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『ももいろそらを』小林啓一監督インタビュー

小林啓一監督写真 ある日、女子高生のいづみが拾ったのは30万円もの大金が入った財布。やがて、いづみのふたりの友達や、財布の落とし主の男子高校生も巻き込んで、事態は思わぬ方向に向かっていく……。
 これまでテレビ番組やミュージックビデオなどを手がけてきた新鋭・小林啓一監督の劇場デビュー作となる『ももいろそらを』は、女子高生を主人公にした一風変わった青春ストーリー。BGMを一切排しモノクロームの映像で綴られる113分の作品は、少女たちの青春を鮮やかに描き出していきます。
 2011年開催の第24回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で作品賞を受賞し、サンダンス映画祭2012に正式出品されるなど、国内外から高い評価を得ている『ももいろそらを』が、いよいよ待望の劇場公開を迎えます。
 デビュー作にして独自のスタイルで新たな少女映画の傑作を完成させた小林監督。そのユニークな作品世界を生み出した背景に迫ってみました。

小林啓一(こばやし・けいいち)監督プロフィール

1972年生まれ、千葉県出身。明治大学卒。テレビ東京のオーディション番組「ASAYAN」のディレクターを経て、ミュージックビデオ界に進出。DA PUMP、Dreams Come true、ミニモニ。などの作品を監督。特にDA PUMPとは「Night Walk」から「Summer Rider」まですべての作品においてタッグを組んだ。「アイフルホーム」などのCM、「秘密潜入捜査官」シリーズ(2007年〜2008年)などのビデオ作品を経て、『ももいろそらを』で長編映画デビュー。第24回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で作品賞を受賞し、世界最大のインディーズ映画祭であるサンダンス映画祭からは「日本映画の新鮮で革新的な監督の誕生」と絶賛されている。現在、長編第2作目『ぼんとリンちゃん』を準備中。

「そろそろ自分たちで発信していかなくちゃいけないんじゃないか」

―― 『ももいろそらを』を大変面白く拝見しまして、観終わったときに思ったのが「この映画を作られた方はどんなバックグラウンドを持っているんだろう?」ということだったんです。なので、最初に監督が映画に興味を持たれたきっかけから聞かせてください。

小林:一番はじめはジャッキー・チェンの映画からだと思うんです。小学校のときにテレビでジャッキー・チェンの映画をやっていて、それがすごくカッコよくって、面白くって、みたいなところから入って、それから『スター・ウォーズ』(1977年/ジョージ・ルーカス監督)ですね。そういうところからだんだん映画そのものに興味が行くようになったのが大きいと思います。

―― では、学生時代とかにも自主で映画を撮られたりとか。

小林:いや、そういうことはまったくなくて、高校や大学のときも、普通に学校に行って部活をやったり、遊んだりプラプラしたりとか(笑)。自分で映画を作ろうという意識はまったくなかったですね。

―― そうすると、映像を作るということに興味を持たれたきっかけはなんだったんでしょう?

小林:大学に行っているときに「自分はなにが好きなんだろう?」みたいなことを考えたんですよね。就職活動も全然していなくて「なにをしようかな?」というのがあって。それで、大学4年の終わりくらいにとりあえず就職しなくちゃいけないというので、新聞の求人広告で名前の知っているところを4社くらい上げて、そのうちのひとつが映像の制作会社だったんですよ。そこに入って、テレビ番組をやるようになったんですよね。

―― そのころって、けっこう就職が難しくなりはじめた時期だったんじゃないでしょうか?

小林:そうですね、1995年くらいなので、バブルがはじけた直後くらいですね。でも、なんとなく名前を知っていた会社だったので受けたら入れたんですよね。2次募集かなんかだったのかな(笑)。そこで半年間くらいは会社の中の雑用をやっていて、そのあとテレビ東京で「ASAYAN」()という番組が始まって、その番組をずっとやるようになるんです。最初はADで、1年くらいしてディレクターになったんですね、人がいなくて(笑)。

―― 「ASAYAN」は歌手のオーディション企画などをよくやっていた番組ですよね。

小林啓一監督写真

小林:そうですそうです。そういうのを20代ずっとやっていて、自然と音楽との接点があったのでミュージックビデオをやるようになって、ミニモニ。というグループの「ミニモニ。ジャンケンぴょん!」(2001年)という曲が初めてやったミュージックビデオなんです。そのあとはテレビをやったり、ミュージックビデオもやったり、いろいろやっていて、DA PUMPのミュージックビデオはずいぶんやっています。それで、ミュージックビデオをきっかけにプロデューサーから「Vシネマ撮ってみる?」みたいな感じになって、実際にやったらすごく面白くって「お芝居って面白いな」みたいな感じになったんですね。

―― お仕事をされていく中で劇映画への興味が生まれていったという感じなのでしょうか?

