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『テケテケ』『テケテケ2』白石晃士監督インタビュー

白石晃士監督写真 事故で死んだ被害者の無念の想いが生み出した妖怪、それが“テケテケ”。両腕を使って走り、ものすごいスピードで追いかけてくるテケテケの標的となったら、もう逃れることはできない……。
 現代の怪談として長年にわたり語り継がれている“妖怪テケテケ”が、本格ホラー映画としてスクリーンに登場します。テケテケの恐怖に触れてしまった女子高生たちを襲う惨劇を描く『テケテケ』、その事件の1年後を舞台に新たな惨劇が繰り返される『テケテケ2』の2本が同時公開を果たします。
 両作品のメガホンをとったのは『ノロイ』『口裂け女』『グロテスク』など、次々とホラー作品を送り出す、日本ホラー界の新たな旗手・白石晃士監督。
 注目の若手女優たちをヒロインに迎えた『テケテケ』『テケテケ2』は、これまでになかった恐怖の存在としてテケテケを描いていきます。はたしてホラーの俊英は、いかにしてテケテケの怖ろしさを描き出していったのか? 映画公開を前に、白石監督にお話をうかがいました。

白石晃士(しらいし・こうじ)監督プロフィール

1973年生まれ、福岡県出身。大学在学中より自主映画を制作し、1994年に福岡で撮影された『水の中の八月』(石井聰亙監督)にスタッフとして参加する。その後、自主制作作品の『暴力人間』(1997年/共同監督:笠井暁大)がひろしま映像展98で企画脚本賞・撮影賞を、『風は吹くだろう』(1998年/共同監督:近藤太)がぴあフィルムフェスティバル1999準グランプリを受賞。2000年に矢口史靖監督に抜擢され『ウォーターボーイズ』のメイキング監督をつとめる。以降、ホラー系オリジナルビデオ作品を中心に監督をつとめ、2005年『ノロイ』で劇場作品デビュー。ほかの監督作品に『口裂け女』(2007年)、音楽ドキュメンタリー『タカダワタル的ゼロ』(2008年)、『グロテスク』(2009年)など。

「ハリウッドのホラーみたいな娯楽性の強い作品にしたかった」

―― 最初に、現代の怪談としてポピュラーな“テケテケ”という材料を、どう映画として料理されていったのかお聞きしたいと思います。

白石:まず、プロデューサー側から「真面目に怖い作品にして欲しい」という要請があったのと、たとえば『リング』(1998年/中田秀夫監督)の貞子とか『呪怨』(2003年/清水崇監督)の俊雄くんのように、キャラクター性が強いものとしてテケテケを印象づけられる作品にしたいとプロデューサーが考えていたので、それを第一に考えていました。それからテケテケって、名前からしてもちょっとユーモラスな存在として認知されているところがあったと思うんです。『学校の怪談』()にもどことなくユーモラスさがある化け物として出ていたりしたので、そうではなくて「テケテケって名前からなめてかかっていたら実はとんでもない怖ろしいものだったんだよ」くらいの暴力的な雰囲気をたたえた力強い化け物として描きたいなと思っていました。それと同時に、あんまりジメッとした作品ではなくて、ハリウッドのホラーみたいな、ライト感覚ではないんですけど娯楽性の強い作品にしたいというイメージを持っていました。

―― 「暴力的な雰囲気」というお話が出ましたが、テケテケ自体のヴィジュアル自体も、そういう雰囲気を感じるような、いままでなく鮮烈なものになっていますね。

白石:大前提として、都市伝説の中ではテケテケは上半身だけの姿の、多くは女性として語られているので、もちろんそれは踏襲しなくてはいけないなというのはありました。それを踏襲しつつ西村映造の西村(喜廣)さんに大枠のヴィジュアルのモデルを作っていただいて、西村さんのほうで、外見にちょっと霜が張っていたり氷が表面を覆っているとか、それは寒い死の世界からこの世に現われてきたというイメージと、もともとの都市伝説でも北海道の雪の中で死んだという話があるので、そのイメージを重ねてデザインができてきたんです。ただ、最初に西村さんがデザインしてきたのは劇画チックというか、ちょっとデフォルメ感が強くてカッコよすぎる印象があったんですね。だから、もうちょっと人間っぽさを残して怖い雰囲気のほうに寄せて欲しいというお願いをして、ちょこっとだけ手直しをしていただいて、ああいうかたちになったという感じですね。

