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撮影より7年を経ての公開に榊英雄監督「もう1回原点に」 『トマトのしずく』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった三浦誠己さん、杉山優奈さん、吉沢悠さん、小西真奈美さん、原日出子さん、榊英雄監督(左より)
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 俳優としても活躍する榊英雄監督が小西真奈美さんを主演に“家族の絆”を描いた『トマトのしずく』が1月14日に初日を迎え、渋谷シネパレスで榊監督と小西さん、共演の吉沢悠さん、原日出子さんらが舞台あいさつをおこないました。

 『トマトのしずく』は、父親と絶縁状態にあった美容師の女性・椿山さくらが、結婚を機会に夫の真や周囲の人々に支えられながら父親との関係を見つめなおしていくヒューマンストーリー。2010年に撮影され2012年には完成しつつも未公開のままとなっていましたが、2015年開催の「お蔵出し映画祭2015」でグランプリと観客賞をダブル受賞したのをきっかけに劇場公開を迎えました。

 主人公のさくらを演じた小西真奈美さんは「私は脚本を読んだときすぐに“やりたい”と思ったくらいこの作品が大好きで、できあがった直後もこうして年月が経ってからもいろいろなシーンで感動して、なんて素敵な作品に出させていただけたんだろうと感謝するばかりです。もちろん(「お蔵出し映画祭で」)グランプリをいただいたのも嬉しいのですけど、観客賞をいただけたのがみなさんの心に届いたのかなと思うととても嬉しいし“監督よかったね!”と思います。いま嬉しい気持ちもありますが、初日を迎えると作品が手を離れていくので、ちょっと切ない気持ちも少しあります」と、撮影から7年を経て公開を迎えた心境を語り「私は普通の人を演じるのがとても難しいと思っていて、この作品はなにか大事件があるわけではないので、ほんとに人間性を試されるところもあるし、かといって感情の起伏が激しすぎるとリアリティがないし、喜怒哀楽以外のいろいろな感情を総動員していかないと監督の作りたい作品にならないのではないかと思って、それはつねに心がけていました」と、演じた役を振り返りました。

 さくらの夫・真を演じた吉沢悠さんは、劇中でさくら役の小西さんをおんぶするシーンがあり「さくらの過去とリンクする大事なシーンだったのでカッコよくおんぶしたかったんですけど、そんな筋力もないんで(笑)。(撮影が)7年前でよかったなと思うのが、この7年間でぎっくり腰を3回くらいやったので(笑)」と話して客席の笑いを誘いつつ「小西さんもおっしゃった普通の人の人間関係が大事な作品だというのは現場でも感じていました。榊監督はもともと俳優さんをやられていて俳優の出す内面というのを現場でも見抜かれるので、夫婦の部分の人間関係とか、ぼくの場合は親子の部分とかは大事にしようと心がけましたね」と役についてコメント。

 真の母・誠子役の原日出子さんは榊英雄監督作品は2度目の出演で「監督は俳優としてキレッキレの役もやられたりするので怖いイメージもあるんですけど、すごくあたたかい人の情みたいなものを描いていかれるんですよね。こんな面もあるんだなと思いながら2作品目をご一緒させていただいたんですけど、いまこういう映画を真正面からやる方がほんとに少ないので、こういう素敵な作品に参加できたのがなにより自分の宝になりました」と、監督のハートウォーミングな一面を紹介しました。

 そして榊英雄監督は「嬉しいです。感無量といいますか、7年越しの公開を迎えてですね、(杉山)優奈ちゃんも大きくなり、先輩方はほどよく年を取り、蓮司さん(=さくらの父役・石橋蓮司さん)はまだ生きていらっしゃって(笑)、誰が欠けることもなく初日を迎えられたことがまず嬉しいことで、スタッフ、キャスト、関係者のみなさま、いろいろな方のご尽力でようやく初日を迎えられたことが本当に嬉しいです」と、ジョークも交えつつ公開を迎えた喜びを語りました。