小林:いや、たぶんもともと映像の最高峰は映画だというのが頭の中にずっとインプットされていた部分はあると思うんですね。「一番はやっぱり映画だよな」というのがあって、それが目標になっていた部分はあったと思います。

―― そして、ご自身で映画を作ることになるんですね。

小林:はい。Vシネを2本やったんですけど、2本目に彼(取材に同席していた原田博志プロデューサー)と会ったんですよね。プロデューサーとディレクターの関係でいろいろ熱く語っているうちに、なんて言うかな、もう自分たちで……。

原田プロデューサー:自分たちでやんないとまずいんじゃないかって。

小林:そう、自分たちでやっていかないとダメなんじゃないかという感じになったんです。というのは、ずっと仕事をやっている中で、多少の不満があったんですね。自分のやりたい映像表現はできないし、そんなに乗り気ではない仕事もやらなきゃいけないところがあったし、自分から発信するということを全然していなかったんです。だから、そろそろ文句を言っているばかりじゃなくて自分たちで発信していかなくちゃいけないんじゃないかという話をしていたんです。それでやってみてダメだったら自分たちがダメということだから、映画は諦めようと思っていたんです。

―― 製作に向けて動き出したのは2009年くらいですか?

原田プロデューサー:もうちょっと前だった気はしますね。

小林:『ももいろそらを』の撮影が2010年で、2010年の12月28日に撮り終えたんですよ。だから準備の期間はもっと前で、いろいろ話している時間も含めると2008年くらいからかもしれないですね。

―― 『ももいろそらを』はある種の青春映画だと思うのですが、最初に作る作品で青春映画というジャンルを選んだのは?

小林:漠然と、デビューするんだったら青春映画だと自分で決めていたところがあるんですね(笑)。映画をやるなら絶対に青春映画だと思っていたんです。

―― 青春映画で特に好きだったり印象に残っている作品があったのでしょうか?

小林:『アウトサイダー』(1983年・米/フランシス・フォード・コッポラ監督)は好きですね。青春映画というとまず『アウトサイダー』かなと。日本の映画だと、青春映画とはちょっと違うかもしれないですけど、ある意味で青春かなと思うのは『遠雷』(1981年/根岸吉太郎監督)ですね。

―― どちらも『ももいろそらを』とはちょっと違ったタイプの映画かなと思うのですけど、『ももいろそらを』のストーリーや設定というのは、どんな発想で生まれていったのでしょうか?

小林:自分が作るにあたって、まずキャラクターを元気にしたいというのがあったんです。「出てくる子たちは元気にしたい」っていう想いと、あとストーリーに関しては、観ているうちに小さな価値観が変わるというのと、「めぐりめぐる」みたいなことはなんとなく念頭において脚本を書きはじめたんです。

  • :テレビ東京系で1995年〜2002年に放送していたテレビ番組。オーディション企画をメインとするバラエティ番組で、モーニング娘。やCHEMISTRYなど多くのアーティストが番組からデビューを果たした。音楽以外にCM出演者などのオーディション企画もおこなわれ、女優の池脇千鶴さんも同番組出身。

「自分がそこに存在しているんだということを意識していれば、それがリアリティにつながる」

―― 『ももいろそらを』は、登場人物のセリフとかちょっとした動作とかがすごくイキイキとしていて魅力的に感じました。あの感じはどうやって作り上げられたのでしょうか?

小林:ほんとにもう、リハーサルをずっと重ねていってですね。なんでそういうふうにしたかっていうのは、電車に乗ったりしたときとか周りの人を見てると、意外にみんな動いてたりするんですけど、お芝居になるといきなり動作がキュッと縮まっちゃったりするので、なんかおかしいなって思っていたんです。あと、映像的な問題なんですけど、ちょっと引いたサイズを多用していたので、その人が存在するということを動きで表わしたほうが、よりいいんじゃないかと思ったんですね。

―― セリフでは、あまり映画やドラマなどでは使われないような言葉がずいぶん出てきますよね。これは最初から脚本に書かれていたのでしょうか? それともリハーサルで加えていった部分もあるのでしょうか?

