水と主演男優に実際にセックスをさせるというとんでもないアイディアだった! 眞名水を思う晃の気持ち、映画に賭ける眞名水の気持ち、お互いを想いつつ、ふたりの気持ちはすれ違っていく……。
 『異形の恋』『泳げない女』などで熱狂的な支持を集める堀井彩(ほりい・ひかる)監督の新作『窓辺のほんきーとんく』は、個性派キャストで贈る大人のための青春映画。
 この作品でヒロイン・眞名水を演じたのは、アダルトビデオ界で絶大な人気を誇り、ドラマや映画、バラエティへも活躍の場を広げている吉沢明歩さん。
 監督としても活躍する辻岡正人さんをはじめとする個性豊かな俳優陣に囲まれての映画体験は、いったいどんなものだったのでしょうか?

吉沢明歩(よしざわ・あきほ)さんプロフィール

1984年東京都出身。グラビアアイドルとしてデビュー後、2003年にAV女優へと転進、高い人気を得る。その後、アダルトビデオ以外にも活動の場を広げ、テレビドラマ「嬢王」(2005年)に出演。現在はバラエティ番組出演や、コラム連載などでも活躍中。
映画出演作に『誘惑 あたしを食べて』(2007年/佐藤吏監督)、『新スパイガール大作戦 −惑星からの侵略者−』(2008年/河村永徳監督)など。

「微妙な心の揺れみたいなものを描いていくのが面白い」

―― 最初に『窓辺のほんきーとんく』脚本を読んだときは、どんな印象を受けましたか?

吉沢:すごいホン(脚本)だなと思いました。映画の中で映画を撮るチームがあって、そこで本番をやるっていうのは面白そうだなって。それから、キャッチコピーで「愛か 映画か」ってあるんですけど、本番をやるということで、私の演じた眞名水と、辻岡正人さんがやった晃との間で、微妙な心の揺れみたいなものがでてくるんです。それを描いていくのが面白いと思いました。

―― 眞名水は、映画で説明されている以上に、複雑な事情を抱えていそうな女性ですよね。

吉沢:それは私も思いました。過去に、性的ななにかがあったのは脚本に書いてあるんですけど、それ以上のことは書いていないので、眞名水がどういうふうに生きてきて、どういう生活があるかっていうのが見えないところもあったんです。でも、ホンを読んでいくと、芯のしっかりした子なんだなって印象を受けたので、誰かに甘えて生きてきたんじゃなくて、自分がしっかりしなきゃみたいな、そういう立場に置かれて生きてきた人間なんだなって感じました。

―― 堀井監督と役についてのお話はされたんでしょうか?

吉沢明歩さん写真

吉沢:監督からは眞名水について「フーテンだ」って言われたんですけど、私は「フーテンってなんだろう?」って(笑)。この映画は1970年代のお話なので、そういう表現をしてくれたんですけど、私は「フーテン」っていうと『男はつらいよ』の寅さんをイメージしちゃって(笑)。でも、ひとりで生きている意志の強い部分は見えました。

―― 1970年代が舞台ということで、特にほかの撮影と違っていたところってありましたか?

吉沢:お部屋のセットが昔風な感じで、見たこともないポスターとかが貼ってあったし、あとマンガ本とか、置いてあるものもすごく古いやつで、いまの時代にこういうお部屋を作れるんだって驚きました。

―― 演じるにあたって、70年代ということで意識したところはありますか?

吉沢:やっぱり、70年代っていうものを知らないので、どうすればいいのかわからないところもあったんです。でも、衣裳も普段とは違いますし、メイクとか、セットも昔風の雰囲気を出してもらっているので、その中に入り込んで眞名水を演じようとはしていました。

―― さっきもお話がありましたけでど、今回は映画の中で映画を撮るという話ですが“映画を撮るシーンを撮る”というのはどんな体験でした?

吉沢:8ミリカメラは初めて見たわけではないんですけど、8ミリで映画を撮るのは見たことなかったので、カメラがカタカタ音がする中で演技をしていて「カット!」ってかかるのは面白かったです。ときどき、本番がカットなのか、映画の中の撮影シーンのカットなのか「アレ?」って思うことはあったんです(笑)。さすがに役に入っているから、そんなに戸惑うことはなかったんですけど、カチンコがなるたびに一瞬「お?」ってなったりとか、そういうのはありました。本番なのか映画の中なのか、間違えないように常に集中していましたね(笑)。

―― ほかに、撮影中に面白い面白いエピソードはありましたか?

