国内外から注目を集める金子雅和監督の新作『光る川』が3月22日に公開されるのを前に、待望の予告編が解禁。また、高木正勝さんによるオリジナル・サウンドトラックの発売も決定しました。
『アルビノの木』(2016年)『リング・ワンダリング』(2021年)など、人間と自然との関わりを見つめる独特な視点や圧倒的な映像美で国内外から高い評価を得ている金子雅和監督。
その新作『光る川』は、大きな川の上流にある山間の村を舞台に、高度経済成長の時代に集落に伝わる伝承を知る少年の行動と、伝承の中の里の娘と山の民の悲恋、ふたつの時代が交錯して描かれる物語。
作家・松田悠八さんが故郷を舞台に書いた「⻑良川 スタンドバイミー一九五〇」を原作に、長良川流域の伝承にインスパイアされた要素を加え、自然への畏怖や社会制度をふたつの時代を対比させながら描く作品となっています。
物語の根幹を支える存在で、伝承の悲恋の主である里の娘・お葉を演じるのは、Netflixドラマ「シティハンター」(2024年)で注目を集め、出演作『悪鬼のウイルス』(2024年/松野友喜人監督)も話題の華村あすかさん。
お葉の恋の相手である山の民・朔役には、連続テレビ小説「舞いあがれ!」(2022年)などの葵揚(あおい・よう)さん。
伝承を知り、娘の魂を哀しみから解き放とうとする少年・ユウチャと、お葉の弟・枝郎を、2015年生まれながらすでに多くの出演経験を持つ有山実俊(ありやま・さねとし)さんが一人二役で演じています。
解禁された予告編は、お葉が口ずさむ旋律で幕を開け、お葉と朔の出会いから、恋が認められない中でお葉が漏らす想い、もうひとつの時代での少年・ユウチャの無垢な想いなどが、流れる川や森などの美しい風景とともに映し出され、わずか1分半の映像ながら、山田達也さんの撮影による自然の脈動を感じさせるような映像美を堪能することができます。
そして、お葉と朔、ユウチャに加え、安田顕さんが演じるお葉の父・常吉、渡辺哲さんが演じる木地屋の長・松、足立智充さんが演じるユウチャの父・ハルオ、根岸季衣さんが演じるユウチャの祖母、山田キヌヲさんが演じるユウチャの母・アユミ、堀部圭亮さんが演じる紙芝居屋と、それぞれの登場人物が見せる表情も印象的です。
予告編でもその一部を聴くことができる音楽は、細田守監督作品や『静かな雨』(2020年/中川龍太郎監督)『違国日記』(2024年/瀬田なつき監督)など多くの映像作品の音楽を手がけ、金子監督作品には初参加となる音楽家・高木正勝さんによるもの。
ときに神秘的に、ときに優しく、金子監督作品に新たな彩りを加えている音楽が、オリジナル・サウンドトラックとして、映画公開と同じ3月22日に配信限定で発売予定。公開と同時に音楽でも作品の世界を楽しめるようになっています。
また、すでに昨年11月にスペインで開催された第62回ヒホン国際映画祭(Gijon International Film Festival)Retueyosコンペティションに出品されユース審査員最優秀長編映画賞を受賞しているのに続き、新たに国内外のふたつの映画祭へのノミネートも発表されています。
ひとつは、シッチェス・カタロニア国際映画祭、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭とともに「世界三大ファンタスティック映画祭」と称され、今回で第45回を迎えるポルト国際映画祭(Festival Internacional de Cinema do Porto 2月28日~3月9日開催)。
『光る川』は、同映画祭のメイン部門であるファンタジー映画コンペティション部門にノミネート。日本映画では『あのコはだぁれ?』(2024年/清水崇監督)『THE KILER GOLDFISH』(2024年/堤幸彦監督)『ゴーストキラー』(2024年/園村健介監督)『ドールハウス』(2025年/矢口史靖監督)が同部門にノミネートしており、『光る川』は3月3日と5日に上映されます。
もうひとつは“「Cinema at Sea」太平洋、海のまなざし、海を知る”をテーマに2023年に初開催され、今回で第2回となるCinema at Sea - 沖縄環太平洋国際映画祭(2月22日~3月2日開催)。
『光る川』は、同映画祭のメインコンペで太平洋諸島の独特なストーリーや国際的な映画作家の作品が選出されるコンペティション長編部門に日本映画では唯一選出されており、2月23日と28日に上映。23日には金子監督ほかによる舞台あいさつとティーチインが予定されています。
『光る川』場面写真。有山実俊さんが演じる少年・ユウチャ
予告編解禁、映画祭出品によりさらに期待の高まる『光る川』は、3月22日土曜日より、東京・渋谷のユーロスペースほか、全国順次公開されます。
『光る川』ストーリー
大きな川の上流、山間の集落で暮らす少年ユウチャ。父は林業に従事し、母は病に臥せっていて、老いた祖母と暮らしている。まだ自然豊かな土地ではあるが、森林伐採の影響もあるのか、家族は年々深刻化していく台風による洪水の被害に脅かされている。
夏休みの終わり、集落に紙芝居屋がやってきて子どもたちを集める。その演目は、土地にずっと伝わる里の娘・お葉と山の民である木地屋の青年・朔の悲恋。叶わぬ想いに打ちひしがれたお葉は山奥の淵に入水、それからというもの彼女の涙が溢れかえるように数十年に一度、恐ろしい洪水が起きるという。紙芝居の物語との不思議なシンクロを体験したユウチャは、現実でも家族を脅かす洪水を防ぎ、さらには哀しみに囚われたままのお葉の魂を解放したいと願い、古くからの言い伝えに従って川をさかのぼり、山奥の淵へ向かう・・・