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『恋する日曜日 私。恋した』廣木隆一監督インタビュー

廣木隆一監督写真 母を病で亡くした女子高生のなぎさは、ある日、自分も同じ病に侵されていると告げられる。余命わずかのなぎさが訪れたのは、子供時代に過ごした街。そこには幼馴染みの聡が今も暮らしていた。懐かしい街で聡とともに過ごす日々。しかし、なぎさは聡が人妻の絵里子と不倫関係にあることを知る――。
 BS-iの人気ドラマシリーズ「恋する日曜日」の劇場版第2作となる『恋する日曜日 私。恋した』は、現在大人気の若手女優・堀北真希さんが、病気で死を目前とした役に初挑戦。
 昨年の劇場版第1作『恋する日曜日』に続いて監督をつとめ“少女の最期の夏”をスクリーンに描き出した廣木隆一監督にお話をうかがいました。

廣木隆一(ひろき・りゅういち)監督プロフィール

1954年生まれ。1982年にピンク映画『性虐!女を暴く』で監督デビュー。その後、一般映画にも活動の幅を広げる。『東京ゴミ女』、『不貞の季節』(2000年)、『ヴァイブレータ』(2003年)、『やわらかい生活』(2005年)など多数。『ヴァイブレータ』で多数の映画賞を受賞、『やわらかい生活』は海外でも高い評価を受ける。
「恋する日曜日」シリーズではテレビシリーズ「終わらない歌」(2005年)、劇場版第1作『恋する日曜日』(2006年)を手掛けている。

自分の秘密を言わないのがなぎさの凛々しさ

―― 昨年の劇場版『恋する日曜日』第1作に続いてメガホンをとられていますが、今回はどんな作品にしようと意図されていたんでしょうか?

廣木:1作目は「幼馴染みの恋」っていうのが明確にあったんだよね。今回はプロデューサーから「堀北真希に死ぬ役をやらせたい」っていう話があって、「死」をテーマにした映画にしようと。それに恋も絡んでてってなると、結構難しいなというのは最初にあったんですけど、ぼくの中でも「死」をテーマにした映画はやりたかったし、「死」を描くというよりは、その前の「生」の部分を描けたらいいなと思っていたんです。

―― 病気の少女が主人公というのは物語としては割と多い設定だと思うんですが、その中で特に工夫された点というのは?

廣木:言っちゃえばすごくベタな話だからね(笑)。なので「この人がこうなってこうなりました」ってようにストーリーをうねらせるよりは、感情の流れをうまく出せるホン(脚本)になればいいなというのはありました。主人公のなぎさが何日間かの体験をしていく中で、彼女がどういうふうに見えてくるのか。それがホンの段階では大変だったなって記憶があります。

―― 1作目は高校生の爽やかな青春物でしたけど、今回は幼馴染みの聡が不倫の恋をしていたりとか、ドロドロした部分が出てきますね。

廣木:たぶん、なぎさはそういう関係性をこのあと経験できないんだよね。そういう部分を入れることで、彼女が到達できないであろう時間の流れが対比として見えればいいなとは思っていましたね。

―― 聡の相手の絵里子が「大人になったらわかるわ」みたいなことをなぎさに言いますよね。あれはなぎさが余命わずかというのをわかって観ていると、すごく残酷なセリフに感じました。

廣木:なぎさもそれに対して「あたしはそこまで生きないのよ」って言うこともできるんだよね。でも、そこを言わないのが彼女の潔さというか、凛々しさだったりもすると思うんでね。そういう対比となるような部分はいっぱい散りばめていますね。実際、17年間しか生きていなくて死んじゃうのと、30年間生きて死んじゃうのとでは、大して変わらないのかもしれないけど、自分に置き換えて考えると、17年で死んじゃうのはかなりつらいものがありますよね。

