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『知らない、ふたり』今泉力哉監督インタビュー

インタビュー写真 他人を避けるように生きている靴職人見習いの韓国人青年・レオンは、ある日ハイヒールの修理を任される。その日からレオンの様子が変わったことに、ひそかに彼に想いを寄せる同僚の秋子は気づいていた。そして秋子は店にハイヒールを持ってきた青年・サンスから手紙を受け取り――。
 リアルな恋愛模様を描き注目を集めてきた今泉力哉監督の新作『知らない、ふたり』は、靴店で働く青年やその同僚、コンビニでバイトする男女や日本語学校の講師など、お互いの気持ちを「知らない」7人の男女の想いが交錯していく恋愛群像劇。韓国のボーイズグループ・NU'EST(ニューイースト)のメンバー・レンさん、ミンヒョンさん、JR(ジェイアール)さんや、今泉作品常連であるモデルの青柳文子さんら、日韓からメインキャストを迎えたワールドワイドな作品となっています。
 日韓キャストの共演という新たな趣向に今泉監督はどう挑んだのか? そして今泉監督の描く「恋愛」とは? 新世代の恋愛映画の旗手の作品作りに迫ってみました。

今泉力哉(いまいずみ・りきや)監督プロフィール

1981年生まれ、福島県出身。大学在学中より自主映画制作を開始。自主制作作品が各地の映画祭で受賞するなど注目を集め、2010年に音楽ドキュメンタリー『たまの映画』で商業監督デビューを果たす。モト冬樹さんを主演に迎えた『こっぴどい猫』(2012年)は、第12回トランシルヴァニア国際映画祭で最優秀監督賞を受賞したのをはじめ海外の映画祭で高い評価を得た。2014年公開の『サッドティー』はロングヒットを記録。劇場公開作品以外にも「イロドリヒムラ」(2012年・TBS:脚本)や「セーラーゾンビ」(2014年・TX)など、テレビドラマやネットドラマの演出や脚本も手がける。
ほかの劇場公開作品に『終わってる』(2011年)、『鬼灯さん家のアネキ』(2014年)など。

「言葉じゃない表現ができたらなと思っていたんです」

―― 今回の『知らない、ふたり』という作品は、どのように発想されたのでしょうか?

今泉:最初に「NU'ESTというグループのメンバーで映画を作ってください」というお話をいただいて、一度メンバーの方とお会いして小一時間くらいお話をさせてもらったんです。そこでひとりひとりのキャラクターを見たりしながらお話を考えていくところから始まりました。それから、いままでの自分の作品もそうなんですけど、群像劇だったり恋愛ものではあってもオーソドックスな恋愛ものとはちょっと違うことをやりたいなと思っていたんです。もちろんオーソドックスな「誰かと誰かが出会って結ばれるかどうか」みたいな部分もあるんですけど、想いの差とかすれ違いとか、そういうことをやりたいという意識があって、それについて作ってみたというのが着想でしたね。

―― 今回は靴屋さんを中心に登場人物が交錯していくストーリーになっていますが、舞台を靴屋さんにするアイディアはどうやって生まれたのでしょう?

今泉:舞台になっているあの靴屋さんは実在する靴屋さんで、いつもそこを通るときに「なんだこのお洒落な空間は?」って思っていたんです。自分はオリジナルで書くときに「この話を作りたい」というストックがある側の人間ではなくていつもゼロから作るんですけど、このお話をもらったときにその靴屋さんのことを思い出して、すごく絵になる場所だと思っていたので「こういう雰囲気の場所で靴屋さんのお話でやってみたい」と制作部の人に話したんです。そのときはそこで撮影ができるとは思っていなかったんですけど、実際にその靴屋さんを使わせてもらえたというのがあって、そういうふうにいろいろな要素から発想してるんですね。それから、韓国の方とやるということで、言葉じゃない表現ができたらなと思っていたんです。いままでは会話劇とか言葉に頼っていた部分が自分の課題でもあったので、そういう意味で靴屋さんで作業をしているのはいいなと思ったんですね。諸先輩方の映画を観ていても、作業をしているところというのは絵として面白いなと思っていたので、それでこういう設定になっていったというかたちですね。

―― 『知らない、ふたり』に限らず、監督の作品ではいろいろな登場人物のドラマが映画が進行するにつれてピタリピタリと組み合わさっていくのが印象的で、複雑に組み合わさるストーリーをどう組み立てていかれるのか興味を感じます。