吉沢:鼻歌が大変でした。フォークソングを鼻歌で歌うんですけど、それは撮影の日にできた曲を、その場で聴いて練習して本番で歌ってるので、ちゃんと歌えているのかがけっこう不安でした(笑)。

「好きっていう気持ちが一途なところは素敵」

―― この映画は個性的な男性キャラクターたちが出てきますが、それぞれのキャラクターをどう思いますか?

吉沢:安藤彰則さんがやった村崎さんは、映画を作るってことに熱心で、とにかく熱いですね。辻岡さんがやった晃は、先輩の村崎の影響を受けつつも、自分はほんとはなにがやりたいのか見えていないと思うんです。その中で眞名水と出会って、すごく繊細な部分が見えてきて、優しい人なんだと思います。

―― 吉沢さん自身から見ると、登場人物の中で好きな男性は?

吉沢:うーん……なんとなく村崎さんは嫌だなって思います(笑)。なんか振り回されそうじゃないですか、今日は昨日と言っていることが違うみたいな。映画の中でも若干みんな振り回されてますけど(笑)。やっぱり、魅力的に感じるのは晃ですね。映画の中で、晃は眞名水が本番をやるのが許せなくて、眞名水が「どうしてわかってくれないの」というセリフがあるんですけど、そこで眞名水の気持ちをわかれないっていうのは、すごく一途なわけじゃないですか。ちょっと不器用だけど、好きっていう気持ちは一途なので、そういうところは素敵だなあと思います。

―― では、眞名水のことは、客観的に見るとどういう女性だと思いますか?

『窓辺のほんきーとんく』スチール

『窓辺のほんきーとんく』より、吉沢さんが演じる眞名水(左)と、辻岡正人さんが演じる晃

吉沢:「男だな」って思います。精神的に女だったら、晃に「そんなことやらなくてもいいじゃん」って言われたときに絶対「どうしてわかってくれないの」とまでは言い返さないと思うんですよ。眞名水は「たかだかセックスじゃん」とも言うんですけど、そういうセリフって普通は出ないと思うんです。それは、眞名水の中で強がりもあったのかもしれないですけど、たぶん「たかだかセックスじゃん」というセリフは、自分の中でも迷いがあったのを押し切って出たセリフだと思うんです。そのセリフが出るのは、すごく強いと思いますね。

―― もし、仮にですけど吉沢さんが眞名水のような立場になったら、眞名水と同じような行動をとりますか? それとも全然違う行動になりますか?

吉沢:実際、いまの自分と、眞名水の設定が重なる部分があるんですね。やっぱり、私はそのときは夢を優先すると思うんですよ。だから、眞名水と同じようなことをするかもしれませんね。

―― 映画の中でラブシーンもありますが、普段吉沢さんがやられているラブシーンと違った部分はありましたか?

吉沢:できることが限られているなって思いました。私は眞名水の気持ちになりながら絡みになっていくというふうに考えていたんですけど、それとはちょっと違って、回している時間を短くしなくちゃいけないみたいだったんです。その中で気持ちを出して、晃と結ばれるシーンをやらなくちゃならなかったので、それがすごく難しかったのと、なんか早くやると雑になるような気がしたんです。だけど、監督は「もっともっと早く」と言っていたので、その辺はやりづらかったかもしれないです。あとは、映してはいけない部分があるので、そこにも気を遣いながら演じなくてはいけないし、いろいろ大変でした。

―― 終盤での晃と眞名水のケンカのシーンが印象深かったのですが、撮影のときはどんな感じでしたか?

吉沢:あそこはもう、ほんとにお芝居のラストシーンで、撮影も終わりのほうだったので、それまで晃に対して持っていたモヤモヤを言いあってやりあったことで、自分自身がスッキリしました。

―― やっぱり役に入っていると、ほんとに晃に対して溜まってきちゃう気持ちってあるんですか?

