日本映画専門情報サイト:fjmovie.com

fjmovie.comトップページニュース一覧>「走る『切腹』」を目指す本格時代劇始動『蠢動-しゅんどう-』製作発表会見

「走る『切腹』」を目指す本格時代劇始動『蠢動-しゅんどう-』製作発表会見

記事メイン写真

会見に出席した脇崎智史さん、平岳大さん、若林豪さん、目黒祐樹さん、さとう珠緒さん、三上康生監督(左より)

 豪華キャストの共演によるオリジナル新作時代劇『蠢動-しゅんどう-』のクランクインを間近に控えての製作発表会見が1月15日に都内で開催され、脇崎智史さん、平岳大さん、若林豪さん、目黒祐樹さん、さとう珠緒さんの出演者5人と三上康雄監督が出席しました。
 『蠢動-しゅんどう-』は、1970年代から大阪を拠点に自主映画を製作してきた三上監督が、1982年に製作した16mm時代劇『蠢動』をスケールアップした劇場版作品としてリメイクするもの。自主映画版『蠢動』以降は映画製作から離れて家業の会社経営に携わってきた三上監督の、30数年ぶりの監督作品となります。享保時代の山陰のとある藩を舞台にした物語で、この映画のためにオーディションで74名の応募者より選抜された13名で編成される“チーム激動”が参加しての大掛かりな殺陣が見どころのひとつ。
 出演者・監督は、それぞれ撮影を前にしての意気込みを語りました。

コメント写真

若き藩士・香川廣樹役:脇崎智史さん

みなさん本日はお忙しい中、お足元の悪い中(会見は東京が雪に見舞われた翌日)、ありがとうございます。昨日の雪もまさに“蠢動”といったような、そんな光景でした。今回の撮影でも雪の中でのシーンがとても多いので、体力的にも過酷な現場になるとは思いますが、スタッフ、出演者一同、一丸となって素敵な作品を作れるようがんばりますので、どうかご期待ください。
〈殺陣について〉何本か時代劇はやらせていただいているんですけど、ここまで本格的な時代劇の殺陣というのは初めてになるかと思います。去年から監督含めて“チーム激動”のみなさんと稽古をさせていただいているんですけど、まず最初に監督に「きれいな殺陣ではないんだ」と「相手をねじ伏せるためにはなんでもする」という、その精神を教わりました。脚をかけたり、転がったり、なんでもするわけなんですけど、ケガがないように思いきってできればなと思っております。
〈脚本を読んでの印象は?〉それぞれの立場で正義を貫くというテーマに対するまっすぐさというのを強く感じました。自分は正義を貫けているのか、いないのか、いま、ぼくの立場で貫ける正義というのはなんなんだろうとか、そういうことを考えさせられました。そして今回、香川という役をとおして、いまのぼくだからこそできる“貫き方”で演じることができればと、そう思いました。

コメント写真

剣術師範・原田大八郎役:平岳大さん

ぼくはこの作品との出会いといいますか、最初にホン(脚本)を読んだときに、久しぶりに「最後まで早く読みたい」と迫られるような感じがして、すごく感動いたしました。脇崎くんが言ったみたいに雪の中での立ち回りがあるんですけど、役者、監督、スタッフのみなさん気合いは充分に入っていると思うので、あとは大雪が降ってくれることを祈っております。
〈殺陣について〉(時代劇には何本か出演していますが)『一命』(2011年/三池崇史監督)も、ぼくは殿様で最後座っているだけでしたし『のぼうの城』(2012年/犬童一心・樋口真嗣監督)も、下々の者に「闘えーっ!」って言っているだけで、闘っているという印象はあっても実はあまり闘っていないんですけど(笑)、今回はがんばります。
〈脚本を読んでの印象は?〉次のページを早く読みたいというふうに、自分がジェットコースターに乗ったような感じで物語が進んでいくので、ラストに突き進んでいくスピード感というか、そういうものをすごく感じました。

コメント写真

城代家老・荒木源義役:若林豪さん

時代劇を撮るというのが、テレビなんかでもほんとになくなってしまったので、お声をかけていただいて大変嬉しく思っています。私は新国劇で40年くらい前に「上意討ち」というお芝居を島田正吾先生、辰巳柳太郎先生と、息子たちを緒形拳さんと私がやったんですが、そのとき「これはいいお芝居だな」と思って、もう1度やりたいと思っていたのがなかなかできなくてこの歳になってしまったんです。この『蠢動』がそのお芝居と似ているんですね。観ていただくと「時代劇とはいいものだな」と必ず思ってもらえると思います。
〈殺陣について〉新国劇は立ち回りが売り物だったんですけど私はずいぶんヘタでして、ましてや、いま立ち回りをやったらやる前にくたばってしまいそうなんで(笑)。ただ、やっぱり立ち回りというのは素敵なんですよ。ロマンがあるんですね。今回、三上監督にはとにかくいい手をつけていただいて「これが立ち回り」というのを見せていただきたいと思います。
〈脚本を読んでの印象は?〉いまの時代劇というのは直球じゃなくて変化球と言うんですかね、別の角度から撮るようなところがあるので、こういうほんとのど真ん中を狙って投げるお芝居というのが少なくなってきているんですね。だからそういう面では『蠢動』を見たときすごいホンだなと思いました。だから「ぜひやらせてください」と私のほうから頼んだんです。

