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二宮金次郎役の合田雅吏さん、撮影は「金次郎先生がいた感覚」 『二宮金次郎』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった榎木孝明さん、成田浬(なりた・かいり)さん、合田雅吏さん、田中美里さん、犬山ヴィーノさん、五十嵐匠監督(左より)
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 勤勉の象徴として知られる偉人・二宮金次郎の生涯を映画化した『二宮金次郎』が6月1日に東京都写真美術館ホールで初日を迎え、主演の合田雅吏さんと共演の田中美里さん、成田浬さん、犬山ヴィーノさん、榎木孝明さんと五十嵐匠監督が舞台あいさつをおこないました。

 映画『二宮金次郎』は、少年時代貧しい生活の中でも勉学に励み、成長してからは荒廃した村々の復興事業に取り組んだ二宮金次郎の激動の生涯を、桜町領(現在の栃木県真岡)の復興をめぐる金次郎の努力と苦悩、人々との絆を中心に描いた作品。

 二宮金次郎を演じた合田雅吏さんは「こうしてみなさんに観てもらえる日を心待ちにしていまして、こうして観ていただけるというのはほんとに感無量です」とあいさつ。撮影中は「ずっとこの辺(少し離れたところ)に金次郎先生がいた感覚」で「見てもらっているような気持ち」で撮影していたという合田さんは、撮影後に二宮金次郎を祀っている小田原市の報徳二宮神社を「何回行ったかわからないくらい」訪れてお参りをしており、東京都写真美術館ホールでの上映が決まったことを報告に行った際も「“たくさんの人に観てもらえるから大丈夫だよ”って(金次郎に)語りかけられたみたいな」感覚があったと話し「そのことで(映画を観てもらえるという)自信はあったんですけど、こうしてみなさんのお顔を見て、ごあいさつできて、ほんとにありがたいです」と初日を迎えた心境を語りました。

 これまでも実在の人物を題材にした映画を何本も手がけている五十嵐匠監督は『二宮金次郎』の製作に動き出した4年前に報徳二宮神社でおみくじを引いたところ大凶が出たことを明かし「これは二宮先生から“映画を作るな”と言われていると思って、ぼくはすごすご帰ったんですけど、その代わり突き動かされるかのように一生懸命やって、映画が完成して、二宮神社にまたお参りに行きました。そしたら吉が出たんです。なんか赦されている感じがして嬉しかったんです」と、映画製作にまつわるエピソードを紹介しました。

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舞台あいさつ冒頭では、五十嵐監督の「場を和ませていただきたいと」という意向から、ブルースハープの名手である犬山ヴィーノさんがブルースハープ演奏を披露

 『二宮金次郎』では、五十嵐監督の「土も主人公」であり「人間の生活とか、哀しみとか、そういう人の営みを土が見ているというかたちで演出できないか」という考えから“土”にまつわる場面が多く、中には金次郎が土を食べるシーンも。
 そのシーンでは撮影用にチョコフレークやチョコレートで土に似せたものを作って用意していたそうですが、合田さんは「だんだん撮影が進めば進むほど“なんで土を食べてはいけないのか?”という感覚になってきまして(笑)、監督に“いいです、ぼく土食べます”って、ほんとなんの抵抗もなかったですよ」と、撮影用に用意したものと本物の土が混ざるのも気にせず撮影に臨んでいたことを明かし、五十嵐監督は「合田くんとしては、ちゃんと土を食べてお芝居をしたいということだったので」と、その役にかける気持ちが嬉しかったとコメントしました。

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「この映画、去年の3月4月と、ほんとに役者、そしてスタッフ一同、全身全霊をかけて撮った作品です」と想いを語った二宮金次郎役の合田雅吏さん

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金次郎の妻・なみ役の田中美里さんは、役を通して夫妻の間にあるものを感じ「そういうものを感じながらこの映画に携われたことを幸せに思っています」

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金次郎を妨害する豊田正作役の成田浬さんは、豊田は時代が変化していく中で「気付かされていったことがすごくあったんだろうなと思います」とコメント

 追い込まれて失意の金次郎を妻・なみが励ますシーンは、なみ役の田中美里さんがアドリブで脚本を膨らませて演じたそうで、田中さんはそのシーンについて「私は自分でアドリブをして追加していくのはあまり好きではないほうなんですけど、どういうふうに膨らませていこうかなと思ったときに“一番(金次郎の)味方ですよ”ということを言葉じゃなく伝えたいなと思って」演じたと話し、合田さんはそのシーンの田中さんが「天使に見えました」と笑顔で語りました。

