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美術部員たちの青春ストーリー『ミューズは溺れない』3月18日よりポレポレ東中野で東京単独公開

 昨年東京で1週間上映され好評を博し各地での上映が続いている青春ストーリー『ミューズは溺れない』が3月18日よりポレポレ東中野での東京単独公開が決定し、公開に向けた淺雄望監督のコメントやマンガ家・大童澄瞳さんらの応援コメントが公開されました。

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『ミューズは溺れない』より。上原実矩さん演じる主人公・木崎朔子(左)と若杉凩さん演じる西原光

 助監督としてさまざまな作品に携わりつつ自主制作で監督作を発表してきた淺雄望監督の初長編となる『ミューズは溺れない』は、美術部員の高校生・木崎朔子が主人公。朔子と、朔子をモデルに絵を描いた女子美術部員・西原(さいばら)のふたりを中心に、クラスメイトとの関係や家庭環境の変化、将来への不安に戸惑いながら『創作する」ことにエネルギーをぶつける10代の姿が描かれていきます。
 主人公の朔子を『この街と私』(2019年/永井和男監督)で主演をつとめた上原実矩(うえはら・みく)さんが演じるのをはじめ、美術部員の西原光役には『ジオラマボーイ・パノラマガール』(2020年/瀬田なつき監督)などの若杉凩(わかすぎ・こがらし)さん、朔子の親友の大谷栄美役には主演作『わたしの見ている世界が全て』(2022年/佐近圭太郎監督)公開も控える森田想さんと、注目の若手女優が共演。さらに、朔子の父親・拓朗役には川瀬陽太さん、拓朗の再婚相手・聡美役には広澤草さんと、実力派が脇を固めています。

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『ミューズは溺れない』より。上原実矩さん演じる木崎朔子(中央)と若杉凩さん演じる西原光(左)、森田想さん演じる大谷栄美

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『ミューズは溺れない』より。川瀬陽太さん演じる木崎拓朗(左)と、広澤草さん演じる木崎聡美

 2019年に撮影を開始し、新型コロナウイルス感染症流行による中断をはさみつつ2年がかりで完成した『ミューズは溺れない』は、2021年に新人監督の登竜門的な映画祭である第22回TAMA NEW WAVEと第15回田辺・弁慶映画祭の双方でグランプリを受賞。さらにTAMA NEW WAVEではベスト女優賞、田辺・弁慶映画祭では観客賞と俳優賞など、ふたつの映画祭で計6冠に輝きました。
 2022年には東京・テアトル新宿で開催された田辺・弁慶映画祭入選作品を上映する特集上映「田辺・弁慶映画祭セレクション」内で1週間にわたり一般上映され、満席回も含む盛況を記録、その後は淺雄監督の自主配給のかたちで大阪・名古屋ほか各地で単独公開が続いてきました。
 各地での好評を受けて東京での再上映を望む声が高まる中、3月18日土曜日よりポレポレ東中野にて東京単独上映が決定しました。

 東京単独公開に向け、アニメ化・実写映像化もされた人気作「映像研には手を出すな!」で知られるマンガ家の大童澄瞳(おおわら・すみと)さん、演出家・前橋文学館館長の萩原朔美さん、映画監督・脚本家・俳優の佐藤佐吉さんが新たに応援コメントを寄せ、淺雄監督も東京単独公開に向けた心境をコメントしています。

漫画家:大童澄瞳さんコメント

西原は多くをストレートに言う一方、木崎はあまり上手くものを言えないタイプ。しかし実は木崎は西原に対してだけは嫉妬心など本来隠したくなる感情も素直に吐露する様子が描かれ、この潜在的な相性の良さがあるコンビ像が気に入った。

