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『思春期ごっこ』未来穂香さん・青山美郷さん・タカオユキさん・倉本雷大監督インタビュー

インタビュー写真 放課後の女子校。美術室でキャンバスに向かい絵筆を握る鷹音(たかね)、小説を読みながら鷹音のモデルになる三佳(みか)。中学生最後の夏、仲良しのふたりの関係は、三佳が憧れの作家・花岡奈美江と出会ったことで変化していく――。
 注目の若手女優たちと期待の新鋭監督が、新たな青春映画の傑作を生み出しました。少女たちの眩しい時間とその中にある痛みや残酷さを鮮やかに描いた『思春期ごっこ』です。
 映画・ドラマで主演が続き、本作では“親友”の三佳に友情とは違う感情を抱く主人公・鷹音を演じた未来穂香さん。
 舞台で経験を重ね、初の映画主演で憧れの大人と“親友”鷹音との間で揺れ動く主人公・三佳を演じた青山美郷さん。
 図書館職員・翔子役で女優デビューを飾り、視聴覚ユニット・みみめめMIMIとして主題歌も担当した声優のタカオユキさん。
 初の長編作となる本作で少女期の光と陰を巧みにスクリーンに焼き付けた倉本雷大監督。
 主演、音楽、監督。それぞれのかたちで『思春期ごっこ』をキラキラと輝かせた4人にお話をうかがいました。

(写真左より:タカオユキさん、青山美郷さん、未来穂香さん、倉本雷大監督)

未来穂香(みき・ほのか)さんプロフィール

1997年生まれ、千葉県出身。2009年よりファッション誌モデルとして活躍、現在は『non-no』専属モデルをつとめる。女優としても映画・ドラマ・舞台で活躍。映画出演作に『マリア様がみてる』(主演:2010年/寺内康太郎監督)『江ノ島プリズム』(2013年/吉田康弘監督)『放課後ドロップ/リトルトリップ』(主演:2014年/天野千尋監督)など

青山美郷(あおやま・みさと)さんプロフィール

1994年生まれ、兵庫県出身。2011年開催の女優オーディション「アクトレース」ファイナリストに選ばれ、2012年に同オーディション合格者で結成された“劇団ハーベスト”のリーダーをつとめる。同劇団で舞台公演をおこなうほか、テレビドラマやCMなどにも出演。映画出演作に『円卓』(2014年/行定勲監督))『人狼ゲーム ビーストサイド』(2014年/熊坂出監督)

タカオユキさんプロフィール

1990年生まれ、兵庫県出身。幼少時から声優を目指し、2013年にアニメ「君のいる町」で声優デビュー。2014年にアニメ「ブレイドアンドソウル」で主役の声を演じる。また、シンガーソングライター“ユカ”としてイラストレーター“ちゃもーい”と新世代視聴覚ユニット・みみめめMIMIを結成し2013年にCDデビュー、ライブ活動もおこなっている

みみめめMIMI公式サイト:みみめめMIMI OFFICIAL WEB

倉本雷大(くらもと・らいた)監督プロフィール

1988年生まれ。大学で映画を学び、2010年に卒業制作作品として『UNBRIGHT アンブライト』を監督。その後は助監督やスチールカメラマンとして活動しつつ、短編『少女たちよ』(2011年)『ガールフッド・エバーラスティング』(2012年)、オムニバス『放課後たち』の一編「ロリータなんて」(2014年)などを監督

「悩みながらやっていたんですけど、やり終わったときはすごく達成感が大きかったですね」(未来)

―― 未来さん、青山さん、タカオさんは、最初に『思春期ごっこ』の脚本を読んだときはどんな印象を持たれましたか?

