日本映画専門情報サイト:fjmovie.com

fjmovie.comトップページニュース一覧>「平田雄己監督特集上映《Lost in Images》」11月22日より東京で開催 2作品を上映

「平田雄己監督特集上映《Lost in Images》」11月22日より東京で開催 2作品を上映

記事写真

「平田雄己監督特集上映《Lost in Images》」ポスターヴィジュアル(※クリックで拡大します)

 東京藝術大学大学院映像研究科出身の新鋭・平田雄己監督が同大学院在学中に監督した短編『ピクニック』と中編『ロスト・イン・イメージズ』の2作品を上映する「平田雄己監督特集上映《Lost in Images》」が、11月22日より東京のポレポレ東中野で3週間にわたり開催されることが発表され、特集のポスターと予告編が解禁されました。

 1999年生まれの平田雄己(ひらた・ゆうき)監督は、日本大学芸術学部映画学科監督コースを卒業後、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域に進学。同科の教授をつとめる黒沢清監督(※現在は退任)、諏訪敦彦監督、塩田明彦監督らに師事するとともに『走れない人の走り方』(2023年/蘇鈺淳監督)に演出部として参加するなどスタッフとしての経験も重ねてきました。
 今回の特集上映では、平田監督が大学院在学中に監督した作品の中から2023年制作の『ピクニック』と2024年制作の『ロスト・イン・イメージズ』の2作品をピックアップ。両作品とも高い評価を受けつつも国内では学内や修了作品上映会など限られた機会でしか上映されておらず、映像ソフト化や配信の予定がないため、今回の特集上映は貴重な鑑賞の機会となります。

 『ピクニック』は、恋人とその娘と3人でピクニックに出かけた女性を主人公に、3人がそれぞれに体験する出来事を描いた短編。『すべての夜を思いだす』(2022年/清原惟監督)主演や『くまをまつ』(2024年/滝野弘仁監督)などの大場みなみさんが主演をつとめ、『二人静か』(2023年/坂本礼監督)などの西山真来さん、『鈴木さん』(2020年)監督の佐々木想さん、CMなどに出演する上坂美来さんが出演。第72回サン・セバスティアン国際映画祭NEST部門に正式出品されました。

 大学院修了作品の『ロスト・イン・イメージズ』は、失踪した女優を探すことになる映画監督が、劇中の出来事に侵食される現実を体験していく中編。『佐々木、イン、マイマイン』(2020年/内山拓也監督)などの細川岳さんが主演をつとめ、『キャタピラー』(2010年/若松孝二監督)などの大西信満さん、『あとがき』(2023年/玉木慧監督)などの向里祐香さん、近年の日本映画に欠かせないバイプレイヤーの川瀬陽太さんらが出演しています。

 特集上映開催にあたり、平田雄己監督がコメントを発表し、批評家の蓮實重彦さんがコメントを寄せています。

平田雄己監督コメント

このたび、大学院時代に制作した作品を、より多くの方にご覧いただける機会をいただき、大変光栄に思います。
おそろしい速さで社会が移り変わり、フィクションと現実の境界が曖昧になっていくなかで、映画には何ができるのか。もしかすると、そのどちらも描き出せることが、映画の魅力なのかもしれない。そんなことを考えながら、取り組んだ作品です。
まったくジャンルの異なる2作品ですが、どちらにも、この不確かな世界で、それでも何かを信じようとする人々の姿が映っています。ご覧になった方々の中にも、何か共鳴するものがあれば嬉しいです。

蓮實重彦さん推薦コメント

ふと目にした『ピクニック』のショットの連鎖に強く惹かれた。厳密なのに緩やかだ。緩やかなのに厳密である。『ロスト・イン・イメージズ』も、撮れている。平田雄己はまぎれもなく未来の映画作家だ。

 今回の特集上映は、東京藝術大学大学院映像研究科の協力の元、インディペンデント映画の配給・宣伝などをおこなうイハフィルムズが企画・主催して開催。11月22日土曜日より12月12日金曜日まで、3週間にわたり東京のポレポレ東中野で上映されます。
 今後の活躍が期待される新鋭監督の貴重な作品の上映に注目です。

【「平田雄己監督特集上映《Lost in Images》」予告編】

ピクニック

ポスター
  • 大場みなみ 西山真来 佐々木想 上坂美来

  • 監督:平田雄己
  • 脚本:福嶋芙美/平田雄己
  • プロデューサー:大槻美夢
  • 撮影・照明:小澤将衡
  • 録音・サウンドデザイン:谷口祐
  • 美術:粟悦
  • 衣裳・ヘアメイク:前川睦巴
  • 編集:王菲児
  • 音楽:佐藤七海