人を注意深く観察し、物事をはっきりさせる事で関係を確かなものにしようとする割に不安定な大谷など、パーソナリティを描き分ける力に秀でた作家だなと思った。

人間は個体ごとに他者の仮想的な人格を内部に宿す事で、お互いを意思を持った人間であると認知し生きている。

しかしそれ故に人は自分自身ではなく他人の中にある印象を気にし、自我を他者に委託して生きてしまう事がある。

人間が人間になるには、他者ではなく自己の中に見つけた自我を他者と突き合わせ確固たる自己同一性を獲得しなければならないが、多くの人は何となくで大人になるものだ。

芸術や恋愛の中で幸運にも自己同一性の獲得を経験する少年少女の姿を希望的に描いた本作が、人生の目的や自分が何者であるのかについて考えそびれた人間のもとへ届くことを願う。

前橋文学館館長:萩原朔美さんコメント

旅に出よう。そう思った時に、心の中に清々しい風が湧き上がる。あの風が、「ミューズは溺れない」を観終った人々の背中に沸き起こるだろう。その風の優しさ。今映画に必要なのは、こういう物語だ。最後に登場する魅力的な巨大なオブジェが、創造する事は他人を救い自分をも救ってくれる。そう言っていた。私も何か巨大なものを作りたくなった。

映画家督・脚本家・俳優:佐藤佐吉さんコメント

ふたりの少女が互いを見つめるその真っ直ぐな視線が結果的に我々観客に突き刺さる。あなたはあなたなの?そう問われているようで震えてしまうのは恐怖なのか?いや恐らくまなざしのエクスタシー。でも最後は涙で震えてた。

『ミューズは溺れない』監督・脚本・編集:淺雄望監督コメント

揺らいでいてもいいよ、と言ってもらえて、不安定で歪な自分を許せたように思う。

正しくなくてもいい。足りないままでもいい。自分らしさなんてものはわからないけど、確かに自分を前に向かせてくれた言葉は知っている。その、決して万能ではない言葉たちで、この映画はできている。

あの夏の海で、もがきながら踏み出した一歩が思いがけず爽やかで、彼女たちの方舟に、私もつい手を添えたくなったんだった。

この歪な映画が誰かに辿り着くよう願いを込めて。出会ってくれた誰かに、私はまた救われるんだと思います。
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『ミューズは溺れない』より

 思春期の創作への衝動を爽やかなタッチで描く『ミューズは溺れない』は、3月18日土曜日よりポレポレ東中野にて公開。その後も4月15日土曜日より兵庫県の元町映画館での公開も決定しており、ほか全国順次公開予定となっています。

【『ミューズは溺れない』予告編】

『ミューズは溺れない』あらすじ

美術部に所属する高校生の朔子は、船のスケッチに苦戦している最中に誤って海に転落。それを目撃した西原が「溺れる朔子」の絵を描いて絵画コンクールで受賞、絵は学校に飾られるハメに。悔しさから絵の道を諦めた朔子は、代わりに新たな創作に挑戦しようとするが、西原から「次回作のモデル」を頼まれてしまい・・・。
アイデンティティのゆらぎ、創作をめぐるもがきなど、葛藤を抱えながらも前進しようとする高校生たちのひと夏を瑞々しく鮮烈に描き切った青春エンタテインメント。
ポスター

ミューズは溺れない

  • 上原実矩
    若杉凩 森田想 渚まな美 桐島コルグ 佐久間祥朗 奥田智美 新海ひろ子 菊池正和 河野孝則 川瀬陽太 広澤草

  • 監督・脚本・編集:淺雄望
  • 撮影監督:大沢佳子(J.S.C)
  • 制作担当・スケジュール:半田雅也
  • 照明:松隅信一
  • 美術:栗田志穂
  • ヘアメイク:佐々木ゆう
  • 監督助手:吉田かれん
  • 撮影助手:岡田拓也
  • 録音:川口陽一
  • 整音:小宮元、森史夏
  • カラリスト:稲川実希
  • スチール:内藤裕子
  • 音楽:古屋沙樹
  • 音楽プロデューサー:菊地智敦
  • 油絵:大柳三千絵/在家真希子
  • 企画・制作・プロデュース:カブフィルム
  • 配給宣伝:カブフィルム

  • 2021年/カラー/16:9/82分

2023年3月18日(土)よりポレポレ東中野にて公開 ほか全国順次公開

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