fjmovie.com
関連リンク
公式サイト
関連記事
『誰が心にも龍は眠る』作品情報
『誰が心にも龍は眠る』トークショーの模様
トップページ ニュース・情報一覧
『誰が心にも龍は眠る』堀江慶監督・麻宮美果さんミニインタビュー

 龍が棲むという伝説のある湖。子供の頃にその湖で溺れ、記憶を失った主人公・テルミが過去を調べ始めたとき、明らかになっていくものは…。『誰が心にも龍は眠る』は、いくつもの謎が交錯する、新感覚のミステリーホラー。
 初主演にして記憶喪失という難しい役に挑戦したテルミ役の麻宮美果さんと、脚本も手掛け謎に満ちた独自の世界を作り上げた堀江慶監督のおふたりにお話をうかがいました。

写真:麻宮美果さん(左)、堀江慶監督(右)



―― 麻宮さんはこの作品が初主演ですね。主演をつとめられた感想は?

麻宮:はじめにお話をいただいて、台本を読ませていただいたときは、正直「できないよ」って思ったんですよ。今までやった作品は南の島が舞台で、実際の私に近い役だったんですけど、今回は別ジャンルで、記憶喪失という役柄で、しかも初主演ということだったので。でも、台本を読み終わったときに直感的に「これは私の役だ」って思ったんです。だから、撮影は大変だったんですけど「これは私のものだ」みたいな感じで、頑張ろうと思っていました。

―― 堀江監督は脚本もお書きになっていますが、ホラー、サスペンスというジャンルでオリジナル作品を作るきっかけはなんだったんでしょう?

堀江:オリジナルで完全に自由なテーマとなると、やっぱり似てくるんですね。1本目が『グローウィン グローウィン』という作品で、待機作で『全身と小指』というのがあるんですけど、そういうトーンの作品ではなくて「ホラーというジャンルの中で堀江らしいものをやってみないか」という話を製作総指揮の喜多(一郎)さんからいただいたんです。ジャンルの仕切りがあった上でのオリジナルな作品は初めてなので新鮮でしたし、ジャンルに徹しつつ自分なりのものってどういうものだろうと考えたんです。以前に監督した『渋谷怪談』『渋谷怪談2』は、ぼくではなくて福谷修さんが脚本を書かれているんですけど、あの作品をやったことで自分なりのホラーというものが見えてきたので、もっと心理的なものをやったらどうだろうと考えて、この作品の脚本を書いたという感じです。

―― この作品は観た方を驚かせるような作品ですが、今まで観客の立場でご覧になって「これは驚かされた」という印象深い作品はありますか?

堀江:ホラーじゃないですけど『ユージュアル・サスペクツ』(1995年・米/ブライアン・シンガー監督)ですね。最後に「そういうことだったのか!」と驚かされるというのは最高ですよね。だまされて気持ちがいい。そこまで観客をだましきるっていうのは、プロット上で練り込まないとできないもので、この作品でも伏線はかなり練りましたね。

麻宮:私はこの映画の役作りのためにホラーもたくさん観たんですけど、この作品は宣伝コピーの“新感覚ミステリーホラー”という言葉の通りで、ほんとに新しい感覚で、追い込まれていくのがすごく怖いっていう感じなんです。だから、どの作品で驚いたというよりも、この作品がすごく驚く映画だと自信を持っています。

―― いろんな解釈ができる難解な部分のある作品ですよね。麻宮さんは演じる上で悩んだり戸惑ったりした部分はありませんでしたか?

麻宮:すべてが悩んだり戸惑ったりの連続でした(笑)。でもそれよりも、演じる側として観ていただく方々に悩んだり怖がったりしている部分をどう伝えるかということに集中していましたね。

―― 監督から麻宮さんに「ここはこういうことなんだ」と説明することはあったんですか?

堀江:実は麻宮さんが演じたテルミは最後まで何がどうなっているのかわかってない役なんで、基本はそんなに複雑ではないんですよ。だから、難しかったのはどこまでの記憶があって、どこからがないのかっていうラインだと思うんですよね。それは脚本を書いていて難しかったところですし、(麻宮さんに)やっていて難しくなかった?

