PFFアワード2作連続入選の新鋭・石川泰地監督初の特集上映「一部屋、二人、三次元のその先」が5月3日より東京のテアトル新宿で1週間開催されるのを前に、ラップで作品が紹介されるユニークな特別予告編が解禁されました。
また、俳優の池松壮亮さんらが絶賛コメントを寄せています。
1995年生まれの石川泰地(いしかわ・たいち)監督は、早稲田大学在学中に映画監督の是枝裕和さんや映画研究者の土田環さんのもとで映画制作を学び、短編『巨人の惑星』(2021年)でPFFアワード2021入選、中編『じゃ、また。』でPFFアワード2023入選・映画ファン賞(ぴあニスト賞)受賞と、新人監督の登竜門である同アワード2作連続入選を果たしています。
このほど開催される初の特集上映「一部屋、二人、三次元のその先」では、PFFアワード入選作である『巨人の惑星』『じゃ、また。』の2作品を上映。
『巨人の惑星』は、大学時代の友人を訪ねた青年が、友人から夜の街を歩き回る「巨人」の存在を聞かさせる25分の短編。
『じゃ、また。』は、部屋に引きこもる青年とお盆休みに彼を訪ねてきた大学時代の映画仲間の他愛もない会話が不可思議な方向へと向かっていく50分強の中編。
2作品とも、ほぼアパートの一室のみで撮影され、出演者は石川監督自身と友人のふたりだけというミニマムな作品でありながら、登場人物のやりとりが観客を壮大な世界へといざなっていくという共通点を持っており、特集上映のタイトル「一部屋、二人、三次元のその先」は、2作の内容を象徴的に表したものとなっています。
特集上映開催に向け、すでに公開されている上映2作品それぞれの予告編に続き、新たに特別予告編が解禁されました。
特別予告編は石川監督自身の編集によるもので、2作品の劇伴とラップをリミックスした音楽に乗せて2作品の映像が映し出されていくユニークなもの。
ラップは2作品の出演者でありヒップホップユニット・次男BOYSのメンバー・cafuneとしても活動している国本太周さんによるもので、両作品の概要を紹介し特集上映のタイトルを意識したフレーズも織り込まれた本予告編のためのオリジナルで、耳に残るサウンドとなっています。
【『一部屋、二人、三次元のその先』特別予告編 Prod. by TaZ Lyrics by cafune 編集:石川泰地】
また、先に公開された石井裕也さん、石川慶さん、山川直人さんの3人の映画監督からの推薦コメントに加えて、特別予告編にも使われている新たな推薦コメントが公開されました。
今回コメントを寄せているのは、新作主演作『ぼくのお日さま』(2024年/奥山大史監督)公開も控える俳優の池松壮亮さん、公開の近づく『告白 コンフェッション』(2024年/山下敦弘監督)や『さよなら渓谷』(2013年/大森立嗣監督)などの脚本家・高田亮さん、大九明子監督の演出でドラマ化もされた「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」などの著書で知られる作家の岸田奈美さん。
池松さんは「もう一度、自主映画を信じたくなりました。」と、上映2作品の持つ力を言葉にしています。
俳優・池松壮亮さんコメント
前作「巨人の惑星」もPFFで拝見させて頂きました。
これまで数多くの自主映画を観てきましたが、
新作「じゃ、また。」には、人と人との間にある時間と経験の真実がそのまま映っていました。
もう一度、自主映画を信じてみたくなりました。
脚本家・高田亮さん『巨人の惑星』へのコメント
精神に異常をきたしてしまったかのように見える友人が、実は本当のことを言っているのではないかと、じわじわと迫っていく話の運びが、 ジャンル映画の段取りを踏みながら、『今』を受け入れられずに仕事を辞めている主人公が、常識の外側に突き抜ける瞬間の描写にも見せていて素晴らしい。
劇中にある紙を使った例えで、我々には見えていないが、実はある、ということは現実にも多くある。それが見えてしまったが最後、後戻りはできず、平和には暮らせない。
幻覚であろうが、リアルであろうが、それは関係ない。踏み越えてはならない一線があるのだ。
作家・岸田奈美さん『じゃ、また。』へのコメント
「ばかみたいって、思ってた?」
こんな言葉に、誰があんなにも、祈りを込めることができるんでしょう。半年以上が経った今でも、たまに、浮かび上がるかのように思い出します。
書いているうちに、また、彼らに会いたくなりました。
脚本家・高田亮さん『じゃ、また。』へのコメント
『花の都の真ん中で』東京暮らしに疲れた男が二人、ある最後の時間を過ごす。
何か納得がいかないことを探るように、別れを引き延ばすように、二人は『人生ゲーム』をやり、青春の足跡を辿るように未完成の映画の断片を再生しながら、生にも、死にも、意味などないと語り、現れては消え、また現れては消えていく自分たちの姿を眺める。
引き伸ばされた時間には、官能的な悲しみが漂い、いつまでも留まっていたくなるような誘惑がある。それこそが、石川監督作品の魅力なのかもしれない。
小さな部屋での会話が日常の価値観が揺らぐ大きな世界へつながっていくような、既存のジャンルを越えた2作品が上映される「一部屋、二人、三次元のその先」は、5月3日金曜日より9日木曜日まで、東京のテアトル新宿で1週間限定開催。上映作『じゃ、また。』にテアトル新宿で撮影されたカットもあり、ロケ地で作品を観るという体験ができる機会ともなっています。
また、開催期間中には監督・出演者による舞台あいさつやゲストを招いてのトークも開催予定。ゲストには、石川監督がスタッフとして参加した『アボカドの固さ』(2019年/城真也監督)の主演で連続テレビ小説「らんまん」「舞いあがれ!」出演でも話題の俳優・前原瑞樹さんらが登壇予定です。