『知らない、ふたり』スチール

『知らない、ふたり』より。NU'ESTのレンさんが演じる主人公で靴職人見習いのレオン

今泉:ありがとうございます。シナリオを書くときは頭からお尻まで決めたりプロットとか構成を考えて書く方もいると思うんですけど、自分はけっこう途中から書いたりパーツパーツから作っていくんです。それで、登場人物がいっぱい出るときは人物相関図みたいなものを作って「ここではこの人はこの情報はまだ知らないよな」とか「この情報は登場人物が先に知っているほうがいいのか、お客さんに先に知らせるほうがいいのか」とか、その辺を考えながら作っていくんです。それは脚本の段階でも1回やりますし、編集の段階で入れ替えもするんです。やっぱり芝居を見て「これは思ったより伝わっちゃうね」とかわかることもあるので。あとは、今回はそこまで登場人物が全員集合はしていないですけど、群像劇をやるときは各々のエピソードがありつつ集合したり同時になにかが起きたりするといいんじゃないかとか、そういうところですかね。やっぱり、(ロバート)アルトマンとか群像劇が得意な好きな監督がいっぱいいるんですよ。(クエンティン)タランティーノも昔はよく群像劇で時間をいじったりとかすごい遊んでいたので、そういう影響も下地にあって憧れている部分はあるのかなと思います。

―― 編集で入れ替えるということは、完成した作品が決定稿から違っていることもあるのでしょうか?

今泉:そうですね。ほかの脚本家の方がいらっしゃって書いてもらうときは違うんですけど、自分で脚本を書くときは脚本は絶対的なものではないと思っていて、脚本は映画が完成するためのひとつの段階だと思っているんです。脚本通りに全部が撮れたとしてもそれはひとりの人間の頭で考えられることでしかなくて、現場で起きることとか役者さんのアイディアとかスタッフの力とかが加わったもののほうがもっと面白いと思うので、編集ですごく入れ替えたりしますね。だから、ほんとは編集に時間がほしいタイプなんです(笑)。

―― もうひとつ監督の作品で印象的なのが、登場人物の会話のやりとりがほんとにナチュラルですよね。

今泉:そう言っていただくと嬉しいですね。やっぱり、オーソドックスな日本映画はどこか芝居っぽいなと思っていた部分があるんです。生っぽさとは別の、それこそセリフもたぶん脚本から一言一句変えていないような「芝居をきちんとつけている」映画はそれはそれで楽しめるんですけど、「リアリティ」とか「生っぽい」と謳っているような映画で「それって“生っぽい”芝居の型だよね」と思うことがすごく多くて、自分はそれがすごく嫌だったんです。それで、ある映画祭を観客として観にいったときに、ある方が「映像というのは表現として舞台のような生のものより熱量が落ちるから100%じゃなくて120%くらいで演じるのがちょうどいい」と話していて、それを聞いたときに「俺が感じている違和感ってたぶんこれなんだな」って思ったんです。自分は「普段喋っているような100のテンションでやってもらってちょうどいいんじゃないか?」という意識がすごくあって、セリフのテンションとか温度とかにこだわってやっていますね。会話の間(ま)とかは、ほんとに生っぽいというよりは実際の会話より若干長めなんですけど、お客さんに届く感覚としてはそれがいいんじゃないかって。お客さんの感覚はわからないですけど、自分にはその間の長さが一番フィットするんです。

―― 『知らない、ふたり』では、木南晴夏さんが演じた加奈子と芹澤興人さんが演じた荒川の会話が個人的に特に印象に残ったのですが、会話の細かなニュアンスなどはどの程度まで脚本に書かれているのでしょうか?

今泉:どこまでが書いてあったか覚えていないんですけど、ふたりが互いに「じゃあ」って言うやりとりとかは全部台本に書いてありました。自分の台本がほかの方と違う部分は「え、○○」とか「いや、○○」とか、言葉の頭に間を置いて言うような言葉をすごく書いていて、それがリズムになったりするんです。あとは、思い出しながら喋っていると倒置法じゃないですけど「○○だよね、××が」みたいになるので、そういうセリフをわざと描いたりすることはありますね。それから、みんなの記憶に残る名言みたいなセリフはカッコいいなとは思うんですけど、普段言わないようなセリフは極力省いていくというか、たとえば「愛している」は「これは言わないよな」とか(笑)。でも「好き」は単純に言えるかなとか、そういう加減ですかね。

「日常のことをやることで彼らが等身大に見えればいいというのはありました」

―― そういう会話の自然さが大事であると、今回の『知らない、ふたり』で会話のかなりの部分が韓国語だというのは、難しさもあったのではないでしょうか?