未来:最初読んだときに「すごいな」って思いました。こんなにも女子中学生の繊細なところまで描いている台本を見たのはほとんど初めてで、自分がこの作品に出るというのが不安でもありました。自分がどこまで描けるかがわからなかったので不安になったんです。でも、同時に楽しみでもありました。

青山:私も穂香さんとちょっと似ているんですけど、最初読んだときは女の子の心情がリアルすぎて、すごく「わあ」ってなって。でも、そういう作品をやってみたいと思っていたので嬉しかったです。最初に読んだときにすごく印象的だったのは、女性が女性に恋に近い感情を持ってしまうっていう感覚ですね。

タカオ:私は、女の子の思春期の感情がすごく繊細ににじみ出ているところに感動しましたね。私自身6年間女子校に通っていたんですけど、そのときのこととかも思い出して、すごいリアルで、監督は男性なのになんでこんなに繊細に描けるんだろうって(一同笑)、すごく驚いたのを覚えています。思春期というのは誰でも一度は通りすぎていると思うんですが、大人になるとけっこう自分に思春期があったということ自体を忘れるものだと思っていて、私もそうだったんですね。でも、この台本を読んだときに、自分が経験した話ではないはずなのに自分が経験したことを読んでいるような感覚に襲われました。

―― 監督は、どのようなきっかけでこの『思春期ごっこ』を発想されたのでしょうか?

倉本:やっぱり、自分が観て影響を受けてきた映画が高校だったり中学校を舞台にする青春映画が多くて、1本目を撮るならそういう映画をやりたいという漠然とした想いはあったんです。それで、いざ長編をやろうとなって、脚本家の方と「どういうものをやろうか?」という話になったときに「女の子の世界で、学園もので」みたいなところから始まって徐々にストーリーができてきたんですけど、憧れていたものを1回自分でやってみたかったというところからの発進ですね。

―― 影響を受けてきた作品というのは、具体的にはどんな作品でしょう?

倉本:わかりやすいところでいうと『櫻の園』(1990年/中原俊監督)だったり『台風クラブ』(1985年/相米慎二監督)、『BU・SU』(1987年/市川準監督)とか、90年代80年代後半の青春映画ですね。全然リアルタイムではないんですけど、ぼくは大学で映画を学んでいたのでそのとき観る機会があったりして、一番ストレートに印象に残っているところがあるんです。やっぱり、学生のときもいざ映画を作るとなると、自然と自分たちが経験していたり周りが経験したことある年代の話になっていたところがあって、だから観るのも自然と青春映画が多くて、そこからの影響という感じですね。

―― 『思春期ごっこ』は未来さんが演じた鷹音と青山さんが演じた三佳のふたりが中心となるお話ですが、おふたりはそれぞれ演じられた役について、どのように捉えて、どのように演じられていたのでしょうか?

『思春期ごっこ』スチール

『思春期ごっこ』より。未来穂香さん演じる蓮見鷹音は、同級生の三佳をモデルに放課後の美術室でキャンバスに向かう

未来:「すごく難しいな」って台本を読んだときに思って、やりながらも、三佳に対しての想いだったり、川村ゆきえさんが演じられた花岡奈美江さんへの嫉妬心だったり、感情の変化がすごく激しいんですね。なので、細かい表情だったり動きだったり、どうリアルに表現しようかなというのに自分の中で苦戦していて、すごく悩みながらやっていたんですけど、やり終わったときはすごく達成感が大きかったですね。

青山:鷹音ちゃんは、たぶん自分の思っていることとかをあんまり外に出さないほうだと思うんですよ。だけど三佳ちゃんはすごく素直な人で、素直なので自分の思ったことをけっこう露骨にバンバン顔とか言葉に出すんだと思うんです。そういうピュアなところがあって、そのピュアさのあまり、花岡奈美江さんという憧れの存在の本人を見つけてしまうとそっちに気が行ってしまって、周りが見えなくなって走っていってしまう。そういう女の子ですね。そう思っていました。

―― タカオさんは、先ほど実際に女子校に通われていたというお話でしたが、そういう視点から見て鷹音と三佳の関係はどのように感じられましたか?

タカオ:実は、私も中学校のときに女の子から告白されたことがあって、自分でも忘れていたつもりだったんですけど、それを思い出したんです。なんだろうな……たぶん、そういう気持ちをぶつけられずにいる女の子っているんじゃないかなって思うんですね。でも鷹音はその気持ちを三佳にぶつけるシーンがあって、私はそれがすごく素敵だと思って、そのシーンにすごく心を動かされて、好きなシーンなんです。女性が女性を好きになるって、いろいろな見方がされると思うんですけど、女の子とか男の人とかは関係なくて、人を好きになるということは純粋な気持ちなんだということをすごく感じて、それがきっとこの映画が伝えることのひとつなんだなって感じました。

―― 監督ご自身は、鷹音と三佳の関係をどのように描こうと考えられていたのでしょうか?

