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『VAMP』中丸シオンさん・高橋真悠さん・小中和哉監督インタビュー

 ジャパニーズホラーのキーパーソンである特殊脚本家・小中千昭さんと、SF・ファンタジー作品の名手・小中和哉監督。実の兄弟であるふたりの久々のタッグにより、ヴァンパイアを題材とした耽美的ダークファンタジー『VAMP』が生まれました。
 “ヘマトフィリア=血液耽溺者”を名乗る美女・苓(れい)と父親からの虐待に苦しむ女子高生・美以那(みいな)の出会いから始まる『VAMP』は、主演の中丸シオンさん、共演の高橋真悠さんというふたりの女優を迎え、衝撃的な表現やエロティックな描写、激しいアクションシーンの中で、登場人物たちの確かな感情が息づく作品として完成しました。
 苓役の中丸シオンさん、美以那役の高橋真悠さん、小中和哉監督、それぞれにとっての『VAMP』とは。お話をうかがいました。

中丸シオン(なかまる・しおん)さんプロフィール

1983年生まれ、神奈川県出身。10代から本格的に芸能活動をはじめ、ドラマや映画などで活躍。小中和哉監督が参加した「ウルトラマンネクサス」(2004年・CBC)でヒロインの斎田リコを演じて以降、ドラマ「ケータイ刑事 銭形海(セカンドシリーズ第2話)」(2007年・BS-i)、映画『ぼくが処刑される未来』(2012年)など小中作品にはたびたび出演している。近年は、中国映画『刀尖』(中国公開2019年予定)、ロシア国営テレビの連続ドラマ「ゾルゲ」出演など海外作品に出演し、国際派女優として活躍の場を広げている

高橋真悠(たかはし・まゆ)さんプロフィール

1994年生まれ、宮城県出身。小学生のころから地元の仙台で芸能活動を開始し、モデルやCM出演、ダンス&ボーカルユニットなどで活躍。中学時代にオーディションによって『西の魔女が死んだ』(2008年/長崎俊一監督)のヒロイン・まい役に抜擢され、本格的な演技初挑戦にして映画主演をつとめる。2015年に無名塾に入塾し、舞台などで活動中

小中和哉(こなか・かずや)監督プロフィール

1963年、三重県生まれ。高校時代から自主映画界で注目を集め、1986年に『星空のむこうの国』で商業作品デビュー。以降、SF・ファンタジー作品を中心に多くの作品を手がける。また『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』以降「ウルトラシリーズ」に監督・特技監督として参加している。近作に『ぼくが処刑される未来』(2012年)、『赤々煉恋』(2013年)など。実兄の特殊脚本家・小中千昭氏とは『くまちゃん』(1993年)、『THE DEFENDER』(1997年)、『ミラーマンREFLEX』(2005年)などの劇場作品やオリジナルビデオ作品でコンビを組んでいる

「ぼくから見ると、ふたりは似たタイプ」(小中)

―― 今回はご一緒のインタビューということで、まず中丸さん高橋さん、お互いの第一印象を教えていただけますか?

高橋:私がシオンさんのことを最初に知ったきっかけは、この映画にも出演されている渡邉翔さんという役者さんなんです。私が所属している無名塾の先輩で、その方が「すごく好きな女優さんがいるんだ」と教えてくださったのがシオンさんで、そのときにシオンさんが出られる舞台のチラシを見せていただいて、すごくきれいな方だなって思っていたんです。そのあと、この映画の前に1回共演していて、そのときは一緒の時間はほとんどなかったんですけど。

中丸:そのときは控室で「おはようございます」「お疲れさま」くらいでね。それが初対面で、一昨年の夏ですね。

小中:NHKの「ファミリーヒストリー」という番組の、ぼくが再現ドラマを演出した回で共演してもらったんです。(2017年8月放送「ファミリーヒストリー「オノ・ヨーコ&ショーン・レノン」」)

高橋:そのとき初めてお会いして、いまこの場でも感じられると思うんですけど、シオンさんはすごい気さくな方なんです。「美人で気さく」って最強だと思うんですけど、シオンさんってまさにそういう方で、最強でした。なんか褒め殺しみたいですけど(笑)。

