ミャンマー出身の映像作家・ティンダン監督の短編『めぐる』と『エイン』が、2026年3月6日より2作品同時上映でアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開となることが発表され、ポスターとティンダン監督のコメントが解禁されました。ティンダン監督がミャンマーで2年にわたり拘束されるという事態を経ての劇場公開となります。
6歳のときに来日し日本で育ったティンダン(Thein Dan)監督は、映画監督を志して高校卒業後に日本映画学校(現・日本映画大学)演出・脚本学科に入学。同学卒業制作として『エイン』を監督し、卒業後は映像業界に携わり、10数年ぶりの監督作として『めぐる』を監督しました。
『めぐる』は、電車の遅延をきっかけにさまざまな人々の人生が交錯していく群像劇。
就職活動中の大学生・めぐみを小越千晴(おごし・ちはる)さん、謎めいた女子高生・ユキを小野花梨(おの・かりん)さんが演じるほか、小出水賢一郎(こいでみず・けんいちろう)さん、小野孝弘さん、姫愛奈ラレイナさん、泊帝(とまり・てい)さん、ししくら暁子さんらが出演しており、脚本はティンダン監督と同じく日本映画学校演出・脚本学科出身で『おじいちゃん、死んじゃったって』(2017年/森ガキ侑大監督)などの脚本を手がける山﨑佐保子さんが担当しています。
他人の人生に思いを馳せることの意味を問いかける『めぐる』は、ボンダンス国際映画祭2022最優秀短編賞、ライジングサン国際映画祭2021日本短編映画部門グランプリ、第3回小布施短編映画祭鴻山部門(観客賞に相当)作品賞、第10回ワッタン国際映画祭(10th Wathann Film Festival)審査員特別賞と、日本・ミャンマーの映画祭で高い評価を得ました。
同時上映される『エイン』は、ティンダン監督の少年時代の経験をもとにしており、タイトルはミャンマー語で「家」の意味。日本に来て1年になるミャンマー人の少年と弟の家出を通して、人間関係やアイデンティティ、家族というテーマが描かれていきます。
日本映画学校の卒業制作作品として、コダック社の制作支援プログラムであるコダックワールドワイドスチューデントプログラムのサポートを受けて16mmフィルムで撮影。アジアフォーカス福岡映画祭2006、第3回伊参スタジオ映画祭など国内外の映画祭で上映されました。キャストでは多くの作品に出演する光石研さんが特別出演しています。
『めぐる』『エイン』2作品の上映は、『めぐる』完成前の2017年より計画が進められていましたが、2021年2月に起きたクーデター後のミャンマーで取材活動をおこなっていたティンダン監督が、民衆の抗議デモを支持したとして同年4月に逮捕され、国軍統治下の裁判で有罪判決を受け刑務所に収容されるという事態が発生。2年にわたる拘束ののち2023年にティンダン監督が解放され、プロジェクト開始から約9年を経て2026年3月の劇場公開が決定しました。
公開決定にあたり、小越千晴さん演じるめぐみの顔をメインに配したポスターヴィジュアルが解禁。
また、ティンダン監督がコメントを発表しています。
ティンダン監督コメント
『めぐる』は特別な出来事を描いた作品ではありません。
誰かの日常の中で、静かに起きている「変化」や「循環」を見つめた映画です。
人は、失ったものや過去に囚われながらも、出会いや時間によって少しずつ前に進んでいく。
その過程はとても小さく、時に見過ごされてしまいますが、確かに「めぐって」います。
映画学校時代の仲間が、制作を快く引き受けてくれて完成しました。
映画館という空間で、この物語が観る人それぞれの記憶や感情と重なり、
新しい何かが静かに動き出すきっかけになれば嬉しいです。
『エイン』は、異なる文化や言語の中で生きる家族の物語です。
6歳で来日して日本で育った僕が感じた経験を通して描いた作品ですが
この映画で描きたかったのは、「外国人の物語」ではなく、
誰もが抱える“居場所を探す気持ち”そのものです。
子どもたちの視点を通して見えてくる世界は、残酷でありながらも、とても正直です。
笑われること、傷つくこと、そしてそれでも誰かと繋がろうとすること。
この映画が、観る人自身の子どもの頃の記憶や、今そばにいる誰かを思い出す時間になればと思っています。
2006年当時、劇場公開のお話もありましたが様々な事情で叶いませんでした。20年の時を経て公開できるこの機会に是非観て頂きたいです。
劇場公開にあたっては、改めて上映用の素材を制作。過去の映画祭などでは字幕入りで上映されていましたが、今回の劇場公開で初めて字幕のない本来のかたちでの上映となります。
ティンダン監督が普遍的なテーマを短編として描いた『めぐる』『エイン』は、2026年3月6日金曜日より東京のアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開されます。
『めぐる』あらすじ
大切な入社試験の面接の日の朝も、めぐみ(生越千晴)はいつもの悪夢にうなされていた。その夢とは、放課後の教室で行われる妹・奈緒(姫愛奈ラレイナ)への集団いじめと、奈緒が駅のホームへ向かう光景。
寝坊しためぐみは駅へと走り、途中でスーツを着た男(泊帝)にぶつかりながらも、発車間際の電車に駆け込む。この駆け込み乗車による僅かな電車遅延が、その後さまざまな人々の運命を狂わせることになる。
母親の危篤の知らせを聞き、病院に急ぐ中年の男・圭一(小野孝弘)と、自堕落な大学浪人生活を送るその息子・めぐる(小出水賢一郎)、謎の女子高校生・ユキ(小野花梨)、そして不運なスーツの男。めぐみの行動は、自分とは全く関係ない誰かの人生をめぐりめぐっていく…


