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今関あきよし監督「既存の映画スタイルを超えて」挑んだ短編『Memories』『Dear Moon』9月公開

 今関あきよし監督の原点回帰ともいえるショート・フィルム2作品『Memories』『Dear Moon』が9月18日より下北沢トリウッドで1週間限定公開されます。

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 1983年に『アイコ十六歳』で商業作品デビューして以来、少女の青春期を描き続けてきた今関あきよし監督は、2001年にベラルーシで『カリーナの林檎 〜チェルノブイリの森〜』(2011年公開)を撮影したのを皮切りに、ウクライナで『クレヴァニ、愛のトンネル』(2014年)、ロシアで『LAIKA-ライカ-』(2016年)、台湾で『恋恋豆花(れんれんどうふぁ)』(2019年)と、海外での映画撮影を精力的におこなってきました。
 そして2020年、全世界的な新型コロナウイルス感染症拡大により海外での映画撮影が困難となる中で、今関監督が新たに見つけたのはショートフィルムというスタイルでした。
 約30分の時間の中で明確なストーリーを描くのではなく「映像」と「音楽」、詩を朗読するような「台詞」により、観客に答えを委ねる「映像詩」というべきスタイルは、10代から当時の自主映画界を代表する存在として活躍した今関監督の原点回帰ともいうべきものとなっています。

 今回は、2020年に製作されまさに新時代の今関映画となる『Dear Moon』と、今関監督が改めてショートフィルムに目を向けるきっかけとなった2019年作品『Memories』も合わせて上映されます。

 『Memories』は、世界的なエンターテイメント集団シルク・ドゥ・ソレイユに参加するバイオリニストのポール・ラザーさんと、第94回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞を受賞したモトーラ世理奈さんが主演する作品。
 『恋恋豆花』でモトーラさんを主演に起用した今関監督が、モトーラさんの別の面を見せたいと『恋恋豆花』撮影終了直後に製作した作品で、ほぼ全編がモノクロで描かれる音楽幻想譚となっています。
 主演のふたりのほか、大林宣彦監督作品『22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語』(2006年)でヒロインを演じた鈴木聖奈さん、音大卒のピアニスト・石綿日向子さんも出演しています。

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『Memories』より。ポール・ラザーさん(左)とモトーラ世理奈さん

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『Memories』より。モトーラ世理奈さん

 『Dear Moon』は、月夜に照らされた都会を通して「現在」の世界を描き出す作品。
 主演には、黒沢清監督作品『岸辺の旅』(2015年)で主人公にピアノを習う少女・しおりを演じ、その後は舞台などで活躍する石井そらさんが起用されました。

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『Dear Moon』より。主演の石井そらさん

 公開決定にあたり、主演の石井さんと今関監督がコメントを発表しています。

『Dear Moon』主演:石井そらさんコメント

まだみんながマスクをしない生活をしていた頃、舞台の稽古をしていました。やっと掴んだチャンスでした。その後、世界が一変し、公演の中止が決定しました。学校も休校になる中、何か出来る事はないかと思い、今関監督のオーディションを受けました。この映画『Dear Moon』に出会い、私は今この瞬間にやりたいと思ったことをやると決めました。私の生きる目的はまだ何なのか分かりません。いつ無くなるか分からないこの日常。この一瞬一瞬を大切に生きていきたいと思います。今こんな世の中だからこそ皆で同じ月を見上げて心を一つにしたい!

今関あきよし監督コメント

映画は自由でいい。大先輩、大林宣彦監督の作品や言動の全てがそう伝えてくれている。アクション、ラブストーリーなどの劇映画、ドキュメンタリーさらに実験映画まで様々な表現形式がある。今回の二作品は既存の映画スタイルを超えて様々なチャレンジを試みている。『Memories』=《心の闇》を敢えてポジティブに表現。 『Dear Moon』=《コロナに覆われた世界》を淡い透き通るような月の光の中で描き出す。そんな新たな映像世界を定着させようとスタッフキャスト一丸となって走り抜けた撮影の日々を思う。さて、公開だ。一見、難解とも思えるこの映像世界をどう感じていただけるのか、本当に楽しみだ。
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『Dear Moon』より

 『Memories』『Dear Moon』とも、自主映画時代から今関監督と親交があり『グリーン・レクイエム』(1988年)で今関監督とタッグを組んでいる脚本家・小林弘利さんが脚本を担当し、2002年の『十七歳』以降すべての今関監督の長編作品の脚本を手掛けているいしかわ彰さんが演出補として参加。
 『Dear Moon』では『海辺の映画館 キネマの玉手箱』(2019年)など大林宣彦監督の近作で撮影を担当してきたカメラマンの三本木久城さんが撮影と編集をつとめています。

 混迷の時代に今関あきよし監督が送るショートフィルムの可能性に注目です。

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Memories

  • ポール・ラザー(Paul Lazar) モトーラ世理奈 鈴木聖奈 石綿日向子

  • 監督:今関あきよし
  • 企画・製作:龍信之介/嶋田豪
  • 脚本:小林弘利
  • 音楽監督・作曲・アレンジ:ポール・ラザー(Paul Lazar)
  • 撮影:吉田良介
  • 編集:鈴木理
  • 制作:太田則子
  • 小道具・衣装・メイク:Yocco
  • 演出補:いしかわ彰/柳ひろみ
  • タイトル:Uta Mizuno
  • 美術協力:株式会社Sunny Rain/シャモニー
  • 撮影協力:吉澤章裕/佐野フィルムコミッション/佐野市役所/ラッキー弁当/作原野外活動施設
  • 製作・配給:アイエス・フィールド

  • 2019年/日本/モノクロ(一部カラー)/ビスタサイズ/2chステレオ/36分
  • ©2019『Memories』製作委員会

2021年9月18日(土)より下北沢トリウッドにて1週間限定公開

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Dear Moon

  • 石井そら 祈覆 原田親 長田涼子 村松和輝 久保宏貴 岡村洋一

  • 原案・監督:今関あきよし
  • 脚本:小林弘利
  • 撮影・編集:三本木久城
  • 演出補:いしかわ彰
  • 音楽:skymarines and similarobjects「Dear Moon」/VJyou and Rina Kohmoto「Ice Calling」/柳ひろみ「dot」
  • サントラ:宮﨑道
  • 音響効果:丹雄三
  • タイトルバックアニメーション:中村綾花
  • 字幕翻訳制作会社:スプラウト
  • 劇中フライヤーデザイン:洸美 -hiromi-
  • チラシイラスト:小半みるく
  • 協力:喫茶マリン/ロケフィット/杉山亮一

  • 2020年/日本/カラー/ビスタサイズ/2chステレオ/40分
  • ©DearMoon2020

2021年9月18日(土)より下北沢トリウッドにて1週間限定公開

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