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柴口勲監督と中高生が生み出した『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』8月シネマ・ロサで最終上映

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『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』最終上映チラシ(※クリックで拡大します。裏面はこちら

 2017年の劇場公開以来、繰り返し再上映されてきた柴口勲監督と中高生によるミュージカル映画『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』が、池袋シネマ・ロサで8月9日より1週間にわたり「最後の劇場上映」されることが発表されました。最終上映に向け、俳優・歌手の酒井法子さんや『侍タイムスリッパー』の監督・安田淳一さんら、多くの著名人が応援コメントを寄せています。

 『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』は、高校生1年生の少女・カンナが、夏休みの学校でミュージカル部の練習を見学する日々を送る中で、かつて学校や街を襲った戦争の記憶に触れていく、平和への願いと祈りを込めたミュージカル形式のファンタジー作品。
 山口県下関市でサラリーマンとして働きながら自主映画を制作していた柴口勲監督と、同市の伝統校・梅光学院中学校・高等学校の生徒約40人により、終戦から70年の2015年にワークショップを経て制作されました。

 撮影や録音、劇中歌の作曲やダンス振り付けなども生徒たちが自らおこない、キャストとスタッフの兼任を多い、まさに中高生の手作りによる作品ながら、2016年開催の第8回日本芸術センター映像グランプリで感動賞を、同年開催の第3回新人監督映画祭で長編部門準グランプリを受賞、また故・大林宣彦監督が「奇蹟のような、映画」と絶賛し、キャストのひとり吉田玲さんを自作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』(2019年)のキャストに起用するなど、高い評価をと大きな反響を呼びました。

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『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』場面写真

 2017年に東京での劇場公開を迎えて以降、東京の池袋シネマ・ロサと新宿K's cinemaなど各地の劇場でほぼ毎年再上映がおこなわれ、2022年に柴口監督が病気により急逝するという悲しい知らせがあって以降も多くの観客に平和への願いを届けてきた『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』が、今年も8月9日より8月15日までの1週間にわたり、池袋シネマ・ロサで上映されます。
 撮影から10年、終戦80年を迎える今年の上映を節目として、商業劇場での上映に一区切りが付けられることとなり、残念ながら今回の上映が最後の劇場上映となることが発表されました。
 最後の上映に向け、当時中高生だった制作スタッフ・キャストがコメントを発表しています。(柴口監督は公開当時のコメント)

監督・脚本・撮影・編集:故・柴口勲監督コメント

記事写真 この作品は梅光学院の生徒40名と一緒に創ったオリジナル・ミュージカル映画です。冗談でも嘘でもなく、彼女らがマイクを構え、照明を当て、カメラを回し、劇中歌を作曲し、演奏し、振付けしています。
とはいえ僕らの船は順風満帆な旅路にはありませんでした。中高生の好奇心は旺盛です。でもすぐ飽きちゃうし、嘗めてしまいます(笑)
先へ進めば道が開けるのではなく逆に閉ざされていく、そんな感覚に陥りました。彼女らも、僕が何を撮っている(カットの積み重ねがどう繋がる)のか解らずに霧の海原を漂っていたかもしれません。
それでも船は港に着きました。個々が少しずつ優しさを持ち寄り、それが重なり合って完成したのです。あと、JK 相手に僕が大人気ない船頭で居続けたことも役立ったかと(涙)

※ 生前コメント「隣人のゆくえ」公式ウェブサイトより引用

野村カンナ役・作曲:正司怜美さんコメント

あの頃からもう10年も経っていることに驚いています。
たくさんの方々のお力があり、今回も素晴らしい機会をいただくことができ、嬉しいです。ありがとうございます。
皆様の心に残りますように。