吉沢:晃に対しても、眞名水に対しても、溜まっていくものはありましたね。眞名水は自分の夢のために本番をするって決めて、晃とケンカになっちゃってもその部分は譲れなくて、でも晃のことが好きで「どうしてわかってくれないんだろう」みたいな気持ちをずっと抱えていて。そして、晃も自分のことを理解してくれようとしているんだけどできなくて、もがいているのが自分はわかっているのに、自分の考えが曲げられないんですね。晃も眞名水もお互い好きなのに、離れたままでずっといたから、自分にも晃にも、モヤモヤはすごい溜まっていました。

―― そのあとで、眞名水が晃をおんぶするという、ちょっと変わったシーンがありますけど。

吉沢:はいはい、フフ(笑)。あそこって、なんか可愛くないですか?

―― それは思いました。ふたりがいい感じだなって。

吉沢:なんか、ケンカのあとにおんぶして帰って、それがラストシーンっていうのがすごく可愛らしく感じて、そのへんはあまり違和感みたいなのはなかったです。

―― 吉沢さんは、普段はあんまり男の人をおんぶすることってないですよね(笑)。

吉沢:ないない、ないですよね(笑)。

―― 実際、辻岡正人さんをおぶってみていかがでしたか?

吉沢:フラフラして大変でした(笑)。辻岡さんに「重いです」って言ったら「ええっ、俺、重い?」って、すごく気を遣ってもらったんです(笑)。

―― そのシーンで監督からなにか言われたことはあったんでしょうか?

吉沢:とにかく「まっすぐ歩け、このラインをまっすぐ歩け」って、それだけでした(笑)。でも、撮影が雨が降ったあとだったので、そのラインに水溜りがあったんですよ(笑)。でも、まっすぐ歩かなくちゃいけないからどうしようと思って、まっすぐ行きました(笑)。けっこう大変でした、ぬかるんでいたし(笑)。

「いろいろな作品に出会っていきたいし、女優として成長したい」

―― 映画をご覧になるのは好きですか?

吉沢:はい、好きです。

―― いままでご覧になって好きな作品は?

吉沢:好きな映画は、南Q太さんが原作で、星野真里さんが主演している『さよならみどりちゃん』(2005年/古厩智之監督)です。普通の日常の中で、ちょっとダメな男と出会っちゃったけどっていうお話がすごく好きで、星野真里さんがやった役がすごい素敵だなって思ったんです。

―― ちょっと渋目の作品ですね。

吉沢明歩さん写真

吉沢:そういう作品のほうが好きですね。ほかには松尾スズキさんの『クワイエットルームへようこそ』(2007年)も面白かったです。でも、あれを観終わったあとは、すごく具合悪くなりましたね(笑)。人間の弱い部分をすんごい見せられた気がして。

―― わりと観た映画で気持ちが左右されちゃうほうですか?

吉沢:影響されやすいですね。映画だけじゃなくて本とかでもそうなんですけど。だから『クローズ ZERO』(2007年/三池崇史監督)を観たときは「男の世界っていいなあ、うらやましいなあ、かっこいいなあ」みたいに、逆にハイになっちゃいましたね(笑)。

―― 現在はいろいろな分野で活躍されていますが、映画の仕事も今後お続けになるのでしょうか?

吉沢:はい、いろいろな作品に出会っていきたいですし、自分も女優としても成長していきたいと思っているので、やっていきたいと思います。

―― 具体的にこういう役をやってみたい、こういう映画をやってみたいという作品はありますか?

吉沢:岩井俊二さんの作品の独特の空気感というかリズム感というか、不思議な世界観がすごく好きなんです。自分がああいう作品に出たらどういう表現ができるかなというのは憧れますし、出てみたいなと思います。あと、役で言うと、自分に近い役よりも、少し離れた、すごく明るく生きているんだけどトラウマみたいなものを持っているような、あまり人には見せない部分を持っている女の人の役をやってみたいと思います。今回の眞名水も少しそういうところがあるかなって思います。

―― では、最後に『窓辺のほんきーとんく』をご覧になる方にメッセージをお願いします。

吉沢:この映画は「もしも自分が晃みたいな立場だったらどうするんだろう」とか「眞名水だったらどうするんだろう」とか、自分に置き換えて観てもらえる映画になればいいと思うんです。だから、そういうふうに考えながら観ていただけたらと思います。

(2008年6月30日/池袋シネマ・ロサにて収録)

作品スチール

窓辺のほんきーとんく

  • 監督:堀井彩
  • 出演:辻岡正人 吉沢明歩 安藤彰則 神楽坂恵 ホリケン。 ほか

2008年9月27日(土)池袋シネマ・ロサにてレイトショー

『窓辺のほんきーとんく』の詳しい作品情報はこちら!

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