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相馬雄太監督「心の復興まではまだまだ」とメッセージ 『僕のなかのブラウニー』初日舞台あいさつ

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舞台あいさつをおこなった田口淳之介さん、平野絢規(ひらの・あやき)さん、天海塁(あまみ・るい)さん、相馬雄太監督(左より)
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 震災復興という題材を子どもたちの姿を通して描く『僕のなかのブラウニー』が1月3日に東京の池袋シネマ・ロサで初日を迎え、主演をつとめた子役の平野絢規さんと共演の天海塁さん、田口淳之介さん、相馬雄太監督が舞台あいさつをおこないました。

 『僕のなかのブラウニー』は、震災で妹を失った小学5年生の少年・和樹が主人公。妹は妖精の「ブラウニー」に連れて行かれたのだと信じてブラウニーを探す和樹と、和樹を手伝う同級生たちや周囲の大人たちの姿を通して、心の傷を乗り越えていくことの意味が描かれていきます。

 上映は満席でのスタートとなり、主人公の和樹を演じた現在11歳の平野絢規さんは「こうやて満席になっている劇場を見て、胸がいっぱいになっています」とあいさつ。「ようやく公開日が来て、嬉しくもあってドキドキもあって」と話し「この映画を通して、震災のこととか、さまざまなことを考えるきっかけになったらなと思います」とコメントしました。

 これが商業監督デビューとなる相馬雄太監督は「感無量でございます。去年のもっと前から、この映画の計画をして、撮影をして、編集をして、映画館を探したり、配給会社と話をしたり、すごく長い年月をかけてここまで来たので、ほんとにこの瞬間を迎えられて嬉しいです」と、和樹の同級生・雅人を演じた天海塁さんは「みんなで撮影して、やっとみなさんに観てもらえる日が来て、とても嬉しいです」と、和樹の同級生の親族・和泉大輔を演じた田口淳之介さんは「ぼく自身としては20年以上ぶりの映画の出演ということもありまして、このタイミングで素晴らしい作品に携われたことがまず嬉しいのと、いまコロナが落ち着いて、いろいろ考える時間が増えてきたと思う中で、震災というものを風化させないような、ファンタジーな部分があって心あたたまる作品になっていると思うので、たくさんの方にご覧いただきたいと思います」と、それぞれ初日を迎えた心境を述べました。

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主人公の少年・森本和樹を演じた平野絢規さん

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和樹の同級生・小野原雅人を演じた天海塁さん

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和樹の同級生の家族・和泉大輔役の田口淳之介さん

 脚本を初めて読んだときの印象を質問されると、平野さんは和樹の気持ちを考えると辛かった一方で「周りの人たちが寄り添って和樹が少しずつ前に進めているのがよくわかったので、それがよかったなと思っています」と回答。

 同じ質問に天海さんは、演じた雅人があまり話さない役のため「台本上“……”が多く、表情での演技が重要な人物だと思いました」と答え、この答えには映画を鑑賞し終えた観客の方々から笑いが。

 田口さんは、大輔が翻訳家という設定なこともあり「言葉遣いの綺麗さだったり繊細さだったり」を意識し、脚本の三浦有為子さんが書いたセリフの「一個一個をしっかり伝えようと」思ったと答えました。

 今回のキャスティングはすべて相馬監督自身が決めたとのことで、相馬監督は「平野絢規くんは、一瞬で役作りに入る時間の速さ」「天海塁くんは、目で訴えかける、目線というか作り方がとっても上手だなと思ったので」と、それぞれのキャスティングの決め手となった部分を説明。
 さらに相馬監督は、自身が数年前に軽度のパニック障害を発症してあまり食事のできない時期があったと明かし、そのときに田口さん出演のテレビドラマ「リーガル・ハイ」をDVDで観て「田口さんが蘭丸という役で出演されていて、その蘭丸というキャラクターが、すっごくおいしそうにご飯を食べるんですよ。それを観ていたら、こっちまで食欲が湧いてきて」と回想。「それ以来、田口さんの演技って、人を元気にする、幸せにする力があるなと思って、商業を撮るときは絶対に田口さんをキャスティングしたいとずっと思っていて、田口さんにお願いしました」と、田口さんの出演が念願であったことを明かしました。

 その監督の告白に田口さんは「それは知らなかったです。嬉しいです」と話し、相馬監督からのオファーを受けたときを「ぼくも子どものころに子ども映画を観て、感動して心に残る作品になっているので、オファーがあったときに、ここはぜひよろしくお願いしますというかたちで受けさせていただきました」と振り返りました。

 また相馬監督は、田口さんに「スナフキンのような感じで」演じてほしいと頼んでいたと、アニメ「ムーミン」に登場するキャラクターの名前を出して話し「まさにその通りに演じてくれて」と、田口さんに感謝しました。