倉本:難しい質問ですね(笑)。ぼくは女子でも女子校に通っていたわけでもないんで、正直に言うと女の子の世界というのは一切わからないわけで、だからリアルを追求してもしょうがないなと最初から思っていたんです。じゃあどうするかと言ったら、とりあえずぼくの「こうであってほしい」みたいな願望を全部ホン(脚本)に書いてみようみたいなところがあって、映画の中でのリアリティを作り出そうと。その中では「女の子が女の子を好きになる」みたいなのはわりと当たり前に入ってきたというか、すごく美しいことだという想いがあったので、そこを美しく描こうと思いましたね。「美しい」ばっかりですけど(笑)。

―― 監督にもうひとつお聞きしたいのですが、この作品では、鷹音と三佳に限らず、人と人との関係を画面の構図などで表現しているところも多いと思ったんですね。たとえば「この人とこの人がこういう位置関係にいるのはこういう意味があるんだ」みたいなことは、演じられる俳優さんたちには伝えられたのでしょうか?

倉本:うーん、(未来さんと青山さんに)言いましたっけ?

未来:たぶんあった気がします。

倉本:まあ、ほんとにすごくザックリとだったと思います。

未来・青山:(うなずく)

倉本:今回、自分の中で決めていたのは、なににおいても断定するのはやめようって。ぼくはあんまりなんも考えてなかったりするんですけど(笑)、でも監督からの言葉というのは受け取るほうにとってはすごく強いじゃないですか。だから「こうです」「こうだから」みたいな演出の仕方はやめたいなと思っていて、構図とかのことはこっちでいろいろと考えてはいたんですけど、芝居を制限はしたくなかったのでできるだけ自由にやってもらえるようにして、それのいいところをすくい取れるようにというのは気をつけたところですね。ただ、根本の話として、美術室で座っている距離感みたいなのは最初に話しました。あとは目線ですね。「お互い向きあっているのがお互いを見つめられなくなっていく話なんだ」みたいな、ちょっと観念的ではあるんですけど、ピンポイントというよりは映画の全体の想いみたいなのは伝えたとは思っています。

「なんかどうしようもない気持ちが湧き出てしまって、それで涙が出てきてしまったんです」(青山)

―― 先ほどタカオさんが好きなシーンを挙げてくださいましたが、みなさんで気に入っているシーンをひとつずつ挙げていただけますか?

未来:私、ひとつじゃなくてふたつあるんですけど(笑)。

―― どうぞどうぞ(笑)。

未来:ひとつは三佳とのシーンで、プールで最後に自分の気持ちをぶつけるシーンなんですけど、撮影もそのシーンにすごく集中してやったので、達成感のあるシーンでしたね。もうひとつは、美術室で花岡奈美江さんに怒鳴るシーンで、そこも自分をぶつけるシーンで、ふたつとも自分の気持ちをぶつけるシーンが私はお気に入りです。

―― 美術室の奈美江さんとのシーンは「未来さんがこんな激しいお芝居をするんだ」と観ていて驚いた部分だったんですけど、演じているときはどんな感覚だったのでしょう?

未来:そうですね、三佳とふたりのシーンをやっていったり、台本で三佳と奈美江さんのシーンを見ていくうちに、自分の中で作っていったものがあって、それを出すという感情だったんですね。なので、我を忘れていました。ずっと我を忘れていた感じなんですけど、そのふたつのシーンは特に我を忘れていました。

―― 青山さんはどのシーンがお好きですか?

