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『散歩時間~その日を待ちながら~』佐々木悠華さんインタビュー

 式を挙げられなかった新婚夫婦、家族に会えないタクシー運転手、最後の夏休みを楽しめなかった中学3年生、活躍の場を失った俳優――。それぞれにもどかしさを抱える人々は、それぞれにコロナ禍の2020年11月17日を過ごす――。
 当たり前にできるはずのことができなくなった世界が舞台の群像劇『散歩時間~その日を待ちながら~』。この作品が長編映画初出演となる佐々木悠華さんは、密かに想いを寄せる男子と一緒に天体観測をする中学生・川村鈴を瑞々しく演じました。
 実際にコロナ禍に学校生活を送った10代である佐々木さんが、鈴を演じて感じたものは。そして、佐々木さんにとっての女優というお仕事は。戸田彬弘監督がその才能を見出した期待の新星にお話を伺いました。

佐々木悠華(ささき・ゆか)さんプロフィール

2002年生まれ、東京都出身。戸田彬弘監督のワークショップに参加したのをきっかけに『散歩時間~その日を待ちながら~』のメインキャストに抜擢される。ほかの出演作に、JAL×コカ・コーラコラボCM「新たな旅立ち」篇(2021年)、スーツのはるやま卒業生応援ムービー「ワタシたちだけの青春Vlog」(2022年)、カロリーメイトWEBムービー「入学から、この世界だった僕たちへ。」(2022年)、上野優華ミュージックビデオ「愛しい人、赤い糸」(2021年)など

私もこんなキラキラした世界に行きたいって思っていました

―― 佐々木さんは、どんなきっかけで女優というお仕事に興味を持たれたのでしょう?

佐々木:なにかきっかけがあったとかというわけではなくて、ほんとに物心ついたときから「私はなにかを表現する人になるんだ」というのがずっと心の中にあったんんです。それで、テレビっ子だったので映画とかドラマが好きですごく観ていて、そのときに女優さんって素敵だなと思って、女優さんになろうと決めました。

―― 女優を目指すためになにかやっていたことはあるんでしょうか?

佐々木:お芝居はすごくやってみたかったんですけど、そのころは実際にお芝居をする機会はなかったんです。なので、ほんとに些細なことなんですけど、ひとりで泣く練習をしたりとか(笑)、ドラマの「花より男子」(2005年~)がすごく好きだったので、みんなで好きなシーンを真似をしたりしてました。あとは、小さいころは主演を張れるような女優さんはきれいな方だというイメージがあったので、可愛くなろうというのを一番にしていたり(笑)。それから、小学校のころからお休みの日は必ず映画館に行って映画を観ていました。

―― そのころは、どんな作品をご覧になっていたんですか?

インタビュー写真

佐々木悠華さん

佐々木:やっぱり学園ものはすごく好きで、いつか学園ものに出たいというのはいまでも夢なんです。よく覚えているのが北川景子さん主演の『パラダイス・キス』(2011年/新城毅彦監督)で、学園祭でファッションショーをやるシーンがあって、そこで北川景子さんが青いドレスを着ていらっしゃるのがすごく可愛くて、そのシーンが大好きで。私もこんなキラキラした世界に行きたいって思っていました。

―― プロフィールを拝見すると、特技として陸上と弾き語りをあげていらっしゃいますが、これは学校の部活とかでやっていらっしゃったんですか?

佐々木:はい、陸上は中学の時に部活でやっていて、バンドと弾き語りも高校のときに部活でやってました。もともと私は歌がすごく苦手で、でも女優さんになるためにはなにか打ち込めることに挑戦したいなと思って、軽音楽部に入ったんです。

―― 軽音楽部では、好きなバンドの曲をやったりとかですか?

佐々木:コピーもしましたけど、自分で曲作りをやることが多かったですね。すごく上を目指している部活で「これからがんばっていこう!」となっているところぶ私が入ったので、私もたくさん練習しましたし、いろいろな音楽が好きになったので、その経験があってよかったなって思っています。

―― それで高校を卒業してからお芝居の仕事を始められるんですね。お仕事を始められてから、映画やドラマの見方が変わったりはしましたか?