今泉:そうなんですよね。自分は韓国語は全然わからなくて、一番怖かったのは、韓国語って聞いていて「早い」という印象があったので、日本語のセリフがある種スピードを落としているので、それと同じくらいになるのかというところだったんです。だから、韓国語の役者さんが演じているリハーサルのときとかは、現場に付いてくれていた韓国側の担当の方に「いま、早くなっていないですかね?」とけっこう聞いていましたね。すごくゆっくりでなくてもいいけど、日本語の部分と同じくらいの間合いが取れているかというのは確認してました。でも、自分が韓国語わからないから現場もできないんじゃないかと思っていたんですけど、やっぱり言葉って大事ではあるけどすべてではないから、表情だったりとか雰囲気だったりとか、見ていると伝わってくるものがあって、言葉は関係なく演出できたので、逆に1回経験してできたというのは強みになったと思いました。ただ、編集は困りましたね(笑)。言葉がわからないし、まだ字幕が付いているわけでもないので、台本と照らしあわせて「切り替える場所わかんねえな」とか思いながらやっていて、でも、それも集中して映像を見ていると、意外と「あっ、ここだろうな」みたいにわかってくるんです。あとで教わったんですけど、韓国語って文法が日本語と同じ並びらしくて、それもあってできたのかなって。苦労というのはそこまででしたね。

―― NU'ESTのみなさんが演じる登場人物もすごく魅力的でしたが、あれは当て書きをされたのでしょうか?

今泉:そうですね。NU'ESTは5人いて、最初は5人全員が主役になるくらいの感じで書いていたんですけど、製作サイドがすごく理解があって、5人全員を出すとかにこだわらないで「映画として面白いものを作ってほしい」というようなお話でもあったので、レンとミンヒョンとJRの3人が中心となる感じに決まっていったんです。それで、最初にお会いしたときにそれぞれのキャラクターを相当に見ることができた部分はあったので、たとえばレオンをやったレンは独特な空気があって、ちょっと天然ですごくまっすぐな子で、たぶんひとりで黙っていられる子なんだろうなって感じがあったんです。サンスをやったミンヒョンはその時点で日本語能力が一番高かったので一番芝居どころを多くしていいだろうなと思ったし、映画である種サンスが影の主役のような印象があるのは、お会いしたときのミンヒョンの信用度が高かったからなんです。そういう感じで、当て書きというよりも実際に会ってからイメージしてアイディアもホンも作っていきましたね。

―― NU'ESTのみなさんはひじょうにカッコいい方たちですけど、これだけカッコいい人というのは監督のこれまでの作品にはあまり出てこなかったタイプの登場人物ですね。

『知らない、ふたり』スチール

『知らない、ふたり』より。NU'ESTのミンヒョンさん演じるサンス(右)と、韓英恵さん演じるソナ

今泉:そうなんですよ。いままで出てくれた人に失礼なんですけど、ほんとそう(笑)。もう、ちょっと怖かったですね。どちらかというとモテない側の人たちみたいなダメなことをイケメンの彼らがやるのはどうなるんだろうって思っていたんですけど、いざやってみたらそれも味というか魅力的になったし、本人たちが若くて芝居経験も少なくてすごく素直だったから、それで逆にうまくいったのかなと思いますね。たしかに「こんな美男美女のコンビニ店員とかいないよな」とか思いながらやっていましたけど(笑)。美男美女なのはいいんですけど「別世界の話だな」ってなるのは怖いので、そういう意味では、けっこうこっち側に引きずり込んだ気ではいます(笑)。

―― そうやって引きずり込むために意識した部分はあるのでしょうか?

