日本映画専門情報サイト:fjmovie.com

fjmovie.comトップページニュース一覧>新鋭・瀬浪歌央監督が「存在」と「滅びゆく文化」を描く初長編『雨の方舟』7月30日公開

新鋭・瀬浪歌央監督が「存在」と「滅びゆく文化」を描く初長編『雨の方舟』7月30日公開

 京都造形芸術大学出身の瀬浪歌央監督の初長編作品『雨の方舟』が7月30日より池袋シネマ・ロサで公開されることが決定し、場面写真と予告編、著名な俳優・監督による応援コメントなどが解禁されました。

記事写真

『雨の方舟』より

 瀬浪歌央(せなみ・かお)監督は京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映画学科制作コースで学び、在学中に短編『パンにジャムをぬること』を初監督し、同作はGYEONGGI FILM SCHOOL FESTIVAL 2019AsianStudentFilmsや第2回東京ろう国際映画祭公募部門に選出されるなど、国内外の映画祭で上映されました。

 初長編監督作となる『雨の方舟』は、京都造形芸術大学2019年度卒業制作作品として制作された作品で、森をさまよい4人の男女が暮らす家へとたどり着いた主人公・塔子が、彼らと生活をともにする中で不思議な出来事が起こりはじめるというストーリー。
 瀬浪監督の祖母の実家がある岡山が舞台となっており、瀬浪監督の“訪れる度に人は減り、景色が変わり、次第に朽ちていくその場所を残したい”という想いが込められた、「存在」と「滅びゆく文化」を描いた幻想的現代劇となっています。

記事写真

『雨の方舟』より

 主人公の塔子を演じるのは『浜辺のゲーム』(2019年/夏都愛未監督)やMOOSIC LAB 2018上映作品『リビングファミリー』(2018年/矢部凜監督)『明けない夜とリバーサイド』(2021年/夏衣麻彩子監督) に出演する大塚菜々穂さん。
 京都造形芸術大学映画学科俳優コース出身の大塚さんは瀬浪監督の前作『パンにジャムをぬること』でも主演をつとめており、本作『雨の方舟』ではプロデューサーを兼任しています。

 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020国内コンペティション長編部門にノミネートされワールドプレミア上映されて以来、待ち望まれてきた劇場公開決定にあたり、瀬浪監督と大塚さんは、次のようにコメントしています。

『雨の方舟』瀬浪歌央監督コメント

今の私に言えることは、人は絶対を兼ね備えた、滅びゆく文化であるということです。気づくことと気づかないこと。この映画を制作していて、ふっと、どちらが幸せなのかと考えることが多くなりました。気づかない方が幸せなのではないかと。けれど私は、気づかない人間には到底なれないのです。みなさんにも、そんな答えのないことを一度考えてみていただけたらと思います。大切なモノ。今しか見られないモノ。私たちだから映せたものを確かに感じていただける作品です。是非、観てください。

『雨の方舟』主演・プロデューサー:大塚菜々穂さんコメント

この映画が完成してすぐ、世界は今まで通りではなくなり、当たり前にできていたことが出来なくなりました。でも明日はやってくるし、生きていかなければいけない。じゃあ"私"はどう生きていくのかそんな事を考えさせられる作品です。いつかはなくなってしまう景色や言葉、人が映っています。
瀬浪歌央初長編監督作品『雨の方舟』をどうぞよろしくお願いいたします。

 そして劇場公開に向けた予告編も解禁。予告編は主人公・塔子と4人の男女の出会いや暮らしが、緑豊かな風景の中で描かれていきます。

【『雨の方舟』予告編】

 また、ジャンルを問わず幅広い作品に出演する俳優・井浦新さん、数々の映画賞に輝き『死刑に至る病』『渇水』(2022年)など新作公開が続く白石和彌監督、近年も過去作のリバイバル上映がおこなわれている『火星のカノン』(2001年)『せかいのおわり』(2004年)などの風間志織監督、自然と人間を描くことに定評があり『リング・ワンダリング』(2021年)が全国上映中の金子雅和監督の4人が、作品へ応援コメントを寄せています。

俳優:井浦新さんコメント

かつて人を乗せ走っていたバスは廃車になり、農作業をしなくなった畑や田んぼは雑草が生え野原へと、人の住まなくなった家は朽ちゆき、勢いの盛んだった人もいつかは衰え居なくなってゆく。諸行無常はこの村にだけ起きていることではなく全ての理。けれど、無かったことにしたくない!そんな祈りのような瀬浪監督の情熱こそが、作品が携えている神秘性の根源のように感じました。
ふたつの太陽から西陽が射し込む不思議な村に迷い込んだ塔子の記憶には、出逢った人々や経験し学んだこと、食卓を囲み食べたご飯の味がずっと在り続ける。いつかきっと誰かへ伝わり、そうやって人々の記憶の中に存在し続ける。あのふたつの太陽の内のひとつは、希望の光であってほしいと願わずにはいられない。

