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日韓の気鋭の監督ふたりが対談:『家族X』トークイベント

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トークショーをおこなった吉田光希監督(左)とヤン・イクチュン監督(右)

 現代の日本を舞台にある“家族”の姿を描き、海外の映画祭でも高い評価を受けた『家族X』を公開中の渋谷ユーロスペースで、吉田光希監督と、監督作『息もできない』で知られる映画監督・俳優のヤン・イクチュンさんによるトークショーがおこなわれました。
 吉田監督とヤン監督は、今年4月から5月にかけて開催された第12回全州(チョンジュ)国際映画祭に参加した際に出会い、今回のトークショーは「毎晩一緒にお酒を呑んでいました」(吉田監督・談)というほど意気投合した両監督の交流から実現したもの。
 ヤン監督の『家族X』についての「最初に感じたのは“どうしてこの家族はこんなに無口なんだろう?”ということでした。人は必要なことを話して生きているというよりも、必要のないことを話しながらお互いの関係を維持しているのではないかなと思います。でも、(映画に出てくる)この家族はほんとに最低限のことしか話していない印象があり、胸が痛いような気持ちになりました。韓国の社会でもこういった問題は存在しているのかなと思いました。心の中をもっとオープンにしたらどうかなという想いで観ていました」というコメントに、吉田監督は「コミュニケーションの不在は描こうとしていたんですね。コミュニケーションがなくなってしまっていることに危機感さえ感じなくなってしまっていることが、彼らにとってもっとも孤独なことのような気がして。彼らの沈黙している時間に眼差しを向けて、沈黙にある心情をカメラに捉えたいと思っていました」と答え、両監督はその後も活発に意見を交換しました。

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舞台あいさつに登壇した主演の南果歩さん(右)と吉田光希監督(左)

 そしてトークショーの終盤では『家族X』の主人公の主婦・路子を演じた南果歩さんも登壇。南さんは「おふたりのお話を聞いていたら、また映画をやりたいなという気持ちになってきました」とあいさつし、「『家族X』と『息もできない』では対照的な家族が出てくると思うんですけど、どちらにしても家族がとても身近で、なんとかして自分の中でよりよい環境を持っていこうとしている。それは永遠のテーマだなと思いました」と両監督の作品の印象を語りました。  ヤン監督は『家族X』での南さんの演技について「ドライな部分をうまく表現されていると思いました。韓国のお母さんは外に感情を出すお母さんが多いんですけど、韓国のお母さんも家族がいないひとりのときには路子のようなお母さん像ではないのかなと考えながら観ていました。ほんとうに立派な素晴らしい演技を見せていただいて感謝しています」とコメントしました。

 これまで多くの監督を送り出してきたPFFスカラシップの第20作となる『家族X』は、ユーロスペースほかにて全国順次公開(配給:ユーロスペース+ぴあ)されています。

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