舞台あいさつをおこなった撮影の池田啓将(いけだ・けいすけ)さん、小原澤遼典(こはらざわ・りょうすけ)さん、道川内蒼(みちかわうち・そう)監督、大畑優衣さん、監督補の大迫一平さん(左より)
※画像をクリックすると大きく表示します
制作から配給まで監督・キャストたちがおこなった完全自主作品の青春ストーリー『隣のサンズイ』が9月13日に東京の池袋シネマ・ロサで初日を迎え、主演もつとめた道川内蒼監督と共演の小原澤遼典さん、大畑優衣さん、監督補の大迫一平さん、撮影の池田啓将さんが舞台あいさつをおこないました。
『隣のサンズイ』は、俳優として活動してきた道川内蒼監督の初監督作で、幼なじみの親友・流(リュウ)、涼(リョウ)と流の恋人の菜奈の3人の若者の姿を通して、かけがえのない存在や支え合う存在を描いていく中編。はままつ映画祭2023大賞受賞など各地の映画祭での高評価を経て、撮影から3年を経て劇場公開を迎えました。
自ら主人公の流を演じた道川内監督の実体験をもとにした物語で、道川内監督は「“彼”に伝えたいことがある、“彼”の存在をぼくが叫びたかったという思いで作りました」と、実在の友人への思いが映画制作の動機になったと話し、友人をモデルにすることに「作っていいのか」という迷いもありつつ、周囲の方からの「蒼がやるなら」という言葉を得て「この作品が生まれました」と、声を詰まらせながら制作の背景を明かしました。
道川内監督は、脚本を書く作業も長かったため「理解を深められながらお芝居ができたかなと思っていて」と役づくりについて話すとともに「難しいなと感じたのは、監督という立場でお芝居をするというのが、当時のぼくの力量では及ばなかったので、そういうところは“ペイさん(大迫一平さん)、ぼく今日、余裕ないです”って言ってやったのを覚えています」と、俳優の先輩であり監督補として参加した大迫一平さんのサポートも受けながら監督と主演をつとめたと振り返りました。
涼を演じた小原澤遼典さんと菜奈を演じた大畑優衣さんは実際に道川内監督と8年ほどの付き合いがある友人でもあり、小原澤さんは「どれだけ一緒にいるかという“絆”が映っていたのかなあとか思って。それがあって流と涼という役につながっているのかなと思います」と、現実の関係が役作りに反映されたのではとコメント。
大畑さんも「実際の関係性も友達で、劇中でも恋人で、一番近くにいるのに一番遠いというのをリアルでも役の中でも感じていたというのはすごく覚えています。そこは重なるというか、役作りで躓くとかはあまりなく、リアルに感じていることを役にできたかなって思っています」と話し、また「“ここのセリフどうやって言ったらいいかな?”って聞くと、(道川内監督は)“大丈夫、信じてるから”って言ってくれるので、そこの信頼関係というのはあったのかなと思います」と、撮影中の監督とのやり取りを紹介しました。
トーク中の小原澤遼典さん、道川内蒼監督、大畑優衣さん(左より)
大畑さんは、ロケで深夜に南房総の海に行った際に「なんか暴走族の喧嘩が始まって、一平さんが“俺が行くから”って(笑)」という裏話を披露し、監督補として参加していた大迫一平さんは「なんか千葉と館山の闘いがあって。車の中から見たら“怖いな”って思ったんですけど、外に出てみたら案外みんな小っちゃったっていう(笑)。なので、これは行けるなってことで“いまだけライト消してください”って言いに行った覚えがあります」と、映画の内容からは想像もつかないような出来事があったことを明かし、道川内監督は「ペイさんめちゃめちゃカッコよかったです」。
撮影時には撮影監督を目指して勉強中だった撮影の池田啓将さんは「当時のぼくは、カメラを持ちはじめて間もないころだったので、目の前のことを全力で撮るというか、不器用ながらも挑んだ記憶があります」と撮影を回想。そして「今日、大学のときの友達とかも観に来てくださってて、道川内も大学のときに一緒で4年間過ごした仲なので、(大学入学から)10年くらい経つんですけど、観に来てくれる友達もいて、一緒に作品も作れてというところで、すごく幸せなことだなと思っております」と心境を語りました。