『思春期ごっこ』スチール

『思春期ごっこ』より。青山美郷さん演じる辻沢三佳は、愛読する小説「思春期ごっこ」の作者・花岡奈美江と出会う

青山:私は、三佳が鷹音ちゃんとすれ違うようになってから、鷹音ちゃんが美術学校から出てくるのを三佳が待ち伏せしていて久しぶりに会うシーンです。三佳が花岡奈美江さんのことで悩んでいて、鷹音と会ってその話をしたときにまた奈美江さんから電話がかかってきて、鷹音ちゃんがその電話を取って切るというシーンがあるんです。そのときに、三佳自身が鷹音とうまく行ってないんだけど、花岡奈美江さんのことも気になっていて、そのギクシャクした気持ちが最後に……そこは涙が出るシーンじゃなかったんですけど、なんかどうしようもない気持ちが湧き出てしまって、それで涙が出てきてしまったんです。そのシーンはすごく……そこから鷹音と三佳のお芝居もなんとなく変わってきたというか。あと、私ももうひとつあって、さっき穂香さんも言っていたんですけどプールのシーンで、私が鷹音にある言葉を言って突き放すんですけど、あそこはけっこう迫力があるんじゃないかなと思います。

―― プールのシーンでは、青山さんは水の中に落ちるところがありますよね。

青山:あれは一発で決めなきゃいけなかったんですよ(笑)。

―― わりと長いシーンで一発で決めなければならないとなると、演じるのも大変そうですね。

青山:集中してましたね。

未来:ずっと長回ししていたので、私、撮る前ずっと暗かったです(笑)。(青山さんに)ね?(笑)

青山:アハハ(笑)。

未来:ちょっと明るく振る舞った気はするんですけど、集中するためにずっと暗いままでやっていたので(笑)。

青山:うんうん。

―― ああいうやり直しの効かないカットを撮るというのは、監督としてもけっこう勇気のいる部分ではないのでしょうか?

倉本:そうですよね(笑)。実際、どう撮ろうかというときにスタッフ含めて相当悩んだんですけど、でも最初からあの構想はあったというか、いまふたりもおっしゃっていたように、あそこはふたりの話のひとつの頂点なので、お話を考えている段階では自然と出てきたんですよね。

―― タカオさんは先ほどもひとつ好きなシーンを挙げていただいていますが、ほかにあればお願いします。

タカオ:はい、私はみなさんがおっしゃったシーンがそれぞれお気に入りなんですけど、ほんとに「これは思春期だな」って思ったのが美術室で鷹音が奈美江さんを怒鳴るシーンで、美術室に自分で呼んでおいて「帰って」って怒鳴るのがハチャメチャだなって(笑)。ハチャメチャなんですけど、でもその叫んでいるところが、いま思い出しても鳥肌が立つくらい胸がキュッとなって、泣きそうになったんです。そこがすごいお気に入りですね。

―― 監督がご自分で好きなシーンを挙げるのは難しいかもしれませんが、もしよろしければ監督もお願いします。

倉本:難しいですね(笑)。

未来・青山・タカオ:フフ(笑)。

倉本:……トータル含めてうまく行ったかなって思っているのは、ふたりも言っていた夜のプールのシーンと、あと、ふたりが美術室でじゃれあってカメラが動いて部屋を出ていき、階段を上がっていってという一連があるんですけど、そのふたつのシーンは最初から決めていて、この映画は基本的に固定のカメラで撮っているんですけど、その2ヶ所だけはカメラが動くシーンなんです。お話的にも、階段のところはふたりが仲がいいマックスみたいなところで、プールのところは最終的に亀裂してしまう瞬間みたいな、一番映画で高い瞬間ふたつを躍動感ある画で撮ったつもりなんです。試写の感想でもそこを挙げてくれる人が多いので、そこはうまく行ったのかなと思いますね。

―― 作品を拝見していて、この作品では「こういうシーンを撮りたい」という画のイメージがあって、そこから逆算するようにストーリーの展開を考えられた部分もあったのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか?

倉本:うーん、どうですかね……。あまりそういう意識でホンを書いたわけではなかったんですけど、でもそうですね、基本的なお話のディティールみたいなのは脚本家の方が書いていて、ポイントポイントで「誰がどうなってどういうふうになる」みたいなところはぼくが考えたので、そういう意味でその部分が際立っているというところはあるかもしれないですし、画が浮かぶっていうのはたしかにそうですね。

「“瞬間”の情景が浮かぶような曲にしたいなというのと、瑞々しさも表せたらいいなと思いました」(タカオ)

―― 鷹音と三佳と奈美江さんが、学校の校門のところでやりとりをするシーンがありますよね。あそこは一連のやりとりの中でアングルが変わっていくのが印象的だったのですが、あれは同じお芝居を何度かやって別のアングルから撮っているんですか?

