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『シネマ狂想曲~名古屋映画館革命~』東京公開初日に異色のミニシアター副支配人大いに語る

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トークショーをおこなった久保山智夏(くぼやま・ちか)さん、樋口智彦監督、坪井篤史さん、白石晃士さん、森裕介さん(左より)
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 名古屋のミニシアター・シネマスコーレの副支配人・坪井篤史さんに密着したドキュメンタリー『シネマ狂想曲~名古屋映画館革命~』が11月4日にアップリンク渋谷で東京公開初日を迎え、坪井さんと樋口智彦監督、映画監督の白石晃士さんらがトークイベントをおこないました。

 坪井篤史さんが副支配人をつとめるシネマスコーレは、上映作品の幅広いラインナップやユニークなイベント開催などにより、映画ファンはもちろん多くの映画監督たちからも支持されているミニシアター。『シネマ狂想曲~名古屋映画館革命~』は、シネマスコーレのさまざまな試みに加え、映画の魅力をトークだけで伝えるイベント「アメカル映画祭」を15年にわたっておこなう坪井さんの活動や、7000本以上のVHS映画ソフトを所有するコレクターという坪井さんの一面も紹介していきます。

 トークショーは「『劇場版シネマ狂想曲』の宣伝隊長」に“勝手に”名乗りをあげた女優の久保山智夏さんが進行役をつとめ、坪井さん、樋口智彦監督、シネマスコーレでの監督作上映が多い白石晃士さん、名古屋の大手シネコンの支配人であり「アメカル映画祭」代表の森裕介さんが出演し、上映終了後におこなわれました。

 『シネマ狂想曲』は、中京地方を放送地域とするテレビ局・メ~テレが制作したテレビドキュメンタリーに未放映シーンを加え再構成し劇場用作品にしたもので、現在もメ~テレで情報番組のスタッフをつとめている樋口監督は「なにか映画で面白いことやってないかな」とプライベートで観にいったアメカル映画祭で「すごい熱」を感じて坪井さんに興味を持ち、番組で紹介しようとしたところ「あまりにも坪井さんのネタが多すぎるので、ドキュメンタリー番組の企画書を作ってみろという意見を(社内で)いただいて」ドキュメンタリー番組制作に至ったという経緯を説明。
 坪井さんは「ひじょうに面白いのは、撮っている側と、被写体と、ずっと付いているとだんだん狂ってくるんですよ、こっち(撮る側=樋口監督)が」と、当初は延べ数時間の取材で番組にする予定だったのが、樋口監督が「仕事外で撮って、なにが仕事なのかわからない(笑)」(樋口監督談)ほどカメラを回し続け、取材が半年間300時間に及んだことを紹介しました。
 その樋口監督の思い入れが詰まったドキュメンタリーは2017年2月に深夜枠で放送され、深夜帯としては「絶好調」(樋口監督談)の視聴率を記録し、SNSのトレンドや検索サイトのサジェストにも入るほどの評判となり劇場版の制作と公開につながったもので、坪井さんは「(情報番組は)40人くらいスタッフいるんですよ。樋口くん、下から3番目の人(※樋口監督は現在26歳で撮影時は入社3年目)がこれやって東京に進出しちゃったので、上の人たちがね、けっこう会うたびに“巨匠”とか“カントク”とかね(笑)」と裏話も披露して会場の笑いを誘いました。

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トークショー中の久保山智夏さん、坪井篤史さん、樋口智彦監督、白石晃士さん、森裕介さん(左より)

 映画では、VHS映画ソフトを保管する専用の部屋まで借りいまもなお中古ソフト探しに情熱を注ぐコレクター・坪井さんの姿も大きくフィーチャーされており、坪井さんは、それまで自宅に置いていた大量のVHSテープを軽トラックでVHS部屋に運ぶ際、VHS部屋の共同借り主でもある森裕介さんが「これは夢を運んでいるんですよ」という坪井さんの言葉を聞いて目頭を押さえたというエピソードを紹介。坪井さんが「この人でよかったなと」思ったと話すと、森さんも「あれはほんとにいい名言でしたよ」と答えて坪井さんとの名コンビぶりをうかがわせました。