田中絹代役・振付:福田麗さんコメント

約10年前に、1人のサラリーマン(監督)と中高生40名(キャスト.助監督.撮影.録音.音楽.振付)で創作したミュージカル?映画。
その1人のサラリーマンは天へと突然の住所変更。残された中高生は大人にはなりました。一応。無事に?隣人のゆくえのゆくえは、どうなるのかな。誰がいつゴーしたら良いのだろうか。
心配せず不安に思わずとも、スクリーンに映る隣人たちと確かにそこにいる監督が一生懸命に伝えてくれていました。しっかり種を蒔いてくれていました。今年もそっと誰かの胸で開くのかもしれない。
10年経った今初めてインディーズ映画の宣伝活動に挑戦します。
今出来ることを一生懸命に。間違いながらもただひたすらに。
映画は終わってからが始まりと教えてくれた柴口さん。今年も体感しています。

木暮実千代役:平島咲良さんコメント

隣人のゆくえが世に出て10年。そして戦後80年という節目の年にこのような機会を与えてくださり、ありがとうございます。
たくさんの方々がこの作品を見てくださり、長く愛してくださったからこそ、私たちは当時を振り返ることができます。あれから10年経ったと思うとあっという間でしたが、今の私は子どもを相手とした仕事をしています。
70歳になったら何してるかな♪
最後に監督へ。どうか大人になった私たちのゆくえを見守ってください。

林芙美子役・振付:江藤心愛さんコメント

あれから10年も経ってるのか~と、当時のことを思い出し、私達の青春と監督の想いがたくさん詰まっていたなと感じます。学生であのような経験ができたこと、こうして今も作品を愛してくださること、本当に有難く幸せです。

金子みすゞ役:吉田玲さんコメント

公開から未だに愛され続けているということに驚きと、感謝の気持ちでいっぱいです。
撮影から10年、肌寒い中、中庭で踊ったり、一生懸命マイクの前で歌ったり、アロハシャツにサンダルを履いた監督の姿、一瞬で当時の記憶が蘇ります。
二度とあの時の感覚には戻れない寂しさはありますが、きっと映画を見れば戻ってくるはず。
皆さんも、タイムスリップした気持ちで、ぜひご覧下さい。

丸山小梅役:岡本ゆうかさんコメント

あの映画が誕生してから10年。当時は10年後も皆様に愛して頂ける映画になるとは思いもしていませんでした。そんな素敵な映画に関われたこと、
そして今でも皆様にお会いできることをとても嬉しく思っています。
これからも「隣人のゆくえ」をもっと沢山の方に知って頂き、これからもずっと愛され続ける映画でいて欲しいなと願っています。

助監督・作曲:竹内義晶さんコメント

A4のプリントが全ての始まりでした。
ある日突然ホームルームで配られた、紙いっぱいに文字がぎっしり詰まった映画を作りたいという趣旨なのにラブレターみたいな文章。面白い人だなぁ、が最初の気持ち。
希望するもの何でもやらせてあげる、という選択肢の元にキャスト、音楽、照明、助監督など沢山羅列された文字列のうち、音楽に丸をつけた頃はまさかこの映画が私という個人にこんな影響を及ぼすとは思いもしませんでした。こんな月並みな表現しか出来ない程、今の私のアイデンティティを形成してくれた作品、そして軌跡です。
あれから10年経ちました。社会も環境も私自身も変わっても作品は変わらず
いつでも私達の中に、そして皆さんの中にも不変として居続けてくれています。また、こうして今年も、戦後80年という節目に上映して頂ける事を心から嬉しく思います。本当に有難うございます。

録音・広報:辻佑佳子さんコメント

『隣人のゆくえ』公開からもう10年…!信じられません。
撮影中のこと、そして公開後の色々な場所での舞台挨拶のこと、
すべてがとても大切な思い出です。
私たちの大切な作品を皆さまに見つけて、愛していただき、
こうしてまた直接お会いできるのがとてもとても嬉しいです。

撮影:上垣内愛佳さんコメント

撮影当時は、下関で数回上映出来たらいいな~、、
とぼんやり思っていました。
それがこの10年で沢山の場所で上映され、
作品を愛して下さったこと、とても嬉しく思います!!
写真を命懸けで撮った曾祖父の茂夫さん、そして映画を通して、
沢山の景色を見せて下さった柴口監督、関係者の皆様に感謝です!
これからも皆様の心の中にこの映画が生き続ける事を願っています💭
はいにこぽんっ

