日本映画専門情報サイト:fjmovie.com

fjmovie.comトップページニュース一覧>佐藤玲さん、学生時代は「吸収する時間」と母校・日藝でメッセージ 『高崎グラフィティ。』特別公開授業

佐藤玲さん、学生時代は「吸収する時間」と母校・日藝でメッセージ 『高崎グラフィティ。』特別公開授業

記事メイン写真

『高崎グラフィティ。』公開に向けて気合いのポーズの川島直人監督、佐藤玲(さとう・りょう)さん、小山正太さん(前列左より)と、授業に出席した日本大学藝術学部映画学科学生のみなさん
※画像をクリックすると大きく表示します

 群馬県高崎市を舞台にした青春群像劇『高崎グラフィティ。』(8月25日東京公開)が、主演・佐藤玲さん、川島直人監督、脚本・小山正太さん3人の母校である日本大学藝術学部で特別公開授業として8月1日に上映され、3人がトークイベントをおこないました。

 『高崎グラフィティ。』は、佐藤玲さん演じる吉川美紀たち、高校の卒業式を終えたばかりのクラスメイトの男女5人が、それぞれの悩みや葛藤を抱えて過ごす数日間を高崎を舞台に描いた群像劇。次代を担うクリエイターの発掘を目指して開催された「映画の予告編」の映像コンテスト「未完成映画予告編大賞」で第1回グランプリを受賞し、長編として制作された作品です。

 作品の上映後、後輩にあたる現役日藝生の前に登場した3人は「今回、日藝の卒業生でということで作りはじめたものをこうやって上映させていただくことができて、すごく嬉しいです」(佐藤玲さん)、「青春群像でぼくらの大学時代の青春をそのままぶつけていこうと(川島監督に)言っていただいて、自分の中で湧き上がるものがありながらできたなと思っています。監督にもすごく感謝しているし、主演の佐藤さんにも感謝しております」(小山正太さん)、「(日藝を)卒業するタイミングで主演の玲ちゃんから一緒になにか作らないかというお話をいただいて、ぼくも長編のものを撮りたいなという中で、学生のころから組んでいたカメラマンの武井(俊幸)くんだったり、録音部の柳田(耕佑)さんだったりっていうメンバーに、新たに卒業生で偉大な脚本家である小山さんを招き入れて撮影できたというのはすごいいい思い出でした。日藝のチームで1本撮れたというのは嬉しかったです」(川島直人監督)と、それぞれあいさつしました。

コメント写真

吉川美紀役で主演をつとめた佐藤玲さん(2015年演劇学科卒業)

コメント写真

脚本の小山正太さん(映画学科卒業、2012年大学院修了)

コメント写真

川島直人監督(2015年映画学科卒業)

 佐藤さん、川島監督のあいさつにもあったように『高崎グラフィティ。』は、2015年3月、日藝演劇学科卒業直前だった佐藤さんが同じく卒業直前の映画学科の川島監督に「日藝の同期でなにか作品を作りたい」と連絡をとったことからスタートした作品。佐藤さんは「卒業するかしないかくらいのときから、私もだんだん映画とかドラマとか、映像のほうに進むように自分の進路がなってきて“映画を撮ってみよう”となって、監督に話を持ちかけたんですけど」と映画制作を思い立ったきっかけを振り返り、撮影の武井さんの出身地ということで選ばれたという舞台の高崎市について「すごく景色もよくて、街の雰囲気も、言い方は悪いんですけどもっと田舎かなと思っていたらすごく開けていて、絶妙の開け方というか“ここで育った人たちはたしかに都内に出て行かなくても充分満足できる、じゃあなんで東京に行くんだろう?”というところを深く掘り下げられることが、予告編を撮ったときに感じました。だから高崎にしました」と、高崎の空気が作品にマッチしたとコメント。

 予告編がグランプリ受賞後に川島監督の招きで作品に参加したという小山さんは、最初に書いた箱書き(脚本の前段階)を川島監督に「こなれすぎてる」と指摘され書き直すよう言われたと明かし「川島くんが“不器用でもいいから、雑でもいいからもっとグリっとしたものがやりたい”と言ってくれて、等身大の学生のときに作りたかったものを作りたいなと思って、その気持ちがキャラクターとかにも乗っかればいいかなと思って、監督の中にあった熱意をぼくが少しだけいただきまして、それで書けたかなって。だから、(作品への)想いと言ったら“川島くんといい映画が作りたいな”といのがこの映画の根幹にあった気がします」と作品に参加しての想いを述べました。

 川島監督は「当時から玲さんは学内でもけっこう有名な女優さんでいらっしゃったので、これでトチったら絶対に“あいつはトチる監督だ”って噂を回されるなって思ったんで、その噂を回されたくない一心でがんばったところがあるんです」、また「未完成映画予告編大賞」に応募した動機を「3分(の予告編を)撮れば逃げられると思ったんですね」と話すなど笑いも交えつつ、初めて女性を主人公にした作品を作るにあたり「どうしようかってなったときに、だんだん身の周りの話になってきて」と、映画の登場人物たちが監督自身の中学や高校時代の周りの人々を投影していたり、映画に出てくるある犯罪も「ぼくの友達の話だったりする」と明かし「ぼくの中のリアルをだいぶ小山さんに膨らませてもらって作品は始まりましたね」と、群像劇に至る過程を説明しました。