―― テケテケが走るシーンとか惨殺シーンなどは、CGがふんだんに使えるいまの時代ならではの描写だなと思いました。

『テケテケ』スチール

『テケテケ』より。妖怪テケテケにより次々と少女たちが惨殺される

白石:それはありますね。今回はVFXを担当された鹿角(剛司)さんのところで3DCGのテケテケを作っていただいて、その3DCGのテケテケがかなりのカット数で活躍していますんで、それがなかったら成立しないものだと思いますね。鹿角さんさまさまだと思います(笑)。

―― 今回は『テケテケ』(以下『1』)と『テケテケ2』(以下『2』)の2本を続けて監督していらっしゃいますが、2本を続けて作るということで工夫された点は?

白石:当然、『1』と『2』それぞれで別の面白さを出していなければ、2本存在する意味がなくなっちゃうんですよね。『1』を考えているときは、基本はオーソドックスな都市伝説のホラーもので、テケテケといういままでメインとして扱われなかったものを主軸に据えた、ほんとに怖いホラーものをやるということで作ったんです。『2』はですね、実は『1』の脚本ができて、撮影に入る3、4ヶ月くらい前に急に「『2』もやります」という話になって、急遽、話を作ることになったんです。だから、まず『1』とは違う感じにしたいと。それで、実は『1』では映画の中で死ぬ人が少ないので、まず「『2』では殺しまくりたいです」という話をしたんです(笑)。それから『2』では人間ドラマとして心の中に闇の部分を持った人を出したいなと思っていて、その心の闇とテケテケの存在とを重ねたら面白いんじゃないかと思って、玲子というキャラクターを登場させて、菜月と玲子というふたりの主人公の友情という部分を強調した作りにしています。あと、撮り方も『1』のほうはわりとカッチリ撮っているような雰囲気で、『2』はほとんど手持ちカメラで撮っているんです。手持ちを主体にすることで、ドライブ感が出るような感じで、出てくるキャラクターが多いということもあるんですけど、彼女たちのそれぞれの表情を捉えつつ、常にその場が動いていて、揺れていて、不安があるような感じが出ればいいなと思っていたんです。

―― 『2』の話を作っていく過程で『1』の内容も見直したりしたのでしょうか?

白石:話の整合性をとるためにちょっと変えたところはありますけど、ほとんどそのままですね。だから『1』で出てきた謎が『2』に続いていくのとかは、完全に後付けです。まあ、そんなものだと思いますよ、シリーズものって(笑)。

  • :映画『学校の怪談』シリーズ(1995年〜1999年/平山秀幸監督【1〜2・4】・金子修介監督【3】)には今回の映画とはまったく違う姿の妖怪テケテケが登場している。また、関西テレビのテレビシリーズ「学校の怪談」(1994年)の1エピソード「妖怪テケテケ」(脚本:小中千昭/監督:小中和哉)にもテケテケが登場している。こちらは上半身だけという姿だが、話の内容はコメディタッチである

「共感と好意を持てるキャラクターでないと一緒にハラハラできないし、怖くない」

―― 『1』と『2』で合わせて4人のメインとなるヒロインが出ていますが、それぞれのヒロインについて、演じた女優さんの印象もあわせてお聞きしたいと思います。まず『1』で大島優子さんが演じた可奈についてお願いします。

白石:可奈はですね、すごく快活な女の子だと考えていたんです。大島優子ちゃん本人もそうなんですけど、コミュニケーション能力が高いんでしょうね、誰でも話しかけやすいし、自分でも誰にでも声をかけるし、誰からも好かれるような雰囲気を持っているという。そういうクラスにひとりはいるみたいな明るい感じの女の子という漠然としたイメージだったんですけど、大島優子ちゃんが出ているAKB48の舞台を観て、もうちょっと活発な感じにしてもよさそうだなと思ったんです。元の脚本では、言葉遣いとかももう少ししおらしい感じだったんですけど、本人に近づけたいなと思って、舞台を観てから主人公のキャラクターは修正しましたね。それで、女の子らしいというよりは若干ボーイッシュというか「少し元気よすぎるんじゃね?」みたいな感じの女の子にしてみたんです。そういう子が悲惨な目にあって、元気をなくしてシリアスになっていくという状況が、より恐怖感や緊張感を与えて、感情移入もしやすい存在になるんじゃないかと思ったんです。