 田中さんはさらに、金次郎に反発する村の人々に金次郎の想いを伝えるシーンが「一番緊張して」演じたシーンで「どういうふうに説得すればいいかというのはすごく難しかったです」と振り返りましたが、村人のひとり・岸右衛門役でそのシーンに出演している犬山ヴィーノさんは「田中さんが演じるなみの目にやられちゃって」自然とそのあとのセリフが言えたと、田中さんの演技の力に感謝しました。

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撮影の様子を振り返る夫婦役の合田雅吏さんと田中美里さん

 金次郎による復興事業を妨害する侍・豊田正作を演じた成田浬さんは、撮影前は胸くらいまである長髪で、その長髪を活かしたいという五十嵐監督の要望で実際に頭頂部の髪を剃る中剃りをして地毛を活かし髷を結っていたことを告白。中剃りを「喜んでやらせていただきました」という成田さんですが、撮影以外では「中剃りのまま歩くわけにはいかないので、いや大変でした」とやはり苦労はあったそう。
 合田さんは、撮影前の顔合わせのときにすでに中剃りをしていた成田さんがウィッグを付けていたのが「明らかにおかしいんですよ(笑)」と暴露し、田中さんはウィッグを付けた成田さんが「ペ・ヨンジュンさんみたいでしたよ」と話して客席の笑いを誘いました。

 また成田さんは。金次郎を毛嫌いする豊田を演じるために、撮影中は金次郎の偉業への感動を出さないようにつとめ、合田さんとも距離をとっていたと撮影中の様子を語り、合田さんも「撮影中はほとんど会話していないんですよ。(撮影が終わって)“お疲れ様”と言ったところからは(交流が)スタートしたんですけど、それまではピリピリした空気感というのが抜けなくて」と、役への真剣な取り組みをうかがわせました。

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中剃りしたことを説明する成田浬さん(左)とその話に耳を傾ける合田雅吏さん、田中美里さん

 金次郎を見出す小田原藩主・大久保忠真を演じた榎木孝明さんは五十嵐監督作品には何度も出演しており、今回は製作にも参加。榎木さんはもともと日本の偉人をもっと世に知らしめたいとの考えを持っており「日本には隠れた偉人がいっぱいいるので、その筆頭が二宮金次郎だったので、とにかく嬉しくて“ぜひ一緒にやらせてください”と返事をしましたね」と作品に参加した理由を説明し、忠真を演じるにあたっては「出番が少ない中でどういう存在感を出すか」そして「品格」にこだわりを持っていたと話しました。

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役に向き合ったとき「この岸右衛門という役の佇まいに惚れてしまいまして、これは絶対にやりたいと」強く思ったという岸右衛門役の犬山ヴィーノさん

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「全国、あと英語版もできているらしいので世界にね、これは広めたい映画なので、ぜひ協力をお願いします」と呼びかけた大久保忠真役の榎木孝明さん

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「いままで実在の人物をたくさん撮ってきましたが、一番難しい。二宮尊徳という方はひじょうに深い方で、難しかったです」と語った五十嵐匠監督

 五十嵐監督は「ぼくは今回、スタッフとキャストは全信頼しているわけです。だから“こうしろああしろ”ということは一切言っていない。(登壇したキャストたちの)ご自分のやる作業というものをぼくは信頼しているから、一切ぼくは特別言うことはなかったです。スタッフも一流の人たちがいるので、言うことは何もない。ただ、ひとつだけぼくが言えるのは、いまここに上がっている人たちというのはただ代表であるだけなんですね。100人以上スタッフもキャストもいるわけです。ぼくたちというのはここでいま代表でいますけど、バックにたくさんの方々がいるわけです。だからみんな役者さんといわば化学反応を起こしている。それぞれの役者さんとぶつかることによって化学反応を起こして新しいものが生まれてくると思います。だからぼくは実力のある映画人という方々はたくさんいらっしゃるので、映画というものを大切に、その熟練した技術というものを後世に残して、それを見守っていただければ、ぼくはほんとに若輩者なんですけれども嬉しく思っています。ぜひ今後ともみなさんよろしくお願いします」と、客席に来場していたキャストも紹介しつつ「映画」というジャンルへの想いを伝えて舞台あいさつを締めくくりました。

 舞台あいさつ登壇者のほか、柳沢慎吾さん、田中泯さん、渡辺いっけいさん、石丸謙二郎さん、綿引勝彦さんらが出演し、二宮金次郎の人生を事実に基づきドラマティックに描く『二宮金次郎』は、東京都写真美術館ホールで6月1日(土)より28日(金)まで上映されるほか、全国順次公開されます。

作品スチール

二宮金次郎

  • 監督:五十嵐匠
  • 出演:合田雅吏 田中美里 成田浬 榎木孝明(特別出演) 柳沢慎吾 田中泯 ほか

2019年6月1日(金)より東京都写真美術館ホールにて公開ほか全国順次

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