タリン・ブラックナイト映画祭最優秀作品賞を受賞している辻野正樹監督の新作『北浦兄弟』が4月12日に公開されるのを前に、映画監督の清水崇さん、佐藤佐吉さん、俳優の近藤芳正さんら映画人から絶賛のコメントが解禁! また、公開初日にはキャスト・監督による舞台あいさつ、公開2日目には女優・歌手の酒井法子さんを迎えたトークショーが開催されることも発表されました。
『北浦兄弟』は、45歳になって実家で引きこもり気味の生活を送る兄のソウタと、セクハラで仕事も家庭も失った弟のアキラ、揃って“ダメ人間”の兄弟が、ソウタがはずみで殺してしまった父親の死体を処理しようと右往左往するストーリー。
メガホンをとったのは、ミュージシャンや舞台の作・演出、脚本家などを経て『河童の女』(2020年)で長編監督デビューを果たした辻野正樹監督。
兄のソウタを映画やテレビドラマで活躍し辻野監督『河童の女』にも出演していた中野マサアキさん、弟のアキラをイタリア古典仮面喜劇と現代演劇を融合させた「テアトロ コメディア・デラルテ」を主宰する大塚ヒロタさんと、ふたりの実力派俳優がダブル主演するのに加え、たかお鷹さん、山下容莉枝さん、加藤満さんらベテラン俳優陣が共演しています。
『北浦兄弟』場面写真。中野マサアキさん演じる北浦ソウタ(左)と、大塚ヒロタさん演じる北浦アキラ
行動すればするほど悪いほう悪いほうに進んでいく状況をコミカルでブラック、かつ人間の悲哀を漂わせながら描いた内容が高く評価され、2024年にエストニアで開催された第28回タリン・ブラックナイト映画祭(28th Tallinn Black Nights Film Festival)のクリティック・ピックス・コンペ部門で最優秀作品賞を受賞している『北浦兄弟』がいよいよ4月12日に渋谷ユーロスペースで公開されるのを前に、作品に寄せられたコメントが解禁されました。
コメントを寄せてるのは、近作『あのコはだぁれ?』(2024年)も話題の和製ホラーを代表する映画監督・清水崇さん、辻野監督の前作『河童の女』に出演していた俳優の近藤芳正さん、映画監督・脚本家・俳優の佐藤佐吉さんら、日本映画界の第一線で活躍する映画人たち。
清水崇さんが「これも人間賛歌であり、映画なんだ......と思えた。」、近藤芳正さんが「駄目な人間の可笑しく愛おしい人間讃歌!!ほんと面白い!!」、佐藤佐吉さんが「キャッチコピーをつけるなら某作品にあやかり 『このへんな兄弟は、まだ日本にいるのです。たぶん』」とコメントするなど、どのコメントもブラックすぎる内容に驚きつつも絶賛のコメントとなっています。
映画監督:清水崇さんコメント
不思議と観届けてしまう......
主人公の成長譚や哀しい別れと再生、喜ばしい人生の謳歌ばかりが映画じゃない!
英雄への憧れ、スリルや恐怖、冒険譚への陶酔ばかりが映画じゃない!
憧れどころか、厭きれかえってしまう高学歴の中年馬鹿兄弟。
永遠のモラトリアム地獄を、流されるままに過ごすような二人を眺めながら......これも人間賛歌であり、映画なんだ......と思えた。
妙にリアルな芝居は、嫌悪感を掻き立てるが、不思議と観届けてしまうし、笑ってしまう......その笑いの裏で「実は世界中にたくさん居そう」とすら思わせる。
浮世離れしてるようで、そうでもない......妙に等身大なのが怖くすらなる。
社会不適合なクズ人間がクズ人間のままに描かれた、少子高齢化のブラックな珍道中に“現代の無常”を魅せられた気がした。
俳優:近藤芳正さんコメント
「情け無い、ちゃんと考えろ!馬鹿が!あちゃー!やってしまったよ!もう!」
そんな言葉がいっぱい出てくる。
駄目な人間の可笑しく愛おしい人間讃歌!!ほんと面白い!!
脚本家:安倍照雄さんコメント
『北浦兄弟』、面白い映画だった。ヒッチコックの『ハリーの災難』のような死体隠しをベースにしているが、徹底して乾燥させたブラックユーモアというか、独特な兄弟の距離、間があって、最後まで惹きつけられた94分だった。
自分が信じ、創りたいと願い、精神的、物理的困難を乗り越えてついに表現者として作品を結実させる。久しぶりにそういう日本映画を観た気がした。
映画監督:戸田彬弘さんコメント
どうしようもない兄に、どうしようもない弟が加わって。
物語はアクセル全開。止まることなく転がっていく。
ただ、この弱さと卑しさには見覚えがあるし、どうにも共感できてしまう。
悪い冗談の行き着く先は、日本の沈んだ闇を想起させる。ピリッと痛快。僕は好きです。
脚本家・劇団チリ主宰:ブラジリィー・アン・山田さんコメント
サイテーすぎる兄弟だけど、そんなふたりになぜか感情移入してしまう辻野マジック!
主演の中野マサアキさんのなんともいえない佇まいがたまらない。令和の時代に、和製リッキー・ホイ誕生!
映画監督・脚本家:佐藤佐吉さんコメント
こんな愚かな兄弟が実際いたとしたら恐ろしいことだが兄弟姉妹というものはおおよそ彼らと似たりよったり。やや郷愁漂う作品だが兄弟の人間としてあまりのダメっぷりにそんな気配もすぐにふっ飛び終始大笑い。しかしこれ自分のことかもと戦慄が走る。そんな映画にキャッチコピーをつけるなら某作品にあやかり 『このへんな兄弟は、まだ日本にいるのです。たぶん』
解『北浦兄弟』場面写真。中野マサアキさん演じる北浦ソウタ(左)と、大塚ヒロタさん演じる北浦アキラ
また、ユーロスペースで公開初日の12日土曜日に舞台あいさつ、2日目の13日日曜日に特別トークショーが開催されることが発表されました。
12日の初日舞台あいさつには、ダブル主演の中野マサアキさんと大塚ヒロタさんに加え、兄弟の父の恋人を演じた山下容莉枝さん、兄弟の叔父を演じた加藤満さん、警官役の芦原健介さん、アキラの妻役の西山咲子さん、デリヘル嬢役の如月まりなさんと、7名のキャストと辻野正樹監督が登壇。
13日の特別トークショーは、中野マサアキさんの旧知の仲である女優・歌手の酒井法子さんが中野さんとともに出演します。
高齢の親が中年の子どもを養う現代日本の問題「8050問題」に着想を得て、社会への痛烈な皮肉をエンターテイメントとして描く〈ダーク〉エンターテイメント『北浦兄弟』は、4月12日土曜日より東京・渋谷のユーロスペースで公開。以降、全国順次公開されます。