 白石晃士さんはシネマスコーレでの監督作上映に際し、劇場内に俳優の演じるキャラクターが生で登場する「超次元トビダシステム」などの奇抜な企画を実施しており、坪井さんは「白石さんがスコーレを面白がってくれたということは、NGが基本的にない劇場だったので、うちの支配人の名言があって“スクリーン破る以外だったらなにをやってもらってもいいので”って、そういう劇場なんですよ」と、柔軟に企画を実現させるシネマスコーレの姿勢を挙げ、白石さんも「やらせてもらえるんだったらやるか! みたいな。せっかくなら」と同意。
 また、白石さんは、監督作『貞子vs伽椰子』の劇中に登場するVHSテープに入るノイズの映像が「あの(坪井さんの)VHS部屋でダビングして作って、それを使っているんですよ」と明かすとともに、シネマスコーレでおこなわれ坪井さんも“俊雄役”として出演した『貞子vs伽椰子』の超次元絶叫システム上映の際の裏話もたっぷり披露しました。
 そして、白石さんの監督作『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズに出演し「超次元トビダシステム」にも演者として参加している久保山智夏さんも、舞台あいさつで初めてシネマスコーレを訪れたとき「手作りのポップを作ってくださっていたんですよ。それにすごく感動して」と、スタッフの熱意を感じるところがスコーレの魅力と語りました。

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トークショー終了後には、物販購入者向けにサイン会も開催されました

 坪井さん曰く「東京に来ているってことを忘れて、スコーレの舞台上だと思って」ときにちょっと危険な話題にも発展したトークは、映画本編の上映時間65分とほぼ同じ60分以上に及び、名古屋で坪井さんのトークを聞き慣れている森さんは「東京でも相変わらず喋りっぱなしだなと思いながら聞いていましたけど(笑)」。
 そして森さんは「名古屋で普段からこうやって接している彼なので、彼の面白さとか想いとかがどこまで伝わるんだろうなあというのは感じていたんですが、こうやってみなさんに足を運んでいただいて、ありがたいなと思っております」、樋口監督は「どんな想いが心に残ったのかすごく気になるんですけど、みなさんちょっと持ち帰ってSNSとかで書いてくれると嬉しいです」とそれぞれイベントの感想を。
 白石さんは、樋口監督が坪井さんを取材しているのを知りつつも実はあまり作品に期待していなかったと明かした上で「(テレビ版を)録画したやつを観たら“あれ、面白えなあ”って思って、映画版になってまた違う要素も増えてさらに面白くなって、いや、見くびっていてすみませんでした」と樋口監督を評価し「またさらに上は目指せると思うので、さらなる傑作をね『シネマ狂想曲2』なのか、今度は『シネマ輪舞曲』なのか、なにか観たいなと思っています」と樋口監督にエールを送り、さらに「そういう新しい映画もできるかもしれないし、これがね、スコーレのある一時期を撮ったものなので、それと坪井さんを撮ったものなので、ここからさらにね、いろいろなことが起きるんじゃないかなと思うので、その行き先を見届けたいなと思いますけどね。それがまた東京にね、なにかと影響を与えたりしたら面白いんじゃないかなと思いますけど、そんな期待を込めて楽しみにしております」と、より大きな動きへの期待を込めてコメントしました。
 最後に坪井さんは「名古屋でいただいた感想ですけど、会社でなにかあって悩んでいる人が(映画を観て)“あ、これでいいんだ”と。“これでいいじゃん、別になに悩んでいるんだ”と。“こんなことで生きている奴がいるんだったら、私たちやれるじゃん”って、なにかの指針にはなるかもしれないし、(映画の影響で)VHS集めることになったらぼくのライバルになるだけですので、そのときは潰しにかかります。それも含めて、みなさんで面白がっていただければと思いますので、今日から14日間よろしくお願いします」と、大盛況のトークイベントを締めくくりました。

 「名古屋映画館革命」を掲げる坪井さんの精力的な活動と、坪井さんやシネマスコーレの魅力に惹かれる映画監督たちの姿が収められた『シネマ狂想曲~名古屋映画館革命~』は、11月4日(土)より17日(金)までアップリンク渋谷で上映。2週間の上映期間には連日シネマスコーレや坪井さんにゆかりのあるゲストが出演してのトークイベントが開催されます。

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