映画監督:白石和彌さんコメント

静かに流れる時間の中で、失われてゆく風景や人々の残像が心を掻き乱す。瀬浪監督の視線は時に残酷だが、時にとてつもなく優しい。その眼力の強さが心地よい緊張感と深い余韻を作品にもたらしている。是非、多くの人に見てもらいたい作品だ。瀬浪監督が次に何を映画として切り撮るのかも、とても気になってしまう。次も、すぐに!

映画監督:風間志織さんコメント

最近の世の中の表現ってやつが均質化して妙にマジメで堅苦しくなっているなと感じる。其処へ行くと瀬浪歌央監督の『雨の方舟』はイマドキかなりヘンテコな映画だ。社会から忘れ去られたような日本の山村に暮らす若者達のところに転がり込んだ家出少女。しかし彼女や彼らについての説明は一切無い。瀬浪は、今時ならば新興宗教的疑似家族ホラーになり得る物語りを敢えて拒否し、ひたすら懐かしいと惑わされるような古き良きニッポンの壊れた山村に現代の若者達をただそこに揺蕩うように存在させる。狂言回しでもある家出少女役を演じる大塚菜々穂の眼差しが、この映画のヘンテコさをより強靱にする。彼女の視線はまるで3歳児のそれのようにひたすら真っ直ぐで、猜疑心や反発、好奇心を内包し、こちらを見つめ返す。もはや言葉は虚しい。彼女の異様に真っ直ぐな眼差しはどこへ向かうのか?きっとその方向は監督と共有しているのだろう。坦々として過激。この映画の堂々としたヘンテコさは、瀬浪がこれからも映画を撮ってゆく表現者としての重要な武器となるだろう。彼女の次回作がどこへ向かうのか楽しみにしている。

映画監督:金子雅和さんコメント

植林された自然の中、若者たちは常に不安を抱えているように見える。それは大いなる生態系から切り離されてしまった現代人の、無意識の哀しみを表しているのかも知れない。
目に見えぬ「言霊」を描こうと、僅かな月の光を頼りに暗闇の中へ手を伸ばすような本作のリリシズムは、水面を漂う女性のイメージと重なり、ビル・エヴァンス「アンダーカレント」を想起した。
月と海、潮の満ち引き。つまりは一人の女性が、失われた内なる自然=身体性を取り戻す物語なのだ。
記事写真
記事写真
記事写真
記事写真
記事写真
記事写真

『雨の方舟』より

 多くの映画人からの期待を集める新鋭・瀬浪監督が、懐かしい風景の中で深遠なテーマを描いていく『雨の方舟』は、7月30日土曜日より8月12日金曜日まで2週間にわたり池袋シネマ・ロサにてレイトショー上映。6月4日より前売り鑑賞券がシネマ・ロサ窓口で1枚税込1300円で販売されています(※当日一般1500円)。

記事写真

『雨の方舟』より

『雨の方舟』ストーリー

「君は、自分がいなくなった世界を想像したことがある?」

降りしきる雨の中、森で彷徨った塔子は、4人の男女が暮らす家で目を覚ます。
しかし、彼らは何かが不自然だった。
野外にあるドラム缶、風呂の炊き方や、渓流での洗濯などを学ぶ中で、どこからか食物を調達し、自給自足の生活をしている彼らとの暮らしにも馴染んでいく塔子だった。
しかし、そんな時、不思議なことが起こり始める。
ポスター

雨の方舟

  • 大塚菜々穂 松㟢翔平 川島千京 上原優人 池田きくの 中田茉奈実

  • 監督・編集:瀬浪歌央
  • 撮影・照明:藤野昭輝
  • 録音:植原美月/大森円華
  • 脚本:松本笑佳
  • 助監督:東祐作/中田侑杏
  • 美術:村山侑紀奈/中原怜瑠
  • 衣装:柴田隼希/瀬戸さくら/大谷彪祐
  • 音楽:瀬浪歌央/近藤晴香
  • タイトル・フライヤーデザイン:山岡奈々海
  • プロデューサー:大塚菜々穂
  • 製作:2019年度京都造形芸術大学映画学科卒業制昨瀬浪組

  • 2020年/DCP/16:9/5.1ch/70分

2022年7月30日(土)より8月12日(金)まで 池袋シネマ・ロサにて2週間レイトショー

スポンサーリンク