未来:3回撮りました。

青山:3回ですね。

倉本:あれはカメラマンのアイディアだったんですけど、普通はああいうシーンだと位置関係がおかしくなるから、映画の技法的には3人全員が画面に入るようには撮らないんですよね。ただ、あそこは映画の中で唯一3人が揃っているところであり、それにプラスして唯一3人がそれぞれの想いをぶつけるところだから「違和感みたいなものを与えたいよね」という話になって、ああいう撮り方になったんです。お互いに想いをぶつけあっているときに、たとえば鷹音がなにか言われているときは鷹音が真ん中で、三佳が言われているときは三佳、奈美江が言われているときは奈美江というふうに、言われている人が画面の真ん中に来るように3回撮って、編集でも見せたいのは“言われている人”なので、なにか言われているときにその人が真ん中に来るように繋いだんです。

―― あそこはテンションの高い場面だと思うんですけど、そこを繰り返しやる難しさというのはありませんでしたか?

未来:3回やっていくと慣れが出てきちゃう気がして、あんまりそうならないようには気をつけていたんですけど、なんか私も違和感がありましたね。3人だからこそ、よくわからない雰囲気があって、正直、ほんとに嫉妬した部分があったんです。鷹音自身の気持ちがすごくわかって、やっていてなんか嫉妬するシーンでしたね。あの撮影で3人の関係性を改めてわからされたというか、すごく胸が痛くなりました。

―― 青山さんは?

青山:でも、けっこう順番に撮っていきましたよね?

倉本:そうです、通しでは撮っていないはずなんですよ。細かくは覚えていないんですけど、未来さんが言ったように何回もやるとテンションが落ちていっちゃうかなと思ったので、ポイントとなる重要なところは何回もやらずに、その前までで止めて(カットを)割っていったと思うので、そんなに繰り返しやったという印象にはなっていないと、ぼくの中ではそういう印象で残っているんですけど(笑)。

青山:(うなずきながら)順番に撮っていったので、感情とかはそのままやったんですけど、同じところをもう1回撮るときとかは、根底にはいつも同じ気持があるんですけど、その上に毎回毎回ちょっとずつ違うものを重ねていってやると新鮮になるので、そのへんは気をつけてやりました。

―― ここでちょっと話題を変えさせていただきますが、タカオさんは今回が実写映画初出演ですね。初めて実写映画の撮影を経験されていかがでしたか?

『思春期ごっこ』スチール

『思春期ごっこ』より。三佳の憧れる花岡奈美江と同じ図書館で働く、タカオユキさん演じる三宅翔子

タカオ:そうですね、無我夢中にやっていたら終わりました(笑)。いつもはマイクの前で声優として演技をやっているので「なんでみんな私を見るの!」って(笑)。撮らなきゃいけないから当たり前なんですけど、なんか見られるということがすごい歯がゆかったです。

未来・青山:(興味深そうにうなずく)

タカオ:映画とかドラマを観ていると、出ている人たちってまるで撮られていないかのように演技をしているじゃないですか。それはすごいことだって改めて思いました。実際に自分が出演するとなると、こんなにも「撮られている」っていう意識があったことに驚きました。

―― タカオさんは、みみめめMIMIとして主題歌の「no name love song」も担当されていて、試写で拝見してすごく映画の雰囲気に合っていて、主題歌も含めてひとつの作品になっていると感じました。

タカオ:ありがとうございます。

―― 今回の主題歌では、どのようなことを意識されたのでしょうか?

タカオ:はい、撮影のときに、撮影場所の校舎にテラス……なのかな? 屋上?(笑) があったんですけど、休憩のときにそこに出て歌詞を考えたりしていました。この作品はすごく「瞬間」というのが描かれていて、人を好きになったときって、ほんとにその人のことだけを見つめていて、その人しか見えなくて、そのときの「好き」っていうのは、この先10年でも100年でもずっと好きっていう強い想いがあると思うんですね。その「瞬間」の情景が浮かぶような曲にしたいなというのと、このストーリーは少女たちの美しくてはかない瑞々しい感じがイメージとしてあって、そういうプールサイドに似合うような瑞々しさも表せたらいいなと思って、ストーリーにインスパイアされながら歌詞を書いたり、歌うときもそう思っていました。

―― 未来さんと青山さんは、主題歌を聴いていかがでした?

