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過激に“戦争と性”を描く衝撃作『戦争と一人の女』完成報告会見

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会見に出席した村上淳さん、江口のりこさん、永瀬正敏さん、井上淳一監督(左より)

 昭和の無頼派作家・坂口安吾の小説を映画化した『戦争と一人の女』の完成報告会見が3月19日に都内でおこなわれました。
 『戦争と一人の女』は、若松孝二監督のもとで助監督をつとめ、その後は脚本家として『アジアの純真』などを手がけてきた井上淳一監督の初長編監督作。戦時下の東京を舞台に、欲望に素直に生きる女と希望を失った作家の野村、そして戦地で片腕を失った帰還兵・大平の3人を中心にして“戦争と性”が鮮烈なタッチで描き出されていきます。
 会見には、女役で主演をつとめた江口のりこさん、野村役の永瀬正敏さん、大平役の村上淳さん、井上淳一監督、脚本の荒井晴彦さん、企画・統括プロデューサーの寺脇研さんが出席しました。

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女役:江口のりこさん

この映画はとにかくいろいろな人に観てもらいたいと思っていますので、よろしくお願いします。
〈ハードな描写もありますが苦労などは?〉共演者の方やスタッフの方に恵まれて、だからすごく楽しく充実した日々を過ごすことができました。みんなが助けてくれたというか、力強い、心強い人たちばっかりだったので、あんまりストレスだったり、よくわからない不安みたいな、そういう変なものはなかったですね。
〈撮影所での撮影で印象に残っているセットは?〉やっぱり、セットはどれも素敵でしたけど、野村先生との(一緒に暮らす)家が思い出に残っています。

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作家・野村役:永瀬正敏さん

(江口さんと)同じです。ひとりでも多くの方に劇場に来ていただけるようにぼくらもがんばりますのでよろしくお願いします。
〈原作者坂口安吾がモデルの役を演じるにあたり意識したことは?〉外見の意識というよりは、少しでも近くにいてほしい、降りてきてほしいというのはつねに思っていましたね。
〈今年で俳優生活30年となりますが?〉ぼくみたいな役者を30年も使ってくれた映画界にすごく感謝しているといます。30年のはじめがこの作品の公開で、すごく光栄だと思っていますね。
〈撮影所での撮影で印象に残っているセットは?〉ぼくも、そこで生きてそこで死んだので、やっぱり野村先生のセットは小道具も含めて忘れられないセットになりましたね。それから、最後の最後に女がたたずむ風景に木があるんですけど、そこも美術の磯見(俊裕)さんの腕が炸裂しているところなんだと思いましたね。
映画は、お客さんに劇場に来ていただいてシートに座っていただかないと終わりも始まりもしないので、少しでも多くの地域で公開して、ひとりでも多くの方に観ていただけるように観ていただけるように、お力添えをいただきたいと思います。

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帰還兵・大平義男役:村上淳さん

すいません、また同じなんですが、ほんとにひとりでも多くの方に映画館で、スクリーンで観てもらえたらいいなと思う作品です。よろしくお願いします。
〈ハードな描写もありますが?〉たしかにハードな描写もありました。そういう描写やシーンがどうお客さんにとらえられるのかが楽しみです。
〈撮影所での撮影で印象に残っていることは?〉インディペンデント映画とは言うのですが、観ているお客さんには予算というのは関係なくて一律1800円だったりするので、お客さんもそこらへんは差し引いてご覧になっていると思うんですが、この作品は京都の伝統的な松竹の撮影所が全面的に撮影協力でやってくれていて、その技術と伝統みたいなものも引き継いだ作品にもなっているので、そういうところもいいなと思える作品になっています。
おそらく、観るのに体力の要る作品になってしまっていると思いますが、いま観る作品だと思います。