コメント写真

公儀剣術指南役・松宮十三役:目黒祐樹さん

久しぶりに本格的な劇場用時代劇に出会うことができて、時代劇を愛する者のひとりとしてほんとに嬉しい気持ちでいっぱいでございます。監督の時代劇に対する熱情、その心意気に感じて、微力ながら素晴らしい作品になるように全力でこの作品にぶつかっていきたいと思います。みなさんのお力もお貸しください。
〈殺陣について〉時代劇の最大の見せ場というのは殺陣のシーンになるかと思うのですが、実は最初に脚本を読ませていただいた段階で、私の演じる松宮はあんまり立ち回りのシーンが少なかったものですから、事前に監督に相談をさせていただいて「せっかくの時代劇なんで私も少し立ち回りをやりたいんだ」というふうにお願いしましたら、ほんとに快く聞いていただいて、立ち回りのシーンを少し増やしていただきました。自分で言い出したことですから、あんまり恥をかかないようにがんばってやりたいなと思っております(笑)。
〈脚本を読んでの印象は?〉まず第1ページを開いたときに目に飛び込んできたのが「製作意図」。「こういう狙いを持って作品を作りたい」というのがキッチリと書かれていて、久しぶりに製作意図の書かれている台本を読ませていただいたなという気もしましたし、読み進むうちに三上監督の時代劇に対する熱い情熱というのがひしひしと伝わってまいりまして、この情熱はそれをエネルギーとして必ずや素晴らしい作品につながっていくのではないかなという予感を持ちました。その私の予感はもはや確信に近いものになっております。必ずや素晴らしい作品になると思いますので、みなさまの応援もこの場を借りてお願いしたいと思います。

コメント写真

香川廣樹の姉・香川由紀役:さとう珠緒さん

私は時代劇は映画では2作目なんですね。あまりやったことがないので、時代劇を見たり、所作の勉強をしたりしてがんばっています。台本を見たときに、最後に哀しさもあるんですけど、とても感動しました。この作品で、ひとりでも多くの人に感動していただけるようにスタッフ一同がんばりますので、ぜひぜひよろしくお願いします。
〈殺陣について〉実際に練習風景を見学させてもらったんですけど、殺陣のみなさんの迫力とカッコよさとに圧倒されまして、この現場にいさせていただいてすごく幸せだと思いました。監督は殺陣もおできになるので練習のときに監督も指導されていたんですが、監督は武士のような感じですね。武士のような情熱が、言葉で表わさなくてもメラメラといつもある印象がありますね。
〈脚本を読んでの印象は?〉主人公がどんどん悲劇に巻き込まれていくんですけど、「どうして? 悪くないのになあ」って思うんです。でも、違う役の立場から見ても「この方も悪くないし、こっちの人も悪くないし、どうしてこうなっちゃうんだろう?」という、簡単な「善と悪」とか「味方と敵」じゃない感じで観られるんです、だから「どうしてこんなに歯車があわなくなっちゃったんだろう」と、いろんなことを感じます。もう、胸が痛くなるような作品で、早くみなさんに観ていただきたいです。

コメント写真

三上康雄監督

ぼくは昭和の時代劇というのがとてもとても大好きで、特に『切腹』(1962年/小林正樹監督)『上意討ち 拝領妻始末』(1967年/小林正樹監督)『仇討』(1964年/今井正監督)、内田吐夢監督の宮本武蔵の外伝みたいな作品で『真剣勝負』(1971年)、それから『十三人の刺客』(1963年/工藤栄一監督)というような、ひじょうにオーソドックスな時代劇が好きだったんですけど、最近そういうような時代劇に出くわすことがなく「もう自分で作るしかないな」というようなことで、今回作るにいたったわけです。なおかつ、殺陣というよりもほんとの斬りあいを見せたいなということで、1分間の長回しをやるつもりです。1分間カットを割らずにやる殺陣があります。それからまだまだ延々と斬りあいが続きますけど、前半部は藩の内情を描くサスペンス、後半部は「走る」「斬る」の活劇になるかと思います。時代劇ファンの方に喜んでいただける作品を作りたいと思っております。ぜひとも応援をよろしくお願いします。

 好きな作品として名脚本家・橋本忍さんが手がけた作品を多く挙げる三上監督。『蠢動-しゅんどう-』の脚本を書くにあたっては「とても橋本忍先生には及ばないとは思うんですけど、気持ちだけは及びたいと思って書きました」と語り、「『切腹』では二者の対立やったんですけど、この『蠢動-しゅんどう-』では何人もの正義があって何人もの対立が出てくるということで、ぼくなりにふくらましました。基本は“武士道とはなんなのか?”とか“武士道のために起こる不条理というのはなんなのか?”を問い詰めてみたいということで書いた脚本です。後半に“走る”“斬る”があるので“どういう作品ですか?”と聞かれると“走る『切腹』です”と答えています。そのような作品です」と、橋本忍脚本の名作を挙げて説明しました。
 また、ラストではこれまで前例のない雪の鳥取砂丘での殺陣が予定されており、三上監督は「鳥取砂丘の雪というのは年に数回しか降らないのですが、過去3年間のデータを見ますと2月の3日、4日は積もっています。なので3日4日に鳥取砂丘で撮ろうと決めて、そこから逆算でクランクインの日を決めたくらいです。出演者の方のご都合じゃなくて、鳥取砂丘さんのご都合で決めた(笑)」と笑いも交えつつ「積もっていることを心から願ってやまないです」と、斬新なシーンの実現に意欲を見せました。

 『蠢動-しゅんどう-』は、会見出席者のほか、中原丈雄さん、栗塚旭さんらが出演。1月17日にクランクインし、伊賀上野、京都の美山と大原野、滋賀の比叡山、鳥取砂丘など、オールロケによって撮影され、2月5日にクランクアップ予定。海外の映画祭への出品後、年内の公開が予定されています。

スポンサーリンク