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「声にできない感情を表現したかった」:『トーキョードリフター』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった前野健太さん(左)と松江哲明監督

 異色のドキュメンタリー作品を次々と手がける松江哲明監督の最新作『トーキョードリフター』が12月10日に渋谷ユーロスペースで初日を迎え、松江監督と映画に出演しているミュージシャンの前野健太さんが舞台あいさつをおこないました。
 震災後の5月に撮影された『トーキョードリフター』は、節電のため暗くなった東京の街をバイクで移動しながら歌う前野さんの姿を記録したドキュメンタリー。
 「(地震のあと)東京に帰ってきてまず感じたのは“東京が暗い”ということで、でもぼくはそこが魅力的に思えた」という松江監督は、その後の震災を巡る言説の中で「明るい」「強い」という価値観が続くことへ違和感を感じたと語り「映画って大きな声を描くものではなくて、声にできない感情を表現したいと思っていて、『トーキョードリフター』を暗い時期に撮りたい、自分の声にできない感情を残したいと思った」と、この作品を作った動機を語りました。
 松江監督作品には前作『ライブテープ』に続いての出演となった前野さんは、監督からの出演のオファーが「暗い東京で遊びませんか?」という言葉だったと明かし「松江さんは人を乗せるのが上手というか、(震災後の)あの重い空気の中で“ここは軽さだ”と直感で思ったんじゃないですか。遊びというので暗い東京を漂っていくイメージができたし、なんとなくワクワクした感じがあるのかな」と振り返りました。
 また、上映館のユーロスペースに程近い渋谷の交差点も映画の中に登場しており、松江監督は「いま映画で観た暗さと街の明るさを体験してもらいたいです。映画は映画“館”で観るものですから、それがぼくが映画で目指している映画。映画だけで語るのはいやだなと思うので」と、映画に映っている風景を体感しながら帰ってほしいと舞台あいさつをしめくくりました。

 2011年5月の東京の風景を記録した『トーキョードリフター』は、12月10日(土)よりユーロスペースにて上映中。上映期間中にはトークイベントも開催されます。

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