佐々木:見方というか、いままで触れてこなかった作品とかジャンルも観るようになりました。もともとサスペンスとかホラー系は苦手だったんですけど、最近はそういうジャンルも観るようになったりとか。怖いんですけど、一度観たらけっこうハマってしまって、サイコ系の役とかも将来やってみたいかなとも思っています(笑)。

目のお芝居をすごく意識していたのはあるんです

―― 『散歩時間~その日を待ちながら~』では、中学3年生の川村鈴の役を演じられました。戸田彬弘監督のワークショップに参加されたのがきっかけで出演が決まったそうですが、最初に脚本を読んだときにはどう思われました?

佐々木:率直に「私じゃん!」って思って(笑)。鈴ちゃんは元気な女の子で、私も明るいほうではあると思うので、普段の私と重なるところがけっこうあったんです。たぶん、そういうところもあって選んでいただいたのかなって思うんですけど「絶対にこの役をやりたいな」って思いました。

―― では、演じるにあたっては「こういうふうに演じよう」と考えるよりは、ナチュラルに演じられた感じですか?

佐々木:そうですね、私もまだお芝居を始めてそんなに長くないので、正直わからない部分もたくさんありましたし、あまり作り込まずに感覚でやっていたというか、その場で起きた気持ちを大切にして演じようと思っていました。

―― コロナ禍の話なので、マスクをしている場面が多いですよね。マスクで顔がかなり隠れていても感情がしっかり伝わってくるのが印象的でした。

『散歩時間~その日を待ちながら~』スチール

『散歩時間~その日を待ちながら~』より。佐々木悠華さん演じる川村鈴(左)と、山時聡真さん演じる香取光輝

佐々木:ありがとうございます。マスクをしていると口元が見えないので伝わりにくいというのはあったので、感情を目に集中して乗せるというか、目のお芝居をすごく意識していたのはあるんです。それ以外には、声のトーンとか些細な動きとかにその場の感情をちゃんと乗せられるようにして、その場を鈴ちゃんとしてしっかり生きられるようにというのは思っていました。

―― 上野優華さんのミュージックビデオ「愛しい人、赤い糸」でも、セリフなしで気持ちを表現されていましたね。感情を表現するのがお得意なのかなと思いました。

佐々木:どうでしょう(笑)。あのときは、セリフがないので表情とか温度感とかで伝えなくちゃいけないというのは思っていたんですけど……。たぶん、私は普段から「表情豊かだね」って言われることが多くて、思ったことが顔に出ちゃうタイプなんですよ(笑)。それがお芝居にもつながっているのかなって思います。自分を演じる役の感情に持っていったら自然に表情が出てくるので、そしたら身を任せてという感じです(笑)。

―― 今回の撮影で印象に残っていることはありますか?

佐々木:現場自体が初めてだったので新鮮でしたし、花火をするシーンがあって、私は花火をするのがすごく久しぶりだったので懐かしいような気持ちもありましたし、コロナじゃなかったら花火をすることもあったのかなとも思いました。監督からは「好きにやっていいよ」と言っていただいていたので、光輝くん役の山時聡真くんとふたりで自由に遊んでいて、そこが思い出のシーンです。

―― その花火も含めて、佐々木さんの出演するパートは青春のシチュエーションが満載なところがありますね。

佐々木:もう「こんな青春したかった!」ってめっちゃ思いますね(笑)。中学3年生のときに、好きな男の子と、しかも夜に、ふたりきりで、プールで、花火って、すべての青春が詰まっているじゃないですか!(笑) だから演じていてすごく楽しかったですし、私はあまり学生時代にキュンキュンすることはなかったので、甘酸っぱいものを取り戻した感じはありました(笑)。

―― 映画は11月17日の1日だけを描いていますが、このあと鈴はどうしたと思います?

佐々木:私もそれはけっこう考えたんです。たぶん、あのあともふたりの関係がすごく変わるということはなくて、結局ふたりは中学を卒業したらバラバラになっちゃうんだけど、鈴ちゃんは楽観的な子なのかなとも思うので、高校生活は高校生活で楽しんでいるだろうなっていうのも思って(笑)。でも、あの1日は鈴ちゃんの中ですごくいい思い出になっているんだろうなって思います。

演じることによって、観た人に寄り添えたらいいなと思っているんです

―― 映画の中では、鈴は中学最後の1年をコロナ禍の中で過ごすことになっていますが、佐々木さんも実際にコロナ禍での学校生活を経験されているんですよね。

佐々木:そうです。高校3年生の1年間はコロナ禍でした。学校の行事もあまりなかったですし、一番寂しかったのは、密にならないようにクラスを半分に分けて、半分は今日出席して、もう半分は次の日みたいに交代で出席していたので、仲のよかった友達に会えなかったんです。高校最後の1年なのに大好きな友達に会えないのが辛くて、でも、だからこそ友達の大切さがわかったというのはありました。

―― 今回の鈴もそうですし、これまでにCMなどで、コロナ禍の中で学校生活を送る中高生の役を何度か演じられていますね。そういう役を演じて感じられたことはありますか?

