舞台あいさつをおこなった五十嵐諒さん、米良まさひろさん、斎藤友香莉(さいとう・ゆかり)さん、堀内友貴(ほりうち・ゆうき)監督、塚田愛実(つかだ・あみ)さん、花純あやの(かすみ・あやの)さん(左より)。米良さんの手には劇中に登場する「あるもの」が
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第24回TAMA NEW WAVEで上映され審査員特別賞に輝いたコメディ『お祭りの日』が11月2日に東京・渋谷のユーロスペースで初日を迎え、米良まさひろさん、斎藤友香莉さんら出演者と堀内友貴監督が舞台あいさつをおこないました。
『お祭りの日』は、国内の映画祭で5冠に輝いた初長編『明ける夜に』(2023年)で“会話劇の新たな旗手”として注目を集めた堀内友貴監督による、夏の1日を舞台にした群像劇。
喫茶店でヒロイン候補の女性に出演依頼する自主映画監督の男、バスの来ないバス停で待つ人たち、自分で花火を打ち上げようとする男とその彼女、失くしたエアコンのリモコンを探す女子ふたり、喫茶店でバイト中の女子と、お祭りの日に祭りに行かない人々の姿が、交錯していく5本の短編オムニバス形式で描かれていきます。
本作は、堀内監督と出演者の米良まさひろさんが主宰をつとめる劇団・セビロデクンフーズによる映像作品として制作されたもので、撮影がおこなわれたのは劇団が旗揚げされた2022年の夏。
堀内監督は、劇団を旗揚げして間もない時期に「劇団として映画も撮りたい」というところから映画の企画が始まり、もともとあたためていた断片的なアイディアを「ひとつの長編として作るにはどうしたらいいかなと」と考え「ジム・ジャームッシュの『ミステリー・トレイン』(1989年・米)みたいに、オムニバス形式で1日を描いたら面白いものが作れるんじゃないかなというところから始まりました」と、制作の経緯を語りました。
セビロデクンフーズの劇団員で、バス停にいる男を演じた五十嵐諒さんは「初めて自分がいるチームで作るっていう、演者として参加するだけじゃない緊張感とか責任感みたいなのが乗っかっていたので、脚本を読んだときには“ほんとに作れるかな?”みたいな不安があったのをすごく覚えています」と振り返りました。
同じくセビロデクンフーズの劇団員でリモコンを探す女性・西野詩織を演じた花純あやのさんは、劇団での映画作りにあたり「行くぞ! 作るぞ! という感じ」がありつつ、脚本を初めて読んだときは「力が抜けた感じというか(笑)」と笑い「みなさんも、観ていただくときにあまり身構えせず“今日のんびりしようかな”みたいな気持ちで観てもらえたらいいなみたいな感覚でした」とコメント。
劇団主宰の米良まさひろさんは、喫茶店で自主映画の出演依頼をする男・横岡清を演じたのに加え、堀内監督とともに制作段階から作品に携わって一部のパートでは脚本協力と演出も担当しており「すっごい悩んだことだけは覚えています。(堀内監督と)ふたりして“どうしたらいいんだろう、これ?”みたいな感じの時間をずっと過ごしていたことだけは覚えていて、ドトールで3時間くらい一言も喋らずに白目を剥いていた時間だけは覚えています」と、映画制作の苦労をユーモアを交えて語り、客席の笑いを誘いました。
劇団外からの出演で、喫茶店でバイトする女性・高野美紀を演じた斎藤友香莉さんは、脚本を読んだときの印象を「メチャクチャ面白くて、電車の中で夢中になって読んで、読んでいるときに脚が攣るくらい(笑)」と振り返るとともに、脚本が「演劇的」だと感じたと述べ「特に、私と米良さんが出演している部分は演劇的だなって思いながら楽しんで読んでいて、実際参加したらとっても楽しくて、参加させていただいてありがとうございました」とコメント。
やはり劇団外からの参加で、親友とともにリモコンを探す藤井理央を演じた塚田愛美さんは、親友役の花純あやのさんを撮影前に紹介されて打ち解けてからの撮影だったのに加え、役の設定が塚田さん自身と同じ広島出身でセリフも広島弁だったため「いい意味で気を張らずに撮影できて、和やかな雰囲気で、すごく楽しかったです」と、撮影の感想を述べました。
トーク中の堀内友貴監督、米良まさひろさん、斎藤友香莉さん。トーク中に米良さんが手にしたものを落としてしまうという、映画を観ているとヒヤリとする場面も
最後に堀内監督は「もともとの出発点として、劇場公開しようとかはあまり考えずに、作りたいものがあって“作るのが面白いから作りたいね”というところから始まったのが、いろいろな人の手を借りて、このユーロスペースで劇場公開できたのがすごく嬉しくて、ぼくたちは当時もいまも“こういうのが面白いんだよな”とか“映画ってこういうところが好きなんだよな”みたいなのを思いながら作ったので、観てもらった人にそこが届いて、ここから広まっていけたらいいなというふうに思っています」と話して舞台あいさつを締めくくりました。
舞台あいさつ登壇者のほか、声優としても活躍する須藤叶希(すどう・かのこ)さんや、湯本充さん、中村悠人さん、岡田直樹さん、北林佑基さんらが出演し、登場人物たちが積み重ねる会話から日常にありそうでありながらどこかシュールで可笑しな光景が描かれていく『お祭りの日』は、11月2日土曜日より東京・渋谷のユーロスペースほか、全国順次公開されます。