―― やはり『1』で山崎真実さんが演じた理絵についてはいかがでしょう。

白石:キャラクターとしては、本人とは違うんだけど、異性関係も活発でわりと遊んでいるような女の子で、だけど勉強もできるという子ですね。大学生でそうやって両立させている女の子ってけっこういると思うんで、そういう設定がリアリティがあるかなと思ったのと、あとは可奈の親戚ですから、可奈のガラッパチな部分をさらにパワーアップさせたような、ちょっと強い個性を持った女の子として考えました。そんなに強調はしていないですけど、理絵はコメディリリーフ的な存在ではあるんです。一から十までシリアスという作品にするんじゃなくて、メリハリをつけるという部分で『1』にしろ『2』にしろユーモアの部分は出したいと思っていたので、その部分を理絵というキャラクターに託したんです。山崎真実ちゃんもノリのいいところは理絵にけっこう近いんと思うんですよ(笑)。合成用にグリーンの全身タイツを着てもらったりしたんですけど、衣装合わせで着てもらったときもそれをノリノリで見せびらかして「私このまま街に出ても大丈夫ですよ」みたいなことを言っててですね、彼女は関西出身なんで関西ノリなところがあって、そういうところで理絵にはあったキャスティングかなと思います。

―― 理絵は、途中でちょっと作品内における役割が変わっていきますよね。

白石:最初は引っ張っていくように見えつつも助けられる存在になるというのが、女の子っぽさが出て好きだな、かわいいなって思ったんですよ(笑)。観ている人が共感と好意を持てないと一緒にハラハラできないし、怖くないので、みんなが好きになれる子ということで、可奈と理絵はそういうキャラクターにしたということはありますね。

―― 『2』で岩田さゆりさんが演じた菜月に関しては?

『テケテケ2』スチール

『テケテケ2』より。左より玲子(仲村みう)、菜月(岩田さゆり)、武田(阿部進之介)

白石:菜月ちゃんは『1』の強烈な個性のふたりとは違って、現代人っぽいっていうか、周りに合わせて自分の立ち位置を決めている、流されるところのある女の子として出したかったんですね。そんなに自分の意見も強く言えないし、誰かの強い意見があったらそっちに流されちゃうし、だけど根っこの部分では自分なりの気持ちがあって、それを抑えて周りに振り回されて生きている。なので、自分の強い意志を持って生きている玲子という女の子に惹かれていて、友達づきあいがあって、まあ「自分もそうありたい」と玲子に憧れているんでしょうね。そんな弱さのある女の子が積極的な行為に身を投じて、少しだけ強くなるという部分をストーリーの要素として入れたかったので、そういうキャラクターにしたんです。それで、その弱い感じのところって演技の達者な人でなくてはできないですね、という話になって、繊細な演技のできて、かつかわいい女の子ということで、岩田さゆりちゃんをキャスティングしたということなんです。彼女もちょっと大人しくて繊細なところがある女の子なんで、ほんとにあったキャスティングになったなと思っています。

―― 『2』で仲村みうさんが演じた玲子は、ほかのヒロインとは少し違ったキャラクターですね。

白石:玲子は自分の強い意志があって毎日を生きているんですけど、それゆえに友達づきあいがうまくないというか、不和も生じてしまい、それがもとでイジメにあって、そこにテケテケが付け入っていくんですね。だから、どこか負の雰囲気をたたえたというか、翳があるんだけど同時に美少女である人がいいなと思っていて、仲村みうちゃんの名前が挙がったときに、それはベストじゃないかと思ったんです。彼女はグラビアでも笑顔をあんまり見せないようなところがあるんですけど、ちょっと冷たい雰囲気もするところが意志の強さも感じさせますし、もちろん美少女ですし、すごくあっているんじゃないかと思いました。実際に本人に会ってみるとすごく明るい子なんですけど、どこか翳が感じられるんですね。そこがすごく魅力的に感じたので、それをより活かしたいなと思って、けっこう過激なセリフがあるんですけど、それはキャスティングが決まってから彼女にあわせて考えたんです。ぼくはわりと玲子に肩入れしているところがあったので、仲村みうちゃんは、その翳をすごく体現してくれて、迫力のあるキャラクターになったと思います。

―― ヒロインではないですけど、阿部進之介さんの演じる武田が『1』『2』をとおしてけっこう重要な役になっていますね。

白石:最初は『2』まで活躍するとはまったく考えてなかったですね(笑)。だけど『1』と『2』に共通して登場するキャラクターを考えたときに、武田という役がちょうどいいポジションにいたんですね。武田は最初はオドオドした神経質そうな青年なんですけど、阿部さん本人はワイルドな感じのカッコいい男なんで、弱そうに見える人が次第に強く積極的に行動する男になっていくというのが、阿部さんならではの体現ができたなと思います。

「与えられた企画の中で自分がやれる最大限のことをやりたい」

―― 監督はこれまでホラー作品を多く手がけられていますが、やはりホラーへのこだわりはお持ちなのでしょうか?