―― 前作もそうでしたが、現代の映画なんですけど地方が舞台で懐かしいような雰囲気がありますね。

劇中スチル

『恋する日曜日 私。恋した』より。なぎさ役の堀北真希さんと聡役の窪塚俊介さん

廣木:最近、自分の中でちょっと前の風景のほうがホッとするっていうのはあるんですよ。だから最近は地方に行って撮るんだけど、地方に行くと、都会っていうか東京とは全然違う時間の流れ方をしているんだよね。東京っていうのはビルを建て替えたりとか、古いものをどんどん排除していくじゃないですか。地方だと、東京で排除されちゃういろいろなものが、まだあるんですよね。だから田舎で撮ったほうが自分の記憶の中にある家とか家具の有様とかが鮮明に残っているんですよね。どんどん整理されていくって感じが最近はつまらない感じがするんですよ。

―― 舞台が東京だったら全然違う映画になっていたかもしれませんね。

廣木:全然違いますよね。東京の話だったら、もっといろいろなうねりがあるだろうし、同じ17歳でも、渋谷あたりの17歳も出さなきゃならないだろうし、多摩地区あたりの17歳も出さなきゃならないだろうし。地方にしたほうが「どこかの17歳の女の子」じゃなくて「ただの17歳の女の子」っていうのが見えやすくなると思うんですよね。

―― 映画の中で、なぎさと聡が同じ部屋で寝て、なにもないですよね。あれは都会が舞台だったら絶対にありえないんじゃないかと感じました(笑)。

廣木:都会だったら白々しいですよね(笑)。聡って人妻と不倫している割には真面目だったりするんですよね。やっぱり、なぎさが惚れる男としてはそのほうがいいんだろうなって。これで一線越えちゃうと「聡ってダメじゃん」って話だよね(笑)。きっと、なぎさから行っても聡は拒否するくらいの関係性なんだろうなって考えていましたね。

―― 現代風ではないので、より広い年齢層の人が共感できる作品になっているのではと思いました。

廣木:たしかに、そういう意識はありますね。ぼくが17歳の高校時代に「こんなことあったよな」というようなことを、今、堀北が演じることで時代の違う人でも観やすいものになるのかなって感じはしますね。ただ、自分の中で危惧しているのは「大人が作った17歳の映画」にはしたくないんですよ。ぼくらが子供のときに、大人が作った17歳の映画を観て、なにか不自然だなって思うことがあったんで、そうならないようにってことだけは気にしていますね。それはホンを作るときも、撮影するときもそうですね。

堀北真希は毎回微妙に演技が違う。その微妙さが面白い

―― 監督は堀北真希さんとは初めてのお仕事ですが、堀北さんにはどんなイメージを持たれていましたか?

廣木:10代だけどほんとにしっかりした子だなってイメージを持っていたのと、意志の強い子なんだろうなっていうイメージはありましたね。

―― この作品ではファーストカットの後ろ姿からラストまで、堀北さんが映っていないカットがほとんどないくらいに出ずっぱりになっていますね。

廣木:最初から、彼女が映っていないカットはないくらい追いかけようっていうのはあったんです。堀北はちゃんとそれに応えられる子なんだよね。彼女は台本に書いていないことまでちゃんとやれるんです。セリフとか、台本に書いてある動きが終わっても、なぎさとしてそこにい続けることができるんですよ。だから、そのまま撮れたっていうところはあるよね。

―― 撮影期間はどれくらいだったんですか?

廣木:9日くらいですね。

―― あれだけ出番が多くて、短めの撮影期間だと堀北さんは大変だったんじゃないんでしょうか?

廣木:特に病気っていう役だからね。彼女はやつれた感じを出すために「塩抜き」っていって、お弁当とかも全部は食べないようにしていたんで、体力的にも結構大変だったと思います。

―― 堀北さんは病気で死ぬ役は初めてですから、苦労したり戸惑ったりしていたところもあったのではないでしょうか?