麻宮:うん、だから監督が撮影中ずっと私を追い込んでたっていう感じはしましたね(笑)。私も追い込まれて演技ができたっていうのはすごく感じています。

―― 人の記憶の曖昧さが映画のひとつのポイントになっていますね。

堀江:過去を自分にとって良いように解釈しちゃうって一般の人でもあると思うんですよね。悪かったことは忘れようとするのが人間なんで。だから記憶をなくしてゼロの状態になったときって「私はそういう人間ではなかった」っていうところからリスタートできるタイミングかもしれないって考えるとすごく面白いって思ったんです。

―― それを作品の中で見せていく上で、気をつけた部分はありますか?

堀江:やっぱり「実はこうだったんだ」というのは、忘れているんだけどベースにはあるわけなんですよ。それが明らかになったときに、観ている方に「ああ、そういえば確かに」と思ってもらえるかっていうところですね。それをどう出していくかが演出としては難しかったところです。

―― 麻宮さんはその部分についてはどう考えていましたか?

麻宮:私は逆に「実はこうなんだ」というのを一切、意識しなかったんですよ。意識をしたら顔に出ちゃうと思ったんで、意識しないでテルミになりきっちゃったんです。ほんとにストーリーに入り込んじゃったので、普段も「ほんとに私は私なのかな」って思ってしまうくらい(笑)。ずっと「私は記憶喪失なんだ」って呪文のように唱えて自分を追い込んでいたし、それにプラスして監督が私を追い込んでいたので、撮影が終わると死んじゃうかもしれないと思いましたよ(笑)。

堀江:でも、撮影中にはそうやってひとつのことしか考えてなくて、映画ができあがったときに、やっている気持ちと全然違って見えるのって面白くない?

麻宮:面白かったです。だから自信はつきましたよ。より演技の楽しさを覚えたというか、南の島で笑うのも楽しいけれども、いろんなジャンルでの楽しさがあるんだって。演技の幅が広がりましたね。

―― 最後に、今後のおふたりの活動予定を教えてください。

堀江:角川映画の『そのとき私は死ぬことにした』という映画の監督をやっていて、10月の東京国際映画祭がお披露目だと思うので、今は仕上げの真っ最中です。大きい規模の作品だから、日々頑張って、日々悩んでいます(笑)。

麻宮:8月20日に「MIKA ASAMIYA in ISLAND 〜inside&outside〜」という写真集が発売になります。映画は初秋に『Life on the Longboard』が公開されます。大杉漣さんが主演で、大杉さんはほんとにユニークな面白い方なので、すごく助けられて演じることができました。

―― 今後もいろいろな作品にご出演になると思いますが、どんな女優さんを目指していきたいですか?

麻宮:引き出しの多い女優になりたいですね。どの監督さんからでも「こうして欲しい」って言われたときに、それを演じられる女優になりたいと思っています。

(2005年7月6日収録)


 普段の自分とは違うキャラクターを演じきった麻宮さんと、新たな境地を見せた堀江監督。『誰が心にも龍は眠る』だけではなく、今後のおふたりの活動にも要注目です。

麻宮美果さんプロフィール
1979年生まれ。2003年公開の映画『星砂の島、私の島 〜アイランド・ドリーミン〜』でデビュー。
大杉漣さん演じる主人公のマドンナ役を演じた映画『Life on the Longboard』が2005年初秋より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー公開。ファンタスティックシアターでも8月16日〜18日にイベント上映される。
8月20日には写真集「MIKA ASAMIYA in ISLAND 〜inside&outside〜」が発売(お問い合わせ:オフィスキタ 03-3407-8677)。
公式サイト:http://www.asamiyamika.com/

堀江慶監督プロフィール
1978年生まれ。大学在学中から俳優として活動をはじめ、卒業制作作品『グローウィン グローウィン』で監督としても注目を集める。以降、俳優、監督、脚本家として映画、テレビ、舞台と幅広く活躍。監督作に『渋谷怪談1・2』(04)、『キスとキズ』(04)など。
監督最新作『そのとき私は死ぬことにした』が2006年公開予定。
公式サイト:http://www.cornflakes.jp/

サイト内の画像・文章の転載はご遠慮ください fjmovie.com トップページ ニュース・情報一覧