道川内監督は作品のおすすめポイントについて、終盤の花火のシーンで偶然によって意図していた以上の映像が映ったと話し「編集段階とかで観たときに、ほんとに神様からのプレゼントなんじゃないかなって思うくらい感動して、突き詰めてやったらそういったプレゼントがあるのかなって。それはすごく胸に残るところです。ぜひ観ていただきたいポイントです」と、映画を作る中で得た喜びを感じさせました。
舞台あいさつは、登壇者それぞれのコメントで締めくくられました。
池田啓将さん「ぼくは自主映画というのは初めてで、3年前の記憶なんですけど、すごい楽しかったというか、作っている自分が一番楽しかったという思いがあって、それプラス、観ていただける機会ができて、本当に幸せなことだと改めて思いましたし、また機会があれば作っていきたいと思いますので、よろしくお願いします」
大迫一平さん「3年前に撮ったものが、まさかシネマ・ロサで上映するなんで思っていなかったので、今日はとても幸せです。3人がカッコいいなと思っています。そして、こうやって劇場に足を運んでくださる方がいらっしゃるから、こうやってできるんだなと思うので、ほんとに感謝しています。あと2週間(上映が)あるので、なにか(感想を)書いていただけたら嬉しいなって思うので、#隣のサンズイ、今日チェックします(笑)。よろしくお願いします」
大畑優衣さん「たったひとりを思って作られたこの作品が、こんなにもたくさんの方に観てもらえて、ほんとに嬉しいです。ふたりといまここに立てていることもすごく嬉しいし、大迫さんだったり啓将さんだったりと過ごした時間ってほんとに宝物だったなって思います。この映画上映に向けて、シネマ・ロサさんでチラシを配らせてもらったり、ほかの映画のチームのみなさんと関わることもすごく楽しくて、やっぱり映画って好きだなって思いました。これからも精進していきたいと思います。ありがとうございました」
小原澤遼典さん「3年前に道川内の電話から始まったこの映画で、ぼくは道川内の“こいつを自慢したい、こいつの存在を知ってほしい”だとか、“こんな奴がいたんだ”ってことを映画にする、そこに迷いはあったと言ってたんですけど、ぼくももそれに乗らせていただいて、この3年間ずっとがんばってきたななんて思って、映画祭に行かせていただいたり、こうやって映画館で上映していただくってことは、ここに立っている大迫一平さんだとか、啓将だとか、エンドロールでたくさんの名前があったと思うんですけど、いろんな俳優部の方が協力していただいて“なんでも手伝うよ”って言ってもらって、事務所のマネージャーさんや、そういった方のおかげで、いまここに立てているんだなってことを 、心から感謝するとともにですね、これから2週間、がんばっていきたいと思うので、よろしくお願いします」
道川内蒼監督「『隣のサンズイ』、本当にたくさんの方に支えていただいて今日こうして劇場公開を迎えることができました。こうやって一緒に立ってくれている仲間もそうですし、今日ここに立っていない仲間がたくさんいます。そういった方たちのおかげで、今日こうして劇場公開を迎えることができてほんとに嬉しく思います。ぼくが彼に対してどうしても伝えたいことがあって、彼の存在をぼくが叫びたかったといった一心で、ただそれだけを握りしめて作りました。それを握りしめることが、観ていただいた方になにか届く可能性になるんじゃないかと作った作品です。改めて、一緒に作っていただいたみなさま、一緒に届けてくださったみなさま、ほんとにありがとうございます。この作品は、宣伝であったりとか配給であったりとかが入ってない完全自主映画となっていまして、観に来ていただいたみなさまのお声が作品を広げていく大きな力となります。観ていただいて作品が完成するんだなって今日改めて感じました。これからも『隣のサンズイ』よろしくお願いします。今日はほんとにありがとうございました」
道川内監督の思いが結実した『隣のサンズイ』は、9月13日土曜日より26日金曜日まで2週間にわたり東京の池袋シネマ・ロサで上映。上映期間中14日、17日、20日、23日、26日には、道川内監督と小原澤さん、大畑さんの3人とゲストによるトークイベントも開催されます。