『VAMP』スチール

『VAMP』より。中丸シオンさんが演じる主人公・苓

中丸:どうもありがとうございます(笑)。その初対面のときは共演シーンがなかったんですけど、今回、共演させていただいて、高橋さんはすごい女優さんだなって思いました。今回はあえて「私は次のシーンをこうするからああしようね」というような役としてのディスカッションはしなかったんですけど、テスト、本番とやっていると、彼女の目から役の苦しみとか哀しみとかが私の中に映像としてビュンビュンと飛んできたんです。それから、たとえばアクションとかラブシーンとか、高橋さんは初めて経験するシーンがあったんですけど、そういう特殊なシーンでも動じないですし、泣き言も絶対に言わないし、素晴らしかったです。それは無名塾で鍛えられたものも、高橋さんがもともと持っていらっしゃるものもあると思うんですけど、共演できてよかったです。

小中:ぼくから見ると、ふたりはわりと似たタイプではあるんですよ、入り込むタイプだから。特に今回の映画は高橋さんが演じた美以那の視点で展開していくので、高橋さんは一番入り込まなくてはいけなかったんです。美以那はグッと気持ちを受け止める役だし。だから高橋さんは現場に入ったら美以那になった状態で普段の高橋さんとは違うというオーラを放っていて、ほかの俳優陣に「これは生半可なことはできない」みたいな気持ちにさせる存在だったと思うんですよ。シオンさんもやっぱり役柄にグッと入る人で、ほかの作品ではシオンさんが現場でその役割をやることが多いんです。今回はそれを高橋さんがやっていたんですよね。

―― 監督が中丸さんと高橋さんを起用なさったポイントはどういうところだったのでしょうか?

小中:シオンさんは「ウルトラマンネクサス」(2004年)のヒロインで、ぼくはそのときお会いしていて、まあ「ウルトラマンネクサス」はシリーズの中でもわりと異色作で、シオンさんが演じたリコという役はヒロインとしてすごく美しく登場するんですけど、実は自分がすでに死んでいて黒幕的な存在に操作されているマリオネットであるということを自覚して、ちょっと狂気に陥っていく役だったんです。だからオーディションは狂気の芝居がきちんとやれるかが大事だったから、そういうホンを渡して、いろんな女優さんに狂気の芝居をしてもらった中で、もっとも輝いた女優さんがシオンさんだったんですよ(笑)。

中丸:フフ(笑)。私は当時20歳くらいですね。自分は声も低いしウルトラのヒロインには向いてないだろうなと思いながらオーディションに行っていたんですけど、そういった台本をいただいて「あ、これは!」って(笑)。そのころも薬物中毒になる役なんかをやっていたので、これは私に合っているんじゃないかと、ちょっと燃えましたね(笑)。

小中:ぼくはそのあともシオンさんと何本かやってますけど、そのシオンさんの潜在的な能力を活かせる機会がなかなかなかったんです。今回はそれができる役なのでシオンさんに出てもらったというのが理由ですね。高橋さんは、この映画の前に「ファミリーヒストリー」でご一緒したときに、無名塾にこういう方がいらっしゃるんだと思ったのと、ぼくも高橋さんが中学生のときに出演した『西の魔女が死んだ』(2008年/長崎俊一監督)は観ていたので、あの中学生がいまこうして女優さんをやられているというのを見て、ちょうど『VAMP』のシナリオを用意していた時期でもあったので「この役もしかしたら」と思ってお願いしてみたんです。

「アクションシーンは見せることがすごく難しい」(高橋)

―― 中丸さん、高橋さんは、最初に『VAMP』の脚本を読んだときはどうお感じになりました?

高橋:最初にいただいたときは、まず映画に出られるということで嬉しくて、まったく客観的には読めなかったんです(笑)。それが最初の印象だったんですけど、数日経って落ち着いて読み返してみると、いろいろな要素があるというか、ただ怖いだけではないですし、人間のリアルな心というかドラマ的な部分がすごく印象に残って、私はそこを大事にやっていきたいなと思いました。

中丸:私は2年前くらいですね、小中監督が「こういうお話を作っているんだ」ということで台本を読ませていただいたんですけど、読む前には、ヴァンパイアの話で女子高生とちょっと大人のふたりがメインになるということくらいしかうかがっていなかったので、読んだときは衝撃でした。あまりの容赦のなさというか描き方にすごく驚いて、さっき監督もおっしゃったように、監督とは「ウルトラマンネクサス」のように主に子どもに観てもらうような番組でご一緒していたので、まさかこういう作品でこういうことをやるのかという驚きと衝撃が一番大きかったです。それで、役を作っていく段階でもっと綿密に読んでいくにつれて疑問もたくさん出てきたので、それは監督と一緒にディスカッションをたくさんして作っていきました。

―― 中丸さんから衝撃だったというお話もありましたが、今回はどういう経緯でこのような残酷な表現もあるダークファンタジーを作ることになったのでしょう?

