舞台あいさつをおこなった監督・キャスト。後列左より、新井秀幸さん、池田光輝さん、小畑みなみさん、小野孝弘さん。前列左より知多良(ちた・りょう)監督、椋田涼さん
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知多良監督の初長編で各地の映画祭で高評価を得ている『ゴールド』が10月25日にポレポレ東中野で初日を迎え、主演の小畑みなみさんら出演者と知多監督が舞台あいさつをおこないました。
短編作品で高い評価を受けてきた知多良監督の初長編となる『ゴールド』は、偶然に出会い恋人同士となった男女の生活を軸に、誰もが体験するような人間関係での摩擦をリアルに描いた作品。福井映画祭16THでグランプリと長編部門観客賞をダブル受賞するなど各地の5つの映画祭で6つの賞を受賞し、完成から2年を経て劇場公開を迎えました。
初回の上映は満席でのスタートとなり、主人公の佐藤ミキを演じた小畑みなみさんは「公開までが結構長かったので、ついに公開だーって(笑)。やっとこの日が来たなって、数日前からお祭りの前みたいな気分で、ワクワクソワソワしていて、みなさんに“早く観たいよ”って言っていただいて、実際にたくさんの方に来ていただいたことが、本当に嬉しいし幸せです」と、初日を迎えた心境を語りました。
知多監督は「3、4年前に脚本を書いていたんですけど、当時SNSや身近な人で“男らしさ”や“女らしさ”ということで悩んでいる人がいたりとか、それとは別になにかを言うことで誰かを傷つけてしまうかもしれないと悩んでいる人がいたりということがあって、それで、悪気はないけれど言ったことが暴力になってしまうとか、パワハラと言われたりとか、いいことだと思って言ったことが武器のようになってしまったりとか、そういうことを盛り込んで映画にしたいなと」と、作品が生まれた動機を説明。
また、ミキの恋人であるもうひとりの主人公・弘樹が監督を投影してキャラクターと思われることがあるものの、実際には知多監督自身は登場人物の中では「20代は(ミキの職場の後輩の)山中で、30代はミキみたいだったという感じ」と明かしました。
上映後の舞台あいさつとあって、それぞれの役について深いトークが交わされ、ミキの職場のアルバイト・奥山進を演じた池田光輝さんは事前に監督とも相談し、奥山自身がさまざまなことを抱えつつもそれを「表現を絶対したくないというか」と考えていたとコメント。
ベンチャー企業の社長で弘樹にきつい言葉をかける東山幸人を演じた椋田涼さんは「悪意がなく言っちゃってるというふうにしようというイメージは持っていました」と話し、ミキの職場の上司・吉田を演じた新井秀幸さんは「(吉田は)そんなに厳しいことを言っている人には思えなくて、もしかしたらぼく自身が時代錯誤の象徴なのかも」と役を通して得た自身についての感想も。
女性の活躍を応援する人物・三澤を演じた小野孝弘さんについて知多監督は「(三澤の)ほんとにそう思って言っているのかな? という感じが小野さんに演じていただくとほんとにピッタリ」と話し、小野さんは「嘘っぽいってことですか(笑)」と笑い、客席の笑いも誘いました。
トーク中の知多良監督、新井秀幸さん、池田光輝さん、小畑みなみさん、小野孝弘さん、椋田涼さんと、舞台あいさつの進行役をつとめた『ゴールド』共同プロデューサーで映画監督の野本梢さん(左より)
舞台あいさつは、登壇者それぞれのメッセージで締めくくられました。
新井秀幸さん「やっぱり、こういう(舞台あいさつでの)話も、あと2時間くらいないと収拾がつきませんので(笑)、このテーマは複雑な事柄だなと感じました」
池田光輝さん「自分が演じた奥山という役は、話し出したらキリがないんですけど、言える人もいるし言えない人もいるし、この映画を観たあとに、誰かに寄り添ってくれたら嬉しいなと思います」
小野孝弘さん「映画のキャラクター各々に悩みとかもあるし、みなさんの中にもそれぞれ感じ方があったかと思います。これから、みなさんの生活の場においていろいろな悩みがあると思うんですけど、ひとつひとつ感じ取って、自分なりに発信とか、自分なりの心の拠り所を持って、一生懸命がんばっていきましょう」
椋田涼さん「この作品は、なにか日常のちょっとしたストレスの積み重ねみたいなものを丁寧に描いているなという気がしていて、この作品を観ていただくことで、ちょっとでもストレスが癒やされたり、共感したりすることができる作品だと思っているので、よろしければ、みなさまご紹介いただければと思います」
小畑みなみさん「私も久しぶりに今日『ゴールド』を観たんですけど、より客観的に観られて、エンドロールが流れているときに、いろいろなことがあるけど、大切な人をギュッと抱きしめたくなる映画だなと思いました。この『ゴールド』が、みなさんにとって、なにかのきっかけになってくれたら嬉しいです」
知多良監督「ほんとに小さな小さなスタッフと役者さんで撮った映画です。でも、商業映画にはできないような、ほんとに隣にいるような人だったり、いまの現実を描けたのかなと思うので、もしもみなさんが生活していて、なにか同じような感情になったりとか、そういうことがあったら、感想とかを教えていただけたらなと思います。この映画は『ゴールド』というんですけど、ちょうど脚本を書き始めたのがコロナの時期で、そのあたりに親しい人が亡くなったりとかがあって、映画の中でミキも言っているんですけど、人生が最後の終わりでバッドエンドだと嫌だなというところがあって『ゴールド』と付けたのがこの映画なんです。いろいろつらいシーンもあったと思うんですけど、最後のシーンを観ていただいたときに、苦いけどキラキラした輝きみたいなものが、ちょっとでも伝わったら嬉しいと思います」
ショート動画では味わえない120分の濃密な映画体験を観客に届ける『ゴールド』は、サトウヒロキさんが主人公の西弘樹を演じて小畑みなみさんとともにダブル主演をつとめているほか、幸田純佳さん、松木大輔さん、太志さん、藤村拓矢さん、関口蒼さんらが出演。
10月25日土曜日より東京のポレポレ東中野にて、11月29日土曜日より大阪のシアターセブンほか、愛知のシネマスコーレなどで順次公開され、ポレポレ東中野では初日以降も連日ゲストを招いたトークイベントが開催されます。