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『僕のなかのブラウニー』が初の商業作となる相馬雄太監督

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やや緊張の面持ちの平野絢規さん(右)と、笑顔でトークする田口淳之介さん

 年明け間もない時期の舞台あいさつとあって、登壇者それぞれに今年の抱負も質問されました。

 今年は『僕のなかのブラウニー』以外にも作品公開や新作の製作が控えているという相馬監督は「いままで以上に映画をがんばる年にしたいと思っていて」と、予定されている作品に加え、いま興味を持っているという埼玉のクルド人差別問題を題材に「構想を練って、今年中に1本作りたいなという想いがあって、そのときには田口さんに出ていただきたいです」と、抱負とともに田口さんへのラブコールも。

 天海さんは「4月から中学生になるので、勉強も部活もお仕事もたくさんできるように、いっぱいがんばっていきたいです」と、小学生らしい抱負を。

 平野さんは「いろいろなことに挑戦したいです。たとえば、演技だったらやったのことのない役をやりたいし、去年から始めたサッカーも上手になりたいです。4月から6年生になるので、小さな子からもお手本になるような人になりたいなと思っているので、いろいろなことに挑戦して成長できる1年にしたいなと思っています」と回答。

 田口さんは、平野さんの答えに「しっかりしてるねぇ。俺が小6のときはこんなじゃなかった(笑)。かめはめ波とか出ると思ってました、たぶん」とリアクションして客席の笑いを誘いつつ「2025年、いままでやってきたことをしっかり練り直して、来年40歳になるので、そこに向けてこの1年間を使って、こうやって映画も出演させていただくことができたので、映像もそうですし、舞台等もそうですし、みなさまの前に立てるように活動を続けていきたいなと思っています」と、俳優としての活動に意欲を見せました。

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トーク中の田口淳之介さん、平野絢規さん、天海塁さん、相馬雄太監督(左より)

 舞台あいさつは、登壇者ひとりひとりのあいさつで締めくくられました。

相馬雄太監督「この『僕のなかのブラウニー』は、脚本家の三浦有為子さんが東日本大震災をひとつのモデルとして作った脚本ではあったんですけど、この(撮影に向けた)脚本を一緒に作っているときに能登半島の震災が起きてしまいました。あれから1年が経ちましたが、いまこの瞬間にも、もちろん行政はがんばっていると思うんですけど、まだまだ復興されていない、そして町が復興したとしても、その町で暮らしている人たちの心の復興まではまだまだこれからじゃないかなと思っています。そういう意味でも、この映画が多くの人に届いてくれたらいいなと思います。今日はありがとうございました」

天海塁さん「もし、この『僕のなかのブラウニー』が気に入っていただけたら、家族やお友達にたくさん宣伝して、もしよかったらもう1回、もう3回、5回くらい観てほしいです」

平野絢規さん「本日はお越しいただいて本当にありがとうございます。初日で、みなさんに観ていただくのは初めてだったので、すごく緊張したんですけど、みなさんが温かい目で見守ってくれたらなと思います。そして、みなさんの応援や感想をいただけたら、ぼくもすごく嬉しくてがんばれるので、これからもお願いします」

田口淳之介さん「『僕のなかのブラウニー』、とても心あたたまる作品だと思います。観ていただいた方には、相馬監督、そして三浦先生が込めた想いというのが伝わると思います。この映画がはやるのを、ぼくたちはただ信じればいいと思います。なので、みなさんぜひたくさん宣伝していただいて、またぜひ、このスクリーンに観に来てほしいなと思います。ありがとうございます」

 『明日の記憶』(2005年/堤幸彦監督)で第30回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞するなど数々のヒット作・話題作を手がける脚本家の三浦有為子(みうら・ういこ)さんが東日本大震災をきっかけに考案した脚本を、「子どもと社会問題」を題材にした短編作品を送り出してきた相馬雄太監督がメガホンをとって映画化した『僕のなかのブラウニー』は、舞台あいさつ登壇者のほか、主人公・和樹の父親役のアキラ100%さん、和樹の同級生役の山本彩華さんと平野翔大さん、担任教師役の伊澤恵美子さんらが出演。1月3日金曜日より東京の池袋シネマ・ロサで公開されているほか、全国順次公開されます。

作品ポスター

僕のなかのブラウニー

  • 原作・脚本:三浦有為子
  • 監督:相馬雄太
  • 出演:平野絢規 アキラ100% 山本彩華 平野翔大 天海塁 田口淳之介 ほか

2025年1月3日(金)より 池袋シネマ・ロサ ほか全国順次 

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