小中:最初は兄貴(小中監督の実兄で脚本の小中千昭さん)と一緒にホラー映画の企画をやろうというところからのスタートで、以前に兄貴が吸血鬼小説のアンソロジーに書いた短編(2007年刊行「異形コレクション 伯爵の血族 紅ノ章」所収「吸血魔の生誕」)があって、それがアイディアの元になっているんです。この映画でシオンさんが演じた苓の原型になったような、血を飲まないと生きていけない人間がこの日常の中にいて、その女性が別の女の子の前に現れてみたいなイメージの話で、それを膨らませて1本の長編ホラー映画にしようというのがあったんですけど、最初は人を殺すことをためらわない人間の心理というか、現実にもそういう事件は多いので、そういう異常心理のダークサイドに分け入っていくような話をヴァンパイアという形式を借りて作れないかみたいな視点で企画書を書いてプロットを作りはじめたんです。それがキャラクターができた段階でぼくたちも結構入り込んじゃっているから、だんだん現実の事件とかはどうでもいいという感じになっていったんですけど、最初の発想としてはそういうところだったんです。

―― 監督は過去にもホラー系の作品を手がけられていますが、今回はクライマックスで映画のジャンルが変わったのではと思うほど激しいアクションシーンがあるのが新たな試みのように感じました。

小中:ジャンルが変わるくらいのアクションに見えたというのは狙ったところで、この映画自体「ジャンルムービーじゃないように見せながらジャンルムービー」みたいなところを狙っていて、もともとの発想がそうだったのもあって、前半においては血液耽溺者を自称する殺人鬼のサイコサスペンスみたいに見せながら、途中でジャンルを逸脱して違う展開になっていくような意外性を狙っていたんです。なので、アクションも徹底的に振り切ったくらいにやる面白さで意外性を出したいなと思っていたんです。一粒で二度おいしい的な映画にするために、アクションはアクションでやりきりたいというのはあったんですよ。

―― 中丸さんと高橋さんは、アクションを実際に演じられていかがでしたか?

『VAMP』スチール

『VAMP』より。高橋真悠さんが演じる美以那

高橋:やっぱり、見せることがすごく難しいというか、アクションの相手のほうだけを向いて小さくやっていても、お客さんに伝わらなければ意味がないんですよね。私はアクションシーンが初めてで、どれくらい手を伸ばしたらいいのかとか、アクションシーンとしての見せ方というのは全然知らないものでしたから、客観的に見なければいけないというのが難しくて。稽古のときにも本番通りにと言いますか、映像を撮ってくださるんですよ。

中丸:覚えやすいように稽古のときからカットを割ってアクションを付けてくださっているんです。それを撮影してくださって、3日間くらいアクションの練習をして、撮っていただいた映像を見ながら家でもイメージトレーニングをして。

高橋:そうなんです。それで、一番最初の稽古で撮ってもらったのを見たときは「ええっ?」って思って。自分がどれだけ力強くやったつもりでも全然そう見えていなかったりとか。

小中:やっぱり「カメラで見てナンボ」なんですよ。だから「カメラアングルがこっちからのときはこう」みたいなことをわかっているかわかってないかで全然違ってくる。それはアクション監督の大橋(明)さんがいろいろ指導してくれたと思います。

中丸:私もそんなにはアクションの経験はないですから、そこは高橋さんと同じでしたが、組ませていただいたのが北岡龍貴さんという非常にアクションがお上手な役者さんですので、私の慣れていないアクションもなんでも受け止めてくださって、すごくやりやすかったです。ほかの方とのアクションもありましたし、口から血を吐いたりするので、それは難しかったですけど(笑)。でも楽しかったです、意外と。暗いシーンが多かったので、アクションは体を動かせますから(笑)。楽しく、怪我もなく、スッと撮れたんじゃないかと思います。

小中:撮影も最後にアクションシーンで、芝居をやりきったあとに「最後はアクションで」みたいな感じだったから、最後のイベントでしたよね。あと、やっぱりふたりとも女優だから、アクションは初めてだったり慣れていなくても、要所要所の見せ所で芝居をするという、そこですごく本気度を見せてくれたので、そこは女優さんのやるアクションというところで、よかったなと思っています。

「書かれていない部分を埋める作業が多かった気がしています」(中丸)

―― 中丸さん、高橋さんは、演じられた苓と美以那というキャラクターについて、脚本を読んだ段階ではどういう人物だとお感じになりましたか?

