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細田善彦さん「在宅医療は幸せに生きるための医療」 『ピア~まちをつなぐもの~』舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった水野真紀さん、川床明日香(かわとこ・あすか)さん、細田善彦さん、松本若菜さん、綾部真弥監督(左より)
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 医師やケアマネージャーたちの姿を通して地域の在宅医療のあり方を描いた映画『ピア~まちをつなぐもの~』を上映中のヒューマントラストシネマ有楽町で、主演の細田善彦さん、共演の松本若菜さんら出演者と綾部真弥監督が4月27日に公開記念舞台あいさつをおこないました。

 『ピア~まちをつなぐもの~』は、町医者である父が倒れたため大学病院を辞め実家の医院を継ぐことになった主人公・高橋雅人が、訪問診療に携わっていく中で、ケアマネージャーや介護士たち多くの職種と連携し患者や家族のことを考える在宅医療のあり方を学んでいくストーリー。介護福祉士が主人公の2017年公開作品『ケアニン~あなたでよかった~』で監督補をつとめていた綾部真弥監督がメガホンをとるなど『ケアニン』のスタッフが再集結しており、また『ケアニン』と同じ登場人物も登場するスピンオフ的な作品ともなっています。

 初めて映画で医師役に挑んだ主人公・高橋雅人役の細田善彦さんは「在宅医療での医師の役割というのを、映画を通じてですけど、ぼくも一緒に体感して学んでいきたいなと思ってやらせていただきました」と役についてコメント。撮影前には役作りの参考にするため実際に在宅医療の訪問診療を見学したそうで「ひとりの先生なんですけど、患者さんによって話し方だったり診察の仕方が全然違ったのが印象的で、ぼくもそういうふうに患者さんに寄り添えるような訪問診療をしていきたいなと思いました」と、実際の訪問診療を見て得たものを語りました。
 また、最初はドライな判断による医療が患者のためと考えていた雅人が次第に患者や家族の気持ちを考えるように変化していく様子を表現するにあたっては、特に変化を見せようと意識するのではなく「水野さん(患者役の水野真紀さん)が目の前で患者さんとしていらっしゃってくださるので、なにを気をつけるとかそういう決め事ではなく、目の前にいらっしゃる患者さんとどう接したらいいのかということだけを考えさせていただきました」と振り返りました。

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大学病院勤務から地域に根ざした医療へと転身する主人公・高橋雅人を演じた細田善彦さん

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『ケアニン』では介護福祉士、今回はケアマネージャーとなった佐藤夏海役の松本若菜さん

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在宅医療を受ける母親を案ずる娘・藤本波瑠を演じ映画デビューを果たした川床明日香さん

 在宅医療に関してときに雅人と対立するケアマネージャー・佐藤夏海を演じた松本若菜さんは『ケアニン』と同じ役での出演で2作をつなぐ役割を果たしており「前作(=『ケアニン』)で助監督(※実際は監督補)をされた綾部さんが今回『ピア』ではメガホンをとられると聞いたので、綾部さんの背中におんぶしてもらおうという気持ちでさせていただきました(笑)」と、綾部監督の存在が安心材料になっていた様子。
 そして松本さんは『ケアニン』に出演した2年前と比べると「前までは“誰かに届けたい”とか“観てもらった方に心を動かしてもらいたい”とか、そういう気持ちで、いまももちろんそう思っているんですけど、それよりもピンポイントで“この人に届けたい”とか、フンワリしたものからピンポイントに」観てもらいたいと思う対象が変化したと話し、この作品は「家族」に観てもらいたいと述べました。

 雅人の訪問診療を受ける藤本由紀子の娘・波瑠(はる)を演じた川床明日香さんは今回が映画初出演。川床さんは、母親役の水野真紀さんが「撮影の合間にもたくさん話しかけてくれたので」自然に親子を演じられたと思うと話し「ちょっと思春期なんですけど、お母さんが大好きで、ちょっと甘えちゃうというのを自分の中では意識しながらやっていました」と演じる上で意識した点を挙げました。
 映画のタイトルになっている「ピア」(Peer=仲間)という言葉は、劇中では波瑠が在宅医療のために協力するさまざまな職種の人々を「ピア」と呼ぶというかたちで使われており、川床さんは映画に登場する「ピア」たちについて「やっぱりカッコいいなと思いました。自分もその中に入りたいなと思いました」と感想を述べました

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ガン手術を受けたあと、訪問診療を受ける藤本由紀子を演じた水野真紀さん

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『ケアニン』では監督補、今回はメガホンをとり2作に関わった綾部真弥監督

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綾部監督の話すエピソードに笑顔を見せる細田善彦さんと松本若菜さん