白石:ひとつこだわりがあるとしたら、ぼくは現代的な“Jホラー”といわれる潮流に乗ったものはなるべくやりたくないなと思っているんです。目指すものとしては、ぼくが好きだった主にアメリカ産のホラーですね。ジョン・カーペンターの『遊星からの物体X』(1982年・米)とかがすごく好きなんですけど、幽霊がひっそり近づくとか、背後になんか立っていますとか、どっかにチラッと映りましたとか、そういう霊的怖さよりも、異世界のものがドーンと現われて、ガーンと襲ってきて、身体が引きちぎれてとかですね、画でいろいろなものを見せるというほうが好きなので、ホラーとしてはなるべくそういう作品を作っていきたいなとは思っています。

―― 『遊星からの物体X』以外で影響を受けている作品というとどんな作品になりますか?

白石監督写真

白石:ホラーに限らずですけど、『ジョーズ』(1975年・米/スティーヴン・スピルバーグ監督)、『死霊のはらわた』(1981年・米/サム・ライミ監督)、『ターミネーター』(1984年・米/ジェームズ・キャメロン監督)、『ファントム・オブ・パラダイス』(1974年・米/ブライアン・デ・パルマ監督)、それから『狂い咲きサンダーロード』(1980年/石井聰亙監督)ですね。今回も『1』の打ち合わせを重ねているときは、よく『ジョーズ』を引き合いに出していて「ジョーズのような怖ろしい存在としてテケテケを出したい」と考えていたし、口にも出していました。

―― 監督は『ノロイ』(2005年)ではフェイク・ドキュメンタリーであったり、この前の『グロテスク』(2009年)では1980年代の「ギニー・ピッグ」のようなビデオ作品に近い雰囲気もあったり、今回の『テケテケ』『テケテケ2』はわりとストレートなホラーでかつある種のモンスター・ムービーであったりと、ホラーでも作品ごとにいろいろな怖さのチャンネルを切り替えているという印象があるのですが?

白石:うーん、それはどうなんでしょうねえ。ぼくは、いつも与えられた企画の中で自分がやれる最大限のことをやりたいと思っているので、その中でたまたまそうなっていったのかなあ。流れとしてホラーが多くなってはいますけど、ホラーでないものもやるつもりはありますし、ホラー云々というよりは、与えられた企画を自分の責任でどう面白く見えるように作るかを考えたらそうなっていったとしか言えないですね、ぼくとしては。

―― 以前に『口裂け女』(2007年)を監督されて、今回は『テケテケ』と、現代の怪談のポピュラーなものふたつを映画化されましたが、今後、映画にしてみたい題材というのはありますか?

白石:都市伝説ネタということではないんですけど、『遊星からの物体X』くらいにクリーチャーがバンバン出てくるようなホラーというのはやってみたいですね。ホラーじゃなくても、たとえば『エイリアン2』(1986年・米/ジェームズ・キャメロン監督)のようにクリーチャーがバンバン出てきて闘うとか、なかなかそういうのは日本では難しいジャンルではあるんですけど、大好きなのでやってみたいですね。

―― エイリアンはその後『エイリアンVSプレデター』(2004年・米/ポール・W・S・アンダーソン監督)でプレデターと闘ったりしましたし、どうですか『テケテケVS口裂け女』なんてのは(笑)。

白石:アハハハハ(笑)。いいですね、それは(笑)。

―― では、最後に『テケテケ』『テケテケ2』をご覧になる方々にメッセージをお願いします。

白石:殺戮の描写なんかもありますが、お子様から大人まで楽しめるホラー作品になっていると思います。子供の心で観ていただければ楽しめるんじゃないかと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

(2009年3月11日/アートポートにて収録)

作品スチール

テケテケ

  • 監督:白石晃士
  • 出演:大島優子 山崎真実 ほか

2009年3月21日(土)よりキネカ大森にてロードショー

『テケテケ』の詳しい作品情報はこちら!
同日、同劇場で公開の『テケテケ2』(出演:岩田さゆり 仲村みう ほか)の詳しい作品情報はこちら!

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