小林:最初から脚本に書いてあったのが90%くらいだと思います。リハーサルをやっていって「なんかうまく言えないな」とか「ちょっと面白くないな」みたいなのはその場で修正したり、本番で直したりもしました。ただ、アドリブはないです。

―― 『ももいろそらを』の登場人物には不思議なリアリティがあると思うんですね。設定や言葉遣いはコミックとかアニメのキャラクターみたいになってもおかしくないと思うんですけど、いづみにしてもほかの子にしても「こういう子には会ったことないけど、でもいるかもしれないな」というリアリティを感じたんです。

小林:ありがとうございます。リアリティというよりも、オリジナリティみたいなことを意識していましたね。キャラクターにしても、絶対になにかのモノマネにならないようにしたんです。ちょっとでもほかのお芝居の真似をしたら「それはダメ」みたいな感じでやってました。とにかく、絶対的に自分がそこに存在しているんだということを意識していれば、絶対にそれがリアリティにつながるんじゃないかとずっと思っていたので、それを実践してみたんです。たとえば、変わった言葉遣いを全編とおしてやってしまうと、それはリアリティじゃなくてキャラクターになってしまうんですけど、人によって態度をちょっとずつ変えたりすることによって、生身の人間のリアリティが出るというか。ぼくが彼女たちに言ったのは「演技をして、さらに演技をしてくれ」ということで、二重の演技をすることになるんです。

―― なるほど、「そういう演技をしている女の子を演じてくれ」ということですか?

『ももいろそらを』スチール

『ももいろそらを』より。いづみ(右)は印刷屋のオヤジとまるで男同士のような口調で会話する

小林:そうですそうです。みんな普段も相手によって言葉遣いや態度を変えたりしていると思うんですよね。そういう「普段やってるでしょ?」みたいなことをやってくれって。そうやってキャラクターに息吹きを入れるというか、魂を入れていくようなことをしました。

―― その登場人物を演じる俳優さんたちの存在も重要だったと思うのですが、主人公のいづみを演じた池田愛さんについて、主演に起用された経緯なども含めて聞かせていただけますか?

小林:最初に脚本を書いて「この脚本を読んで、いいなと思ったらこの話に乗ってくれませんか?」みたいなかたちで、プロデューサーをとおして事務所に声をかけたんですよ。それで、ある事務所が「じゃあやりましょうか」みたいな感じで乗ってくれて、何人か女優さんと会って、そのうちの3人が今回出演してもらった3人なんです。その中でなんでいづみが池田さんだったかというと、彼女は「やる気あんのかな?」みたいな感じで、ほんとにポーッとしてたんですよ(笑)。彼女の宣材写真を見るとちょっとカッコ悪い変なポーズで写ってる写真があって「これ、なんでこんなポーズで撮ったの?」と聞いたら「いや、言われたからやったんです」とか言うんですよね。それが「あ、いいな」と思って(笑)。「とりあえずやってみよう」みたいな姿勢を感じたんですね。ぼくらも「とりあえずやってみよう」という姿勢でいたので、ちょうどうまく合ったというか。池田さんはそうは思っていなかったかもしれないんですけど。池田さんはね、最初は眉間にシワを寄せることもできなかったんですよ。シワの寄せ方がわからないくらい演技に関しては経験が少なかったんです。

―― 池田さんがいづみを演じることで、監督が最初に考えていたいづみ像から変わっていったようなところはありますか?

小林:それは全然変わっていないですね。リハーサルを重ねていって、撮影のちょっと前くらいからだんだんいづみに見えてきたというところがあって。

―― では、池田さんが監督の中にあるいづみ像を具現化してくれたと。

小林:そうですね。ほんとにそうだと思います。

―― いづみというキャラクターにモデルっているんでしょうか?

