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藤元明緒監督「みなさんとずっと共有しつづけていきたい」 『僕の帰る場所』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった藤元明緒監督、ケイン・ミャッ・トゥさん、カウン・ミャッ・トゥさん、來河侑希(きたがわ・ゆうき)さん、テッ・ミャッ・ナインさん(來河さんの前)、津田寛治さん、黒宮ニイナさん、渡邉一孝プロデューサー(左より)
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 昨年の東京国際映画祭で二冠を獲得した日本・ミャンマー合作映画『僕の帰る場所』が10月6日にポレポレ東中野で初日を迎え、渡邉一孝プロデューサー、共同プロデューサーで出演者の來河侑希さん、藤元明緒監督と出演者が舞台あいさつをおこないました。

 『僕の帰る場所』は、父親が入国管理局に捕まった在日ミャンマー人家族の姿を通して、国際的な関心事である“移民”という題材をドキュメンタリーを思わせる映像で描いた劇映画。2017年開催の第30回東京国際映画祭「アジアの未来」部門で作品賞と国際交流基金アジアセンター特別賞の二冠に輝き、その後も国内外の映画祭で上映され注目を集めています。

 ポレポレ東中野の上映は満席のスタートとなり、藤元明緒監督は「三連休の初日にお越しいただき、ありがとうございます」とあいさつ。企画段階から数えると5年を経ての劇場公開にあたり「すごく普遍的な家族のことを描いていたので、作品に関してみなさんとずっと共有しつづけていきたいなと思っています。こういった共有の仕方というのは映画館でしかできないと思うんです。こうやって時間を共有するっていうのはほんとに映画の醍醐味だと、今日改めてみなさんの前に立たせてもらって感じられます。ほんとに感無量です」と心境を述べました。

 また藤元監督は、この作品に参加したのがネットで「ミャンマーで映画を撮れる監督」の募集を見つけたのがきっかけだったと明かし、その時点では場所すらよく知らなかったミャンマーは作品作りを経たいまは「第二の母国という感じ」だと表現。藤元監督は現在ではミャンマーの方と結婚し仕事の拠点もミャンマーに構えており「大切な国がもうひとつできるというのは、映画を作るという行為を通して、ぼくの人生の中で“生きる”という行為と映画を作るということがすごく密接に関わっているんだなというのは、ほんとにこの映画のおかげですごい勉強になりました」と作品を通じて得たものを語りました。

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脚本と編集も担当した藤元明緒監督

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一家の母・ケインを演じたケイン・ミャッ・トゥさん

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一家の息子の兄・カウン役のカウン・ミャッ・トゥさん

 ミャンマー出身で日本で芸能活動をおこなっている黒宮ニイナさんはミャンマー語教室の先生役で出演しており、10歳のときにミャンマーから来日した自身の経験を振り返り「日本に来たときは日本語がまったくわからない状態からスタートしまして、兄弟とは逆の感じになってしまうんですけど(※映画の兄弟は日本で育ちミャンマー語がわからないという設定)、どこかで成長とともに、自分は日本人なのかミャンマー人なのかわからなくなるときが時々ありまして、兄弟もそんな感情なのかなと、この映画に出てみて思いました」とコメント。さらに「カウン(・ミャッ・トゥ)くんの演技が、みなさんもご覧になったとおりすごく自然で、子どもが演じた映画とは思えないような演技をしていて、私もちょっとウルっと来てしまうシーンが多々あったので、みなさんに観ていただけて嬉しく思います。これからもこの映画がますますみなさんに観ていただけるように、みんなで力を合わせてがんばっていきたいと思います」と、作品への想いの深さを感じさせました。