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井上淳一監督

また同じで申し訳ないのですが、なかなかこの規模の映画というのは世間に「こういう映画があります」と認知されぬままにひっそりと公開されひっそりと消えていくというのが大半だと思います。ですから、ぜひひとりでも多くの方に観ていただきたいと思っております。よろしくお願いします。
〈師匠である若松孝二監督からの影響は?〉ぼくが若松プロにいたのは22年くらい前で、20歳から24歳までだったんで、影響を受けなくはなかったんですが、こと演出という面では、正直言えばあんまり勉強にはならなかったです。ご存知のように、若松さんはひとつ伝えたいと思ったら、戦争中の映画でも電柱やその時代にないものが映ってようが平気な人なんで、そういうことに対する「こういうことじゃダメだ」ということでは思いました。ただ、そういう具体よりも「自分の金で自分の責任において自分の伝えたいものを撮るんだ」という、インディペンデントの作家として、その影響は受けたと思います。それはひじょうに大きかったと思います。ただですね、全部終わってからプロデューサーの片嶋(一貴)に「お前、若松さんに似てるな」と言われて、決して褒め言葉ではないと思うんですけど、やっぱり似るのかと思ったことはあります。

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脚本:荒井晴彦さん

脚本賞はいままでいっぱい貰ってんで、今回はお客がほしいと思っています。
〈この脚本を書かれたきっかけは?〉若松孝二監督の『キャタピラー』みたいな映画だけは作るまいと。同じくらいな規模で「戦争と裸」と、同じような映画で、実作で批判してやろうというのがきっかけです。(批判できているかは)それはお客さんが(笑)。でも、監督が弟子なんだからどうなんですかね(笑)。

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企画・統括プロデューサー:寺脇研さん

みんな言っていますけど、人知れず終わってしまう映画だとは全然思っていないんです。ですけど、お客さんが来てくれるかというのがあって、たくさん来てくださると次の映画も作れるので、ぜひよろしくお願いします。
〈どんな作品を作ろうと?〉いまふたり(井上監督と荒井さん)も言ったように、若松さんの映画の作り方に敬意は充分持ちつつ、でも違うものを作りたいなというのがあったわけですね。この映画は京都の松竹撮影所で撮影したんです。この規模の映画が撮影所を使うというのは、いままでの常識ではないんですけど、その常識に挑戦をして「インディペンデント映画と撮影所を掛けあわせるとこういうものができるんだ」というのを、今回ぜひ観てもらいたいなと思っております。
映画評論家をやっていて、自分がプロデュースして映画を作ると「作ってみるとやっぱり大変だから人の映画をけなしたりしちゃいけないな」と普通の人は思うんでしょうけど、私は作ってみて「みんな金かけてなんてくだらない映画作っているんだろう」って思ったんで、前よりも人の映画に攻撃的になっております。

 永瀬さんは、薬物に溺れるという役柄のため撮影中に絶食をしたそうで「やっぱりぼくは演者なので、少しでも(役の)気持ちに近づきたいけど、さすがにヒロポン中毒にはなれないので、その精神状態に少しでも近づきたいという想いだったんですけど、時間を空けていただいて、待っていただいたということを、ほんとにスタッフのみなさんに感謝していますし、江口さんに感謝しています」とコメント。
 また、強姦・殺人シーンなど、ハードな描写が劇中に多くあることについて、村上さんは「やっぱり、ひどいことはひどいという描写にしないといけないなと。それは荒井さんの描いたホン(脚本)でそうなっているし、荒井さんがガチンコで書いているホンなんで、中途半端にやってもしょうがなかった」と演じた立場からの心境を語りました。

 井上監督は「実作者側から言うと“描きたいものが描けないから自分たちで作った”と、そういう気持ちでいます。ですが、描きたいものを作っても、観ていただけなければひとりよがりになってしまいます。いまの日本の映画状況に少しでも不安がある方は応援してください」と語り、寺脇統括プロデューサーは「映画の中に“戦争の匂いがする”といういいセリフがあります。いま“尖閣列島あたりから戦争の匂いがする”とか言われますが、そう言っている人たちは戦争の匂いなんてなにも知らないで頭の中だけで言っているんで、この映画を観て“戦争の匂いってどんな匂いだろう”って感じてもらえるといいと思います」と会見を締めくくりました。

 豪華キャストと実力派スタッフにより、日本映画界に衝撃を与える『戦争と一人の女』は、4月27日(土)よりテアトル新宿にてロードショー。そのほか全国約20館での上映が決定しています。

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