日本映画専門情報サイト:fjmovie.com

fjmovie.comトップページニュース一覧>88歳奥野匡さん主演作公開に若手キャストも戦争への想いを 『空人』初日舞台あいさつ

88歳奥野匡さん主演作公開に若手キャストも戦争への想いを 『空人』初日舞台あいさつ

記事メイン写真

舞台あいさつをおこなった木下藤吉さん、大内田悠平さん、高橋里央さん、小沼雄一監督、奥野匡さん、山下徹大さん、森本のぶさん、長谷川奨さん(左より)
※画像をクリックすると大きく表示します

 特攻部隊の生き残りの老人を主人公に戦争のもたらす哀しみを描いた『空人』(くうじん)が1月16日に新宿K's cinemaで東京公開初日を迎え、主演の奥野匡さんや山下徹大さん、長谷川奨さん、高橋理央さんら出演者と小沼雄一監督が舞台あいさつをおこないました。
 『空人』は、実際に特攻部隊に在籍した経験を持つ清宮零さんの同名小説の映画化。特攻で命を散らせた先輩兵士の故郷を訪ねた主人公・勝雄老人の物語が、勝雄が若き兵士だった1945年の出来事も交えながら描かれていきます。
 勝雄老人を演じた奥野さんは映画公開の6日前に88歳の誕生日を迎えたばかり。「この映画は3年前に撮ったんで、撮ったときには85歳でしたが、なかなか厳しい撮影でした。トップシーンの山を登るところなんかはいまはとてもできませんけど、監督がどうしてもやれって言うんで、老人虐待で訴えてやろうと思いながら、まあ、なんとかやりました」と、冗談を交えながらあいさつしました。
 『空人』は、埼玉県にある旧陸軍桶川飛行学校跡での撮影もおこなわれており、奥野さんは「私も終戦のとき予科練に行っていまして、ああいう兵舎でちょっと暮らしたことはあるんですけど、ほんとにひどいところでね。私のいたところはもうちょっとよかったけど、ああいうところで兵隊さんはみんな苦労したんだなと、そういう想いはあります」と撮影で訪れた地への想いを語り、若き日の勝雄を演じた高橋さんは「撮影現場に戦争を経験されたお年寄りの方がアドバイスとか応援に来てくださったことがあって、そういった方々からいただいた言葉というのは、いい意味でものすごく重たくて心にズシッとくるようなものがあったのを覚えています。そういうものを踏まえて撮影に臨んだら、やはり気合いとかも違いました」と振り返りました。

コメント写真

映画の見どころを聞かれ「全部を観ていただきたいんですけど、特に山形の美しい景色ですね」と橋本勝雄役の奥野匡さん。「(映画で観て)壮大な景色がとっても印象に残ったと思います」

コメント写真

橋本澄雄役の山下徹大さんは初主演作『Heavenz』に助監督時代の小沼監督が参加しており「監督としては初めてこの作品でやったので、それがぼくにとっては思い出深くて嬉しかったです」

コメント写真

分隊長役の森本のぶさんはデビュー時より戦争を扱った作品に出たかったそうで「役者始めて15年か16年くらいなんですけど、ひとつの夢が叶えられたということで嬉しく思っています」

 主人公の先輩である阿部兵曹長を演じた長谷川さんは「ぼくは沖縄出身で、昔から戦争のことに触れる機会がけっこうあったんですけど、(終戦から)70周年を少し越えて、こういった時期にこの作品に携われてほんとに嬉しく思っています」とコメント。
 分隊長を演じた森本のぶさんは「ぼくは(若い兵士に)“行ってこい”と言う側の役だったので、行ったら死ぬことがわかっているのにそう言わなければならない環境というのはどんなものなんだろうと思って、筋としてそこを考えて演じさせていただきました」と役を通して戦時中に想いを馳せ、兵士の郷田を演じた木下藤吉さんは「ぼくは顔が濃いので坊主にすると日本兵に見えなくて」と客席の笑いを誘いつつ「(撮影場所に)来られた昔のことを知っている方に話を聞いたら、ぼくに似た日系3世の子がここ(飛行学校)から飛び立っていったんだという話を聞いて、いろいろな想いを抱えて特攻していった方がいるんだなというのを感じました」と想いを述べました。

コメント写真

「死にに行くというのが決まってというところの気持ちを作るのが一番難しかった」と阿部敏夫役の長谷川奨さん。「部下がいるので、部下に苦悩を見せないというところで苦労しました」

コメント写真

「暑い中で特攻服を着てほんとに全力で撮影に臨んで、完成した映画を観たとき“素晴らしいものができあがった”と感じたので、ほんとによかったです」と、若き日の勝雄役の高橋理央さん

コメント写真

「オーディションで勝雄役に落ちて松浦をやらせていただきました(笑)。現場では高橋理央くんの芝居を“カッコいいな“と思いながら見ていた記憶があります」と松浦役の大内田悠平さん

 『空人』は現代のシーンの多くが山形県天童市でロケされており、勝雄の息子・澄雄を演じた山下さんは「ちょっと木が多いところで、ものすごく虫が多いんですね。それで撮影中ずっと顔の周辺に虫にたかられて、目の中に虫が入ったりしたんですよ」と撮影中の苦労話を披露。
 小沼監督は「5月に撮影をやったんですけど、新緑がきれいな季節だったので(ロケ場所の)若松寺からの眺めがほんとに素晴らしくて、緑が美してくてきれいな鳥の声が聴こえる生命感あふれる場所でした。戦争というむしろ死に近づく題材なんですけど、それを戦後の私たちがこれから生きる未来に向けてなにを表現していくのかという、そういう舞台として最適だなと、美しい場所で撮れてよかったなと思っています」と山形について語りました。

コメント写真

撮影前は現在より約10kg太っており「戦争時の少年に見えないということで、(減量のため)おにぎりとお茶だけで過ごしたというのが鮮明に思い出されます」と、郷田役の木下藤吉さん

コメント写真

男性陣のみとなった舞台あいさつについて「女優がひとりもいないということでガッカリされた方もいらっしゃるかもしれませんが(笑)、魅力的な男性俳優が揃いました」と小沼雄一監督

コメント写真

奥野匡さんは6日前が誕生日ということで、舞台あいさつ冒頭で共演者や客席から拍手が送られました

 ロケ地である山形県と埼玉県では昨年10月16日に先行公開され好評を得ている『空人』は、舞台あいさつ登壇者のほか、高橋かおりさんや小山田サユリさんの女優陣にベテランの織本順吉さんらが出演。1月16日(土)よりK's cinemaで上映されるほか全国順次公開予定で、K's cinemaでは公開期間中、さまざまなゲストを迎えた小沼監督とのトークイベントが開催されます。

スポンサーリンク