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実在の人物を演じた森岡龍さん「なにか学ぶものはあるのでは」 『地の塩 山室軍平』プレミア試写会

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舞台あいさつをおこなった兒玉宣勝さん、森岡龍さん、ケネス・メイナーさん、東條政利監督(左より)
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 日本における社会福祉の先駆的存在・山室軍平さんの生涯を森岡龍さん主演で描く『地の塩 山室軍平』(10月21日公開)のプレミア試写会が9月22日に東京・神田の山室軍平記念ホールで開催され、森岡さんと東條政利監督、兒玉宣勝さん、ケネス・メイナーさんが舞台あいさつをおこないました。

 『地の塩 山室軍平』は、明治時代に貧しい農家に生まれながら人のために働きたいという情熱を抱えた山室軍平が、勉学に励む中でキリスト教と出会い、やがて救世軍の一員として、自らの苦労は顧みず人々を救うために尽力した生涯を史実に基づいて描いた作品。

 主演をつとめた森岡龍さんは、実在の人物を演じての感想を「身がギュッとなるというか、ありがたかったです。山室軍平さんを演じさせていただけるということは、世のため人のために生きることを全うした生涯を送ることができて、ほんとにありがたかったですね」と語り、役作りについて「まずは軍平さんのことを知ることから始めて、救世軍の活動というものを勉強していきました」と振り返りました。

 メガホンをとった東條政利監督は「2015年の10月くらいから企画が立ち上がりまして、そこからちょうど2年後ですかね、やっと公開にこぎつけて、ほんとうによかったと思っております」と作品の披露にあたっての心境をコメント。『地の塩 山室軍平』はこれまでも社会福祉に携わった人々の生涯を映画化してきた現代ぷろだくしょんの製作作品で、東條監督は「石井十次、留岡幸助といった明治時代から活躍された福祉の先駆者的な方のおひとりとして山室軍平の名前が挙がりました。私が山室軍平について勉強をしていく中で、彼の人のために尽くしたいという情熱、そういった生き方に私自身が惹かれまして、そういう映画を作りたいと思いまして、みなさんのご協力もあって製作することができました」と、作品製作の経緯を説明しました。

 また、実在の人物を演じて難しかった点を質問された森岡さんが返答に迷うと、東條監督は「森岡くんはすごくお酒が大好きなんですけど、撮影中は終わったあと、みんなで宿泊しているところでちょっとビールとかを飲んでいても彼は絶対に来ないんですね。それを打ち上げの席で聞いたら“お酒を飲んだら山室軍平は演じられたかった”と話していたんです。だから、ひじょうに真摯に役作りをしていたんだなあと思いました」と森岡さんの演技への真摯な姿勢を明かし、森岡さんは「お酒が大好き」という表現は「たしなむ程度です(笑)」と訂正しつつ、監督の高評価に「ありがとうございます」と感謝を示しました。

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主人公・山室軍平を演じた森岡龍さん

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軍平が印刷工時代に知り合う政吉役の兒玉宣勝さん

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救世軍司令官を演じたケネス・メイナーさん

 映画オリジナルの登場人物である軍平の友人・政吉を演じた兒玉宣勝さんは、東條監督の初監督作『9/10 ジュウブンノキュウ』(2006年)以来の東條監督作品出演となり「東條監督と一緒に仕事をするのが10年ぶりで、俳優を志したというか、スタートが東條監督だったみたいなことだったので、10年目の節目にこういうお話がくるんだなって、すごく気合いが入った覚えがあります」と振り返り、演じた役について「とにかく、普通の人といいますか、軍平さんとは違う、あの当時の(若者の)フワフワしながら人情味のあるというところをうまく表現できないかなということで、細かく監督に見ていただいたなという印象があります」と語りました。

 救世軍司令官を演じたケネス・メイナーさんは実際に現在の救世軍日本司令官であり、映画出演は初めて。初の映画出演について「大変、栄誉に感じました。というのは東條監督や俳優のみなさん、ほんとに素晴らしい方々と共演させていただいて、本当におそれかしこまる想いもいたしました。山室軍平は、アメリカの救世軍でも、そして世界中の救世軍で、ほんとによく知られた人物でございます。日本に参りまして、この映画に参加させていただきまして、私も家内も山室軍平についてもっと深く理解する助けとなりました。東條監督が本当に勇敢な昔の人々を勇気を持って取り上げてくださったと思っています」と感想を述べました。