今泉:やっぱり、セリフとか行動とかじゃないですか。なるべく日常のことをやることで彼らが等身大に見えればいいというのはありました。やっぱり、カッコよくやればすごくカッコよくできる方たちだと思うので、自分がNU'ESTや韓国のアイドルに詳しいわけではなかったのが逆によかったのかもしれないですね。DVDとかを見てもすごく動きがキレッキレなんですよ。そういうライブでのNU'ESTとかを先に知っていたらできなかったかもしれないなと思って、だから知らなくてよかったなみたいな部分はあります(笑)。

―― 女性の登場人物についても、少しお話をうかがわせてください。

今泉:秋子役の青柳(文子)さんは前から何度も一緒にやっている方で、どれだけ自由に泳がせられるかみたいなところで本人の持ち味が出るタイプの人だと思っているのと、いつもちょっと俯瞰するような役ばかりだったので今回は恋愛に混ぜようと思って、秋子のキャラクターができていきました。ソナをやった韓英恵さんは以前から知っていて一度ご一緒してみたいと思っていて、ある種いままでの自分の映画の中心にいるような人物がソナなのかなと思いながら描いていました。男前じゃない男性を主人公にしていたときも女性が振り回されるような映画を多く作っていたので、ソナはいままでの今泉映画の象徴的な人物なのかなって。木南晴夏さんが演じた加奈子もそうですね。映画の中でそういう描写があるわけではないですけど、加奈子は他人の恋愛相談とかは乗れてきちんと意見が言えるんだけど、いざ自分のことになると他人に弱音を吐かずに迷うような人なんだろうなと思って描いていました。加奈子をやった木南さんは以前にドラマでご一緒したことがあって(※2013年配信のネットドラマ「午前3時の無法地帯」)、また自分の作品に出ていただけたのは嬉しかったし、やっぱり木南さんと芹澤さんはすごいと思いましたね。先ほど言っていただいた会話のところとか、おふたりじゃないとあの芝居はできなかっただろうなと思います。

―― ちょうどお名前が出ましたが、芹澤興人さんはいろいろな監督さんの作品でいろいろな役を演じられている中で、今回の役は指折りのカッコいい役ではないかと思いました。

今泉:そうですね、自分は初期の自主の短編のころからしょっちゅう芹澤さんと一緒にやっていて、ほんとに大げさじゃなく芹澤さんがいなかったらいまの自分がないくらいずっと一緒にやっていたので、やっと長編でご一緒できて嬉しかったです。やっぱり芹澤さんってキャラが立っているので、みんな面白い役だったり強面の役だったりで使いがちですし、自分もそういう役をやってもらっていたんですけど、ほんとに芝居がお上手だしすごく魅力的な方なので、いつかそういうのとは違う役でちゃんと芹澤さんとやりたいというのは1作終わるたびに思っていたんです。でも終わるたびに「今回もやらなかったね」「また芹澤さんに任せちゃったね」みたいなことが起きていたので、今回やっとできた感じはありますし、逆に今回みたいな役をやれたので、またちょっと曲者の役なんかもやってもらいたいなと思います。芹澤さん、すごく魅力的ですね。

「優しさとか幸せなテイストの終わり方にしようという意識はすごくあった」

―― 監督の作品は恋愛ものが多いですが、映画の題材としての恋愛の魅力というか、映画で恋愛を扱う理由はどういうところにあるのでしょうか?

今泉:ふたつあって、ひとつは万人がとっかかりやすい題材というか、恋愛を経験していない人ってほとんどいないので、観る方たちに身近なものに感じてもらえたりするというのがあるんです。だけど、それはあと付け的な理由というか、たまたまそうなっていることでもあって、大前提となっているもうひとつの理由は、自分があまり恋愛もの以外に興味がないということなんです(笑)。恋愛だけじゃなくて人間の関係性とかだとは思うんですけど、自分が日常生活していても一番興味があるのは「好き」とか「嫌い」とかそういうところで、それがすごく女性的だと言われることもあるし、いい歳をした男の人がそんなことに興味があると思わない人には「意識的に恋愛ものをやっているんでしょ?」と言われることもあるんですけど、普通に自分の興味がそこにあるというのがあって(笑)。それはともすれば自分の興味の範囲が狭いのかもしれないですけど、映画に政治や社会の話を組み込んでいくこととかけ離れているようでも、実は個人ひとりひとりのことが社会的なことの素でもあるから、個人的なこととか小っちゃな悩みとかにこだわって作りたいというのがあるんです。やっぱり、自分にとっていちばんの核が仕事とかお金ではなくて恋愛なのかなって思っているので、恋愛については今後もやると思います。そうやって意識的にやっているのではないことがお客さんに届きやすいというのは、すごくラッキーだなって思っています。

―― 監督の作品を拝見して毎回思うことなのですが、映画の中に監督ご自身や周囲の方々の実体験は入っていたりするのでしょうか?