中丸:どういう人物だなっていうのは……。ほんとに小中千昭さんが書かれた台本は難解というか、きっと私がいままでそういうお話に触れたことがなくて、感じるセンスを持っていなかったんだと思うんですけど、役作りはすごい難航したというか、台本に書かれていない部分を埋める作業が多かったような気がしています。

高橋:私も難しかったんですけど、脚本を読んだだけでは気持ちを理解しようと思っても限界があるので、まず事実だけを受け止めるというか、美以那が父親から虐待を受けているというのは映画の中で確実に起こっている事実なので、そこを突き詰めていきたいなという想いがあったんです。それで性的虐待のような被害を受けた方たちのことを調べていくと、そういう方たちは、失礼な言い方になるかもしれないですけど、ある強さを持っているように感じる部分があったんです。ボンヤリ生きている私なんかとは全然違った感覚を持っていたり、生きることや死ぬことに対する価値観の持ち方とか、世界を一歩引いて見ているような、そういう強さを感じたんです。だから、美以那に関しても平凡に暮らしている女子高生とは違う感覚を持っているように感じて、それは魅力的でもあるし、美以那自身も許されない行動をとったりもしていますけど、私にとっては憧れるところでもありました。

インタビュー写真

小中:いまシオンさんが難解だって言ったけど、この映画は話の構造上は美以那の視点で描いていて、苓は突然現れた謎の人物として出てくるから、苓は役作りする上でどこかしら完全に理解できる役ではないと思うんです。苓をある種のモンスターとして描いていて、なぜモンスターが現れたかという歴史は一応語られるけど、それがどこまで本当かはわからないという描き方をしているから。だから役のアプローチは違っていて、美以那は現実にそういう境遇の人もいるし現実的に考えられる役だから「それをどう演じるか」という考え方で行けただろうけど、苓は設定があり得ないわけだから、その上での感情の構築の仕方って全然違うんですよね。(中丸さんに)「この人の気持ちわかる!」みたいにはならないでしょ?(笑)

中丸:そう、そうなんですよ。ひとつだけ「弱き者を守る」みたいな部分は自分の中にあったので、それはわかったんですけど、そのほかはわからなくて難しかったのかもしれないですね。

小中:少しコアな話をするとね、さっき話した短編小説のほかにもうひとつ、ぼくと兄貴が組んでやった「毒婦 プワゾン・ボディ」(1994年)というビデオ作品が今回のベースになっていて、ぼくらの中では「あれをもう1回やろう」的なところが最初にあったんです。「プワゾン・ボディ」は真弓倫子さんが主演で、真弓さんが演じたヒロインに惚れてしまってストーカー的に追いかける男の子の視点で描いた作品なんです。そのヒロインは“殺欲”、つまり殺したい欲求を食欲とか性欲と同じように持っていて、それを満たすためだけに人を殺しているというまったく理解不能なキャラクターで、彼女は自分がなぜそんなことをするようになったかという過去のトラウマを語ったりはするんだけど、話の構造としてはそれは嘘かもわからないみたいなニュアンスだったんです。その構造が今回の『VAMP』とよく似ていて、映画の中で語られる苓の過去の歴史は、実は本当か嘘かはどうでもいいというところがぼくらの中ではあったんです。だから苓が理解できないキャラクターだという構造はベースに「プワゾン・ボディ」があるんです。

―― いまのお話とつながってくるかもしれませんが、苓にとっての美以那、美以那にとっての苓はどんな存在だと考えられていましたか?

中丸:やっぱり「共感」という言葉なんでしょうか。現実的に考えると苓もずっと悲惨な人生を送ってきたと思うんですね。それで美以那に対して「わかる」と感じるものがあったと思うんです。

高橋:私は、どの関係性に一番近いのかなって考えるんですけど、家族なのか、親子なのか、恋人、親友、って考えていくと、やっぱりどこにも属さないから、苓はいままで会ったことのない初めての人間なんだろうなって。美以那は自分が虐待を受けていることを中学生のときに相談しているので、そのときに同情もされただろうし、可哀想な子といわれていると思うんです。だけど、苓は同情じゃなくて美以那に対してもすごい強くて、だから美以那にとってはちょっと怖い存在でもあって……。苓は「殺される前に殺しなさい」みたいなセリフを言うんですけど、いままで美以那にそういうことを言ってくる人はいなかったと思うんです。親でもそんなことは言わないだろうし、恋人にも親友にも言われないだろうしって考えると、どこのジャンルにも属さない特別な存在なんだろうなって。