 ガンの手術を受けたあと訪問診療を受ける藤本由紀子を演じた水野真紀さんは、役の設定上あまり血色がよくならないよう撮影中は昼食を抜くこともあったと「おかげさまでいいダイエットになりました(笑)」と笑いながら明かし、病を抱える役に「お芝居ではいろいろなことを考えますし、悩みましたね」と振り返りました。
 また、娘役の川床さんはじめ共演者の印象を聞かれると「おこがましくてお伝えできないのですが」と前置きした上で「永いこと俳優人生を歩んでおりますが、ここにお並びのお三方は“芯”をきちんと持っていらっしゃる。その芯というのが俳優にとってはとても大事なんだろうなというのを、撮影しながら感じていました」と答え、細田さん、松本さん、川床さんはその言葉に頭を下げて感謝を示しました。

 メガホンをとった綾部真弥監督は「ぼく自身は映画・ドラマの世界の中で助監督というのを10年やってきて監督になったんですが、助監督を永くやっているとどうしても医療・介護に関わるテーマの作品に数多く参加してきた経験もあり、今回この作品を作るにあたり、いままでの知識や経験というものをすべて注ぎこむ作品にしたいなと。ぼく自身も、母は元気なんですけど撮影するちょっと前に父がガンで亡くなりまして、ちょうど個人的な体験も作品に注ぎ込んで、松本さんもおっしゃっていましたが、ぼくも家族や身近な人に観てもらいたいし、いま病気で苦しんでいる方、そのご家族やケアされている医療・介護のみなさま、ほんとにいろいろな側面から観ることができる映画にしたいと、なにかひとつでも琴線に触れるものにしたいなと」作品に取り組んだと話すとともに、キャストの方々とは「ご縁」を感じたとコメント。特に水野さんは綾部監督が初めて助監督をつとめたドラマで自宅で出産する役を演じていたそうで、それから10数年を経て水野さんが在宅診療を受ける作品を監督すること、しかもちょうど10代の娘がいるという役なことに、綾部監督も特別な想いがあったよう。綾部監督は「こんなにもいろんな偶然が重なって素敵な俳優陣や、我々スタッフも含めて、ほんとにいい才能が集まってできたなと、とても嬉しく思います」と作品への想いを語りました。

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それぞれの「成長したいのは」が書かれたフリップを客席に見せる細田善彦さん、川床明日香さん、水野真紀さん

 舞台あいさつでは、平成から令和への改元を数日後に控えている時期とあって、登壇者の「新しい時代を迎えるにあたって自分はどう成長していきたいか」も発表されました。
 綾部監督は「性格的にはすごく出不精」で「人と会うのがおっくうになっちゃうタイプ」のため「これからはなるべく外に出て、新しい方と出会って、新しい仕事をたくさんしていこうと」【コミュニケーション!! 外に出る!!】。
 川床さんは「いつも片付けだったりを後回しにしがちなので、きちんと時間の使い方をしっかりしていきたいと思います」と【時間の使い方。】。
 水野さんは、年齢的にも「どんどんいろんなものが抜けていってしまうので」と笑い「だから今後は記憶も含めて留めたいと思います」と【留める力】。
 【身体を柔らかくしたい。】と答えた松本さんは、実際に立位体前屈を実演し身体の固さを見せると「がんばります」と一言。
 細田さんは「ぼくほんとに食べるのが好きで、食べ放題とか大好きなんですよ。で、それをやったあとに必ずお腹が痛くなるんですよね。それなので、ちょっと腸を強くしたいなと思って」【整腸】と「成長」にかけた回答を示し「ありがとうございました」とオチを付けました。

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綾部真弥監督の「成長したい」理由を聞いて笑う松本若菜さん

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「成長」と「整腸」をかけた細田善彦さんの回答に松本若菜さんも笑顔

 舞台あいさつの最後に綾部監督は「“映画は観ていただいて初めて完成する”という言葉がございまして、我々ほんとに一生懸命、渾身の力で作りました。今日はやっとみなさんに観ていただいて、それぞれの方の中で完成して、この映画が今後も愛されて、成長されていくといいなと思っております」とメッセージを。

 そして細田さんは「在宅医療は幸せに生きるための医療だと思います。この映画を観ていただいて、そのことをちょっとでも感じていただいたら、とても嬉しいので、周りのみなさんにこの映画を薦めてください。よろしくお願いします」と舞台あいさつを締めくくりました。

 舞台あいさつ登壇者のほか尾美としのりさん、升毅さん、三津谷亮さん、そして『ケアニン~あなたでよかった~』主演の戸塚純貴さんらが出演し、在宅医療という題材をエンターテイメントの中で描いていく『ピア~まちをつなぐもの~』は、4月26日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中です(配給:ユナイテッドエンタテインメント)。

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