今泉:けっこう入ってますね。毎回入っていて、さすがに結婚して長いので自分の持ちネタはもうあまりないんですけど、今回もキスシーンのくだりとかはけっこう似た経験をもとにしていたなとあとで思いましたね。自分の大学時代の話なんですけど、映画と似たような状況でキスをしたことがあって、相手の女の人はきれいな方だったんですけど自分はなにも嬉しくなくて「なにをやってんだろ俺」感しかないというか(笑)。そういうことは自分の中から持ち出してすごく使っていますね。

―― 『知らない、ふたり』は、監督のこれまでの恋愛映画と同じ路線にありつつ、そこに新しいテイストも加わっているように感じたのですが、それは意識されていたのでしょうか?

今泉力哉監督インタビュー写真

今泉:どの辺がそう思いました、逆に?(笑)

―― そうですね、これまでの作品だとちょっと身につまされる痛いような感覚があったのですが、今回『知らない、ふたり』ではそこが少しマイルドになっていた印象があります。

今泉:たぶん、一番の要素は終わらせ方かもしれないですね。自分の個性で言えば、誰も幸せにならないみたいな映画もいままで作ってきましたけど、今回は「NU'ESTさんで映画を」というお話をいただいていたという意識もあって、すべてが解決されたわけではなくて今後どうなっていくのかという感じは残しつつ、ある種のハッピーエンドにしようという部分はありました。やっぱり、優しさとか幸せなテイストの終わり方にしようという意識はすごくあったので、それがすごくウェルメイドでベタなものになったとしてもそっちで終わらせようと思っていて、それがいままでとの違いという部分かもしれないですね。それはけっこう意識的だったかもしれないです。

―― 今後「こういう恋愛を描いてみたい」というアイディアがあれば教えていただけますか?

今泉:これはもう、いつかやりたいと思っているのが自分の中にあって、もっと温度を下げていって40代とか50代とかの夫婦の話をやってみたいんです。その年齢になってお互いにもう相手が恋愛をするとも思っていないんだけど、片方の浮気が発覚して、それをもう片方が知るんだけど知ったときにあまりショックを受けないという、そういう話をやってみたいんですよね(笑)。これは唯一、自分の中にストックとしてずっとあるお話で、お互いにたぶん相手のことが好きで長く連れ添ってきたのに相手の浮気を知ってもあまりショックを受けずに「なんで俺はこの人とこんなに長く一緒にいたのにこの人が浮気しても凹んでないんだろう? じゃあ俺はなんでこの人と一緒にいたんだろう?」みたいに、ショックを受けないことにショックを受けるという映画をいつかやりたいなと思いますね。

―― では最後に『知らない、ふたり』に興味を持たれている方に向けてメッセージをお願いします。

今泉:そうですね、いままでの自分の映画を見てくれていた人以外にも、NU'ESTのファンの方はもちろん、韓英恵さんとかキャストの方をきっかけにしたり、いろんな部分をきっかけに観てもらえたらと思っています。それから、これはいつも群像劇で意識しているんですけど、映画が終わったあとに「その後のこの人たちはどうなっていくんだろう」みたいなことも話せる映画だと思うし、観方によっては「こんなのあり得ない」とか「この人はダメだけど好きになるな」とかいろいろな観方ができて、どんな観方をしたかについても話せる映画だと思うので、ぜひ気楽に観にきてほしいです。映画ってやっぱり娯楽であるべきだと自分はすごく思っているので、小難しい映画ではないですし、楽しく観にきていただければと思います。

(2015年11月30日/日活本社にて収録)

作品スチール

知らない、ふたり

  • 監督・脚本:今泉力哉
  • 出演:レン 青柳文子 ミンヒョン 韓英恵 JR 芹澤興人 木南晴夏 ほか
  • 配給:CAMDEN、日活

2016年1月9日(土)より新宿武蔵野館 ほか全国順次公開

『知らない、ふたり』の詳しい作品情報はこちら!

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