小林:いないんですよね、それが(笑)。とにかく元気な女の子にしたかったんですよ。テレビとか映画に出てくる高校生って、なんか元気がなくて、元気があっても暴力的だったりするんですよね。もっとエネルギッシュな固まりがあって、出しどころがわかんないような「普通の女の子で元気」という子がそこらへんにはいっぱいいるはずなのに「なんでテレビとか映画では描かないのかな?」みたいなところがあったので、そういうのの固まりかもしれませんね。あとは、自分が「こういう子がいたら面白いんじゃないか」というのを凝縮したのかもしれないです。いづみがべらんめえ口調を使うのは、寅さんが好きだからという設定にしているんですけど、なんでそうしたかと言うと、当時ぼくが寅さんが好きでずっと「男はつらいよ」シリーズを観てたからみたいなことなんです(笑)。

―― あっ、その「寅さんが好きだからべらんめえ口調を使う」というのは、先ほど話にあった「演技をして、さらに演技をする」という部分なんですね?

小林:そうですそうです。いづみは印刷屋のオヤジと喋っているときには自分を思いっきり寅次郎として演じているんですよ。だから言い慣れていないので、ほんとの下町のべらんめえ口調とは違うんです(笑)。ちょっと中二病みたいなところですよね、ああいう口調で喋りたいっていう(笑)。それで、友達といるときは普通に喋るし、相手によっては敬語も使ってべらんめえ口調は出していないんです。

「いまの生活に違和感を感じてたりする人たちに向けて作っていくという想いはあるかもしれない」

―― 『ももいろそらを』は、モノクロで音楽も一切なしですね。こういうスタイルで作られたのはなぜだったのでしょうか?

小林:前提として、ドキュメンタリータッチみたいにしたかったんです。「いづみを追っていけば面白いことが起きる」という、ただいづみを撮っていればいいというスタンスでいようと思っていたんですよね。それで、ドキュメンタリーだったら日常生活を撮っていると音楽がバーッと流れ出すということもないし、音楽はやめたんです。モノクロにしたのは、やっぱりこの映画を普通にやったら、絶対に女子高生が単純にキャピキャピしている映画だと見られるだろうなって思ったんですよ(笑)。自分の中でいろいろな想いがあってオリジナリティがあるものをやったつもりが、そういう先入観を持たれるとサラッと流される可能性があるなと思っていて、だったらモノクロにしてなにか違和感を感じるようにしようという効果を考えていたんです。あと、テーマ的にも「いま」という一瞬を未来目線から描きたかったんですね。「いま」だけがあるんじゃなくてずっと続いていくわけだし「ぼくが若いころもこうだったし、みんなの若いころもそうだったでしょ?」みたいに、未来から振り返るように描きたかったんですね。だから、ある意味では古い映画になるわけだから、どうせ古い映画になるんだったら最初にモノクロにしちゃえみたいな。

―― 撮影はデジタル一眼レフカメラの動画機能を使っているそうですが、デジタル一眼を使うメリットはどんなところでしょうか?

小林:やっぱり、手軽にきれいな映像が撮れるということだと思うんですよ。「自分たちで映画をやろう」ってなったのも、安値でクオリティの高い映像が撮れるというのもきっかけのひとつだったんです。これだったら映画が作れるんじゃないかと。

原田プロデューサー:コストの問題は大きいんですよね。これを普通のサンゴー(35mmフィルム)のカメラで撮ると、たぶん3倍くらいの予算はかかると思うんです(笑)。

小林:もっとかかると思うね(笑)。コストをすごく安くできて、あと、技術の面でも自分でも勉強すればやれる範囲だというのもありますね。

―― 全体をとおして被写界深度が浅くて、ボケが効果的に使われているのが印象に残りました。あの画面作りはどういう狙いだったのでしょうか?

小林:狙いというか、単純にきれいな映像にしたかったんですよね。自分がボケがある映画が好きっていうのもあるんですけど、映画はやっぱりきれいな映像じゃないとという先入観があって(笑)。

―― たしかに、どのカットを静止画にしても1枚のスチル写真になるくらいきれいな映像だなと思いました。

小林:ありがとうございます。それから、あとから考えると主人公にスポットでピントをあてられるので、散漫にならずに自分の主張がよく出たし、それが人物を動かす際にもわりと役立ったっていうのはあります。

―― レンズは単焦点レンズですか?

小林:そうですね、35mmのレンズです。1ヶ所だけ85mmを使ったところがあるんですけど、そこ以外はずっと35mm1本で。

―― カラーの映像を加工してモノクロにしているんですよね。撮影の段階ではどの程度モノクロにしたときのイメージを想定されてるのでしょうか?

