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伊藤峻太監督、構想10年で目指したのは「ワクワクする面白いもの」 『ユートピア』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなったキャスト・スタッフ。前列左より、椎名遼さん、ミキクラークさん、松永祐佳さん、伊藤峻太監督。後列左より、まなせゆうなさん、高木万平さん、地曵豪さん、ウダタカキさん
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 1987年生まれの新鋭・伊藤峻太監督が10年の構想を実現させたSFファンタジー『ユートピア』が4月28日に下北沢トリウッドで初日を迎え、伊藤監督と出演者の松永祐佳さん、ミキクラークさん、高木万平さん、地曵豪さん、ウダタカキさんらが舞台あいさつをおこないました。

 『ユートピア』は、高校3年生のときに監督した『虹色★ロケット』が2007年に劇場公開され注目を集めた伊藤峻太監督が、監督と脚本、編集に加えてVFXや主題歌の作詞・作曲なども自身で手がけて完成させた、童話「ハーメルンの笛吹き男」がモチーフの新作。真夏に雪が降りライフラインが途絶した現代の東京を舞台に、この世界とは別の国“ユートピア”を巡る壮大な物語が、現代の少女・まみと謎の少女・ベアを中心に描かれていきます。

 初日は2回の上映がいずれも補助席まで出る満席となる盛況のスタートとなり、伊藤監督は「構想を開始したのが2006年なので19歳のころに考えはじめまして、そこからシナリオと設定作りに7年、撮影をしてから編集・VFXに約4年強。厳密に計算するとたぶん12年ぐらいかかっているんですが、あんまり現実を見たくないので10年ということにしてます(笑)。10年かかりました。10年かかったというのは映画を観る上で関係のない情報なので(観客のみなさんは)知らなくてもいいと思うのですが、ひじょうに長い道のりがあって今日、初日を迎えることができました。ほんとにありがとうございます」とあいさつ。
 監督はまた「“ひとりでここまでやった”みたいな取材を受けることがあるのですが、実際には少人数なりにとてもたくさんの方々の協力があって、みんなでがんばって作りました」と、スタッフ・キャストの参加があっての作品だと述べました。

 伊藤監督の高校の同級生で『虹色★ロケット』に続いて伊藤作品出演となったまみ役の松永祐佳さんも「(最初に『ユートピア』について)話していたのが17、18歳くらいのときだったので」と、数度の中断などを経つつの作品の完成と公開までを振り返りました。

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監督・脚本・編集にVFX、主題歌の作詞・作曲なども手がけた伊藤峻太監督

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物語の中心となるまみ役の松永祐佳さん。プロの俳優ではなくお仕事の合間を縫っての登壇

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謎の少女・ベアを演じたミキクラークさんは日本語・英語のバイリンガルで日本語であいさつ

 伊藤監督が、前作『虹色★ロケット』で「納得がいかないとこがすごくあって、全部を自分で掌握したものを作りたい、それでいてほんとにワクワクする面白いものを作りたいと思って」スタートした『ユートピア』だけに、随所に監督のこだわりが見られる作品となっており、一例として劇中の地下鉄車両基地でのシーンは実際は背景のないグリーンバックで撮影をしており、車両基地の風景はすべてCGで描かれたとのこと。伊藤監督は「車両基地って(実際にロケ撮影をするための)ハードルが高い」「設定を変えればそんなに手間はかからないんですけど“車両基地がいい!”ってなっちゃっので“ないなら作ればいい”って言ったら4年くらいかかっちゃった(笑)」とこだわりの深さをうかがわせ、松永さんも「(ポストプロダクションに時間がかかったのを)理解していただけたと思います」とコメント。
 ユートピア人のマグスを演じた地曳豪さんは、最初はなかなか作品が完成しないのを不安に思いながらも「4年過ぎちゃったらあと何年待っても同じだなと思って(笑)」「俺、いつまでも待つよ」という心境になっていたと明かし、客席の笑いを誘いました。

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エアリ役の高木万平さんは、現在住む沖縄から上京して舞台あいさつに参加

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オールデを演じたウダタカキさん撮影中のさまざまなエピソードを披露

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マグスを演じた地曵豪さんは、舞台あいさつの進行役もつとめました

 もうひとつの『ユートピア』の大きなこだわりが、劇中に登場する国・ユートピアの言語“ユートピア語”を完全にオリジナルで創作している点。
 撮影や音楽、VFXを担当し、伊藤監督とともにユートピア語を考案した椎名遼さんは、当初は「日本語でやるか、簡単に日本語をひっくり返してほかの言語みたいに」することも考えたものの「それをやるとどうしても納得いかないというか、チープな感じになってしまうので、言語を文法から作る必要があるなということで」とオリジナル言語を作った理由を説明し「監督と一緒に」文法や数字の数え方、単語の意味を考えていったと過程を語りました。
 オリジナルの言語はユートピア語を使うキャストにとっては難関でもあったらしく、ユートピアから来た少女・ベアを演じたミキクラークさんは「すごく大変で、ほんとに覚えられなくて」。
 ユートピア語の覚え方は、椎名さんが発音した参考音源で覚えたり、文字で覚えたりとキャストによりさまざまで、ミキさんは「カタカナで書いちゃうと逆に喋れなくなっちゃうから、ローマ字(で書いたもの)を読んで喋っていました」とのこと。
 ユートピア人のエアリを演じ、舞台あいさつのため現在暮らす沖縄から上京した高木万平さんもユートピア語に苦労したそうで、撮影初日の食事しながらユートピア語を話すシーンで「いきなり食べながらユートピア語で頭がいっぱいで、(料理の)味もしていなかった」と回想しました。

 そんな中、ユートピア人・オールデ役のウダタカキさんは、手違いで参考音源が届いていなかったにもかかわらずほかのキャストのセリフも含めユートピア語を完全に覚えていたため現場では「ユートピア語の先生」のようだったそう。ウダさんは「引っ越しして『ユートピア』の台本が出てきて、懐かしいと思って見たら、アクセント記号が付いてた(笑)。勝手にどこがアクセントなのか自分で考えて、こんな台本は人生でこれだけだろうなって思って」と、この作品ならではの経験を明かしました。

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撮影監督・音楽やVFXなど映画での役割は多岐にわたる椎名遼さん

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映画を鑑賞しており飛び入りで舞台あいさつに参加したウォン役・まなせゆうなさん

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松永祐佳さんは劇場で販売されている豪華パンフレットもPRしました

 伊藤監督は、ぜひ映画を鑑賞した方の感想が聞きたいと「ほんとになんでもいいので、それを楽しみに読みたいなと思っています」とSNSなどへの投稿を呼びかけ「なにもかもがギュッと詰まっているので難解かと思うんですが、2回目3回目を観るといろいろな発見があると思います。ぼく自身、何回も観ていると気づくこともたくさんあって」と、何度も作品を観てほしいとアピールして舞台あいさつを締めくくりました。

 インディーズ映画とは思えないほどの大きなスケール感と綿密に構築された作品世界を持ち、広い層が楽しめるエンターテイメント作品となっている『ユートピア』は、舞台あいさつ登壇者のほか、森郁月さん、吉田晋一さんらが共演。4月28日(土)より、下北沢トリウッドでロードショーされています。(火曜日休館)

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