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佐野史郎さん「こういう面白い作品が受け継がれていければ」 『なりゆきな魂、』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった佐野史郎さん、國元なつきさん、柄本明さん、足立正生さん、山田真歩さん、栁俊太郎さん、町田マリーさん、中田絢千(なかた・あやか)さん、石川真希さん、管勇毅(かん・ゆうき)さん(左より)
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 熱狂的なファンを持つ孤高の漫画家・つげ忠男さんの作品を瀬々敬久監督のメガホンで映画化した『なりゆきな魂、』が1月28日にユーロスペースで初日を迎え、佐野史郎さん、足立正生さん、柄本明さんら出演者が舞台あいさつをおこないました。

 『なりゆきな魂、』は、つげ忠男さんの作品集に収録された「成り行き」など4本の作品に、瀬々監督オリジナルのバス事故を巡るストーリーを加え、交錯していく人々の運命を描いた作品。

 瀬々監督は新作映画の地方ロケのために舞台あいさつは欠席となりましたが、舞台あいさつ冒頭で「うかがうことができず大変申し訳ないですが、ぜひこの映画を愛してやってください。ぼくはこの映画でぜひ足立正生さんにアカデミーの主演男優賞を獲ってもらおうと思っています。ご協力ください。なおかつ、みなさんこの映画のことを伝えていっていただければと思います」というビデオメッセージが紹介されました。
 そして、原作者・つげ忠男さんの役を演じた佐野史郎さんは「正直、変わった映画だなと思いました(笑)。原作をもちろん読んでいましたのでつげ忠男さんの部分はわかっていたんですけど、バス事故のエピソードも入るということで、もちろん脚本にもあったんですけど、どんな具合になるのか現場でも想像して」と作品についてコメント。佐野さんは1995年のつげ忠男さん原作作品『無頼平野』(石井輝男監督)では「つげ忠男と思しき男」を、つげ忠男さんの兄・つげ義春さん原作の『ゲンセンカン主人』(1993年/石井輝男監督)ではつげ義春さんをモデルにした役を演じており「今回の映画のワイズ出版の岡田(博)プロデューサーはつねにつげ兄弟の周りにいらっしゃる方で、違う作品をやっていてもずっと続いている感じはありますよね」と、2度目のつげ忠男さん役をつとめた感想を述べました。

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原作者を思わせる役・忠男を演じた佐野史郎さん

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河原に釣りに来た老人・花村を演じた柄本明さん

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花村とともに河原に来た老人・仙田役の足立正生さん

 瀬々監督作品への出演の多い柄本明さんは、今回の出演にあたっての想いを質問されると「別になにも感じませんでした(笑)」と飄々と答え、映画監督である足立正生さんとの共演を「大変光栄で、それが嬉しかったです」と語りつつも、冒頭の瀬々監督のビデオメッセージを受けて「足立監督は絶対にアカデミー獲れません。ほかの奴は獲るかもしれないけどアカデミーは獲れないでしょ。獲ったらまずいでしょ。“足立正生さんが主演男優賞”って(授賞式の壇上に)登ったらそりゃ嬉しいけど、絶対にあるわけない」と話して場内の笑いを誘いました。
 瀬々監督とは「付き合いは呑み屋で延々という感じですね」という足立正生さんは「ぼくは生意気なもんで素人だから、柄本さんに“プロとアマチュアが共演したらアマチュアが勝つのは知っていますか?”って挑発したんですね。そしてできあがったのを観たら、きれいに俺が食われちゃっててさ、そういうもんだな」と柄本さんとの共演を振り返りました。
 そんな柄本さんと足立さんと同じパートで共演した山田真歩さんは「只者ではないオーラを発しているおふたりだったので、そっちのほうが緊張してしまいました(笑)」と、ふたりの印象を語りました。

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「怪優名優揃いの中で楽しい仕事をさせていただきました」と語る足立正生さん(右)と、佐野史郎さん(左)、柄本明さん

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花村と仙田に河原で出会う有希役の山田真歩さん

 足立さんが演じる老人の妻を演じた石川真希さんは「『成り行き』とか今回のもとになった漫画というのは、いままでの忠男さんの漫画と味わいが違ってひじょうに感銘を受けましたもので、あの世界をどう映画化するのかなということに興味に惹かれて参加したという感じですね」とつげ忠男作品のファンとしての視点も込めてコメント。
 映画の冒頭の戦後のシーンに出演している町田マリーさんは『なりゆきな魂、』が企画のスタートから短期間で撮影されたことに触れ「(企画開始から)3ヶ月か4ヶ月くらいで映画を撮っているという状態に私はすごく驚いて、岡田プロデューサーの懐の深さや、監督の熱意や、そういうところに私はすごく感動しているところです」と、映画化を実現させたスタッフに感謝。
 女性との激しい格闘シーンを演じた栁俊太郎さんは「ほんとにハードでした。日が暮れて時間がない中、瀬々監督も熱くなってきて“こうやるんだよ”って(見本で)助監督さんにプロレスの技をかけたら助監督さんが腰を痛めて撮影が中断したり」と撮影のハードさをうかがわせ、格闘の相手である中田絢千さんは「お互いに必死で、栁さんも全力でやってくださったので私も全力でやることができて、殺し合いといえど楽しくやらせていただきました(笑)」と感想を述べました。

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足立さん演じる仙田の妻役の石川真希さん

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三浦誠己さんが演じたサブの女役の町田マリーさん

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忠男の前で乱闘を始める男・高野役の栁俊太郎さん

 映画オリジナルのバス事故パートに出演している國元なつきさんは「(バス事故パートは)随分前に撮った作品で、ちょうど監督が脚本を書かれたのが高速バスの事故が多発していた時期で、脚本を読んだときにドキュメンタリーを読んでいるような感覚に陥って、気を引き締めて撮影に挑んだのを覚えています」と、撮影時を回想し、おなじくバス事故パートに出演の管勇毅さんは「ぼくは(監督に)“軽く、チャラくチャラく”と言われていたので、あんまり大変だったという記憶がなくて、大変そうな人をあまり見ないようにしようと思っていました」と、重い題材の中での軽いキャラクターという役作りを振り返りました。

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高野と格闘する女・あつ子を演じた中田絢千さん

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バス事故のパートでOL・國元夏海を演じた國元なつきさん

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バス事故のパートで運転手を演じた管勇毅さん

 佐野さんは「こういう世界が好きな方はたくさんいらっしゃると思いますので、こういう面白い作品が受け継がれていければなと思っております」と呼びかけるとともに「チラシとかポスターでぼくの名前が最初に載っているのがよくないんじゃないかというふうに個人的には思っておりますので、違うバージョンもぜひ作っていただければと思います(笑)」と付け加えて舞台あいさつを締めくくりました。

 さまざまな状況に置かれた人々の姿をとおして「人が生きていく」ことの意味を問う『なりゆきな魂、』は、1月28日(土)よりユーロスペースにてロードショー中。1月29日(日)には林静一さん、2月4日(土)には池上遼一さん、2月5日(日)にはかわぐちかいじさんと、豪華ゲストを迎えての原作者・つげ忠男さんのトークショーも開催されます。

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