日本映画専門情報サイト:fjmovie.com

fjmovie.comトップページニュース一覧>篠崎誠監督「ぼくにとって映画を作り続けることが唯一の希望」 『SHARING』初日舞台あいさつ

篠崎誠監督「ぼくにとって映画を作り続けることが唯一の希望」 『SHARING』初日舞台あいさつ

記事メイン写真

舞台あいさつをおこなった監督とキャスト。後列左より、木村知貴さん、樋井明日香さん、山田キヌヲさん、木口健太さん、篠崎誠監督、兵藤公美さん
中列が高橋隆大さん、前列左より小林優斗さん、鈴木一希さん、吉岡紗良さん
※画像をクリックすると大きく表示します

 3.11を題材にした篠崎誠監督の最新作『SHARING』が4月23日にテアトル新宿で初日を迎え、ふたりの主演女優・山田キヌヲさんと樋井明日香さんをはじめとする出演者と篠崎監督が舞台あいさつをおこないました。

 これまで映画祭などで上映され話題となってきた『SHARING』は、社会心理学者で大学教員の川島瑛子と瑛子が勤める大学の演劇科で学ぶ学生・水谷薫というふたりの女性を主人公に、3.11以降の世界をドッペルゲンガーや予知夢、虚偽記憶などのモチーフを盛り込みジャンル映画的な手法を用いて描いた作品。

 撮影から2年を経ての劇場公開は満席でのスタートとなり、瑛子を演じた山田キヌヲさんは「撮影してから2年が経ちまして、こんなにたくさんのお客様と一緒にこれから観られることがとても嬉しく思います。本当にありがとうございました」と、薫を演じた樋井明日香さんは「2年前に撮って、やっと本日こんな素敵なテアトル新宿さんで上映することができて嬉しく思います。これから観ていただいて、みなさんがどう思うかなというのが気になるところでもあるので、SNSで思ったことをつぶやいていただけたら嬉しいなと思います」と、それぞれ初日を迎えての心境を語りました。

(※『SHARING』は篠崎監督が教授をつとめる立教大学現代心理学部の研究プロジェクトで文部科学省の助成を受けて製作された作品のため、2016年4月まで商業上映ができなかった)

コメント写真

主人公・川島瑛子役の山田キヌヲさん

コメント写真

主人公・水谷薫役の樋井明日香さん

コメント写真

演劇学科・白鳥教授役の兵藤公美さん

 『SHARING』には篠崎監督がやはり3.11を題材にした2013年公開作『あれから』と同じ人物が登場しており、その人物・河本大輔を演じた木村知貴さんは「撮影が桜の時期で、(『SHARING』が撮影された)2年前、(『あれから』が撮影された)4年前の桜はどうだったかなと来るときに思い起こしていたんですけど、あまり桜自体は思い出せなくて、そのとき誰と一緒に桜を見ていたかとか誰と一緒にお酒を飲んでいたとか、そういうことばかり思い出しました。今日、映画を観終わってから、遅い時間ですけどみなさんお酒でも飲みながら、大事な人のことであったりとか、ご家族のこととか、友人知人のこと、いまいる人いない人に想いを馳せていただければなと思います」とコメント。
 また、大学の演劇科教授・白鳥を演じた兵藤公美さんは発生したばかりの熊本地震に触れ「当事者の方と同じ気持ちになることはすごく難しいことだなと思うんですけど、なにか、みなさんの心のどこかにつながるものがあるといいなと思っています」と、震災を題材とした映画に出演しての想いを述べました。

コメント写真

『あれから』にも登場する河本大輔を演じた木村知貴さんは「ぼくは篠崎監督の前作『あれから』と同一人物を演じておりまして、その同一人物のその後ということでやらせていただいております」とあいさつ

コメント写真

「これだけのたくさんのお客様に一緒に迎えられて嬉しいです」と、彷徨う男役の高橋隆大さん。「映画を観終わったあとに(自分を)怖がらないでいただけたらなと思います(笑)」と、役柄が気になるコメントを

コメント写真

「描いたテーマがあるのですが、“その感じ方がひとりひとり違うでしょ”というのを見て、みなさんがひとりひとり違う感じ方をしていただけたら、それだけでぼくは嬉しいです」と、演劇科学生・樹役の木口健太さん

コメント写真

「映画を観終わったあとに、なにかひとつでも考えるようなことがひとりひとりにあったらいいなと思います。それをツイッターなどで“SHARING”していただけたらと思います」と、演劇科学生・明役の小林優斗さん

コメント写真

演劇科で照明を担当する学生・真吾を演じた鈴木一希さんは「自分でもこの映画を観たのですが、音とかもいろいろと面白いので、音とか画とか、いろいろな部分で楽しめるんじゃないかなと思います」とコメント

コメント写真

屋上の女を演じた吉岡紗良さんは「監督をはじめとしたみなさまの本当に長い期間の努力によって迎えられた日にご一緒できて、とても嬉しく思っています。今日はみなさま楽しんでいってください」とあいさつ

 篠崎監督は『SHARING』公開を前に起きた熊本地震について「ほんとに胸が痛む想いがします」と述べ「映画の宣伝も佳境になっていたんですが、丸2日間くらいとても宣伝をする気にもなれずに途方にくれていました。それでいろいろ考えて、自分にとっていまやれることはいろいろな人に映画を観ていただいて、映画を通じてなにかを感じていただくことしかないなと思って、今日こうやって舞台に立っています」と心境を明かしました。
 篠崎監督はさらに熊本地震以降も稼働を続ける川内原発への不安を語り「ぼくは単なる映画好きなあんちゃんだったんですが、もはやぼくの中では、映画を作るということが世の中の流れをまったく無視して映画の中だけ夢のような感じにはできなくなってきているんですね。ただですね、状況はまだまだ大変なんですけど、その中でぼくにとって映画を作り続けるということが唯一の希望なんです。映画を作ることでかろうじて世界とつながっていくというか世間とつながっている感じがしますので、これからも映画を作り続けていきたいと思っています」と映画への想いを述べ「みなさま映画を観ていただいて、ちょっとでもなにか感じていただいたことがありましたが、先ほど何人かの(登壇者の)方が言っていただいたように、SNSですとか、直接言っていただいてもいいですから、ご感想をいただければと思います」と舞台あいさつを締めくくりました。

コメント写真

脚本(酒井善三さんと共同)・監督の篠崎誠監督

写真

篠崎監督は5分近いあいさつで、監督デビューから20年を経ての映画作りへの想いを語りました

 『SHARING』は4月23日(土)より5月13日(金)まで3週間限定レイトショー(5月3日休映)。『SHARING』は111分の『SHARING』と99分の『SHARING アナザーバージョン』の2バージョンが存在しており、テアトル新宿では毎木曜日は『アナザーバージョン』を上映、火曜日には『SHARING』と同じ登場人物によってリンクする『あれから』の上映とトークショーが開催されます。
 また、横川シネマ(広島)では5月1日(日)より21日(土)まで3週間上映され、やはり曜日別で両バージョンを上映。ほか、5月29日(日)にまつもと市民芸術館小ホールにて上映、シネ・ヌーヴォ(大阪)にて近日公開となっています。

スポンサーリンク