小林:1日の撮影が終わってとりあえず映像を見直すときに、モノクロにしたりは簡単にできるので、それで同時進行というか(笑)。あと、カメラの設定でも変えられてモノクロームでも見られるので。まあ、やっているうちに慣れていきますね。「この画はモノクロにするとこうなんだろうな」というのが。

―― モノクロームに変換するときには、特にこだわった加工はされているのでしょうか?

『ももいろそらを』スチール

『ももいろそらを』より。モノクロームの美しい映像は注目だ

小林:特にないんですよ。今回は白黒じゃなくて白とグレーの「白グレ」みたいな淡い感じにしたかったんですよね。なので、カラコレ(カラーコレクション=色補正)でどうのこうのやるというよりも、もともとの映像でそれに近い感じで撮影したんです。コントラストを付けない感じで。

―― 考えてみると『ももいろそらを』というタイトルの映画で、実はストーリーにもちょっと色が関わってきますよね。そういう映画をモノクロで撮るというのは、けっこう大胆ですよね(笑)。

小林:そうですよね(笑)。でもそこは意外と全然悩まなかったというか、色というのはそんなに意識しなかったんです。それよりも登場人物の気持ちとか心の揺れ動きが大事になってくるかなと思ったんです。

―― 2011年の東京国際映画祭で初上映されて作品賞を受賞されましたが、映画祭での反応を得た感触というのは?

小林:単純に嬉しいですよね(笑)。映画を作ったものの、出しどころがわからない状態でいたんです。ぼくも無名だし、プロデューサーも無名だし、役者も無名だから、どこかにピックアップして紹介してもらうやり方が全然わからなかったんです。それでとりあえず映画祭にということで、規定で「未完成でもOK」みたいなことが書いてあるところがあって、未完成のままでカンヌに送ったりしていたんです。それがちょうど去年(2011年)の3月11日の震災のときでしたね。そのあとも未完成のままいろんな映画祭に送っていて、5月の終わりくらいに完成して初めて出したのが東京国際映画祭だったので、単純に「よかったな」って感じでした。

―― そして今度はいよいよ一般公開ですが、それを前にしてのご心境は?

小林:ほんとに、お客さんがいっぱい入ってくれて、いろいろな人に観てもらいたいなって、それだけですね(笑)。なかなか足を向けるまでに時間がかかると思うんですけど、観ていただけたらなあと。

―― 監督がこれからどのような作品を作られるのかも、すごく興味があるところなのですが。

小林:実は、もう次を撮る準備をしているんです。それもまたインディーズなんですけど『ぼんとリンちゃん』というタイトルで、オタクのカップルが東京に友達を連れ戻しに来るという話ですね。

―― 次に準備されている作品と『ももいろそらを』とで、共通して描こうとしているものはあるのでしょうか?

小林:ああ、どうなんですかねえ……。自分はいろいろなものを映画から学んでいた部分があると思うんです。映画を観て楽になったりとか「がんばらなきゃいけないな」って思ったことがけっこうあったんですよね。だから、もう自分が作る番なのかなっていう想いがあって、その資格があるかないかがこの映画の評価でわかるかなと思っていたんです。この映画が受け入れられなかったら、たぶん自分には資格がないんだろうから映画はすっぱり諦めようと思っていたので。それから、いまの生活に違和感を感じてたりする人たちに向けて作っていくというのは想いとしてあるかもしれないですね。自分が映画で助かったというか、映画を観て「これでいいんだ」みたいなことがあったりしていたので。

―― では、最後になりますが『ももいろそらを』ご覧になる方へのメッセージをお願いします。

小林:メッセージですか、難しいですね(笑)。特になにを感じとってほしいとかはなくて、観たまま感じていただけたらなとは思うんですけど、いろいろ考えてくれると嬉しいなというのはありますね。単純に「つまんなかった」でもいいんですけど、これをきっかけになにかを始めようとか、映画の内容とは全然違うことでも、自分の中でなにかトライしてみようという気になってくれたら、すごく嬉しいです。

(2012年11月30日/太秦にて収録)

作品スチール

ももいろそらを

  • 監督:小林啓一
  • 出演:池田愛 小篠恵奈 藤原令子 高山翼 桃月庵白酒 ほか

2013年1月12日(土)より新宿シネマカリテほかにてロードショー

『ももいろそらを』の詳しい作品情報はこちら!

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