小中:やっぱり、ふたりの関係性はこの作品のテーマだから、どの関係にも属さないし、逆に言うといろんな関係性があって、親子であり、もうひとりの自分であり、恋人でもあり、そういう「自分は孤独だ」と思っていた人間が唯一、自分と同じ存在として人として接することができた相手で。

『VAMP』スチール

『VAMP』より。次第に心を通わせる苓と美以那

中丸:お互いそうですよね、苓もきっと初めて会った相手だし。

小中:そう。さっきの話で言うとね、苓が語る過去の歴史がどこまで本当かはわからないけど、観ているお客さんは気持ちは感じて感情移入はできるだろうと。それは美以那もイコールで、美以那は苓に感情移入はするし「きっと私を理解してくれる人だろう」ということだけはわかるから心が通い合っていくという構造で、だから、ふたりのベッドシーンも性愛の表現というよりは「人と接することの歓び」というか、いままで気持ちが通い合わない肉体だけの接触はあったかもしれないけれど、人と気持ちを通い合わせて体と気持ちが一緒になるという初めての経験をあのシーンとしてやろうという想いではあったんです。

―― 中丸さん高橋さんは、そういう互いへの感情を表現する上で意識されたのはどんなことですか?

高橋:私はなにかを表現しようと思って演じてはいなかったかもしれないです。美以那ってすごく受け身なキャラクターなので、ほんとに目の前で起こっていることとか目の前にいる人のことをただただ吸収するだけだったので「こうしよう、ああしよう」みたいな想いはなかったですね。

小中:高橋さんはそういうタイプなんだよね。あまり計算じゃないんですよ。その気持ちになりきることが大事で、その瞬間のリアクションがっていうことなんですよね。

中丸:私はなにを意識していたんだろう……。ひとつ言うとすれば「守る」というのはね、たぶん。

小中:やっぱり、演出的に言うと「守る」というのは大事で、放っておけば接点はなかったふたりなんですよね。でも、苓はもうひとりの自分として手を差し伸べたくなってしまって、美以那を守ろうとして彼女の人生に介在してしまったがゆえにいろんなことが起こってしまうという話ですから、気持ちのスタンスとしてはそうなんでしょうね。

中丸:ただ、守るだけではなくて、すごく彼女にも助けられたなって思いますね。救われました。

―― では最後に『VAMP』のこういうところを観てほしいというポイントをお願いできますか?

高橋:この作品の美しさを観ていただきたいなと思います。お話自体は、もしかしたら観ていて苦しい場面もあるかと思うんですけど、そういう場面もすごくきれいだということが前提になった上でのシーンで、観ている方にも不快感がないと思うので、美しさは大切な部分かなと思います。

小中:今回は高間賢治さんというカメラマンが非常に美しい画を撮ってくれているので、そこも見どころだと思います。高間さんはハリウッドの撮影監督システムをいち早く日本に持ち込んだ大ベテランの撮影監督ですけど、非常にフットワークが軽く、デジタルにも対応して、今回も小規模な体制の中でも最高の画を撮るという仕事をしてくれたので、その高間さんの画をぜひ観ていただければと思います。

中丸:私は初号試写を観たときにすごく感動したんですけど、ほんとに小中監督をはじめ日本を代表する特撮界のスタッフのみなさんが、限られた時間とか限られた条件の中で、これだけ素晴らしい映像を作れるというのは、ほんとにすごいことだと思うので、そういうところもみなさんに楽しんでいただきたいポイントです。音楽も映像もそこに描かれる凄まじい世界観も、私が最初に台本を読んだときの想像をはるかに超えるものが完成したと思います。ぜひ、みなさんにも観ていただきたいです。

インタビュー写真

『VAMP』劇中では見られない明るい表情を見せてくれた中丸シオンさん(左)と高橋真悠さん。劇中での苓と美以那の姿も、ぜひ劇場之スクリーンでご覧ください

※画像をクリックすると拡大表示されます。

(2019年7月5日/キングレコードにて収録)

作品スチール

VAMP

  • 原作・脚本:小中千昭
  • 監督:小中和哉
  • 出演:中丸シオン 高橋真悠 田中真琴 ほか

2019年8月23日(金)より開催「夏のホラー秘宝まつり2019」オープニング作品として上映

『VAMP』の詳しい作品情報はこちら!

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