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一家の息子の弟・テッ役のテッ・ミャン・ナインさん

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共同プロデューサーもつとめたユウキ役の來河侑希さん

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一家の父親・アイセの職場の板長役・津田寛治さん

 一家の父親が働く店の板長を演じた津田寛治さんは「(完成した)この映画を観てね、すごくいい映画だと思って、ぜひ応援したいなと思って、ほんとにちょびっとしか出ていないんですけれどこうして舞台あいさつにも駆けつけたのですが、来てみたらこんなにたくさんのお客さんとマスコミの方々までたくさんいて、なんかこの舞台あいさつに乗っかって自分の名前を売りたい嫌な俳優になってしまってて、ちょっとヤバいかなって(笑)」と、客席の笑いを誘うあいさつを。
 そして津田さんは「ぼくは難民問題とかミャンマーのこととかわからないんですけど、そのぼくが観て心が震えたのは、やはりお芝居なんですね。もう、家族4人の芝居が素晴らしくて」と、家族を演じた4人の演技を絶賛。「この映画の家族のお芝居というのは、芝居をやっている感じではなくドキュメントを撮っているような、たまたまうまくカウンくんのいい表情が撮れた、たまたまテッ(・ミャッ・ナイン)くんのいい表情が撮れたというふうに見えているんですけど、その奇跡の連続なんですよね。このふたりとお母さんお父さんの芝居を見ているだけで物語がどんどん入ってくるんですよ。お芝居いいなと思っていても物語も入ってくる、物語いいなと思っているとこの家族に感情移入ができる、要は物語とお芝居が分かれていないんですよ。融合している。ここをぼくらはいつも目指して演技というものをやっているんだと、ただ自分の芝居だけが目立つとかということではなく、物語にお客さんが入り込みやすいようにやるのが俳優の芝居なんじゃないかと、改めて思わされる家族のお芝居でしたね」と、熱く語りました。

 この作品で家族を演じたカウン・ミャッ・トゥさん(兄役)、ケイン・ミャッ・トゥさん(母親役)、アイセさん(父親役)、テッ・ミャッ・ナインさん(弟役)は、舞台あいさつは欠席となったアイセさん以外は実際の家族で、津田さんは「俳優やっているとわかるんですけど、ほんとの家族だったらなおさらやりづらいはずなんですよ。あんなふうに泣いたり笑ったり、俳優経験がある人間でも絶対にできないんですよ。なのにあれだけのお芝居を引き出したというのは、監督はどうやったんだろうというのは謎ですよね」と絶賛の演技を引き出した藤元監督の手腕にも触れ、藤元監督は「撮影現場でどうこうというよりは、撮影に入る前にかなり準備を意識していたというか、お父さん(=アイセさん)がほんとの家族じゃないので、まあ(兄弟にとっては)知らないおじさんが来る。その中で家族というものの関係性をどう作るか。お父さん愛しているとか、お父さんと離れて寂しいと思うような関係性作りを、けっこう1ヶ月前から」と、自然な演技を生むための工夫を明かしました。

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ミャンマー語教室の先生を演じた黒宮ニイナさん

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渡邉一孝プロデューサー

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司会は東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの矢田部吉彦さん

 舞台あいさつの終盤に藤元監督は「ほんとに1回観ても2回観ても3回観ても、またどんどん顔を変えてくる映画だと思っています。なので、ぼくらも劇場になるべく毎日毎日いるようにしますので、ぜひまた、劇場に遊びに来る感覚でまたこの映画を観てもらえればすごく嬉しいです」とメッセージを。

 そして渡邉一孝プロデューサーは「ぼくたちの人生にもすごく関わっているような映画にできたかなと思っているんですけど、ぼくらはこの映画は誰に頼まれて作ったわけでもありません。ぼくたちが勝手に作った映画です。段取りも含めてボロボロな状態でもひた走っていくということで、協賛と借金だけで作った映画であり、また自主配給をして、ぼくが映画館に1軒1軒行って口説いて広めている映画でもあります。“こういう映画があってもいいんじゃないか”と思われる方がもしいらっしゃったら、よければほかの方にもお声がけいただければと思います。よろしくお願いします」と、映画の応援を呼び掛けて舞台あいさつを締めくくりました。

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フォトセッションではカウンさん、テッさんの兄弟が現在11歳と7歳らしく元気にポーズを決める場面も
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 『僕の帰る場所』は、10月6日(土)よりポレポレ東中野で公開中、ほか全国順次公開となっています。(配給:株式会社E.x.N)

作品スチール

僕の帰る場所

  • 監督・脚本・編集:藤元明緒
  • 出演:カウン・ミャ・トゥ ケイン・ミャ・トゥ アイセ テッ・ミャ・ナイン 來河侑希 黒宮ニイナ 津田寛治 ほか
  • ©E.x.N.K.K.

2018年10月6日(土)より ポレポレ東中野ほか全国順次公開

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