未来:私は試写で観たときに初めて聴いたんですけど、ほんとにすごくピッタリだなって。すごくかわいらしいんですけど、でも女の子たちのひとつひとつの感情だったりが曲でもすごくわかるし、作品をすごく引き立ててくれるような曲だなって思いました。

青山:私は、この曲を聴いたときに、聴いたあともずっと頭の中でこの曲がずっと流れているような感じで頭から離れなくて、すぐ覚えちゃいました。

タカオ:嬉しい(笑)。

青山:曲のリズムとかはすごく明るいんですけど、歌詞はすごく繊細というか、物語になっていて、ほんとにさっきおっしゃっていたようにひとつの作品みたいな感じで、この映画を曲でも表現していただいているっていうふうに感じました。

―― 監督は、主題歌に関してご意見は出されたのでしょうか?

倉本:はい、タカオさんに主題歌をやってもらうということは撮影前に決まっていたんです。それで、あんまりよくない言い方ですけど、よく映画で取ってつけたようなエンディングってあるじゃないですか。そういうのにはしたくないなと思っていて、せっかく撮影前からタカオさんにやっていただくと決まっているので「一緒に作っていけたらいいですね」という話はしていて、すごく失礼な話なんですけど「曲ができる前に歌詞を見せてください、そこからやりとりをさせてください」というお願いをしていたんです。実際はできあがってきたものがすごく映画にマッチしていたので、ぼくからなにか言うことはなくて、逆にぼくも主題歌からすごく影響を受けたんです。さっきタカオさんが話していたフレーズがサビの歌詞に出てくるんですけど、その部分がすごく印象的だったので、そのフレーズをナレーションに組み込んで使わせてもらったんです。だから、映画を撮り終わって、デモ(完成前の音源)が来て、そのあとにナレーション録りがあったのでナレーションを無理矢理変えて、サビのフレーズを入れてと、順番としてはグチャグチャなんですけど(笑)、結果的に映画と主題歌がすごくいいバランスになったかなって印象です。

「思春期って言われると“無自覚の色っぽさ”みたいな印象はずっとあるんです」(倉本)

―― 今回の映画は『思春期ごっこ』というタイトルですが、みなさんは「思春期」という言葉からは、どんなことを連想されますか?

倉本:その質問は一番難しいですね(笑)。……ぼく最後でいいですか?

未来・青山・タカオ:アハハ(笑)。

倉本:考えるので(笑)。

―― じゃあ、まず未来さんから(笑)。

未来:私はちょうど、ちょうどと言うか自分がまだ思春期だと思うので、自分がどういう時期だかわかんないんですけど(笑)、思春期っていうのは「自分自身しか考えていない」っていう印象ですね。三佳も鷹音もそうなんですけど、私が中学生のときはひとつのことに没頭しすぎて周りが見えていないという時期だったなって。高校生になってからだんだん周りが見えてきて自分の立ち位置もわかってきたので、なんか「自分自身」という印象ですね、思春期というと。

―― では、次に青山さんお願いします。

青山:ふざけているかもしれないんですけど「ニキビ」。

未来・タカオ・倉本:アハハ(笑)。

青山:アハッ(笑)。真面目に言うと、ほんとにいま穂香さんが言ったように、自分自身のことしか考えていなくてあんまり周りが見えていなくて、たぶんそれによってケンカにもなるんだろうし、ゴチャゴチャするんだろうし、周りを傷つけてしまうこともあるんだろうし、たぶん、反抗期とかで親に当たったりするときとかも自分のことしか考えてないから親にバーって言っちゃうんだと思うんです。だから三佳ちゃんも、自分のことしか考えてないから奈美江さんと知り合ったらそっちにバーって行っちゃって、鷹音ちゃんがショックを受けていても鷹音ちゃんとの約束を破ったりも平気でやってしまう。周りが見えなくて、自分の想いがそっちに行っちゃっているからっていう、そういう印象があります。

―― タカオさんはいかがでしょう?