佐々木:近くにいる人を大切にしたいなというのはすごく思いました。いまの友達の話もそうなんですけど、近いからこそ見えなくなっているものってたくさんあって、そういうものがコロナ禍で見えるようになったところってあると思うんです。もちろんコロナ禍は大変なことが多いですけど、普段は実感できなかった些細な日常の素敵さを感じられるようになったところもあったと思いますし、ただ辛いとか寂しいだけじゃなく、そういうコロナ禍だから見えたことも大切にしたいと演じていて思いました。

―― そういう役を経験された上で、これから演じてみたい役があれば教えてください。

インタビュー写真

佐々木悠華さん

佐々木:やっぱり、学生の役はいましかできないなって思うので、これからもたくさんやりたいなと思っています。それから、ちょっといじめるような役をやってみたいなって最近は思います。嫌われるような役で、自分が作品の中でスパイスとしていい味が出せたらいいなと思うので、そういう役は挑戦したいですね。

―― 冒頭ではサイコ系の役もやってみたいというお話もありましたし、ちょっとダークな面に興味がある感じですか?

佐々木:そうですね。私は物心ついたときからずっと思っていることがあって、なにかを抱えている役とか、どこにも出せない感情を内に秘めている役とかを私が演じることによって、観た人に寄り添えたらいいなと思っているんです。私は小学校のころにあまり楽しくない時期があって、そのときにドラマとか映画を観てすごく救われた部分があったので、将来は自分がお芝居をして表現することによって誰かに寄り添えたらいいなって思っていたんです。それはいまも変わらない目標です。サイコ系の役というのも、他人にはわからないその人だけの痛みのようなものがあるのかもしれないし、そういうものを私が理解して演じてあげられたらいいなって思うんです。

―― 映画の公開の少し前の12月5日が20歳のお誕生日ですね。20歳を迎える心境はいかがですか?

佐々木:なんでしょうね(笑)。逆に、10代じゃなくなるっていう不安がすごくあるんです。「もう大人なんだ、しっかりしなくちゃ」というのはあって、いつまでも子どもがいいなって思うんです(笑)。でも、20歳になるからできることもたくさんあると思いますし、それこそ役の幅も広がって、もっと上の年齢の役も演じられるようになるかなって思うので、そこはすごく楽しみでもあり、自分で期待しているところです。

―― では最後に『散歩時間~その日を待ちながら~』をご覧になる方へのメッセージと、今後の豊富をお願いします。

佐々木:私はこの映画を観たあとに、すごくあたたかい気持ちになりました。映画の最後のほうで、主人公の亮介さんとゆかりさんのふたりが夜空の下で肩を並べているのがすごく素敵で、コロナ禍になってもそこにあるものはなにも変わらなくて、変わらないものの大切さに気づくことが大事なんだと感じました。さっきお話ししたことと重なるんですけど、コロナ禍になって気づけたこともあるんだって、そのシーンを観て思ったんです。なので、この映画を観て「あのころは不安で苦しかったけど、見えないことが見えるようになる休憩の時間、散歩の時間だったな」って思っていただけたらいいなと思っています。
 私自身は、この作品に出させていただいて、改めてお芝居って楽しいなって思えましたし、ずっと女優さんで生きていきたいなと思ったので、これからがんばって、いろいろな作品に出られたらいいなと思っています。
 ぜひ、この映画を観ていただきたいですし、これからの私のことも見ていただければ嬉しいです。

インタビュー写真

朗らかで元気な中に女優という仕事への強い想いが感じられる佐々木悠華さん。今後の活躍にも期待です。

(2022年11月9日/チーズfilmにて収録)

作品スチール

散歩時間~その日を待ちながら~

  • 原案・監督・編集:戸田彬弘
  • 出演:前原滉 大友花恋/柳ゆり菜 中島歩 篠田諒 めがね 山時聡真 佐々木悠華 アベラヒデノブ/高橋努

2022年12月9日(金)より、新宿シネマカリテ ほか全国順次公開

【『散歩時間~その日を待ちながら~』予告編】

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