(※「はいにこぽんっ」は、劇中で登場人物が使うあいさつ)
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『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』制作当時のスタッフ・キャストの中高生たち

 そして、女優・歌手の酒井法子さんや、第48回日本アカデミー所最優秀作品賞に輝いた『侍タイムスリッパー』(2023年)の監督・安田淳一さん、女優の風祭ゆきさん、新作『タイムマシンガール』も好評の映画監督・木場明義さん、『SCORE』(1996年)など多くの作品を手がける映画監督・室賀厚さん、俳優の中原翔子さんらが、最終上映に向けてコメントを寄せています。
 酒井法子さんが劇中のセリフや劇中歌の歌詞を引用して作品の魅力を伝えているほか、それぞれに作品に賛辞を送り、最終上映となることを惜しむコメント寄せています。

俳優・歌手:酒井法子さんコメント

「あのーみちよさん、
ずっと思っていたんですけど
聞いてもいいいですか?」

「うん。。」

「はい、にこぽん。って何ですか?」

「あー。。それね。。
女の人はね、どんなに悲しくても
どんなに辛くても
はい、と返事して
にこ、と笑って
ぽん、と立ちなさい
って先生に教えてもらった挨拶なんよ。。」

「ふーん。。なんか古風な感じでいいですね。。」

私は、この映画でミュージカル部の部長であり
振付も担当している福田麗さんと
以前、舞台でご一緒させて頂いた。
彼女はその時、演出家の助手として
凄まじい忍耐力で現場を支え続けてくれていた。
私はてっきり本業が演出助手なのであろうと
思っていたのだが彼女の本業は俳優。
初めて彼女の演じる姿を見た時
まさに水を得た魚。。
自由自在に演技をし、踊り、歌い、
全身で、私はこれが好きなんだーーーーと
叫んでいる声が聞こえるようだった。
今回この映画の応援メッセージを
お願い出来ないかと彼女から連絡をもらい、
この映画を拝見して
そうか。。
ここが福田麗の原点。出発地点なのだと知った。
自主映画と言っても、
別に映画好きが集まって作った映画でもなく
青春真っ盛りの、要は右も左も分からないままの
学生達が(映画も、人生も?)
どこの誰だかも分からない
当時サラリーマンの大人に誘われ
作り上げた、まさに奇跡の映画だと思う。
最後のエンドロールを見て驚愕しました。
(それは見てのお楽しみ)
何とも、ノスタルジー。摩訶不思議。
青春映画のような、ミュージカルのような、
ホラー映画のような。。。
忘れてはならない大切なことを教えてくれる
不器用に見えて、原石の輝きがゴロゴロ転がってる
そんな映画でした。

あいうえお、この国の言葉は
そのふたことから始まるのです

あい。愛。あい。愛。

俳優:中原翔子さんコメント

その「ふたこと」から始まるこの国の言葉が、少女たちの瑞々しくひたむきな歌声とダンスで昇華される、本当に美しい映画。この夏、また彼女たちに出会えることを心から嬉しく思っています。多くの方に届きますように!

映画監督:安田淳一さんコメント

技術や製作費の問題ではない、どうしても残さねばならない物語があるんだ。

そんな強い思いがこの映画を誕生させた。
ファンタジー・ミュージカル・ホラー・サスペンス。
縦横無尽にジャンルを行きつ戻りつ"反戦"の思いは直線的に観客の胸に突き刺さる。
苦く重いはずなのに、爽やかな余韻を残す稀有な映画。
「この作品をこの時期にかけねばならぬ」と採算度外視で毎年上映を続ける劇場。
「この作品はこの時期に観ねばならぬ」と毎夏駆けつける映画館の観客。
スクリーンを飛び越えて平和への思いが引き継がれている奇蹟。

映画監督:木場明義さんコメント

歌声に誘われて主人公と共に心地よく別世界のドアを開けると、
ミステリアスな展開の先に無垢で美しい世界が待っている。
しかしその先には胸の締め付けられるような切ない気持ちにさせられる。