廣木:いや、戸惑っていた部分はなかったんじゃないかなあ。17歳の女の子が死んでいくってどういうことなのかを、一生懸命に考えながらやっていたと思いますね。だから、ぼくがちょっと違うかなと思って「そういうことはしないよね」って言うと「そうですよね」ってまた考えて。そこは自分でイメージを固めながらやっていたんだと思いますけどね。

―― クライマックス的なシーンとしてバスの中のシーンがありますが、あそこは実際に走っているバスの中で長回しで撮っているんですよね。

廣木隆一監督写真

廣木:そうです。6分くらいワンカットそのまんまってことですね。だから、あのシーンだけで9日間の撮影のうち2日間を使って撮影しています。彼女的にはあのシーンは大変だったんじゃないかと思いますね。1回やると6分かかるから、10回やると撮影だけで1時間ってことですからね(笑)。しかも窓からの太陽の光の方向が違ってしまうから、1回やったらちゃんと最初の位置まで戻らないとならないんで、もっと時間はかかるしね。

―― 窓からの光はすごく効果的に感じました。

廣木:だから暗くなったらもう終わりなんだよね。撮れる時間が限られていて、大変は大変でしたね。

―― バスのシーンなどで感じたんですけど、堀北さんってどんな役をやっても、ある幅からはみ出さずにこなしちゃうみたいな女優さんとしてのうまさがあると思うんです。でも今回は、その幅からはみ出すくらいのところまで持っていこうみたいな狙いがあったのではないかと思ったのですが?

廣木:やっぱり、ほかの作品とは違う表情とか、違う芝居を見せたいなというのはありますよ。本人も別にそれに抵抗していたわけでもないし。ただ、実際に違った顔が出ているかどうかは、観る人によっても感じ方が違うと思うし、ぼくにはわからないですね。彼女は感情でお芝居をしてくれるんだよね。そのときの役の感情が出ればそういうお芝居ができるし。そういう部分は撮影期間が長いほうが出しやすいから、9日間の撮影期間っていうのは大変だったと思うけど、その中ですごく集中してやってくれたと思います。

―― こうして1本作品を撮り終えて、堀北さんに対する印象って変わりましたか?

廣木:最初はもっと優等生的な固い子なのかと思っていたんだよね。「今のシーンをもう1回」って言ったらキッチリと同じことをやるような。でも、何回か芝居させると毎回、演技が違うんです。それは大袈裟に違うんじゃなくて微妙なんで、たぶん気づかない人は気づかないくらいなんですけど、その微妙さがぼくの中ではすごく面白かったし、その微妙に違うところを撮っていかないといけないと思いましたね。すごく彼女が好きになりました。

―― 主題歌となっている喜納昌吉&チャンプルーズの「花〜すべての人の心の花を」は監督が選ばれたそうですが、この曲を選ばれた理由は?

廣木:やっぱり歌詞ですよね。なぎさに対して「頑張れ」っていう応援歌じゃなくて、彼女に「泣いてもいいんだよ」って言ってあげるような曲にしたかったんですよね。「花」はそういう曲だと思うし、一番いいかなって思いました。

―― ラストは余韻を残すようなかたちになっていますが、ご覧になる方にはどんな風に感じていただきたいですか?

廣木:やっぱり、最初にも話したけど、この作品は「死」をテーマにしてはいるけど「生」を描きたかったんでね。みんな死に向かって生きているわけだけど、みんな映画を観に来て、1時間何分かを体験するっていうのは「そこにいる」ってことですよね。それは「生きている」っていうことじゃないですか。それを感じてもらえればいいなっていうのが一番ですね。

(2007年5月1日/BS-iにて収録)

作品スチール

恋する日曜日 私。恋した

  • 監督:廣木隆一
  • 出演:堀北真希 窪塚俊介 高岡早紀 ほか

2007年6月9日(土)より新宿トーアほか全国ロードショー

『恋する日曜日 私。恋した』の詳しい作品情報はこちら!

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