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メガホンをとった東條政利監督

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映画への想いを語る森岡龍さん(中央)

 映画は主人公・軍平の情熱が周囲の若者たちを動かしていく若者同士の友情も大きな要素となっており、東條監督は「まず軍平が映画の中で軸があって、ずっと情熱を持っていて真面目で一生懸命で、(兒玉さんが演じた)彼も軍平の一生懸命なところが大好きで応援したくなるし、ほかの人たちもなぜか軍平を好きになってしまう。軍平が愛されないとこの映画は成立しないので、愛されるように見える、愛されるような人でいるというのが難しいと思っていましたね。でも森岡くんはよくやってくれたと思います」と、劇中の軍平の人間関係の描き方について述べました。
 森岡さんは、映画の中で軍平が出会ういろいろな人たちの存在で「軍平として生きることができましたね。そういった人たちのおかげでこれだけのことをなし得たし、いろいろな人の努力でやってこられたんだなって。ほんとに最後のシーンでは、いままで出会ってきたいろいろな人たちの顔が浮かんできました」と、役を通して得た感覚をコメント。
 兒玉さんは、劇中で軍平が涙を流して自らの想いを伝えるシーンで「“涙拭けよ”みたいな動きが急に出てきた」と撮影を回想し「なにかを考えてというよりも、(自分が)行動に出られたというのが、そこで(軍平が)かわいくってしょうがないんだなというか(笑)、そんな想いがあります」。
 そしてケネス・メイナーさんは「私はですね、この映画の中で若者たちが力を合わせたときにほんとに素晴らしいことが起きるのだということを感じました。この映画からほんとに勇気づけられることができると思います。山室の勇気、これは人々との、また神様との個人的なつながりからこの力が来ていると思いました。今日(こんにち)の若い人々が、この映画を観ていただいて、人との正しいつながりを通して大きな力を得られるのだというメッセージを受け取ってもらいたいなと思いました」と、映画の若者像を観てのメッセージを述べました。

 舞台あいさつの最後には、森岡さんは「山室軍平さんは、人のために生きたんだと思います。遠い昔の話ではありますが、いまもどこか通じるような世の中の痛みというのは絶えずあって、ぼくは芝居することしかできないですけど、この映画を通して、なにか学ぶものはあるのではないかなと思います。その監督の想いに賛同してこの映画を作りました」とあいさつ。
 東條監督は「この映画で何度も繰り返して使われた言葉で“一番優れているのは愛です”と、山室軍平という方はそれを行動を通して実践していったというのがあります。いまの世の中、お金持ちになりたいとか、平穏な生活を送りたいとか、偉くなりたいとか、そういった夢というのが多く語られる中で、山室軍平の生きた時代も明治で富国強兵で立身出世といった時代でした。そういった時代の中で、山室軍平は人のためになにか役立とうと生涯情熱をかけて生き抜いた。ぼくはそれをすごい素敵だ、カッコいいなって思って、そういった人生をちゃんと映画で描きたいなと思いました」と作品へ込めた想いを語り、映画を広めるための応援を呼びかけるとともに「いまは人を助けたりとかそういうことがなかなか(難しく)、いまの世の中に山室軍平みたいな人は必要だなと。ぼくはそういう方はいると思います。そういった、いま人のために活躍されている方々を勇気づける映画にもなってくれたら嬉しいです」と舞台あいさつを締めくくりました。

 軍平の妻・機恵子役に我妻三輪子さん、児童福祉に尽力し軍平に影響を与える石井十次役に伊嵜充則さん、軍平が学ぶ同志社大学創立者・新島襄役に辰巳琢郎さん、そのほか近年日本映画で注目される水澤紳吾さんや芹澤興人さんらが共演する『地の塩 山室軍平』は、10月21日(土)より新宿武蔵野館、山室軍平の出身地である岡山県の岡山シネマクレールほか、全国順次公開されます。

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