東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメント部門で上映され好評を博した野本梢監督『藍反射』(らんはんしゃ)が、国際女性デーに合わせ3月6日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開となることが発表され、場面写真が解禁されました。また各界著名人が応援コメントを寄せています。
『藍反射』は、予期せぬ診断により20代で未婚ながら不妊治療を受ける主人公・はるかが、15歳の少女・優佳里との出会いなどを経験する中で、自身の疾患と向き合っていく物語。
作品制作のきっかけとなったのは、気象キャスターとしてテレビでも活躍する気象予報士の千種ゆり子(ちぐさ・ゆりこ)さんの実体験。
未婚だった26歳のときに難治性の不妊症である早期閉経と診断された千種さんは、自身が感じた「勇気を出して誰かに相談していればよかった」という後悔と「同じように、人知れず悩む人の背中を押したい」という思いから映画製作を決意。世間に認知されづらい悩みや社会課題に寄り添う作品を描き続ける「柔らかい社会派」野本梢監督と、これまでも野本監督作品に携わってきた稲村久美子エグゼクティブプロデューサーとともに、実体験をより普遍的なストーリーへと再構築し、生理不順や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)といった多くの女性が悩む身体の問題をテーマとして、多くの人が「自分自身や身近な人」の関係として捉えやすい作品として完成させました。
突然の診断に直面する主人公・深山はるかを演じるのは第70回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門正式出品作『溶ける』(2016年/井樫彩監督)で主演をつとめ今後も主演作公開が控える道田里羽(みちだ・りう)さん。彼氏に依存する中学生・牧優佳里を演じるのは『ジオラマボーイ・パノラマガール』(2020年/瀬田なつき監督)で女優デビューし映像作品や舞台で活躍する滝澤エリカさん。ほか、井上拓哉さん、平川はる香さん、中山来未さんや、ベテラン・熊谷真実さんらが出演しています。
解禁された『藍反射』場面写真。道田里羽さんが演じる主人公・深山はるか
今年11月には第38回東京国際映画祭ウィメンズ・エンパワーメント部門で公式出品作品として上映され、初回上映のチケットは発売開始後わずか4時間で完売するなど大きな注目を集めた『藍反射』には、上映後「性別を問わずたくさんの人に観てほしい」などの感想が寄せられ、その多くの支持に後押しされるように劇場公開が決定。女性の権利向上や社会参画を呼びかける国際女性デーである3月8日に合わせて、3月6日より東京のヒューマントラストシネマ渋谷で、3月13日よりキネカ大森で公開されます。
公開にあたり、登場人物たちの姿を捉えた場面写真が解禁。
また、すでに作品公式サイトに掲載されているタレント・山崎怜奈さんらの応援コメントに加え、女性の悩みに関しての発信が多くの共感を集めているお笑い芸人のバービーさんが新たに共感を込めた応援のコメントを寄せています。
お笑い芸人:バービーさん応援コメント
主演の道田さんの存在があまりにもリアルで、物語が自分の胸の奥にするりと入り込んでくる。仕事も私生活もそれなりに満たされていて、今すぐ子どもが欲しいわけでもない。なのに、婦人科系の疾患から“産めないかもしれない未来”を告げられた瞬間、世界の色が変わってしまう。女性としての機能に“不全”を突きつけられたとき、自分の価値までゆらぐようなあの感覚。言葉にできないその痛みは、他人から見れば「よくあること」なのかもしれない。でも、当事者にとっては、簡単に片付けられるものではない。この映画は、その名付けられない戸惑いや孤独、胸の奥のざわつきまでそっとすくい上げてくれる。観客が“あの瞬間”の呼吸や鼓動までも追体験してしまうような、優しくて残酷なリアルさがある。
タレント:山崎怜奈さん応援コメント
誰にも言えずに抱える身体や心の不安、そのひとつひとつにそっと寄り添いながら、誰もが決して他人事とは思えない温度感で繊細に描こうとしている。そんなやさしさと静かな強さを持った作品でした。自分自身や大切な人の身体を大切にするとはどういうことか、向き合うきっかけになってほしいと思いました。
スポーツキャスター:陣内貴美子さん応援コメント
私自身も不妊治療を経験し、子どもを授かることは叶いませんでした。だからこそ、はるかの葛藤や戸惑いに深く共感しました。決して他人事ではない。自分の心と体に向き合う時間の大切さや誰かを思いやるきっかけを静かに教えてくれる作品でした。
映画評論家:松嵜健夫さん応援コメント
社会に生きづらさを感じている人々を描いてきた野本梢監督。マジョリティによる同調圧力が、社会的に立場の弱い人たちを生み出している要因なのだとすることで、マイノリティが存在するメガニズムを映画の中で可視化させてきた。重要なのは、女性が男性から受ける抑圧だけでなく、今作のように同性から受ける抑圧も同等に描いてみせている点にある。そういった多角的な視点によって構築された物語は、わたしたちが無意識のうちに偏狭になりがちであることを自戒させるのだ。
誰にも悩みを相談できなかった主人公が、他者と関わる中で自分を見つめ直す=“まなざしが反射する”ことによって新たな希望を見出していく姿を描く『藍反射』は、2026年3月6日金曜日より12日木曜日までヒューマントラストシネマ渋谷にて、3月13日金曜日より26日木曜日までキネカ大森ほか、全国順次公開されます。
3月8日の国際女性デー周辺には著名人や婦人科医が登壇するイベントの開催も予定。“映画を通して自分の身体や気持ちと向き合う機会を提供し、社会的なムーヴメントへと繋げていきます”とされており、映画上映に留まらない『藍反射』の展開に注目です。