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ヒットメイカーが学生に向け「諦める必要はまったくない」:『MY HOUSE』上映会&ティーチイン

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ティーチインをおこなった原作者の坂口恭平さん(左)と堤幸彦監督(右)、急遽登壇した主演のいとうたかおさん(中央)

 劇場用映画やテレビドラマで続々とヒット作を送り出す堤幸彦監督が「路上生活者」を題材に描いた新作『MY HOUSE』(5月26日公開)の公開に先駆けた上映会が5月8日に早稲田大学小野記念講堂でおこなわれ、上映終了後には堤監督と原作者の坂口恭平さんが学生に向けティーチインをおこないました。
 『MY HOUSE』は 実在の路上生活者の生活を記録した坂口さんの雑誌記事(のちに書籍化)を読んだ堤監督が映画化を企画、5年を費やして完成させた作品。モノクロームの映像、BGMなし、説明的な描写を避けるなど、従来の堤監督の作品とはまったく異なったタッチの作品となっています。
 堤監督は「“エンタメ系”と呼ばれる作品を幸いにもたくさんやらせていただいているんですけど、常に頭の中の半分くらいは社会問題について考えている自分がいます。それを形に出さず作品作りをしてきたんですが、いま56歳で、さすがにちょっと図太くなりまして、こういうパッケージの作品を作り世に投げかけるというのもありかなと。監督業を名乗っている以上やるべきだな、やらなければちょっと死ねないな、と思うに至り、こういう作品作りをしはじめたということですね」と、これまでと異なる手法を用いた意図を説明。
 坂口さんは映画について「フィルムの中に嘘を乗っけたくなかったんです。そういう意味ではディティールを徹底してお願いしました。たとえば(主人公が)バッテリーをショートさせるんですけど、(映画のモデルとなった)鈴木さんはショートさせた光の量で電気がどれくらい保つかわかるんですね。そういうところがしっかり出ていたので、ぼくはなにも言うことはない。あとはそれを人々の網膜に焼きつけてほしい」と語り「生き延びるための技術の情報が入っていないと映画じゃない。ぼくはそれを徹底して思っていて、だからこれはある種の教育映画だと思っているんです」と、作品に込めた想いを語りました。

 また、堤監督と坂口さんは学生からの質問にも応じ、学生の「映画の主人公は諦めを持って生きているような印象を受けた。幸せに生きるためにはなにか諦めなくてはいけないのでしょうか?」という質問に対し、堤監督は「“自分はこういう人なのだ、こういうものが好きなのだ”ということがほんの少しでもわかっていれば、圧倒的に不利な環境であっても諦める必要はまったくない。演出の表現としては(主人公は)淡々と生きているようにしていますけど、その裏に強さがある。決して哀しいだけの受動的な人生ではないということはお見知りおきいただきたいと思います」と、坂口さんは「(映画のラストの主人公の行動は)生きることを諦めないってことでしょ? 生きることだけは諦めない。『オズの魔法使い』のドロシーは諦めました? 諦めないでとにかくまっすぐ行くでしょ? そういう感じなんです」とアドバイスを送りました。

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学生の質問に耳を傾ける坂口恭平さん(左)と堤幸彦監督(右)

 ティーチインのラストには、客席で鑑賞していた主演のいとうたかおさんも飛び入りで参加。いとうさんは「(映画を観るのは)4回目です。観るたびに違うものが見えてきます」と映画の印象を語りました。

 現代のヒットメイカー・堤監督が贈る意欲作『MY HOUSE』は、5月26日(土)より新宿バルト9ほかにてロードショーされます。

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