タカオ:私も、いまいろんなキーワードを考えていて……「妄想癖」。

未来・青山:フフ(笑)。

インタビュー写真

取材中は笑いの絶えない和やかな雰囲気でした。左より、タカオユキさん、青山美郷さん、未来穂香さん、倉本雷大監督

倉本:(首を傾げながら)やっぱり最初に言っとけばよかったな、いまハードルが(笑)。

青山:高くなってますね(笑)。

タカオ:(笑)。なんか、思春期のときって、いい意味でワクワクするような夢を描いて、たとえばテレビに出ている素敵なグループがいたら「自分もここにいて」とか妄想したりとか、好きなアニメの中に自分がいるとか、中二病ですけど(笑)、そういう妄想をしたり、悪くすると「あの子は私のことをこう思っているんじゃないか」とか悪く思ったり、けっこう自意識過剰な妄想が繰り広げられていたなと思う節があって(笑)。それって人には言えないもので、だけど自分の中では止められないっていう、それが思春期の妄想かなと思います。

―― 監督は、もうちょっと考える時間あったほうがいいですか?(笑)

倉本:いや、大丈夫です(笑)。

―― では、締めに監督お願いします。

倉本:なんか「無自覚の色っぽさ」みたいな印象はずっとあるんですね、思春期って言われると。ぼくの中では「思春期」って想像すると男の子ってまったく出てこなくて、女の子に使う言葉のような印象があるので「色っぽい」ですね。

―― 今回はその「思春期」に「ごっこ」が付いているわけですが、もしその理由が簡単にご説明いただけたらお願いします。

倉本:最初は、単純に「ごっこ」という日本語特有の言葉というか、英語にできない日本語というのに惹かれたんですよ。ぼくは英語は得意ではないんですけど、いろいろな人に聞いてみても「ごっこ」を英語にすると「Play(=演じる)」になってしまってなかなか英語で表せないみたいな話があって、あと独特の響きがあったので「ごっこ」は使いたいなと思っていたんです。そこにストレートに「思春期」を加えたんですけど、もともと脚本家さんと話しているときに「この映画は思春期の話を見せているけど、この映画を語っている語り手は誰なんだろう?」と話したときに「もう思春期を過ぎている鷹音の語りで見せたいね」という話になったんです。それはお客さんに気づかれても気づかれなくてもいいんですけど、要は最初のナレーションで“もう過ぎてしまったもの”みたいなかたちで見せたいよねという話があったんです。それで、ぼくは「ごっこ」も「思春期」も過去形の言葉というか“もう過ぎた人たち”が使うことが多い言葉という印象があったので、そのふたつを並べたつもりなんです。

―― それでは最後になりますが、おひとりずつ『思春期ごっこ』のこういう部分を観てほしいというところをお願いします。

未来:はい、この作品は思春期の女の子たちの、自分に対する葛藤だったり、嫉妬だったり、いろんな感情がすごく生々しくリアルに描かれている映画だと思うので、私くらいの歳だったら映画の中の思春期の女の子に共感する部分があると思いますし、私のお母さん世代だったらすごく懐かしく、それこそ『思春期ごっこ』というその名の通りに観てもらえるんじゃないかなと思っているので、いろいろな方にぜひ観てほしいなって思っています。

青山:すごく画が綺麗で幻想的なので、そのへんにもけっこう注目していただきたいなと思います。あとは、中学生独特の生っぽい雰囲気とか、目線だったり仕草とか、ぶつかりあいとかもけっこう感じていただけると思うので、そのへんも観ていただきたいなと思いますね。

タカオ:大人になってしまった方に、ぜひ思春期を思い出して、そして純粋な「好き」という気持ちをこの映画で思い出してほしいですね。

倉本:とにかく、出ている人たちみんなが美しく色っぽいんですよね。なので、とにかく女優さんたちを観てもらえたらなと思います。

インタビュー

劇中の鷹音、三佳、翔子とは違った雰囲気の衣裳で取材に応じてくださった未来穂香さん(中央)、青山美郷さん(右)、タカオユキさん。

※クリックすると拡大表示されます。

(2014年7月24日/A-Sketchにて収録)

作品スチール

思春期ごっこ

  • 監督:倉本雷大
  • 出演:未来穂香 青山美郷 ほか
  • 主題歌:みみめめMIMI「no name love song」

2014年8月23日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

『思春期ごっこ』の詳しい作品情報はこちら!

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