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主人公・椿さくら役の小西真奈美さん

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さくらの夫・椿真を演じた吉沢悠さん

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真の母・椿誠子を演じた原日出子さん

 さくらの小学生時代を演じた杉山優奈さんは「撮影当時は小学1年生の6歳のころでして、いまは中学2年生になりました。この間映画を観たときは、懐かしいなと思いながら観させていただきました」とあいさつし、撮影については「正直あまり覚えていないところもあるんですけど(笑)」と本音(?)も覗かせつつ、幼いさくらが栽培しているトマトに母親と一緒に「おいしくなあれ。幸せになあれ。」と話しかけるシーンで「ほんとにおいしくなるのかな、幸せになるのかなとワクワクした覚えがあります」と思い出話を披露。

 三浦誠己さんは、演じた役が石橋蓮司さんが演じたさくらの父親・辰夫の若いころで、榊監督作品への出演は初めてだったこともあり「身が引き締まる想いをした記憶が蘇っていて、めちゃくちゃ緊張して“蓮司さん怒らへんかな?”とか“榊監督どんな監督やろう?”とか思いながら演じたことを思い出しています」と当時の心境を語り、演じるにあたって「蓮司さんの映画をたくさん観たり、あの時代の男の人の生きた時代を調べたりもしたんですけど、現場で一番気をつけたのは、なにかしようとか演技しようとかいうことより、男がいて、妻がいて、子どもがいてということを誇張しないで存在しようと心がけました」と回想。また、家族での食事のシーンで「いただきます」を3回言うのが「(撮影当時は)“監督はなにを言ってんだ?”と思ったんですけど、いまは妻と子どもがいるので、なるほどと。3回言いたくなる意味合いというか、監督の気持ちがやっとわかったんです」と、撮影からの年月を感じさせました。

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さくらの父・春辰夫の若き日を演じた三浦誠己さん

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春さくらの小学生時代を演じた杉山優奈さん

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脚本と製作・企画も手がけた榊英雄監督

 『トマトのしずく』は、エンドロールのあとにも石橋蓮司さん演じる父親・辰夫が登場するワンシーンがあり、榊監督は「みなさんが撮影している2010年の4月ではなく2011年の夏に撮っているんですよ。一度完成したものを見なおして、このカットとこのカットがないなと思ったんですよね」と、そのシーンが追撮(追加撮影)であることを明かし「ぼくの願望ではありますよね。(監督自身の)父との関係性としてああいうことをさせたかったということを、蓮司さんを使って罪滅ぼしをしたという感じでした」と、そのシーンに込めた想いを述べました。

 その父親・辰夫役の石橋蓮司さんは舞台あいさつは欠席でしたが「さくらの父」として小西真奈美さんに宛てて「お前は昔からやると決めたらとことんやる娘だったので、今年はお前の大躍進の年となることを陰ながら祈っている。またお前をおんぶできる日を楽しみにしている」とメッセージを。
 石橋さんからのメッセージを受け、小西さんは劇中で父親におんぶされるシーンの撮影の際に石橋さんがカメラが回る前から小西さんをおんぶして準備していたと話し「ぬくもりが伝わるじゃないですか。だからなにも考えなくても感情がこみ上げてきて家族になれるという、そういうシーンでしたね」と、石橋さんとのエピソードを披露しました。

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司会者が代読する石橋蓮司さんのメッセージに耳を傾ける小西真奈美さんと、吉沢悠さん、原日出子さん

 舞台あいさつは、榊監督の「決して大げさな映画ではなく、いい意味で地味な映画です。7年かけて熟成したいい匂いだと思います(笑)。トマトもちょうど熟成しておいしいころだと思いますが、我々も成長しましたし、7年前に撮ったすぐあとの公開というよりは2017年の1月14日から始まることで、ぼく自身ももう1回原点に戻って、青かったトマトが早く赤くなれるように、改めてもう1回がんばっていきたいと思います。みなさんのおかげで公開を迎えることができました。ほんとにありがとうございます」という言葉で締めくくられました。

 『トマトのしずく』は、舞台あいさつ登壇者や石橋蓮司さんのほか、ベテランのベンガルさん、角替和枝さん、若手の柄本時生さん、柳英里紗さんら、日本映画界を代表する俳優陣が出演。1月14日(土)より渋谷シネパレスほか全国順次ロードショーされます。

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