  • 2023年/ステレオ/ヨーロピアンビスタ/20分

『ピクニック』ストーリー

ある日文乃は、恋人の修一、その娘の湊とピクニックに行く。しかし3人の空気は少しぎこちない。やがて、3人は散り散りに。死んだ母・美帆との記憶に浸る湊。過去の家族の幻想を見る修一。そして、文乃の前には美帆が現れる。
記事写真
記事写真
記事写真
記事写真

『ピクニック』場面写真

ロスト・イン・イメージズ

ポスター
  • 細川岳 大西信満 向里祐香 川瀬陽太 遊屋慎太郎 村上由規乃 宮田佳典 服部竜三郎 齊藤由衣

  • 監督:平田雄己
  • 脚本:平田雄己/福嶋芙美/峰岸由依
  • プロデューサー:大槻美夢
  • 撮影:韓天翼
  • 照明:小澤将衡
  • 美術:庄蕾麦/袁彦妮
  • 録音・サウンドデザイン:邱文翰
  • 編集:許佳雯
  • 助監督:志筑司/季子汀
  • CG制作:D.Rock-Art
  • 音楽:須藤佳帆

  • 2024年/5.1ch/シネマスコープ/56分

『ロスト・イン・イメージズ』ストーリー

探偵映画の製作に取り組む監督の桐山。しかし、出演していた女優・美羽が謎めいた失踪を遂げたことから、撮影は中止に陥ろうとしていた。桐山は、美羽の兄を名乗る謎めいた男・真とともに美羽の行方を探し始めるが、劇中の出来事によって現実が侵食されていき、大きな混乱の渦に巻き込まれていく。
記事写真
記事写真
記事写真
記事写真
記事写真

『ロスト・イン・イメージズ』場面写真

東京藝術大学大学院映像研究科教授・映画監督:塩田明彦さんの『ロスト・イン・イメージズ』へのコメント

マホガニーに囲まれた探偵事務所に瞳に光のない女が現れ、失踪者の捜査を依頼する。案の定、事件は錯綜していくのだが、これは映画内映画の話で、実はこの映画の出資サイドは女優を変え、新たな映画を創ろうとしている。これに猛反発する監督だが、瞳に光のない女優がどこかへ失踪し、新たな謎が、彼の私生活を覆い始める。イメージは増殖し、謎もまた増殖していく。そうこうするうち突如、天地の軸と水平の軸が交錯し、突発的で同時多発的なアクションが画面の上を駆け抜けていく。映画とはなによりもまず“活劇”なのだと知る者のみに可能な、見事な映画的瞬間がそこにある。

東京藝術大学大学院映像研究科教授・映画監督:諏訪敦彦さんの『ロスト・イン・イメージズ』へのコメント

「フィルム・ノワール」という失われたジャンルを映画化するために、映画を作るというメタフィクションを導入することで虚構と現実の対立が仕組まれるが、現実の物語もまた虚実を往復する女の謎の疾走によってフィルム・ノワールと化してゆき二つの世界は相互に侵食してゆく。その外側にさらに国家的な陰謀を進行させることで世界を調停させようとするが、それもまた虚構の内部に織り込まれてしまうことに変わりはない。自ら仕掛けた二重三重の罠に自分で嵌まり込むかのように物語は錯綜し、出口などないように思えるが、その混沌に身を呈する決意によって映画は冒頭に現れる子ども=自然という圧倒的な他者との回路を模索する。このような挑戦をした映画が他にあるだろうか。

東京藝術大学大学院映像研究科教授・映画監督:筒井武文さんの『ロスト・イン・イメージズ』へのコメント

平田雄己の『ロスト・イン・イメージズ』は、失踪した夫の探索を依頼される探偵という、陰影を強調したフィルム・ノワールとして始まるが、主演女優の失踪で物語が中断し、女優を探して撮影を再開しようとする監督とシナリオを変更しようとするプロデューサーの対立の物語になっていく。しかし、そこでも不条理な陰謀の世界が展開され、作る主体が解体されていく。フィクションは宙吊りされ、時間が消滅していくような映画体験をもたらすのである。
ポスター

平田雄己監督特集上映《Lost in Images》

  • 『ピクニック』(2023年)
  • 『ロスト・イン・イメージズ』(2024年)

2025年11月22日(土)より12月12日(金)まで ポレポレ東中野にて3週間限定上映

スポンサーリンク