柴口監督だからこそ生み出せた、
今後も決して現れないであろう唯一無二の作品。

映画監督:室賀厚さんコメント

少女の揺れる心を描いた静かな映画かと思いきや、とても重いメッセージを投げ込んで来る映画です。予備知識ゼロで観た私はいい意味で裏切られました。歌劇部の女子生徒たちの清々しい姿を、まるでドキュメンタリーのように捉えた監督自らによるカメラと、優しく俳優に寄り添う演出は、映画としてとても質の高いものを感じました。ラストは思わず涙が溢れてしまいました。この映画のことを知らなかった事が恥ずかしく思えるくらい素晴らしい映画でした。

女優:風祭ゆきさんコメント

「隣人のゆくえ」
今年は太平洋戦争敗戦80年。どんどん薄れていく戦争の記憶を憂いている1人です。父は特攻隊の生き残りだし、私は8月15日生まれ。今、世界のあちらこちらで再び戦いを始めている。どうして人間は凝りないのだろう?
大声で反戦を叫ぶわけでもなく、静かに美しい歌声とダンスでじわじわと観せてくれる。最後は涙が止まらなくなってしまった。スタッフ全てが当時の中学生たちとは思えないクオリティの高い画面、音。3年前に急逝された柴口勲監督の遺志を引き継いで1年に1度でいいから、毎年上映を続けていってほしい。

 紹介したコメント以外にも、映画監督や俳優ほか多くの著名人がコメントを寄せており、6月9日月曜日より、作品公式SNSで順次コメントが紹介予定となっています。

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『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』場面写真

 最終上映にあたり、新たなチラシと予告編が製作されています。
 チラシは、劇中でも印象的なダンスシーンや、登場人物それぞれの表情を捉えた写真が組み合わされ「最後の はじまりの ふたこと」と、10年前から現在までこの作品が育んできたものを感じさせるコピーが添えられたデザイン。
 予告編は、映画本編の内容だけでなく、作品のこれまでの歩みをたどる映像も含まれ、節目とある上映を象徴するものとなっています。

【『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』予告編】

 80年前、空襲により市街地に大きな被害を受けた歴史を持つ下関市の中高生たちと柴口勲監督が、その記憶を伝え平和への祈りを届けようと作り上げた『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』は、8月9日土曜日より、終戦の日の8月15日金曜日まで、東京の池袋シネマ・ロサで最終上映されます。

 弊サイト fjmovie.comでは、2017年の劇場公開時に柴口監督とスタッフ・キャストの高校生がおこなった会見、そして新宿K's cinemaでの初日舞台あいさつの記事を掲載しております。そちらもあわせてご覧ください。

記事写真

2017年8月12日に新宿K's cinemaでおこなわれた初日舞台あいさつでの柴口勲監督(一番左)とキャスト・スタッフたち
※画像をクリックすると当時の記事に移動します

『隣人のゆくえ~あの夏の歌声~』あらすじ

両親の別れた日、カンナは忘れ物を取りに学校へ戻る。校内の歌声に誘われて着いたのはミュージカル部だった。「夏休みの間私たちのたった一人の観客になって」と頼まれた彼女は、迷いつつも部室へと通い始めるのだが——。
チラシ

隣人のゆくえ~あの夏の歌声~

  • 正司怜美 福田麗 平島咲良 江藤心愛 吉田玲 岡本ゆうか ほか

  • 監督:柴口勲
  • 撮影:柴口勲/上垣内愛佳/小川奈緒子/高松博由樹
  • 照明:末廣春香/西尾彩優里
  • 録音:辻佑佳子/鳥羽莉鶴
  • 美術:玉野綾太/堀田航平
  • メイク:平井真理子/柿本愛美/中川萌々
  • 編集:柴口勲
  • 作曲:正司怜美/岡村菜々子/竹内義晶
  • 振付:福田麗/江藤心愛
  • 助監督:竹内義晶/古田栞歩
  • デスク:林久代
  • 配給:灯台守・柴口組

  • 2016年/77分

2025年8月9日(土)より15日(金)まで 池袋シネマ・ロサにて劇場最終上映

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