 また、トークでは川島監督たちが在学中に大根仁監督が日藝で講演をおこなった際「一番前の席に陣取って」(小山さん談)いたのが川島監督と小山さんで、そのときに川島監督は大根監督に助監督で使ってほしいと連絡先を渡し、小山さんは大根監督に自分の脚本を渡したというエピソードも披露され、川島監督は「大根さんに食らいついていたのがふたりだけだったんですよね。それで仲良くなった」と、その出来事が『高崎グラフィティ。』にもつながっていることを紹介。さらに川島監督は、その講演を聞くため教官に嘘をついて必修授業をさぼっていたことを告白しました。

記事メイン写真

トークイベント中の小山正太さん、佐藤玲さん、川島直人監督(左より)
※画像をクリックすると大きく表示します

 トークイベント後半では、出席した学生からの質疑応答の時間も設けられました。

 「未完成映画予告編大賞」に応募した予告編を作るための撮影はどのような感じでおこなわれたのかという質問に対して川島監督は「カッコいい映像ばっかり撮り続けてしまうとPVとかCMチックになっちゃうので、どことなく映画の文脈を感じさせるものということは気をつけていました」「予告編だからこうみたいなのはなくて、PV・CMっぽくならないようにするのと、時間がないから余計なカットを撮らずに」と回答。

 メインの登場人物5人全員が主人公となるような悩みなどを抱えているという質問について、小山さんは当初の脚本では「大スペクタクルみたいな感じ」で、いなくなった美紀の父親を探す推理のような部分もあったと明かし「(当初は)物語の中にキャラクターが生きるくらいの感じだったんですけど、キャラクターがストーリーを動かすものにしてほしいと(監督に)言われたときに、5人それぞれに葛藤があって、それぞれの悩みが誰かの悩みを生んだりとか、誰かの悩みが誰かの心を癒やしたりというつくりにしていくので、けっこう悩みましたけど楽しいなとは思って、5人けっこうフルボリュームになった気がします」と説明。

 劇中でのセリフっぽくない自然な会話をどのように演出しているのかという質問には、川島監督は「その人物として出てくる言葉を引き出せたらいいなと思っているので」最初のホン読みから撮影までの約1ヶ月の間、キャスト同士と監督とでなるべく仲良くなるよう食事などの機会を作ったと話し「現場での演出はしていないんですけど、自然なものが出るために現場に入るまでに自分の家に呼んで鍋したりとか、そういう役者との距離はすごく大事にしていました」と回答。佐藤さんも「みんなでご飯に行ったりとかしていました。そういう雰囲気が出たのかなと思います。でも、できるだけセリフになぞらえて喋っていて、セリフの合間の反応だとか、台本にある前後とかはそれぞれが自分なりに喋ったり、自分たちの関係性の中で喋ったような気がしています」と、演じる立場から答えました。

 また、川島監督は質問に答えるかたちで、主人公・美紀の父親を演じた渋川清彦さんについて、画面には渋川さんが登場しないあるシーンの撮影で「(画面には)いないけど(現場には)いてほしい」と思っていたところ、渋川さん自身から「俺はいらないっしょ。ただ、俺がいたほうがみんなの演技がよくなるから、俺はいるよ」と言ってくれたという、渋川さんの人柄を感じさせる撮影中のエピソードを紹介しました。

記事メイン写真

学生からの質問に答える佐藤玲さんと、小山正太さん、川島直人監督
※画像をクリックすると大きく表示します

 トークイベントの最後には、小山さんは「自分ってこういう人間だなってネガティブな要素もポジティブな要素もあるんですけど、それをひっくるめて自分がなにできるかを考えると、自分が脚本家を目指したりとか監督を目指したりとか役者を目指しているとか、道が見えてくると思うので、大学時代はいろいろな人と話して遊んで、自分ってこんなやつだなと思う時間を作ってくれたらすごく充実した大学生活になるんじゃないかと思います」と、佐藤さんは「私は学生のときに自分の好きな勉強をしていくうちに、だんだんと枝葉が広がっていって、少しずつ映画のことを知っていったというのもあるので、自分の好きなことを突き詰めていくとだんだん違う世界も見えてくると思うので、学生時代は、実は私はあまり遊ばないほうだったんですけど、遊んだりすることも大事だなと思うので、いろいろなことを吸収する時間、楽しいことにいっぱい眼を向けるといいのかなと思います」と、それぞれ現役学生にメッセージを。
 そして学生時代はいろいろなサークルに入り「わけのわからないことを」やっていたという川島監督は、決して安くない日藝の授業料に触れ、それを「人件費だなって思ったんですよ。いろいろな仲間とかプロフェッショナルになる仲間とか、絶対あとで頼むとお金がかかるから、いまのうちに人脈を作っておけば助けてもらえるし、先輩だったり後輩だったり面白い奴にはとりあえず仲良くなって人件費で元を取ってやろうって」と、独特の考え方を披露。小山さんや佐藤さん含め、先輩、後輩、同期が『高崎グラフィティ。』にさまざまなかたちで参加していることを挙げ「すごいいいチームでやれたなと思うので、みなさんも、小山さんの話(と同じ)になってしまうますが、面白い人とどんどん付き合ってもらって、やってもらえればなと思います」と、トークイベントを締めくくりました。

 主演の佐藤玲さんのほか、同じクラスの高校生役に萩原利久さん、岡野真也さん、中島広稀さん、三河悠冴さん、そして奥野瑛太さん、渋川清彦さんや川瀬陽太さんらが共演する『高崎グラフィティ。』は、8月18日(土)よりシネマテークたかさき、イオンシネマ高崎にて先行公開、8月25日(土)よりUPLINK渋谷、イオンシネマ シアタス調布ほか全国順次公開されます。

スポンサーリンク