舞台あいさつをおこなった監督と出演者。前列左より岸建太朗さん、竹内一花(たけうち・いちか)さん、竹内洋介監督。後列左より、原扶貴子さん、植吉(うえきち)さん、足立智充さん、鈴木宏侑さん、岸カヲルさん、高谷基史さん、中島亜梨沙さん
※画像をクリックすると大きく表示します
第57回テッサロニキ国際映画祭で最優秀監督賞と最優秀主演女優賞を受賞するなど海外の映画祭で高い評価を得ている『種をまく人』が11月30日に池袋シネマ・ロサで初日を迎え、主演の岸建太朗さんら出演者と竹内洋介監督が舞台あいさつをおこないました。
『種をまく人』は、震災被災地を訪れたのち弟の家庭に身を寄せた男・光雄と、その姪である10歳の少女・知恵を中心に、知恵の犯したある“罪”がもたらすものを描いていく物語。2016年にギリシャで開催された第57回テッサロニキ国際映画祭で竹内洋介監督が日本人3人目となる最優秀監督賞、知恵役の竹中涼乃さんが史上最年少で主演女優賞を受賞したのをはじめ、2017年開催のロサンゼルス・アジア・パシフィック映画祭では最優秀作品賞を含む四冠を獲得するなど世界各地の映画祭での高評価を得て日本公開を迎えました。
撮影当時11歳だった竹中涼乃さんは中学3年生となり学業優先のため登壇が叶わなかったものの、舞台あいさつには竹内洋介監督や光雄役の岸建太朗さんら総勢10名が登壇。
主演と撮影監督を兼任するという異例のかたちで作品に携わった岸建太朗さんは「この映画は2015年に撮影して、16年に海外の映画祭を回り、およそ4年の充電期間を経てようやくみなさんの前にお披露目することができました。本当にありがとうございます」と、完成から数年を経ての日本公開を迎えた心境を語り、農家役の高谷基史さんは「みなさん、ぜひこの映画『種をまく人』の素晴らしさを多くの人に、世界中の人に広めていってください」と、力強く訴えました。
竹内洋介監督は「きっかけというのはぼくが敬愛するゴッホの人生をもとにして始めたというのと、姪っ子のいっちゃん」と、知恵の妹でダウン症の一希を演じた監督の実の姪・竹内一花ちゃんの姿を映画の中に残したいという気持ちが作品を生むきっかけのひとつになったと話し、現場では当時まだ3歳で撮影だということがわからない一花ちゃんのため「(両親役の)足立(智充)さんと(中島)亜梨沙さんとか、みんなで協力して家族のような関係性を作って」撮影したと当時を振り返って話しました。
また、光雄の母親・高梨せつを演じた岸カヲルさんは実際に光雄を演じた岸建太朗さんのお母さんで、岸カヲルさんは撮影前に竹内監督と会ってオーディションのようにセリフを読んだときのことを「私は自分が目に障害があったり、主人の弟が心の病で長く苦しんでいたので(映画の内容が重なって)感極まって、それがよかったんじゃないでしょうか」と語るとともに「障害があるとか、(劇中の)光雄の心の病とか、みんなそれぞれいろんなことがあるけど、人としてはみんな同じなんだということを」映画を通して感じたと話しました。
映画の中にはゴッホの名画「ひまわり」を思わせるように、光雄が種をまく向日葵の花が何度も登場しており、岸建太朗さんは、その向日葵の花が実際に「ぼくらが種を植えて」撮影されたものであると明かし「2011年の夏に竹内監督と(震災の)被災地に行ったときに、ほんとに偶然に彼が一輪の向日葵を写真で撮って、そこからなにか、この『種をまく人』という映画に繋がるイメージの着想を得て、彼がそれを数年かけてシナリオを作って企画を練った映画です。ぼくもほんとに彼と二人三脚でこの映画を見守ってきたんですけど、言葉にならない生命力であったり、震災というものがたくさんのものを、当然命を奪いましたし景観も奪ったんですけれども、それでも奪い去ることのできない命みたいなものをこの映画に刻み込みたいなと思いながら、みんなで作り上げました」と、映画に込めた想いを語りました。
そして竹内洋介監督は「撮影から上映までだいぶ時間がかかってしまったんですけれども、ご協力をいただいてこうやって上映できたことを、ほんとに感謝いたします。陰で支えてくれたスタッフとかキャストのみなさんのご協力があってここまでこれたので、ぼくだけの力じゃないという、そういう映画ですので、ぜひみなさんに広めて多くの人に見てもらいたい映画です。よろしくお願いいたします」と、より多くの方々に映画が届くように拡散を呼びかけて舞台あいさつを締めくくりました。
「日本映画史に残る最も美しいラストシーン」と呼ばれるエンディングで人の心の奥底を描き出す『種をまく人』は、11月30日(土)より池袋シネマ・ロサにてロードショーされています。