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五十嵐皓子監督「心とはなにか」がテーマの初長編公開 『メカニカル・テレパシー』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった吉田龍一さん(左)と五十嵐皓子監督
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 「心を可視化する機械」を巡る3人の男女の姿を描き各地の映画祭で高評価を得てきた『メカニカル・テレパシー』が10月9日にアップリンク渋谷で初日を迎え、主演の吉田龍一さんと五十嵐皓子監督が舞台あいさつをおこないました。

 五十嵐皓子監督の初長編作となる『メカニカル・テレパシー』は、大学で「心を可視化する機械」を研究する開発者と、共同研究者であるその妻、研究の「調査」のため大学から送り込まれた男の3人を中心に、SF的な発想で描かれる恋愛映画。第12回大阪アジアン映画祭や、著名なSF作家の名を冠した The Philip K Dick Science Fiction Film Festival での上映、日本芸術センター第10回映像グランプリの優秀映画賞受賞などを経て一般公開を迎えました。

 作品では「心を可視化する機械」によって人間の心が実体化するという設定が用いられており、五十嵐監督は「(実体化の表現として)抽象的に表現するとかいろいろなパターンがあると思うんですけれども、映画を撮るにあたって、カメラがあって、役者さんがいて、一人二役で心と身体とふたつのキャラクターを演じることで“心の可視化”というものを描けるなと思いまして“心はなにか?”というテーマでアプローチしようと」いう発想がきっかけで作品のアイディアが生まれたと話し「心というのはわからないもので、自分がなにをしたいのかとか、相手がなにを望んでいるかとか、わからないことばかりなんですけども、そのわからないものをあるがままに見つめて、自分がなにを選んで、なにを言葉にして、どう行動するかが大事だというのを描こうと思っておりました」と作品のテーマに触れました。

 研究を止めるために送り込まれながら女性研究者に惹かれていく主人公・真崎トオルを演じた吉田龍一さんは、真崎自身とその心を一人二役で演じたことについて「まったく別人を演じたわけではなく、真崎のある一部分の感情であったり、エゴであったりという部分がもうひとりの真崎かなと思って演じさせていただきました」と演じての感想を述べ、大阪アジアン映画祭での上映の際に海外の観客から「“すごく興味深い内容でした”と言っていただけたのが嬉しかったですね」と振り返りました。

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「撮影していたときにはまさか劇場にかけられる日が来るとは思っていなくて、いまは胸いっぱいです」と五十嵐皓子監督

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主人公・真崎トオルを演じた吉田龍一さんは「初日を迎えられたことを大変光栄に思っています」と話し関係者に感謝の言葉も

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トーク中の五十嵐皓子監督と吉田龍一さん

 『メカニカル・テレパシー』は2017年3月に開催された第12回大阪アジアン映画祭インディフォーラム部門で『可視化する心たち』のタイトルで上映されたバージョンに「いろいろな感想をいただいた上で、もう少しわかりやすくしようと思って」(五十嵐監督)VFXやサウンドエフェクトなどを加え、企画時のタイトルに改めたものが今回今回されるバージョンとなっており、吉田さんは改めて公開版を鑑賞して映画祭で鑑賞したときとは「印象が全然違った」とコメント。
 吉田さんはさらに映画祭での上映と今回の公開までの間に肉親の逝去を経験したことを明かし「かけがえのない命と向きあわせてもらったときに、気づくことがむちゃくちゃたくさんあって、いまもなおあるんです。それを経て、いまの自分がこの作品を観たときに、人のあり方というか、科学のあり方というか、そういうものがすごく投影されていて、人の欲であったりエゴであったりが垣間見えて」と話し、ラストシーンでは「感じさせられたことがあって、涙してしまいました」と、改めて作品を鑑賞しての印象を。
 そのラストシーンは、実は五十嵐監督が「かなり迷ってしまった」ために撮影をしながら脚本を書いていたもので、監督は「ほんとにキャスト、スタッフに迷惑をかけつつだったんですけど、自分がただ机の前に座っているだけでは書けなかったラストシーンを、キャスト、スタッフと一緒に作れたと思っています」と、スタッフ、キャストに感謝を示しました。

 舞台あいさつは、吉田さんの「少しでも楽しんでいただけたらと思います」、五十嵐監督の「片思いで報われなかった想いとか、自分の中で決着が付けられなかった想いとか、みなさんいろいろご経験されていると思うんですけど、この映画を観ることで、少しその気持ちを思い出したり、寄り添ったり、そういう時間が持てればいいなと思ってこの作品を作りました。楽しんでいただければ幸いです」という、それぞれのメッセージで締めくくられました。

 映画美学校のフィクション・コースと脚本コースで学んだ五十嵐皓子監督が、新たな映像制作者を発掘するシネアスト・オーガニゼーション大阪(略称:CO2)の助成を受けて制作、吉田龍一さん、白河奈々未さん、申芳夫さん、伊吹葵さんと、CO2俳優特待生を中心にしたキャストで送る『メカニカル・テレパシー』は、10月9日(金)より22日(木)までアップリンク渋谷にて公開、ほか全国順次公開されます。

作品スチール

メカニカル・テレパシー

  • 吉田龍一 白河奈々未 申芳夫 伊吹葵
    青山雪菜/石田清志郎/時光陸/松井綾香
    長尾理世/竹中博文/古内啓子(声の出演)

  • 監督・脚本:五十嵐皓子
  • 撮影:中瀬慧
  • 照明:加藤大輝
  • 美術:松本真太朗
  • 衣装:蔭木いづみ
  • ヘアメイク:榎本愛子
  • 音楽:宇波拓
  • 録音:川崎彰人
  • 音響:川口陽一
  • 編集:和泉陽光/五十嵐皓子
  • VFX:守屋雄介
  • 助監督:吉原裕幸
  • 制作担当:清水美和/根本克也
  • 配給・宣伝:アルミード

  • 2018年/カラー/2.4:1/ステレオ/78分 ©Akiko Igarashi

2020年10月9日(金)より22日(木)までアップリンク渋谷にて公開 ほか全国順次公開

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