２０１８年公開の初監督作『かぞくへ』が好評を得た春本雄二郎監督の長編第２作『由宇子の天秤』 （２０２１年公開予定）が10月開催の釜山国際映画祭ニューカレンツ部門に選出され、春本監督のコメントが発表されました。合わせて海外向けポスターも公開されました。
※ポスター画像は記事最後に掲載

　春本雄二郎監督は、フリーの演出部として活躍し初長編監督作となる人間ドラマ『かぞくへ』がフランス・ヴズール国際アジア映画祭で三冠を獲得するなど国内外で高く評価を獲得。２０１８年に国内劇場公開され全国で１万人を動員しました。

　その長編第２作となる『由宇子の天秤』は、春本監督が実際の出来事に着想を得て脚本を執筆した作品で、ドキュメンタリーディレクターの主人公・由布子が、唯一の家族である父の行動によって自らの価値観を揺さぶられる状況に直面するというストーリー。現代の社会を反映したような内容が、高崎フィルムコミッションの協力のもとほぼ全編が高崎ロケにより描かれていきます。
　また、プロデューサーとして春本監督とともにアニメーション映画『この世界の片隅に』（２０１６年）の監督・片渕須直さんも名を連ねています。

　今回、同作が選出された釜山国際映画祭は、今年で25回を迎えるアジア最大級の国際映画祭で、今年は10月21日より30日まで韓国・釜山で開催。『由宇子の天秤』は、長編２作以下の新人監督を対象としたコンペティション部門である「ニューカレンツ部門」に選出され、同映画祭がワールドプレミア上映となります。

　選出を受けて、春本監督は次のようにコメントを発表しています。

春本雄二郎監督コメント

数年前の実際に起こった衝撃的な出来事から、この映画の着想を得ました。
メディアが誤った情報を報道し、事件の当事者ではない人たちが、ネット上で自分たちのインスタントな“正義”を無邪気に振りかざし、無実の人間の日常を一瞬にして破壊したのです。驚いたことに、その人たちの中には、攻撃した相手と好意的な交流があった人もいました。
そこで私は、自分の正しさを信じて疑わない人が、反対に、追い詰められた先に見せる姿を捉えたいと思いました。
急速な社会の情報化が、私たちから奪ったものは何なのか。いつから人々は身を守るために『より大胆』に、もしくは『より巧妙』に嘘をつくようになったのか。
一作目の「かぞくへ」企画以前からできていた脚本が、ようやく映画化し、釜山国際映画祭という世界が注目する素晴らしい舞台で初公開できることを嬉しく思います。ご協力いただいた多くの皆様に深く感謝いたします。
この映画が多くの人に届き、私たちの豊かな未来の一助となることを願っています。

脚本・監督・プロデューサー：春本雄二郎

　また、出演者も発表になっており、主人公の由宇子を演じるのは『火口のふたり』（２０１９年／荒井晴彦監督）で第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞を受賞するなど高い評価を得て、今後も公開作が控える瀧内公美さん。
　由宇子の父親・政志役には、ジャンルを問わず多くの作品に出演する名バイプレイヤーの光石研さん。
　そして『かぞくへ』で主人公の親友を演じた梅田誠弘さん、ミュージックビデオやＣＭで注目の新人女優・河合優実さん、長いキャリアを持つ丘みつ子さん。
　さらに『岬の兄妹』（２０１８年／片山慎三監督）主演の松浦祐也さんと和田光沙さん、『恋人たち』（２０１５年／橋口亮輔監督）の池田良さん、いまや日本映画界に欠かせない存在の川瀬陽太さん、『トータスの旅』（２０１６年／永山正史監督）の木村知貴さん、『ウルフなシッシー』（２０１７年／大野大輔監督）の根矢涼香さんと、インディペンデント作品で強い印象を残す俳優陣も集っています。

　すでに、facebook、Twitter。Instagramと、各ＳＮＳの『由宇子の天秤』公式ＳＮＳも始動中。『由宇子の天秤』は、２０２１年公開予定です。

『由宇子の天秤』ストーリー

ドキュメンタリーディレクターの由宇子は、今、世に問うべき問題に光を当てることに作家としての信念を持ち、そのためには妥協を許さず、保守的な製作サイドと衝突することも厭わない。
一方で、唯一の家族である実父の政志が経営する塾を手伝い、慎ましくも幸せに二人三脚で生きてきた。
けれども、ある日、由宇子が思いもかけない政志のある行動によって、由宇子の信念を激しく揺さぶる事件が起きる…。
“正しさ”とは何なのか、物事を善と悪に二極化しがちなこの時代に一石を投じる、葛藤しながらも答えをみつけ出そうともがく人間の姿を硬質な視点で切り取る人間ドラマ。